脳機能や心疾患、生活習慣病予防などへの効果があるといわれる「DAH(ドコサヘキサエン酸)」と「EPA(エイコサペンタエン酸)」。これらを合わせて「オメガ3脂肪酸」ともいいます。
青魚に多く含まれる成分で、1日の摂取目標量に達するには、青魚を食べたり、サプリメントを摂取したりする必要があります(※1)。
さまざまな効果が期待されるDHAとEPAですが、実際のところサプリに効果はあるのでしょうか?
(※1)出典:PR TIMES「「DHA・EPA」の存在は知っているけど…”勘違い”が広まっている!?~ 「鶏肉や納豆などでも十分に摂取できる」「摂取してから即効性がある」と勘違い? ~DHA・EPAの認知度に関する調査 第1弾」
DHA&EPAサプリは効果なしという主張や研究まとめ
上述した通り、DHA&EPAには脳機能や心疾患、生活習慣病予防などへの効果があるといわれていますが、一部で「サプリには効果がない」という声もあります。
なぜ、そのようにいわれているのでしょうか?
「DHA&EPAサプリには効果がない」という主張をご紹介します。
即効性があるわけではない
「DHA・EPAの認知度に関する調査」によると、DHAとEPAを家族に摂取させたいシーンは、「コレステロールが気になり始めたとき」「太ってきたと感じたとき」「子どもの視力の低下が気になり始めたとき」「試験やプレゼンなど大切な日の前」が多かったそうです。
「試験やプレゼンなど大切な日の前」という回答の多さから、DHAとEPAの効果に即効性を期待している人が多いと考えられています。
しかし、DHAとEPAは、即効性があるものではなく、継続的に摂取をすることで効果を発揮します(※1)。
飲んでも飲まなくても、変化がない場合も
即効性はないものの、継続すると効果があるといわれるDHAとEPA。
しかし、米国のある研究者が、比較・分析をした論文によると、DHAやEPAが配合されたサプリメントを飲んで飲まなくても、健康状態に変化がないという実験結果があるそうです(※2)。
実験は以下のように行われました。
いずれもボランティアを公平に2群に分け、一方にEPAやDHAが配合されたサプリメントを飲んでもらい、他方は飲まないという約束をした上で、1年以上追跡を行ったという内容でした。
※引用:東洋経済 ONLINE「サプリ過剰摂取は「死亡率」を引き上げていた 青魚の栄養素もサプリだと、ほぼ効果なし」
その結果、10の調査のうち9つまでが、両群にまったく差がなかったと報じたものだったそうです。
1年以上の継続でも、9/10の調査結果が健康状態に変化がなかったというのは、驚きですよね。
(※2)出典:東洋経済 ONLINE「サプリ過剰摂取は「死亡率」を引き上げていた 青魚の栄養素もサプリだと、ほぼ効果なし」
大量摂取により、死亡率が少し上がるケースも
健康に良いといわれるDHAとEPAですが、外国の医学専門誌で発表された論文によると、EPAを医薬品として大量摂取することで、死亡率が少し上がることが分かったそうです。
その薬を服用した人たち(平均年齢61歳)を平均して4.6年間ほど追跡したところ、なんらかの原因で死亡した人の割合が3.1%でしたが、年齢、生活習慣、検査値などが同じで薬を飲まなかった人たちの死亡率2.8%に比べ、高い傾向が認められたのです。
※引用:東洋経済 ONLINE「サプリ過剰摂取は「死亡率」を引き上げていた 青魚の栄養素もサプリだと、ほぼ効果なし」
この論文では、死亡原因についての分析はなかったものの、脳出血などの副作用がわずかに増加したと報告されたとのことです。それゆえに、EPAが死亡率を上げる要因の1つだと考えられています。
EPAとDHAが体に良い栄養素であることは事実だといえますが、特定の成分を大量摂取することは死亡率を高めてしまいます(※2)。
体に良いからといって過剰摂取せず、適量を摂取するようにしましょう。
サプリの摂取による効果が見られる確率は1000分の1!?
医療研究を評価する国際組織「コクラン」は、「DHAやEPA(オメガ3脂肪酸)のサプリメントに心臓病を予防する効果があるという根拠は疑わしい」と評価しています。
コクランによると、10万人以上を対象とした臨床試験の結果、サプリメントによる効果は根拠に乏しいことが分かったそうです。
DHAやEPAのサプリメントを摂取することから有意な効果が見られる確率は、1000分の1だといいます。
そのため、サプリメントではなく、脂の多い魚を食生活に取り入れることを推奨しているとのことです(※3)。
「この大規模で組織的な研究には、何千もの人々の長期間にわたる情報が含まれる。これらの情報をもってしても、(心臓を)保護する効果は確認できなかった」
※引用:BCC NEWS JAPAN「オメガ3サプリは「心臓病予防にならない」=国際研究」
「今回の研究は、(魚油やEPA、DHAといった)長鎖オメガ3サプリメントの摂取が心臓の健康に役立ったり、脳卒中やあらゆる原因による死のリスクを低下させたりする効果はないと示す、良い証拠になった」
この評価では、DHAやEPA自体の効果が否定されたわけではありません。あくまで、サプリメントの摂取による効果が見られなかったということです。
サプリメントは、製品によって成分の純度が異なっていたり、製造過程で成分が酸化することで有効性が失われたりするため、もともと成分が持つ効果が十分に発揮されないことがあると考えられています(※4)。
(※3)出典:BCC NEWS JAPAN「オメガ3サプリは「心臓病予防にならない」=国際研究」
(※4)出典:Kodansha Bluebacks「DHAやEPA、サプリメント摂取では効果見られず? 英大規模研究」
DHA&EPAサプリは効果があるという主張や研究まとめ
ここまで、「DHA&EPAサプリは効果がない」という主張や研究結果をご紹介しました。
しかし、多くの研究では、あくまでサプリの効果が疑われているだけであり、DHAとEPAの成分自体には効果があるといわれていることがわかりました。
ここからは、DHA&EPAの効果に関する主張を見ていきましょう。
病気を予防する効果がある
オメガ3脂肪酸の中でも、特にEPAは、魚やアザラシなどを食べるイヌイットが、心臓の疾患の発症が少ないことから注目された成分です。
EPAには体内の悪玉コレステロールや中性脂肪の低下、血流を良くすることによる血液凝固(血栓)などの働きがあります。この効果により脳卒中や心筋梗塞になりにくくし、さらに悪玉コレステロールや中性脂肪を減らすことで高脂血症・動脈硬化も防いでくれます。
EPA(エイコサペンタエン酸)|薬局だより|総合南東北病院 広報誌南東北 (minamitohoku.or.jp)
まずは3カ月間、継続してみる
DHAやEPAのサプリメントは、どのくらい継続して飲むのが良いのでしょうか?
まずは、3カ月を目安に継続してみるのが良いといわれています。
サプリメントは医療的な治療ではなく、あくまで健康維持や栄養補給のサポート役です。
飲み始めてからすぐに効果が得られることは少ないため、数カ月継続して様子を見てみましょう。
薬を飲んでいる方や治療中の疾患がある方は、医師や薬剤師に飲み合わせについて相談することをおすすめします。
DHAやEPAは血栓ができにくくなる作用や、血圧やコレステロールを下げる作用があります。そのため、血液をサラサラにする薬、降圧薬、脂質異常改善薬などとの飲み合わせには気をつける必要があると考えられています(※6)。
(※6)出典:サントリーウエルネス Online「DHA・EPAのサプリメントは寝る前に飲んでも大丈夫? 摂取目安量についても解説」
朝に摂取すると、より効果的?というマウスの実験
「DHAやEPAを摂取したいけど、いつ摂取するのがいいの?」と思っている方もいるのではないでしょうか。
実際に、摂取する時間帯によって効果の違いはあるのか、見ていきましょう。
産業技術総合研究所バイオメディカル研究部門生物時計研究グループの大石勝隆研究グループ長と、マルハニチロの共同研究によると、朝食の時間帯に摂取したグループの血液と肝臓の中性脂肪の量が低減していたそうです。
さらに、血液中のDHAとEPAの濃度を測定すると、朝食時に摂取したグループの血中濃度は、夕食時の摂取したグループよりも増加していることが分かりました。
研究チームは、マウスを明期12時間・暗期12時間の環境下で飼育し、魚油の摂取時刻による機能性の違いを調べた。
※引用:保健指導リソースガイド「魚のDHAやEPAは朝に摂ると良い 「時間栄養学」が脂質代謝にも影響」
マウスを、(1)魚油を含まない果糖過剰食を与えた「コントロール群」と、(2)朝食に相当する時間帯に12時間だけ4%の魚油を含む果糖過剰食を与え、残りの12時間は果糖過剰食のみを与えた「朝摂取群」、(3)夕食に相当する時間帯に12時間だけ4%の魚油を含む果糖過剰食を与え、残りの12時間は果糖過剰食を与えた「夕摂取群」の3群に分け、2週間の自由摂食の飼育を行った。
この研究から、朝に摂取はすることで、DHAやEPAの血中濃度が高まり、脂質代謝を改善することが分かったといえます。
今後、時間帯によってDHAやEPAなどの機能性成分の吸収や中性脂肪の低減効果が変化するメカニズムなどを明らかにする研究を目指しているそうです(※7)。
(※7)出典:保健指導リソースガイド「魚のDHAやEPAは朝に摂ると良い 「時間栄養学」が脂質代謝にも影響」
認知機能維持の効果が期待できる
DHAやEPAには、病気を予防する効果だけでなく、認知機能を維持する効果も期待されています。
おさかな天国という歌で「魚を食べると頭が良くなる」というフレーズも有名ですよね。
具体的には、「脳神経の再生」「神経の保護」「情報伝達の潤滑油」「脳細胞の活性化」などです。
赤血球中のヘモグロビンは、脳内に酸素を運ぶ役割を担っています。このヘモグロビンの量は、EPA・DHA濃度が上昇することで増加するといわれています。それゆえに、EPAとDHAの摂取により、脳細胞が活性化するそうです。
また、まだ発症の仕組みが解明されていない「アルツハイマー型認知症」ですが、患者の脳には「アミロイド蛋白質β」と「タウタンパク質」が蓄積していることが明らかになっています。
EPAとDHAには、アミロイド蛋白質βが大脳皮質へ沈着することを減少させる神経保護作用があるといわれています(※8)。
(※8)出典:NISSUI「記憶力を維持する!EPA・DHA効果とは?」
美容効果もある
DHAとEPAは病気の予防や認知機能の維持に効果があると期待されていることで有名ですが、実は美容にも効果があるといわれています。
具体的には、「血行促進」「くすみ解消」「ニキビ予防」などです。
これは、血管を拡張し、血流を良くすることで血栓を防ぎ、美肌に導く毛細血管を増やす効果や、血液の循環を促す効果があるためです。また、DHAには、炎症を抑える効果もあります。
さらに、中性脂肪を減らす働きのあるDHAとEPAは、内臓脂肪がつきにくくする作用もあるといわれているため、ダイエットにも効果があるといわれています。
体に良い働きをする、オメガ3系の良質な油を摂取するようにしましょう(※9)。
(※9)美的.com「DHAやEPAの効果|ダイエット中やニキビ肌の人必見!おすすめサプリもご紹介」
まとめ
DHA&EPAサプリの効果についてご紹介しました。
「サプリには効果がない」という主張も多く見られましたが、DHAとEPAの成分自体には効果があるといわれていることが分かりました。
魚料理など、食事で摂取することが理想的ですが、生活が忙しい場合はサプリで補うのも1つの方法です。
その場合、サプリの効果だけに期待するのではなく、あくまで健康をサポートしてくれるものだという認識で使用するのが良いでしょう。
また、摂取量や他の薬との飲み合わせには注意する必要があります。
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