なぜ、鎌八幡宮は怖いというイメージがあるのでしょうか?
パワースポットでもある、鎌八幡宮の謎と効果に迫ってみましょう。
鎌八幡宮とは
鎌八幡宮(丹生酒殿神社)は、和歌山県にあるパワースポット高野山の麓にあります。紀の川のほとりに位置する「丹生酒殿神社」に合祀された摂社となります。丹生酒殿神社は、三谷坂(高野山詣道の一つ)の起点でもあります。実は、鎌八幡宮(丹生酒殿神社)は世界遺産「紀井山地の霊場と参詣道」の資産にも登録されています。
丹生酒殿神社付近に丹生都比売神社惣神主が住んでいたため、三谷坂が丹生都比売神社へ通うための道になっていたとされています。丹生都比売神社は山の中腹にあり、丹生酒殿神社は山の麓にあります。丹生都比売神社は中宮、丹生酒殿神社は里宮になるようです。記録では、丹生都比売神社の惣神主が丹生酒殿神社で祭事を行っていたとされています。丹生酒殿神社は、重要な位置付けであった事がわかります。
丹生酒殿神社の境内には、樹齢800年と言われるとても大きな銀杏の木があります。かつらぎ町の天然記念物にもなっていて、11月半ば~12月始め頃には美しくライトアップされることもあるようです。大銀杏は御神木ではありませんが、不思議なパワーを宿しているような大樹です。
また、丹生酒殿神社の境内には麻酔薬の「通仙散」を開発して、世界で始めて全身麻酔の手術に成功をした華岡青洲が寄進したと言われる石灯籠があります。石灯籠には「施主華岡随賢」と記されいるようですが、華岡青洲のハンドルネームとされています。
丹生酒殿神社の本殿の裏手に、鎌八幡宮があります。鎌八幡宮には社殿がない代わりに、鎌八幡宮のシンボルでもある、とても大きなイチガイシの御神木があります。霊気が宿る御神木とされていて、迫力のある御神木が鎌八幡宮を表すパワーの源でもあるかもしれません。その御神木の放つ霊木の強さが怖いといわれる由縁の一つになるかもしれません。
鎌八幡宮の歴史
丹生酒殿神社は、伊勢神宮の天照大神の妹神である丹生都比売大神が降り立った地といわれています。正確には境内裏手にある榊山の七尋滝へ、榊を手にして降臨したと言われています。丹生都比売大神の御子神である高野御子大神や一族と共に降臨して、大和・紀伊を巡幸され、人々に農耕技術、煮炊き、糸紡ぎ、機を織る事など衣食に関わる道を伝授したとされています。また、丹生都比売大神が紀の川の水を使って酒を醸した事が「丹生酒殿神社」の名前の由来と言われています。
もう一つの「丹生酒殿神社」の名前の由来は、榊山の地主神の竈門明神が、最初に神前に酒を供えた事といわれています。
鎌八幡宮(丹生酒殿神社)のルーツは、香川県仲多度郡多度津町(旧:讃岐国多度郡屏風浦)の熊手八幡宮にあります。弘法大師(空海)が高野山を開山した際に、熊手八幡宮のご神体が弘法大師(空海)追ってきたと言われています。そして神仏分離の際に、和山県伊都郡かつらぎ町大字兄井(旧:兄井村)へ遷座され、鎌八幡宮と合祀されました(兄井村のとなりにあった諏訪明神社も合祀されました)。
その後、明治42年に丹生酒殿神社に合祀されて摂社となります。昭和10年丹生都比売神社の摂社となりますが、戦後には独立して現在の鎌八幡宮に至ります。
鎌八幡宮は怖い?呪いがある?
「鎌八幡宮(丹生酒殿神社)は怖い」というイメージがあるのは何故でしょう。実は、鎌八幡宮の大きな御神木のイチガイシには、沢山の数の鎌が一面に刺さっています。おびただしい数の鎌が打ち込まれた迫力のあるその光景から怖いというイメージを持つのかもしれません。
しかし実際は、祈願の為に御神木のイチガイシに鎌を打ち込む習慣があります。祈願をする行為は人に見られてはいけないと言われていた為、昔は夜間に祈願をすることもあり、呪いを彷彿とさせたのかもしれません。真実は呪いではなく、願望成就にまつわる祈願の行為でした。
人々の願いを叶えたいという念を感じるような光景と独特の空気感が、「鎌八幡宮(丹生酒殿神社)は怖い」というイメージを彷彿とさせるのかもしれません。
しかし、鎌八幡宮(丹生酒殿神社)は怖い場所ではなく、願望成就の祈願ができるパワーがみなぎるパワースポットなのです。
大阪・和歌山・香川の鎌八幡宮の違い
鎌八幡宮があるのは和歌山県だけではありません。それぞれの地域にある鎌八幡宮の詳細に触れてみましょう。
〈大阪〉
大阪市天王寺区にも、鎌八幡宮(円珠庵)があり、榎が御神木となっています。三韓坂にある榎は昔から信仰を集めていました。そして真田幸村が大阪冬の陣に出陣の際、この榎を「鎌八幡第菩薩」として鎌を打ち付け勝利の祈願をした後に、大勝利をあげたことが由縁になっています。江戸時代の初期に、高僧契沖阿闍梨が境内に住み円数庵と名付けました。
大阪の鎌八幡宮(円数庵)は悪縁を絶ちきる、縁切りで有名な場所です。ご利益は縁切り、病気の根絶、厄祓い、合格祈願、心眼成就です。
和歌山の鎌八幡宮と同じ様に、御神木に鎌を打ち付けて祈願をしますが、自分で打ち付けるのではなく住職に打ち付けてもらい祈祷をしてもらいます。御神木や鎌に触ってはいけない、境内の撮影をしてはいけない・・・など禁止事項は多いですが、ご利益は大変期待できそうです。
〈和歌山〉
「三谷荘兄居村鎌八幡宮」では、ご神体は神功皇后が三韓出兵した際に使用した熊手と幡になっています。香川県仲多度郡多度津町(旧:讃岐国多度郡屏風浦)の佐伯八幡に祀られていました。弘法大師(空海)が高野山を開山した際についてきた為、現在の御神木であるイチガイシの大木を憑り代としたようです。熊手と幡は高野山に祀られていましたが、神仏分離の際に和歌山県伊都郡かつらぎ町大字兄井(旧:兄井村)へ遷され、鎌八幡宮と称し祀られていました。
明治42年に丹生酒殿神社に合祀されました。和歌山の鎌八幡宮も大阪の鎌八幡宮と同じように御神木に鎌を打ち込むことで祈願をしますが、和歌山の鎌八幡宮では自分で鎌を打ち込む事ができました。平成29年より御神木を保護する為、絵馬を奉納する方法に変わったので、現在は鎌は打ち込めません。
〈香川〉
香川県の鎌八幡宮は「熊手八幡宮」とも言われています。前述した、神功皇后が三韓出兵した際に使用した熊手と旗竿がご神体として祀られました。また、熊手八幡宮には弘法大師(空海)の母である玉依御前が安産祈願のために参拝されたという話です。熊手八幡宮は弘法大師(空海)の産土神社とも言われています。
弘法大師(空海)は、生前に「八幡大菩薩」と対面されたと言われています。お互いの姿を写し合い、八幡神は「あなたと私は元同一体であり上人の居るところでは、必ず影と形のごとく追い賄うつもりである。」と仰ったようです。
弘法大師(空海)が高野山の奥の院に入定した時には、八幡大菩薩はご神体の熊手と旗竿を白竜の姿に変えて高野山へ飛ばしたと伝わっています。
鎌八幡宮のお守り
出典:kamahachiman.sakura.ne.jp鎌八幡宮(丹生酒殿神社)には、お守りは置いていませんが、絵馬は初穂料500円となっています。鎌の代わりに、絵馬の裏面に祈願の内容を記入をします。絵馬は独特な形をしていて、鎌の刃先のような形をしています。そして、御神木のイチガイシの大木の前に絵馬を奉納できるようになっています。奉納した絵馬は一年後にお焚きあげをしてもらえます。
鎌八幡宮の御朱印鎌八幡宮
鎌八幡宮では、御朱印は書き置きされています。設置されている木箱に初穂料300円を納めて頂きます。鎌八幡宮オリジナルの御朱印帳はないようです。
鎌八幡宮の効果・ご利益
鎌八幡宮(丹生酒殿神社)には、様々なご利益があると言われており、 願望についてはポジティブな祈願をするように・・・となっています。
- 五穀豊穣
- 家内安全
- 無病息災
- 就職
- 病気平癒
- 厄祓い
- 交通安全
- 子宝
- 縁結び
- 安産
- 学業成就
平成29年に御神木保護のため、鎌を打ち込んでの祈願から絵馬を奉納する方法にかわるまでは、御神木に鎌を打ち込んで祈願をしていました。「紀伊続風土記」には「祈願の者、鎌を櫟樹に討ち入れ是を神に献すといふ。祈願成就すべきは其鎌樹に入ること次第に深く叶はさる者は落つといふ」と書かれています。鎌が深く刺さるほど、願いは叶いやすく、鎌が抜け落ちる願いは叶わないと言われていました。
現在は前述したように、絵馬に願い事を書いて奉納する方法にかわっています。
パワースポットとしての鎌八幡宮
鎌八幡宮は不思議な雰囲気もあわせ持ち、ご利益のあるパワースポットでもあります。
小社・・・諏訪明神、八王子神
右座・・・丹生都比売大神(丹生明神)
中座・・・高野御子大神
左座・・・誉田別大神
が祀られています。
伊勢神宮の天照大神の妹神「丹生都比売大神」が祀られている事で、パワーの強さを感じますね。丹生都比売大神の姉神である、天照大神は日本を作ったといわれる神「イザナギ」の左目から生まれたと言われています。
天照大神の父親がイザナギ、母親がイザナミになります。イザナギとイザナミは「アメノヌボコ」と呼ばれる矛を使って世界を創造していきました。多くの島々と森羅万象の様々な神々を産み出しました。
しかし、イザナミは火の神カグツチを産み出した時に火傷を負い亡くなってしまいます。イザナギは怒り、カツグチの命を奪ってしまいます。
悲しみに暮れたイザナギは、イザナミに会いに黄泉の国へ向かいました。黄泉の国の扉の前でイザナミに「帰ってきてくれませんか」と話しかけました。扉の奥から「黄泉の国の神に頼みます。中を決して覗かずにお待ち下さい」とイザナミから返事がありました。
しかし、なかなか出てこないイザナミにしびれをきらしたイザナギは扉を開けて、櫛の歯に灯りを点してしまいます。
姿を現したイザナミは醜い姿に変わっていました。驚いたイザナギは逃げてしまいますが、怒ったイザナミが黄泉の国の者達と一緒に追ってきます。何とか黄泉の国と地上の境界線(黄泉比良坂)にたどり着いたイザナギは、その場所に生えていた桃の木から実を取り、追っ手に投げつけました。すると桃の魔除け効果により、黄泉の国の者とイザナミは逃げていったのです。イザナギは急いで黄泉の国への入り口に大きな岩を置き塞いでしまいました。
大きな岩の向こう、洞窟から悲しみと怒りでイザナミが叫びます。「愛するあなた(イザナギ)、あなたの国の人々を毎日1000人殺すことにします」そしてイザナギは「愛する人、それならば私の国で1500人の子供を誕生させよう」と答えました。現在の人の世の生死です。
その後、イザナミとイザナギは離縁をして、イザナミは黄泉の主宰神「黄泉津大神」となりました。地上に戻ったイザナギが身を清め、左目を洗った時に生まれたのが天照大神と言われています。
丹生都比売大神は天照大神の妹神にあたり、水銀、水の神と言われています。前述したように紀の川の水で酒を醸たり、子供である高野御子大神と共に、大和・紀伊を巡幸して人々に農耕、糸紡ぎなど衣食に関わることを伝授されました。
誉田別大神は、第15代天皇である応神天皇を祀られたものとされています。八幡神とも言われています。誉田別大神の母が神功皇后になります。前述したように、神功皇后が三韓征伐の際に使用された熊手と旗竿が、香川県の熊手八幡宮にご神体として祀られました。
天田からの神様が祀られている鎌八幡宮(丹生酒殿神社)は、怖いというイメージだけではなく、本来は大変歴史のあるパワースポットになります。
鎌八幡宮の住所・アクセス
■住所 和歌山県伊都郡かつらぎ町三谷631
■アクセス
- JR妙寺駅(JR和歌山線)から徒歩26分、車で約5分
- JR中飯降駅(JR和歌山線)から徒歩約50分、車で約10分
- JR大谷駅(JR和歌山線)から徒歩1時間13分、車で13分
鎌八幡宮の駐車場・近くの駐車場・パーキング
丹生酒殿神社の駐車場があります。
まとめ
御神木に鎌を打ち込んで祈願をしていた鎌八幡宮(丹生酒殿神社)は怖い、呪い?というイメージがある人もいるかもしれません。しかし、実際の鎌八幡宮(丹生酒殿神社)は呪いなどはなく歴史があり、ご利益も多いと言われる パワースポットです。秋に綺麗に色づく丹生酒殿神社の大銀杏も一見の価値があるでしょう。鎌八幡宮に足を踏み入れたら、神秘的な空気感を感じることができるかもしれません。
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