犬がペロペロと顔を舐めてくることは珍しくありません。
しかし、あまりにもしつこいと「いい加減にして欲しい」と感じてしまう人もいるのではないでしょうか?そこで本記事では、犬が顔をしつこく舐める理由と舐めるのを辞めさせる効果的な対処法を教えます。
他にも、犬に舐められることで生じる危険性についても触れているのでぜひ参考にしてください。
犬が顔をしつこく舐める理由とは?
犬の行動には必ず意味があります。しつこく顔を舐めてくるのは以下の6つの理由が考えられるでしょう。
- お腹が減っている
- 愛情表現をしている
- 服従心や敬意を示している
- ストレスを感じている
- 美味しい味がする
- 遊んで欲しい
それでは、詳しく解説します。
①お腹が減っている
顔の中でも、口元を中心に舐めてくる場合には「お腹が空いたよ」とアピールしていると考えられます。
犬の祖先である狼は、お腹が空くと母親の口を舐めて餌を要求していたため、その名残りから犬も同様の行動を本能的にしているのでしょう。飼い主を自分の母親だと認識しているのかもしれません。
②愛情表現をしている
犬が顔をしつこく舐めてくる場合は、飼い主に対して「好きだよ」といった愛情を示していると考えられます。
人間も恋人など特定の好意を持っている相手に対しては、手を繋いだりハグをしたりスキンシップで愛情表現をしますよね。それと同じで、犬は舐めるという行動で自分の気持ちを表現しているのです。
飼い主が嬉しそうな反応をすれば、犬は顔を舐めることは良いことなんだと認識するためしつこく舐めてしまうのでしょうね。
③服従心や敬意を示している
犬の祖先であるオオカミは「服従心や相手への敬意」を示すときに相手の顔を舐める習性があったと言われています。相手の顔を舐めることで、相手への敵意がないことを表しているのでしょうね。この習性が家庭犬として飼われるようになった犬にも名残としてあると考えられています。
犬は学習能力、適応能力がとても高い動物です。自分が存在する群れ(コミュニティ)の日々の生活の中で自分の立ち位置を学び、適応していきます。飼い主との関係が良好であれば、信頼関係は深くなり服従心や尊敬の念を抱きやすくなるでしょう。
④ストレスを感じている
犬が顔をしつこく舐める場合、環境や飼い主との関係などにストレスを感じている可能性があります。
犬は舐めるという行動をすることで不安な気持ちや恐怖心を落ち着かせようとします。例えば、飼い主から怒られている時には「もう怒らないでよー」という気持ちから舐めたり、家族が喧嘩をしている時には「落ち着いて!喧嘩はやめて」となだめるために舐めたり、犬なりに現状を変えようと必死になっているのです。
⑤美味しい味がする
飼い主がご飯を食べたあとやおやつを食べたあとの口周りの匂いや味に反応して舐めている可能性も考えられます。
犬は基本的に人間の食べ物や濃い味の食べ物が大好きな動物です。鼻の良い犬にとっては、美味しい匂いがすれば舐めたくなるのは当然でしょう。
⑥遊んで欲しい
顔を舐めてくるのがしつこい場合には、飼い主に対して「遊んでよ」というアピールをするために舐めている可能性も考えられるでしょう。
舐めることで自分にどうにか注目させようとしているのでしょうね。飼い主と遊ぶことが大好きでしかたない気持ちが抑えられないのかもしれません。
犬が顔をしつこく舐めるのをやめさせる効果的な方法
犬が顔を舐めてくるのをやめさせたい場合には、以下の6つの対処法を試してみてください。
- 毅然とした態度でNoの意思表示をする
- 環境を見直してみる
- コミュニケーションを取る
- おやつで気をそらす
- 顔を清潔にしておく
- 専門家や獣医に相談する
それでは、詳しく解説していきます。
①毅然とした態度でNoの意思表示をする
犬に良いことと悪いことを教えるときには、毅然とした態度を取ることが基本になります。好ましくない行動についてはなぁなぁにせずしっかり教えましょう。
また、家族が複数人いる場合には全員が一貫した態度をとることが大切です。家族の誰か一人でも矛盾した態度をとると、犬は何が正解なのかがわからず混乱してしまいます。結果的に、やめさせたい行動を制止することができなくなるので注意しましょう。
NOの意思表示には態度と言葉を利用します。例えば、態度では一貫して拒否の姿勢を貫きます。愛犬が顔を舐めてきたときは、その行動を許すことなく受け入れないようにしましょう。言葉では一般的には「NO」や「ダメ」、「イケナイ」などの短い単語を使うことがおすすめです。
飼い主のなかにはダラダラと説教する人がいますが、人間と違って犬はその全てを理解することはできません。簡潔にわかりやすい言葉を使いましょう。
②環境を見直してみる
ストレスが原因で犬が舐めていると考えられるのであれば、環境を見直すことも必要です。
特に、次のように大きく環境が変わった場合にはより注意してあげましょう。
- 引っ越しをした
- 家族が減った又は増えた
- 多頭飼いを始めた
- 留守がちになった
- 犬自身が入退院を繰り返している
犬は環境の変化に適応はするものの、最初はストレスが大きくのしかかります。顔を舐める以外にも、下痢や嘔吐などの体調変化がないかどうかも確認してください。
また、上記のような大きな環境の変化だけではなく、餌のお皿の位置を変えたり、寝床の場所を変えたりしたなどの些細な変化でもストレスを感じる可能性はあるので覚えておきましょう。
③コミュニケーションを取る
犬は飼い主とのコミュニケーションを大切にする動物です。コミュニケーションを取らなくてもお世話さえすれば生きてはいけますが、コミュニケーション不足はストレスを溜める原因になり問題行動に繋がる危険性があります。
そのため、少しでも犬と心を通わせる時間をとることをおすすめします。忙しくて時間が取れないという場合には、少しの時間でも構いません。犬とボール遊びをしたり引っ張りっこをしたりしながら犬のストレスを発散させてあげましょう。
トレーニングが好きな犬であれば、トレーニングをコミュニケーションの時間のひとつとして活用するのもおすすめ。コミュニケーションが取れると情緒が安定し顔を舐める頻度が段々と少なくなっていくことが期待できます。
④おやつで気をそらす
愛犬が好きなおやつがある場合や、食に対して執着心の強いタイプであれば、顔を舐められたときにおやつを出して気をそらしてあげるのも良いでしょう。
多くの犬は、おやつを見せることでおやつの方に意識が向いて顔を舐めることはやめるはずです。しかし、おやつで気をそらす場合には注意しなければいけない点もあります。
- 顔を舐めればおやつがもらえると学習してしまう危険性がある
- カロリーオーバーになる危険性がある
おやつで気をそらす方法は根本的な解決ではなく、一時的な効果しか期待できない可能性が高いことは肝に銘じておきましょう。
犬をしつけるときには、良い行動=ご褒美を悪い行動=罰という形で条件付けをおこなっていきます。そのため、「顔を舐める=ご褒美=良い行動」といった学習をしてしまうことで、顔を舐める行動をやめさせるどころか舐める行為をエスカレートさせてしまう危険性があります。
ほかにも、普段のご飯の量に加えて顔を舐めるたびにおやつをあげていることで、カロリーオーバーになり肥満になってしまう危険性もあります。肥満は様々なトラブルを引き起こす可能性があるため注意が必要です。体重増加によって足腰に負担がかかったり、体に脂肪がつくことで内蔵に負担がかかったりするリスクがあります。おやつを使うのであれば、カロリーオーバーにならないように配慮してあげましょう。
⑤顔を清潔にしておく
食事やおやつを食べたあとは、口周りを清潔にすることも大切です。
犬の多くは食べ物に対しての執着が強いため、飼い主の口周りに美味しい匂いがしていれば舐めたくなるのは自然なことです。
また、犬の嗅覚は人間の10,000倍と言われています。そのため、自分では清潔にしているつもりでも犬のするどい嗅覚には全く無意味といったことも…。ほかにも、汗や涙の跡を舐めることも多いので常に顔は清潔にしておくことは有効といえるでしょう。
⑥専門家に相談する
色んな方法を試しても顔を舐めてくるのをやめない場合や、飼い主自身犬の行動に不安があったり対処法がわからない場合には、ドッグトレーナーなどの専門家に相談するのもひとつの手です。
ドッグトレーナーに相談するメリットは、顔を舐めるという問題行動をトレーニングするうちに飼い主との関係性も良くなることが多いことです。犬への関わり方を教えてくれるので、犬との生活がとても充実するようになるでしょう。
知らないと危ない?犬に顔を舐められる危険性
犬に顔を舐められるのをなんとなく許してしまっている飼い主は多いですが、その行動には思わぬ危険性も潜んでいます。
- 感染症にかかる可能性
- 主従関係が崩れる
- 誰にでも構わず舐める癖がつく
- 肌荒れの原因にもなる
- 犬が体調不良になる可能性がある
それでは、上記の5つの危険性について詳しく解説します。
①感染症にかかる可能性
犬の口の中には、「人獣共通感染症」を引き起こす原因となる常在菌が潜んでいます。
代表的な感染症として「カプノサイトファーガ感染症」や「パスツレラ症」があります。健康な人であればそれほど恐れる必要はありませんが、特に抵抗力の弱い高齢者や乳幼児、内科的な持病を持っている人は注意が必要です。どちらもほとんどの犬の口腔内に存在しているといわれる病原菌なので、十分なデンタルケアをしているからといって油断はできません。稀ではありますが、重症化し死亡した例も…。
また、発症したら致死率はほぼ100%といった大変恐ろしい感染症である「狂犬病」も唾液から感染します。現在の日本では徹底した管理が行き届いたことで狂犬病自体は発生してはいません。なので、一般的には日本で飼育されている犬であれば狂犬病に感染することはほぼないと言えるのでそこまで心配することはありません。ただ、愛犬が飼い主だけでなく家族以外の人に対しても舐める癖がついてしまった場合は、いくら感染症を引き起こすリスクは低いとわかっていても心理的に「病気にならないかな?」と不安になる人もいるかもしれないので、より注意しましょう。
②主従関係が崩れる
犬の思い通りにしつこく顔を舐めることを許してしまうと、飼い主との主従関係が崩れてしまう危険性があります。
犬の要求を受け入れ続けることで、犬は飼い主よりも地位が上だと勘違いしてしまうことも。
昨今、主従関係説に関しては疑問視する声も多く「犬は家族に対しては順位付けはしない」という見解を示す専門家も多くなりましたが、犬は群れで生活する動物であり、群れのなかには必ずリーダーが存在することは言うまでもありません。
もちろん、群れのなかで細かい順位付けが行われているかどうかは確実なことは言えませんが、リーダーという「自分が従う相手」は決めていると考えられます。リーダーが不在になると自分がリーダーになろうとすることから、飼い主の言うことを聞かなくなったり問題行動に繋がりやすくなってしまいます。
③誰にでも構わず舐める癖がつく
顔を舐めるのをやめさせないと、飼い主だけではなく家族以外の人に対しても同じ行動をとる可能性があります。
世の中犬が好きな人ばかりではありませんし、例え犬が好きでも舐められるのは衛生的に嫌という人もいます。犬の癖づいた行動によって人間関係に思わぬトラブルが起こることも考えられるため、特に家族以外の人に対しての行動には注意しなくてはなりません。
④肌荒れの原因にもなる
敏感肌などの体質の人であれば、犬に舐められることで肌荒れの原因にもなりかねます。湿疹ができたりかぶれてしまったりすることも。
特に、犬に対するアレルギーを持っている人は警戒が必要です。犬の唾液にもアレルゲンとなる物質が含まれていると言われているため、舐められた場所が必ず赤くなるなどの変化が起こる人は注意しましょう。
乳幼児がいる家庭では、子供と犬の接触は気をつけてみてあげてくださいね。
⑤犬が体調不良になる可能性がある
飼い主が化粧水や乳液、ファンデーションなどを使っている場合には、犬がそれらの成分を舐めてしまうことで体調不良になってしまう危険性もあります。
ほとんどの化粧品は少し舐めた程度ではそれほど心配することはありませんが、アルコールやエッセンシャルオイルが含まれている化粧品に関しては注意しましょう。下痢や嘔吐などが見られたらかかりつけの病院に相談し、必要であれば速やかに受診してください。
まとめ
今回は、犬が顔をしつこく舐めてくる理由と辞めさせる効果的な対処法について詳しく解説しました。
愛おしそうに顔を舐めてくる愛犬の姿は可愛いものがありますが、危険性も潜んでいるので可能であればやめさせたほうが良いでしょう。
飼い主の関わり方ひとつで犬の行動にも変化は必ず見えてきます。まずは何が原因なのかを探り、適切な対処をしていきましょう!
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