高齢猫・老猫がご飯を食べない原因と改善方法

高齢猫・老猫がご飯を食べない原因と改善方法

高齢猫・老猫が食事を取らなくなったら、飼い主は「ついにお別れのとき?」と不安で仕方ないでしょう。しかし、自宅で簡単な対処をすることで解決するケースもあります。猫の食欲不振について考えられる理由や、動物病院に連れていくべきケース、自宅で対処できるケースなどを項目別にご紹介します。

高齢猫・老猫がご飯を食べない主な原因3つ

高齢猫・老猫がご飯を食べなくなったら、どんな原因が考えられるでしょうか?主に考えられる主な理由を3つに分けて解説します。愛猫の状態や様子に照らし合わせてチェックしてください。

老衰・寿命による食欲低下

猫がご飯を食べなくなったのは、年齢が原因かもしれません。

猫のシニア期は7歳頃からとされています。人間に換算すると44歳。まだまだ若いと思われますが、20歳の若者とは違いますよね。さらに、猫が13歳を超えればハイシニア期、平均寿命とされる16歳を超えるとご長寿です。それぞれ人間年齢に換算すると、猫の13歳は人間の68歳、16歳は80歳となります。ここまでくれば、高齢といって差支えない年齢ですね。

人間でも、老人と若者なら食べる量が違うように、猫もシニア期に入れば食事量は減っていきます。味の好みも変わり、油っぽいものを好まなくなる猫も多いです。

高齢猫・老猫は若い頃に比べて運動量が減るため、必要なカロリーや食事量が少なくなっているため、食事量が減っても問題ありません。長時間食事をするための体力がなくなったり、多くの量を摂取しても内臓が対応できなくなっているため、食欲が低下するのは当然のことなのです。しかし、たいていの場合は緩やかに食欲が低下していきます。急に食べなくなったのなら、別の要因を考えるべきでしょう。

また、健康な高齢猫・老猫の場合、亡くなる3日ほど前から食事を取らなくなることもしばしばです。老衰といえる年齢なら、無理に食べさせることなく自然な最期を迎えさせるのも愛情といえるでしょう。

病気による食欲低下

高齢猫・老猫は何かしら体に疾患を抱えていることがほとんどです。特に腎臓は「使い捨ての臓器」と呼ばれ、「15歳以上の猫の95%が腎臓の病を抱えている」といわれるほどです。

他にも糖尿病や心臓病など、慢性的な病があって食欲が低下しているのかもしれません。白血病やエイズのキャリアなら、発病の可能性も考えられます。

病気は早期発見が重要です。フードや薬で病気の進行を遅らせることもできますが、早期発見が大前提。食欲が低下するなど目に見える症状が現れた際には、すでに手の施しようがない病も多く存在します。また、手術で治る病気だとしても、高齢猫・老猫は体力がないため全身麻酔での手術に耐えられないケースも多く、手術を避けるよう勧める獣医師もいます。

病気による食欲低下を防ぐためには、定期的な健康診断しかありません。血液検査や尿検査、触診など猫にとってはストレスですから、無理にはお勧めしません。しかし、健康診断をすることによって猫の寿命が延びたり、穏やかな最期を迎えられたりする可能性が高まるのは事実です。

口内環境による食欲低下

年齢が上がるにつれ食事の回数を重ね、歯石が歯にくっつき口内環境は悪くなっていきます。猫は歯磨きをしないので、当然といえますね。そのため、高齢猫・老猫は口内環境が悪く、虫歯や歯周病、歯肉炎などを患っている確率も高いです。獣医師が歯茎や歯の状態から猫の年齢を推測するほど、口内環境は年齢を反映しているのです。

例えば歯肉炎や歯周病がある猫は、痛みがあるため食事を取りたがらなくなります。お腹が空いて食欲はあるのに、口の中に痛みがあるため食事を取れないのです。猫に歯医者はありませんから、歯を抜くしか方法はありません。

指で猫の歯を触ってみてグラつきがあるようなら、動物病院で歯を抜いてもらい、歯茎の炎症を抑える薬を出してもらうのがベストでしょう。鎮痛剤と併用して食事を取れば、口内環境を少しでも良くすると共に食欲も取り戻すことができます。

動物病院に行くべきケース

すべての生き物にいえることですが、食べない状態が続けば生命維持ができなくなる可能性が出てきます。猫は喋れないため、体の症状を訴えることができません。もしかしたら、痛みやだるさなど食事以外の症状が出ている可能性もあります。もし以下のような状態なら、動物病院に行って診てもらうべきでしょう。

高齢猫・老猫がドライフードを食べないとき

今まで食べていたドライフードをまったく食べなくなった際、考えられる原因は、体調不良、怪我、口内炎、老衰などです。老衰ならば治療のしようがありませんので病院に連れて行っても無意味ですが、他の可能性がある以上、病院へ行くべき状態といえるでしょう。

体調不良や怪我なら根本的に治療するか対処療法のみをするかを選ぶこととなります。高齢になればなるほど心臓が弱くなっているため、全身麻酔の危険度が高まります。そのため、治療の選択肢は若い猫ほど多くありません。猫の負担を考え、飼い主が最良と思える選択をしましょう。

また、普段から少量しか食べなくなっていたり嫌々食べている様子があれば、食の好みが変わった可能性もあります。普段の様子も考慮して、原因を推測することが大切です。

高齢猫・老猫がドライフードを吐く場合

ドライフードを食べるものの吐き出してしまう場合は、体調不良や異物が考えられます。

少量でも食べているから良いのでは?と思われるかもしれませんが、吐き戻すなら問題です。むしろ、吐き戻しがある分だけ胃液が過剰に分泌されて、食道や胃、口内が荒れてしまいます。また、薬を経口投薬しても吐いてしまうことが多いため、点滴や注射で栄養や薬を入れるしかなく、厄介なケースです。

食べるということは、食欲があるということ。問題があるとすれば食道や胃腸が考えられます。胃腸炎や胃潰瘍、胃がんなどの疑いがあるため、動物病院へ行きましょう。吐けば吐くほど体力は落ちていくため、早期の通院が大事です。

また、胃や食道など体内に異物がある場合も、フードの吐き戻しがあります。おもちゃを間違えて飲み込んだり、食べてはいけない毒虫を食べてしまったり、自分の毛玉が排泄されず体内でヘアボールとして存在していることも考えられます。高齢猫・老猫は排泄機能が落ちているため、異物を便と一緒に出すことが苦手なのです。レントゲンや触診で異物が見つかる場合もあるため、プロの獣医師に診てもらうしかないでしょう。

吐いてしまい食べないとき

まったくフードを食べず、ひたすら胃液や水を吐き続けている場合もあります。大抵はぐったりしていますが、フードを催促する素振りを見せるケースもあります。

食欲がなく吐き気があると考えらるため、体調不良もしくは異物を疑うべきでしょう。吐けば吐くほど食道や胃、口内が荒れてしまう上に体力を消耗するため、早めに受診するべきです。嘔吐物に血が混じっていれば、内臓が傷付いたか嘔吐の際の胃液で粘膜が荒れてしまったと考えられます。いずれにせよ、吐くのを止めさせなくてはなりません。

高齢猫・老猫の場合は病が見つかっても根本的な治療が難しいケースも多いです。対処療法として栄養剤やビタミン剤、吐き気止めなどを注射することとなるでしょう。異物なら開腹手術しかありませんので、まずは獣医師の診察を受けましょう。

ご飯は食べないけど水は飲む場合

ご飯を食べず水のみ摂取している場合は、体調不良が考えられます。

猫は、他の動物に比べて必要な水分量が少ない生き物です。しかし、水をガブ飲みしていたり、ご飯を食べずに水だけを飲んでいる場合には、腎臓や膵臓に疾患を抱えているケースが考えられます。他にも、多飲が症状となる糖尿病の可能性もあり、検査をする必要があります。

いずれにせよ、フードを食べないのは問題です。食べないとなれば生命維持に必要なカロリーが取れなくなり、肝リピドーシスになるか死を迎えるかのどちらかとなってしまいます。そのため、早めに受診するべきケースといえるでしょう。

食べないで痩せている・体重が減少しているとき

猫がフードを食べずに痩せてくるのは、体調不良や口内炎、老衰などが考えられます。

体調不良や口内炎によって食事を取れず、結果として体重が落ちてしまったケースなら、根本的解決は病院しかありません。食欲増進剤や鎮痛剤などで対処療法をする場合もあります。状況によっては、異物を飲み込んでいないかレントゲンや触診で診察することもあるでしょう。もし異物が紐状で腸にまで届いている場合、腸閉そくで命を落とす可能性もあるため、緊急手術となることもあります。

体調的にどこも問題がないのに食べずに痩せてきたのなら、老衰でしょう。まったく食べないなら、お別れのときはすぐそこです。心の準備をしておきましょう。少ししか食べず体重も減ってきたのなら、フードを変えたりこまめに与えることで元気を取り戻すことがあります。しかし、年齢を重ねていることに変わりありませんから、負担のない最期を今から考えておくとよいでしょう。

高齢猫・老猫が動かないし食べないとき

高齢猫・老猫が動かず食事もしないときは、体調不良もしくは老衰の可能性が高いです。

人間でも、具合が悪いときには食欲がなくじっと休んでいるものですよね。猫も同じで、体調不良の際には食欲がなく動きません。早めに病院に連れていくとよいでしょう。高齢猫・老猫は、若く見えても元々の体力がありませんから、数日で内臓がダメになってしまうケースもあります。食事を取らなくなったら40時間程度がリミットと考え、病院に連れていきましょう。

どこも悪くないのに動かず食事もしないなら、最期を迎えようとしているのかもしれません。飼い主が寄り添い、旅立ちを見送ってあげるとよいでしょう。

高齢猫・老猫が食べないけど元気なとき

食事をしないのに行動や元気はいつも通り、というケースがあります。食事の催促をしたり遊びたがったりするのに、実際にフードを出すと食べないという場合です。他の症状がなく、飼い主は首をかしげるしかありませんよね。

フードを変えても食べなかったり、食べるものの吐き出したりするようなら、やはり動物病院へ行くべきです。胃腸炎や異物によって食事を取れないのかもしれません。あまり多くはないケースですが、食欲増進剤などで様子を見ることとなるでしょう。

高齢猫・老猫が便秘もしくは下痢なっており食べないとき

胃腸など内臓に問題がある際には便に影響が出ます。そのため、便の調子が悪く食事を取らないなら、内臓に疾患があると考えられます。

最も多いのは胃炎や腸炎ですが、異物を食べてしまったケースもあります。食事の通り道や便の通り道を異物が塞いでしまい、結果食べなかったり便に異常が出ているのかもしれません。レントゲンや血液検査が必要となるため、動物病院へ行くべきでしょう。

可能なら便を持参し、飲水量を測っておきましょう。診察時、獣医師が診断を下す際の目安となります。猫は喋れず症状を語れませんから、飼い主がしっかりと状況を伝えてくださいね。

高齢猫・老猫が口内炎で食べないとき

口内炎が原因でフードを食べないときには、痛み止めや炎症止めによって状況が改善することがあります。口の中の痛みを抑えることで、食事を取れるようにするのです。しかし、この方法は根本的な解決とはなりません。

口内炎を根本的に解決するには、抜歯が基本です。自宅で抜歯することは難しいため、動物病院にお願いしましょう。すでに歯がない場合も、炎症止めや鎮痛剤を処方してもらうためには診察が必要です。

高齢猫・老猫は口内トラブルを抱えていることがほとんどで、自然を歯が抜けている猫も多いです。歯がないと固いものは食べられませんから、ドライフードではなくウェットフードに切り替えたり、もしくはドライフードをウェットフードに混ぜてふやかすなどするとよいでしょう。また、丸呑みをしても喉に詰まらないよう、フードの大きさにも気を遣う必要があります。

人間の高齢者も、固いものや大きいものではなく、柔らかく小さいものでないと食べられませんよね。猫も同じですから、飼い主が気を遣ってあげる必要があります。

高齢猫・老猫がご飯を食べないときの対処法3つ

病や怪我など体調不良でないことが分かっているのに、高齢猫・老猫が食べなくなった場合の対処法です。愛猫にあった方法を取ってあげてくださいね。

シニア猫用のキャットフードに切り替える

猫は7歳からシニア期とされ、13歳でハイシニア期、16歳で超高齢となります。人間でも、油たっぷりの高カロリー料理は高齢者には辛いものですよね。猫も同じで、サッパリしたものを好む高齢猫・老猫は多いです。高齢になれば運動量が減るため、若い頃と同じカロリー量を取る必要はありません。生命維持ができれば問題ないと割り切って、無理をさせないようにしましょう。

また、高齢猫・老猫は口内環境が悪く、自然と歯が抜けていることも多いです。飲み込む力も弱くなっているため、柔らかく小さいものを与えると食べやすく、喉を詰まらせる心配もなくなります。人間の高齢者に対するのと同じような感覚で、高齢猫・老猫の食事を考えてあげましょう。

お皿の高さを変える

猫に食事を与える際、床にお皿を直置きしている飼い主は多いですよね。猫は前かがみになってお皿から直接フードを食べますが、高齢猫・老猫にとって、その体勢は辛いものだとされています。

人間でも高齢者になれば関節痛があったり、長時間同じポーズを取るのが辛くなったりしますよね。猫も同じで、前かがみの姿勢を長時間取ることは、高齢猫・老猫の体に負担をかけてしまいます。いくら食欲があっても疲れてしまい、結果、食事を途中で切り上げてしまうのです。

そのため、お皿の位置を高くして前かがみの体勢を取る必要をなくすことで、食事をしっかり取る可能性があります。シニア猫用のお皿が販売されていますが、猫の体格には個体差があるため、愛猫にとってベストな高さになるとは限りません。飼い主が愛猫の様子を観察し、自作してあげるとよいでしょう。本を数冊重ねてその上にお皿を置くだけでも、かなり違うはずですよ。

置きエサにしてこまめに食べられるようにする

年齢を重ねるにつれ食が細くなっていくのは、人間も猫も同じです。少量をこまめに摂取するような食事形態に変えることで、高齢猫・老猫でも以前と変わらぬ1日の食事量を取ることができます。

具体的には、1日の食事量はそのままに、食事の回数を増やすのです。もしくは、置きエサにして好きなときに好きな量を食べられるようにセッティングしてあげましょう。

ただし、夏場はフードが腐ってしまうこともあるため、置きエサはお勧めできる方法ではありません。冷房設備を常時運転している部屋に置くようにしましょう。

【状況別】こんなときはどうすれば?

病院に連れて行ってもなんともなく、便や尿にも問題がなく、普段は元気という健康な高齢猫・老猫でも、食べなくなることがあります。そうした場合の対処方法をピックアップしました。

Q
高齢猫・老猫がドライフードを食べないとき
A

高齢猫・老猫が好んで食べるのは、柔らかく飲み込みやすいもの。歯を失っているならなおさらです。スープやジュレのような形状を好む高齢猫・老猫も多いです。今までドライフードを与えていたならウェットフードに切り替えたり、もしくはドライフードとウェットフードを混ぜて与えるとよいでしょう。ウェットフードを与えたくないなら、ドライフードをふやかしたり、砕いて粒を小さくするのもよいですね。

Q
高齢猫・老猫が餌を少ししか食べないとき
A

年齢が上がるにつれ、食事量が減るのは当然のことです。動き回っていた若い頃とは必要なカロリー数が異なるため、食事量も減ってくるからです。しかし、若い頃と同じように動き回っているのにフードを少ししか食べなくなったなら、少し心配ですよね。

若い頃と同じように見えても、猫の内側は年齢を重ねて確実に弱っていますから、若い頃と同じものを同じ量だけ食べる必要はありません。心配なら、まずはエサを変えてみましょう。

おすすめは、少ない量で今までと同じカロリーが取れる、高カロリーなもの。シニア猫用フードは若い猫よりカロリーが高く作られていますから、シニア用のフードを探してみましょう。

Q
高齢猫・老猫がおやつしか食べないとき
A

おやつが大好きな猫はいますが、おやつしか食べないとなると栄養面の心配が出てきますよね。こうした場合には、おやつをいったんやめてみて、猫の食欲をフードに向けさせる方法があります。荒療治ですし、飼い主には辛いかもしれませんが、愛猫のためを思うならおやつではなくフードで栄養面を支えるべきです。おやつはあくまでおやつと気持ちを切り替えましょう。

まずは、おやつとフードを混ぜて与えてみてください。このとき、おやつの味や匂いがフードに染み込むようにします。おやつがちゅーるのようなペーストタイプなら混ぜ込んだ後に軽く温めると匂いが十分に染み込みます。上手く食べてくれたら、徐々におやつの量を減らして、最終的にはほとんどフードという段階までもっていきましょう。

おやつとフードを混ぜると、フードを無視しておやつ部分のみ食べる猫もいます。結局はお腹が空いて催促をしてくることがほとんどですが、甘やかさず、残ったフードを与えるだけに留めましょう。そこで食べれば、その後もフードとおやつの混合食を与え続け、おやつの割合を減らしていくとよいです。

おやつとフードの混合食を一切食べず、おやつを催促する猫の場合は、そもそもがフードが気に入らず「絶対食べない」と思っているのかもしれません。フードを別のものにし、改めておやつと混ぜて与えてみてください。

これらの方法を試して上手くいかないなら、食欲を増すシロップなどがあるため、獣医師に相談してみましょう。

まとめ

猫が食事を取らなくなった際、飼い主は「何がダメなの?」「どこが気に入らないの?」「具合が悪いの?」と心配してしまいますよね。しかし、猫は喋れないため、猫の様子や行動から状況を推理するしかなく、飼い主としては心配で堪らない上に手詰まりとなってしまうことも多いものです。

基本的に、年齢による変化は人間も猫も同じです。人間の高齢者が好むものを高齢猫・老猫も好み、人間の高齢者が苦手なことは高齢猫・老猫も苦手です。固いものが飲み込めなかったり、食事中に辛い体勢を取り続ける体力がなくなったりします。人間の高齢者に対するのと同じような配慮をしてあげれば、高齢猫・老猫にも対処できるでしょう。

しかし、これらは健康な高齢猫・老猫の話です。食事を取らないということは命を繋げないということですから、動物病院でプロの獣医師による診察を受けるべきケースも多く存在します。何か重大な病気でも早期発見で健康を取り戻し寿命が延びるケースも多いですから、後悔のないようしてくださいね。

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