身近に知られている偉大な発明や商品はもともとそれ自体を目的として開発されたとは限りません。違う研究をしていたのが失敗や研究の途中で別の発見をしたことが思いもよらない成功につながることがあります。
単に待つだけの姿勢では見過ごしてしまう偶然を幸運な発見に結び付けるのがセレンディピティと呼ばれる能力です。近年、セレンディピティは科学者にも注目されており、どのようにすれば、セレンディピティを引き起こせるかなどの研究が進められています。
セレンディピティはビジネスでのイノベーションにつながるだけでなく、個人の人生にも大きな影響を与える可能性があります。この記事では、セレンディピティがどのようなものなのか、活用方法やスピリチュアルな意味についても紹介していきます。
セレンディピティとは
セレンディピティとは、どのような特徴があるかを紹介しましょう。
セレンディピティの意味
セレンディピティには次のような意味があります。
セレンディピティの本質
何かを探しているときに探しているものとは別の価値がある何かを見つける能力や才能
科学の世界でもビジネスの世界でも、予期しない偶然によって引き起こされたセレンディピティが大発見や大発明につながった例が少なくありません。
誰も知っている大発明や定番の人気商品には、それ自体を目的として研究や開発が進められたのではなく、失敗や偶然がきっかけになって作られたものが想像に以上に多いです。
重大発明の30~50%程度が意図しない偶然の結果生まれたものであることが研究によって証明されています。セレンディピティは偶然との関連が強いものの、単なる偶然では説明がつきません。
普通ならば見逃してしまうような偶然を活かして、知識や行動力でさらなる幸運を引き寄せるのがセレンディピティです。
セレンディピティと努力の相互作用が成功につながる
セレンディピティという予期せぬ偶然が成功につながる重要なポイントではあるものの、それだけで成功者にはなれません。セレンディピティはあくまでもきっかけであり、それを活かして成功に結び付けられるかは自分のセンスや努力次第です。
何もしないで、ただ幸運な偶然の恩恵にあずかれるわけではありません。科学の世界でもビジネスの世界でも、セレンディピティを活用して成功した人たちは予期せぬ偶然をきっかけにして驚くほどの努力をした結果、偉大な発明や商品開発に成功しています。
せっかくセレンディピティで予期せぬ偶然を目にしても、何もしなければ何の成功もないのに対して、努力することとセレンディピティの相互作用が大きな成功につながる可能性があります。
セレンディピティの語源
「セレンディピティ」は、18世紀の小説家だったホレス・ウォルポールさんによる造語です。
5世紀頃に書かれた「セレンディップの3人の王子たち」では3人の王子が旅に出て、実際には見たことがないラクダの姿をラクダが通った道の様子から推察して正確に言い当てるなどの優れた洞察力や幸運を引き寄せる能力が描かれました。
このペルシャ童話を読んで感銘を受けたウォルポールさんが1754年に、物語にちなんで「セレンディピティ」という造語を生み出し、現在使われている意味として広まったとされています。
セレンディピティは単なる偶然ではない
セレンディピティの特徴のひとつが、次のように単なる偶然ではないことです。
主体的な行動がセレンディピティを呼び込む
主体的な行動がなければ呼び込むことができない
ただ待っているだけでは何も起きずに時間が過ぎ去るだけですが、主体的に行動することがちょっとしたきっかけから大きな発見やイノベーションにまでつながる可能性を大きくします。
主体的に行動していると、五感のアンテナが総動員されて必要な情報が集まってくるからでしょう。
セレンディピティはプロセス
ただの偶然は単発的な出来事に過ぎないのに対して、セレンディピティは一連の動きの中のプロセスである点も大きな特徴です。セレンディピティは一般的に次のプロセスで起きると言われています。
- 予想外なことが起きる
- 点と点を結びつける
- セレンディピティの発見
さらに次のステップに進めるかは、予想外の偶然を有効活用できるどうかにかかっています。セレンディピティにつながる偶然と出会っても、それが何に結びつくかがわからないようだと、チャンスを活かせません。
セレンディピティの法則
セレンディピティには次のような法則があります。
出会いが多い人ほどセレンディピティが起きやすい
出会いが多い人ほどセレンディピティが起きやすくなる傾向があります。10人しか出会わない人よりも100人の方がセレンディピティが起きやすいですし、さらに1000人ともなれば、さらに起きやすくなるでしょう。
しかし、いくら出会い自体が多かったとしても、ひとつひとつの出会いで気づきを得ることなく見過ごしていたのでは、セレンディピティが起きることはありません。
逆に、ひとつひとつの出会いで気づきを得たとしても、新しい出会いの数が少なければセレンディピティを引き起こすほどのパワーになりません。最大限にセレンディピティの効果を引き出すには、意味のある出会いを増やすことが近道です。
新たな出会いを活かす思考がセレンディピティを引き寄せる
自分では意味がない出会いだと思っていても、重要な出会いである場合もあります。
アメリカで提唱されているキャリア形成理論でも、偶発的に与えられた任務を自分にとって新しい可能性を試す機会だと考えて、積極的に行動することが成功するための効果的な方法だとアドバイスされています。
仕事でも、自分が望まない異動に不満を抱える人よりも、それまで培ってきた知識と観察力を駆使して行動する人の方が移動先でもさらにキャリアを積んで、結果的に出世が早いでしょう。
どのような形の出会いであれ、そこに何かのヒントが隠されていると考えて、常にアンテナを立てておくことが思いがけない発見や幸運につながります。常に出会いを活かす思考がセレンディピティを引き寄せます。
出会いを効率的に増やす方法
出会いが多いほどセレンディピティを引き起こせる可能性が高くなるとしても、簡単に出会いを増やせるとは限りません。人口が多い大都会であっても、職場と自宅を往復してるだけのような生活をしていれば、出会いは限られるでしょう。
そのような人ほど、出会いを増やすための工夫が必要になります。出会いを増やすために効果的なのが趣味のサークルや教室などに参加することです。
それまで人間関係が友人や知人、職場の同僚などに限られていたものが、大幅に出会いを増やせる可能性があります。定期的にボランティア活動に参加することも新しい出会いにつながります。
ボランティアは出会いだけでなく、困っている人たちを助けることが新しい気づきにつながるかもしれません。
セレンディピティを活用するために必要なこと
セレンディピティを効果的に活用するためには、次の条件が必要になります。
待つのではなく、積極的に行動すること
何もしないで待っているだけではセレンディピティは起きません。別の目的に対する行動であっても、行動している途中で予期せぬ幸運に出会えるのがセレンディピティですから、何も行動していなければセレンディピティは起きません。
動きながら考えるぐらい気持ちがセレンディピティを引き寄せます。例えば、パソコンやスマホで動画を見ているだけでは、セレンディピティは起こりません。
これまで、歴史上の発明やイノベーションがセレンディピティによって起きたのは、当事者が積極的に行動していたからです。もしも、何も行動していなかったならば、何も起きずに歴史が変わっていたでしょう。
よく観察すること
セレンディピティは必ずしも驚くような現象として現れるとは限りません。一見すれば、見逃してしまう情報であることも多いですから、ほとんどの人はセレンディピティだとは気づかずに見過ごしてしまいます。
しかし、普通なら見逃すような小さなきっかけが大きなイノベーションにつながった例が科学やビジネスの世界でも数多くありました。
それらのひとつひとつについて、見逃さなかった人たちのおかげで現在の高度な科学やビジネスが存在していると言えますから、小さな現象に対しても、よく観察する必要があります。
一見、何の役にも立ちそうもない情報でも、よく観察することで有益な情報が隠されていることが少なくありません。セレンディピティの恩恵を受けている成功者ほど、そのような情報を見逃しません。
新しい変化を受容すること
予期しない出来事が起きたことに対して受容することもセレンディピティに気づくためには必要です。せっかく予期しない幸運と出会えても、それを受容することなく拒否したのではセレンディピティが起きないからです。
起業家でも、自分の考えに固執することなく、新しいアイデアや現象を受容することがセレンディピティの恩恵を受けるために必要です。
経験したことがない現象を受容することに最初は抵抗感があるかもれませんが、そのハードルを越えることで新しい世界が待っているでしょう。
予想外に対処できる能力を身に着けること
セレンディピティは予想外の偶然という形でやってくるので、セレンディピティを効果的に活用するためには、予想外に対処できる能力を身に着けておくべきです。
予想外の偶然というのは一見、失敗としか思えない展開になりますから、物事に動じないメンタルの強さも必要になります。また、予想外の偶然をどのように活かせるかを落ち着いて考えられる判断力が成功率を左右します。
気づくだけでは足りない
セレンディピティに気づいたとしても、何もしなければ発見やイノベーションにもつながりません。思いもよらない偶然に気づいたならば、それがどのような意味がありどのように活用できるかを考える必要があります。
セレンディピティは点と点をつないでいく作業ですから、ヒントを活かせる知識や経験がないとチャンスを活かせないでしょう。自分が進みたい方向に関する知識や経験を蓄積しておくのがポイントになります。
心の余裕が気づきを増やす
積極的に行動していても、思ったほど気づきがなくて悩むかもしれません。その原因は心に余裕がないからかもしれません。
「気づき」というのは、力が抜けてリラックスした状態のときの方が得られやすいですから、なかなか気づきがないと感じたならば、リラックスできるように知らない道を散歩してみるといいでしょう。
人間の脳は知らない道を歩くような新規性のある行動に対して喜びを感じると言われており、単なる散歩が脳をリラックスさせて刺激に反応しやすい状態にしてくれると考えられます。
子供の頃を思い返してみれば、目的地に真っすぐ行くのではなく道草をしていたのではないでしょうか。大人になるほど合理的に行動しようとして、無駄な行動をしなくなります。
それは一見正しいようでも、心の余裕がなくなって気づきを減らしている可能性があります。心の余裕を取り戻すほど、気づきが増えるでしょう。
セレンディピティのスピリチュアルな意味
セレンディピティには、次のようなスピリチュアルな意味があります。
セレンディピティは高次元の存在ともつながっている
セレンディピティは単なる偶然ではなく、宇宙や高次元の存在ともつながっています。
運命の導き
スピリチュアルな視点で見ると、セレンディピティには運命的な出来事や状況を引き寄せる力があると言われています。魂が経験したいことや今生で学びたいことをセレンディピティが運命の案内役として導いてくれます。
人間は顕在意識までしか自覚できないため、魂が何を本当に望んでいるかを頭では認識できません。
頭でいくら考えたとしても、潜在意識のさらに奥にある魂レベルまではわかりませんから、セレンディピティによる偶然の出会いが目の前に現れたなら、魂が引き寄せたのかもしれません。
セレンディピティは直感の源
直感と呼ばれるインスピレーションは新しいアイデアには欠かせない存在ですが、セレンディピティは直感の源にもなります。直感は宇宙からのメッセージとも言われるように、直感を信じて行動すると成功する可能性が高いです。
直感を邪魔しているのが人間のエゴに染まった顕在意識です。顕在意識は自分の頭で理解できるため、どうしても顕在意識の方に引っ張られがちです。しかし、直感からの声を聞いて行動する方がはるかに成功しやすくなります。
セレンディピティの恩恵を受けている成功者ほど、言葉では説明できなくても、直感に従って行動しているのは直感が高次元からのメッセージなのを知っているからでしょう。直感に従って行動することがセレンディピティを引き寄せる近道です。
人間関係もセレンディピティの重要なポイント
セレンディピティには、人生の丁度良いタイミングで出会うべき人や、一緒に成長すべき相手を引き寄せてくれる力もあります。運でも仕事でも、人間が運んでくると言われるように、人間関係の良し悪しは運勢の良し悪しに直結しています。
運が良い人を見れば、まわりに運を引き上げてくれる人がいることに気づくでしょう。恋人や友人知人、仕事関係などでの出会いは偶然のように見えても、セレンディピティによって引き寄せられた必然なのかもしれません。
人間関係もセレンディピティの恩恵を受けるための重要なポイントです。
潜在意識とつながることもセレンディピティを引き寄せる
潜在意識とつながると、セレンディピティを引き寄せやすくなります。ほとんどの人間は顕在意識までしか認識できませんが、自分自身を本当にコントロールしているのはほとんどが潜在意識です。
スピリチュアルや心理学の世界ではよく顕在意識と潜在意識の関係を氷山で表現されます。海面より上に出ている部分が顕在意識で、海面の下に隠れている部分が潜在意識だと説明されるように、海面上の氷山よりも海面下に隠れている部分の方がはるかに大きいです。
「氷山の一角」と言われるように、氷山の海面に出ている部分は氷山全体の10%に過ぎず、残りの90%は海中隠れていて見えません。
この比率は顕在意識と潜在意識の比率とも一致していて、人間の意識は顕在意識が10%なのに対して潜在意識が90%と言われていますから、ほとんどが潜在意識なのがわかるでしょう。
瞑想を習慣にして行なうことで、潜在意識とつながりやすくなります。
感謝する
感謝の気持ちを持つこともセレンディピティを引き寄せやすくします。感謝することがネガティブなエネルギーを減らして、ポジティブなエネルギーを増やすからです。何も感謝すべきことがないと思えるなら、それは傲慢であり、大きな間違いです。
普段の日常の中にも感謝すべきことがいくらでもあります。普通に仕事をして生活ができているなら、それだけでも十分に感謝すべき環境です。感謝ができない人ほど自分のまわりにあるマイナスばかりに目が行って、良い部分を見ようとしません。
セレンディピティに重要なスピリチュアルなマインド
セレンディピティを活用して成功するためには、次のようなスピリチュアルなマインドが必要です。
セレンディピティは点と点をつなぐプロセスであることを理解する
セレンディピティとは、単なる偶然ではなく点と点を見つけてつないでいくプロセスであることを理解する必要があります。決して派手なことではなく、裏方作業のような地道さが要求されます。
本来なら見落としてしまいがちな小さなきっかけから新しい成功を手繰り寄せるわけですから、細かいパーツを組み立てるような感覚になるかもしれません。
セレンディピティの成功例として語られる話の多くが研究やビジネスであることを見ても、ちょっとしたきっかけを成功につなげるセンスも必要になるでしょう。
セレンディピティ・トリガーを見逃さない
セレンディピティは細かい点を見つけて他の点とつないでいく作業なだけに、他人なら見逃すようなつながりを見抜く視点が必要です。
予期しない偶然として最初に現れる「セレンディピティ・トリガー」と呼ばれる現象を見逃すと、せっかくのセレンディピティの機会を失う可能性が高いです。
セレンディピティにつながる偶然は思っている以上に多いものの、ほとんどの人は何かの成功につながるかを考えることもなく漫然と見過ごしてしまいます。
成功者は成功につながるかもしれないほんのわずかなきっかけを見逃すことなく、セレンディピティを引き寄せます。
ちょっとした差が大きな結果の差になるのがセレンディピティですが、成功者と予期せぬ偶然に気づかない人の能力差はそれほど大きなものではありません。心掛け次第で誰もがセレンディピティを活用できるでしょう。
成功を運任せにしてはいけない
運の良し悪しが成功することに大きな影響を与えることは否めませんが、成功を運任せにしていたのでは本当の成功に辿り着くことはできません。
最初のきっかけはセレンディピティの予期せぬ偶然だとしても、それを元にして発明やヒット商品を完成できるかは、本人の努力やセンスにかかっています。運を味方につけながら、運任せにしない人たちがセレンディピティを活用して成功しています。
予期せぬ偶然のために準備しておく
多くの人がセレンディピティにつながる予期せぬ偶然を目の前にしても気づかないか、気づいていても何もできないのは必要な準備をしていないことも大きな理由です。
セレンディピティを活用している成功者は、予期しない偶然がいきなり現れたときのために必要な準備をしているから対処できるのです。
成功者は一見、思いがけない偶然にたまたま出会った幸運な人だと思われるかもしれませんが、彼らは無意識のうちに思いがけないチャンスが巡って来たときのために準備をしています。
研究者であれば、常に一生懸命研究に打ち込んでいるからこそ、いざというときに慌てることなく対処できます。別の角度から見れば、準備をしていない人間にはセレンディピティは起きにくいということかもしれません。
単なる会話の中にもヒントが隠されている
友人知人、ご近所との日常会話の中にもセレンディピティにつながるヒントが隠されています。相手はヒントを与えるために話をしていなくても、自分にとっては成功に役立つ思いがけないヒントになるかもしれません。
日常会話にセレンディピティが入っているなど認識できないかもしれませんが、実際には日常のいたるところにセレンディピティのヒントが転がっています。ほとんどの人がそれに気づかずに見過ごしているだけです。
この事実に気づけば、より多くのチャンスに恵まれるようになるでしょう。
過去に見逃した事例を思い出してみる
過去に見逃した事例を思い出してみることも、スピリチュアルな視点での効果的なセレンディピティの活用方法です。
本当に何も気づいていなかったなら思い出すこともできませんが、何かのヒントになる偶然かもしれないことに気づいていながら必要な行動していなかったなら、潜在意識に後悔の念が残ります。
あのとき、行動していれば未来が変わったかもしれないと思えることがあったかを思い出して必要な行動を今、やってみるのは決して無駄ではないでしょう。過去の後悔を今から取り戻せるかもしれません。
セレンディピティの例
セレンディピティの有名事例として、次のような実例がよく知られています。誰でも知っているような有名発明や商品には、ほんの些細な偶然がきっかけになって開発されたものが多いです。
ペニシリンの発見
イギリスの細菌学者だったアレクサンダー・フレミングさんによって発見されたペニシリンは、現代の治療薬に欠かせない抗生物質ですが、この偉大な発見をもたらしたのがセレンディピティです。
1928年にブドウ菌の研究をしていたフレミングさんは間違って細菌を培養するシャーレの中に青カビを発生させてしまいます。最初は失敗だと思ったかもしれませんが、よく観察してみると、青カビの周りでは細菌が繁殖していないことに気づきます。
この偉大な発見により、青カビから抗生物質であるペニシリンが抽出されて治療薬として使われるようになり、病気の治療に多大な効果をもたらしました。
アレクサンダー・フレミングさんはこの功績により、ノーベル生理学・医学賞を受賞しています。
万有引力の法則の発見
アイザック・ニュートンさんによる「万有引力の法則の発見」もセレンディピティによるものです。ニュートンさんは木からリンゴが落ちるのを偶然見かけたことがきっかけで、地球には引力があるのではないかという着想を得たと言われています。
普通ならリンゴが落ちたのを見ても何も感じずに素通りしてしまいます。このわずかなヒントを元にして、すべての物体に重さがあるのは、物体が互いに引き合う力を持っているからだという気づきが得られたのはセレンディピティと努力の相互作用によるものでしょう。
スリーエム社のポストイット
スリーエム社のポストイットは付箋として日本でも多くの人々に愛用されているロングセラー商品です。強力な接着剤を開発していた1969年に出来上がったのは接着力が非常に弱い接着剤でした。
スリーエム社は強力な接着剤を作りたかったわけですから、この接着剤は失敗作と見做されて長期間放置されることになりました。数年間放置されていた接着剤をスリーエム社の研究員のアーサー・フライさんが本のしおりとして使えないかと考えたのが1974年のことでした。
弱い接着力が功を奏してポストイットは付箋として世界中で使用されるようになって、スリーエム社の大ヒット商品になります。本来なら失敗作として埋もれていたものを当初の目的とは違う商品開発に成功したのはまさにセレンディピティ能力を持つ研究員がいたおかげでしょう。
現在はX社との合併により社名が変更されたものの、旧Twitter社のTwitterもセレンディピティによって生み出されました。もともとTwitter社はオブビアウス社と名乗っており、Twitterは主力商品ではなかったのです。
Twitterが開発された2006年当時もオブビアウス社という名称のままであり、Twitterは同社の1商品という位置づけに過ぎませんでした。しかも、外部に向けた商品として開発されたのではなく、社員がショートメッセージ用に遊びで作ったものです。
それが社内で大人気になり、活用されているのを見た幹部が調査したところ、そのツールには中毒性があることがわかり、改良が重ねられて商品になったのがTwitterです。
驚くほど短期間に世界中に普及したSNSツールとしての役割は「X」と名称変更された今でも変わりません。
コカ・コーラ
誰もが知っていて、ほとんどの人が飲んだことがある「コカ・コーラ社のコカ・コーラ」が生まれたのもセレンディピティのおかげです。
19世紀半ばに薬剤師のジョン・S・ペンバートン博士がヨーロッパで大変な人気を博していた薬用酒「ビン・マリアーニ」を真似た「フレンチ・ワイン・アンド・コカ」を開発しました。
この「フレンチ・ワイン・アンド・コカ」はワインにコカの成分を入れたものであり、発売後に大人気になったものの、間もなくアメリカで施行された禁酒法により販売できなくなってしまいます。
そこで、ペンバートン博士はアルコールを使用しない製品の開発に取り組んだものの、うまくいかずに悩むことになります。
しかし、試行錯誤を繰り返していたあるとき、水と間違えて炭酸水を入れたところ今までにない味の液体が出来上がる予期せぬ偶然が起きました。ここでも、目的とは違う展開になっています。
ペンバートン博士が、これは売れるに違いないと考えて製品化したのが現在のコカ・コーラです。水と間違えて炭酸水を入れていなければ、コカ・コーラは今でも存在しなかったでしょう。
電子レンジ
今では当たり前のように普及している電子レンジが生まれたのもセレンディピティによるものです。
かつてアメリカにあった軍需製品メーカーのレイセオン社にいたスペンサー博士が1945年にレーダーの実験をしていた際、ポケットの中にあったチョコレートが電波によって柔らかくなっていることに気づきました。
この気づきがきっかけになり、電子レンジの原理につながっていきます。スペンサー博士のポケットにたまたま入っていたチョコレートと電波の作用を見逃さなかったことがセレンディピティを引き寄せたことになります。
カッターナイフ
紙などを切るために使われているカッターナイフの誕生もセレンディピティによるものです。カッターナイフがなかった時代には、紙を切るためにハサミやカミソリが使われていました。
カミソリは切れ味が鋭いものの、すぐに切れなくなる上に両刃を使ったら捨てるしかありませんでした。そんな状況に不満を感じていたのが刃物の製造販売で有名な「株式会社オルファ」の創業者の岡田良男さんです。
岡田さんは印刷会社で仕事をしている中で、カミソリの刃をすぐに捨てるのをもったいないと思えてどうにかならないものかと考えていました。そんなとき、路上で靴職人が靴底をガラスの破片で削っているのを目撃することになります。
靴職人はガラスの切れ味が悪くなると、さらにガラスを割って靴底を削っていました。
その光景を見ていて、終戦後の進駐軍のアメリカ兵たちが割りやすい折り筋が入った板チョコを食べていたのを思い出し、刃物にも同じような折り筋を入れたら無駄がなくて便利になることに気づきます。
このようなセレンディピティが起きたことが、現在普及しているカッターナイフの原点です。
ラップフィルム
食品の保存などに家庭で使用されているラップフィルムにもセレンディピティが大きく関わっています。ラップフィルムはもともと、第二次世界大戦中にアメリカ兵士が水虫を防ぐためにブーツの中敷きとして使用していたものです。
水虫の予防として効果的だったものの、ラップフィルムのさらに便利な使用方法が発見されます。終戦後、ある家庭の主婦がラップフィルムでレタスを包んだことから、食品を衛生的に持ち運べるとしてラップフィルムが爆発的に普及することになります。
アメリカでの流行は日本でも波及し、ラップフィルムが当たり前のように日本の家庭でも使用されるようになりました。ここでも、セレンディピティな気づきが大きく関係していることがわかるでしょう。
グッドイヤー社の加硫法の発見と開発
アメリカのタイヤメーカーとして有名なグッドイヤー社が創立できたのも、セレンディピティによるものです。
1839年にアメリカ・オハイオ州で研究者をしていたチャールズ・グッドイヤーさんが天然ゴムの実用化に取り組んでいたところ、天然ゴムをストーブの上に落としてしまいました。
この予期せぬ偶然により、グッドイヤーさんは天然ゴムと硫黄の混合物には優れた特性を有することが発見し、加硫法の確立します。
この発見は自動車用のタイヤを製造するために不可欠なものであり、アメリカを代表するタイヤメーカーのグッドイヤー社創立のきっかけになりました。
もし、グッドイヤーさんがストーブに天然ゴムを落とすという予期せぬ偶然がなければ、グッドイヤー社の創立もゴム製品メーカーの業界も、生まれていなかったかもしれません。
セレンディピティとシンクロニシティの違い
セレンディピティとよく似ているのがシンクロニシティですが、両者には次のような違いがあります。
特徴の違い
- セレンディピティ・・・何かを探しているときに起きた予期せぬ偶然をきっかけにして、別の価値があるものを引き寄せる能力や現象
- シンクロニシティ・・・「意味のある偶然」として表現されるように偶然発生した現象そのもの
セレンディピティは何かを探しているという主体的な行動があってこそ発生します。
- セレンディピティ・・・何もしない状態のときには発生しない
→せっかくの予期せぬ偶然に気づかずに見過ごしてしまえば発展性がない - シンクロニシティ・・・何もしていないときにも目の前に現れる
→天使たちが何度でも気づくまでメッセージを送ってくれる
提唱者の違い
セレンディピティはイギリスの小説家、ホレス・ウォルポールさんがペルシャ童話の「セレンディップの3人の王子たち」を読んで感銘を受けたのがきっかけで作られた造語です。
物語の中で王子たちが発揮した優れた能力がセレンディピティの造語の元になっており、現在もそのような意味として広まりました。一方、シンクロニシティを提唱したのはスイスの著名な心理学者のカール・グスタフ・ユングさんです。
ユング心理学の創始者でもあり、シンクロニシティ以外にも深層心理などの研究でも知られています。
セレンディピティを起きやすくする方法
セレンディピティは待っていても起きませんから、次のように起きやすくする工夫が必要です。
チャンスを目ざとく見つける
セレンディピティのチャンスはいたるところに転がっていますが、ほとんどの人は見過ごしてしまいますから、チャンスをいつでも目ざとく見つける姿勢が成功への近道です。
身の回りにある不便や解決策が必要なものを見つけることを習慣化するだけで、セレンディピティに出会える可能性が高くなります。
普段の日常の中だけでなく、ブログやXなどのSNSは総じて「セレンディピティエンジン」とも呼ばれ、それらを有効活用することもセレンディピティと引き起こす確率を高めてくれるでしょう。
好奇心を持つ
好奇心を持って日常を過ごすことが、ふとした瞬間にセレンディピティと出会える可能性を高くします。
- 普段は歩かない道が面白そうだと思ったら歩いてみる
- 仕事帰りに普段は降りない駅で降りて歩いてみる
などといった簡単なことをやってみるだけで新しい偶然に出会えるかもしれません。好奇心を持てば、さらに新しい好奇心が芽生えてきて、情報量が格段に増えていくでしょう。
好奇心を持てば、今までなら疑問に思わなかったことにも興味が出てきて、さらに高い成功率を期待できます。新しいことにチャレンジする人の原動力は経済的な成功以上に好奇心の強さです。
そのようなマインドが結果的にイノベーションにつながるセレンディピティを引き寄せます。
物事のマイナス面よりもプラス面を見るようにする
物事のマイナス面よりも、プラス面を見るように心がけることがセレンディピティを呼び込みます。マイナス面にばかり注目していると、それが思考の癖になり、いつでもマイナス面ばかりに目が行くようになります。
セレンディピティは思いがけない偶然によってもたらされるものですから、特にマイナス面よりもプラス面を見るようにしないとせっかくのチャンスを逃すことになるでしょう。
一見すればマイナスに見えることでも、よく観察してみればプラス面があり、それがきっかけで成功につながることが少なくありません。
自分が考えていることを積極的に表現する
自分の考えを積極的に表明することもセレンディピティを引き寄せるのに効果的です。SNSで発信するのもいいですし、周囲の人間に積極的に自分の考えを表明することで、新しい発見につながる可能性があります。
ブログなどのSNSで発信することで、自分でも固まっていなかった方向性が見えてくるのもメリットです。
気になったことはすぐに調べる習慣をつける
気になったことはすぐに調べる習慣をつけることもセレンディピティを呼び込むコツです。気になったことを目にしても、後で調べればいいぐらいのスタンスだと結局忘れてしまってチャンスを逃します。成功者ほど、気になることをすぐに調べて解決します。
現代は便利な時代で、わからないことはスマホですぐに調べられます。スマホでその場で調べられなくても、メモしておいて後でパソコンで調べるのでもいいでしょう。そういう習慣を積み重ねておくと、セレンディピティによる偶然が起きたときに役立ちます。
積極的に人に会いに行く
積極的に人に会いに行く、人間関係を広げることもセレンディピティを引き寄せるのに効果的です。運が良い人ほど人間関係を広くしているのは、運を運んできてくれるのが人であることを無意識に知っているからです。
友人知人に積極的に会うことで、新しい知人を紹介されることもあるでしょうし、知り合いがいないパーティーのようなところにも積極的に顔を出してみるのもおすすめです。意外な出会いにつながる可能性もありますし、決して無駄にはなりません。
人脈をできるだけ広げることも、セレンディピティを起こす近道になります。誘われたら、とりあえず顔を出してみるぐらいの気楽さで人に会いに行くといいでしょう。
セレンディピティが思いがけない偶然から起きるように、思いがけない人との出会いによって成功につながる可能性があります。
積極的に外出する
積極的に外出することもセレンディピティを引き寄せるのに効果的です。誰かに会うような用事がなくても、単に外に出て街中を歩くだけで何かのチャンスに出会える可能性が出てきます。
日頃、あまり外出しないような人なら余計に外出することが、脳や潜在意識に新しい刺激を与えることにもなるでしょう。家に籠ってばかりで太陽の光を浴びないでいるとビタミンDが不足するように、外出を避けていると波動が弱くなるデメリットがあります。
外出するのはできるだけ昼間の明るい時間帯がおすすめです。
流れに任せる
セレンディピティを起こすためには行動が必要だとはいえ、無駄に行動しても結果はついてきません。ある程度納得がいくぐらいに行動したならば、あとは流れに任せてみるのも効果的な方法です。
ただし、何もしないで流れに任せるだけではセレンディピティは起きません。セレンディピティはあくまでも、行動しているからこそ起きる現象です。思いがけない偶然から成功を引き寄せるのがセレンディピティです。
予想外な出来事が起きたらチャンスだと考える
セレンディピティは予想外の出来事として目の前に現れることが多いですから、そのような場面に遭遇したときには、チャンスだと考えるようにしましょう。
もちろん、すべての予想外な出来事がセレンディピティとは限りませんが、セレンディピティかどうかを瞬間的に判断する能力も鍛えられるでしょう。
必要な場所に身を置くこと
適切な場所に身を置くこともセレンディピティを活用するために必要です。これまでの歴史でセレンディピティの恩恵を受けた人たちはまず、必要な場所に身を置いていたからこそチャンスに出会えています。
セレンディピティは発明や発見、商品開発などの場面で話題なることが多いですが、それらの場面にいた人たちだったからこそセレンディピティに出会えるチャンスがあったわけです。
商品開発をすべき人がまるで関係ない職種で働いていたなら、得られたかもしれないチャンスに出会えないでしょう。自分がどのような場所で輝けるのかを考えることも、セレンディピティを引き寄せる近道です。
言葉に気をつける
言葉は「言霊」と呼ばれるように、良くない言葉を使うとそれが悪い形で自分に跳ね返ってきます。言葉次第でせっかくのチャンスを逃したり、運気を下げてしまう恐ろしさがあります。
セレンディピティを起こすためにも、できるだけポジティブな言葉を使うようにしましょう。ポジティブな言葉はまわりの人たちはもちろん、自分も幸福にしてくれます。逆に、ネガティブな言葉ばかり使っていると、自分もまわりも不幸になる可能性があります。
言葉には魂が宿っていることに注意が必要です。
他人にもセレンディピティが起きるように働きかける
自分だけでなく、他人にもセレンディピティが起きるように働きかけることが結果として、自分にも幸福な偶然が起きる可能性が高くなります。定期的にパーティーを開いて、
- 友人に知人を紹介する
- 相性が良さそうな人を引き会わせる
などすると、プライベートが充実するだけでなくビジネスチャンスも広がるでしょう。アメリカ人がよくホームパーティーや大規模なパーティーを開催するのは単なる親睦としてだけでなく、何かのビジネスチャンスにつながることが多いからです。
セレンディピティがビジネスに与える影響
セレンディピティは個人の人生だけでなく、ビジネスにも多大な影響を与えます。
セレンディピティがビジネスで重要になっている理由
セレンディピティがビジネスで重要になっているのは、次のような理由によるものでしょう。
オンライン前提にした生活パターンの変化
現在、日本でもオンラインを前提とした新しい生活スタイルが定着してきました。サラリーマンでもオンラインを活用したリモートワークで働いている人が増えています。
企業がリモートワークを採用するようになった最大のきっかけは近年のコロナ禍ですが、一度定着したリモートワークをそのまま続ける企業が多いでしょう。
もともとリモートワークにしたいという需要があった上に、実際にやってみると事務所を縮小できて家賃を大幅に節約できるメリットもあります。社員にしても、通勤から解放されるなどのメリットがあります。
しかし、これらのメリットがある一方、リモートワークで社員同士が集まって仕事をしなくなったことがセレンディピティを起こしにくくしています。
そのため、ビジネスシーンでセレンディピティが以前にも増して重要になっており、セレンディピティの視点でビジネスを見直す必要があるでしょう。
インターネットによる情報やニーズの分断
リモートワークの普及だけでなく、インターネットによって情報が分断されていることも、セレンディピティが重要になっている理由です。インターネットの情報は無限大に広いようでも、実際に目にする情報は偏っていることが多いです。
検索やSNSを通じて我々が見る情報は、過去の閲覧履歴よって影響されているからです。過去の閲覧履歴に影響された情報ばかりを見ていると、本来なら出会うべきセレンディピティと出会えないことになり、情報が偏ってしまいます。
インターネットによる情報の偏りから脱却して社員がセレンディピティを引き出せるようにすることが、これからのビジネスを発展させるためにさらに重要になるでしょう。
セレンディピティのビジネス上のメリット
セレンディピティはビジネスを行なっていく上で、次のようなメリットをもたらします。
気づきがもたらされる
思いがけない偶然により気づきがもたらされることがセレンディピティのビジネス上のメリットです。社員たちがいくら頭で考えても出てこない気づきが意図しない偶然によって一気に解決することがあります。
せっかくの偶然があっても、見過ごすようでは意味がありませんが、これまでの多くの発明や人気商品がセレンディピティによる気づきによって生み出されたことがビジネス上のメリットになることを証明しています。
新しいイノベーションが生まれる
セレンディピティによって生まれた商品や発明には、これまでの常識を一気に覆すほどインパクトが強いものが少なくありません。そのような発見から業界全体が影響を受けるほどのイノベーションが生まれるでしょう。
今までの歴史を振り返れば、産業界を揺るがすイノベーションというのは誰かが意図して起こしたのではなく、セレンディピティによって起きています。ちょっとした偶然を見逃さないことが成功につながります。
新しい経営戦略につながる
新しい経営戦略につながることもセレンディピティのメリットです。人間一人一人の予測能力には限界があり、さらにビジネスを発展させるための障害になることがあります。
日本には創立100年以上の企業が4万社以上あるとはいえ、企業の平均寿命はかつての高度成長期に比べてどんどん短くなっています。そのような状況の中で企業を存続させて発展させるためには、セレンディピティによる新しい経営戦略が役立ちます。
セレンディピティを経営戦略に組み込むことで、思いもよらない成功につながる可能性があるでしょう。
マーケティング戦略に活用できる
予測不可能なことを求める消費者のニーズに合わせたマーケティング手法が「セレンディピティ消費」呼ばれる方法です。効果的なマーケティングに活用できることもセレンディピティのメリットです。
「セレンディピティ消費」の手法を使用することで、消費者に対して「このような商品に出会えるような幸運な偶然は二度と起きないだろう」と感じさせて購買意欲を高めます。
ビジネスでセレンディピティを活用する方法
セレンディピティをビジネスに活用するには、次のような方法が効果的です。
広くアンテナを張り巡らせる
広くアンテナを張り巡らせることで、セレンディピティによる思いがけない偶然を見落とすことなく活用できるでしょう。
ビジネスを自分ひとりでやっているなら自分だけアンテナを張っていればいいですが、従業員がいるなら、会社全体でアンテナを張り巡らせる必要があります。
特に商品開発を担当している技術系の人たちは、直接、セレンディピティの思いがけない偶然に出会える可能性が高いだけに、よりアンテナの感度を高くしておくべきでしょう。
新たなチャレンジに積極的になる
創業当時は設立メンバーで新たなチャレンジに積極的だった企業でも、年数が経つほどに当初のチャレンジ精神が失われて保守的になっていきます。経営が安定してくると、新しいことに挑戦するよりも安定を求めるようになるのは人間の本能なのかもしれません。
しかし、安定を求めるほどセレンディピティが起きなくなります。企業として経営が安定してから入社してくる社員は元々安定を求めていることが多いため、常にチャレンジ精神を高めるようにしないと、セレンディピティによるイノベーションから遠ざかります。
ゼロベース思考を持つ
ビジネスを進めていく上で前提となっている予算や必要な時間、従業員のスキルといった条件を一旦ゼロにして考え直す思考方法
それらの条件を気にせずにビジネスを展開することで想定を超える偶然が発生して、効果的なセレンディピティが起きる可能性が高くなります。
従業員が社外の人たちと接する機会を増やす
セレンディピティを呼び込むためには、従業員同士の社内交流を高めるだけでなく、社外の人たちとも交流する機会を増やすべきです。社内だけの交流では、どうしても思考が内向きになって刺激が足りなくなります。
その気になれば、社外の人たちとの交流を持てる場面はいくらでもあります。従業員にはセミナーやイベント、異業種交流会などの人々が多く集まりそうな場所へ積極的に参加を促し、社外の人たちと交流できる体制作りが必要です。
社内だけに限定しない幅広い刺激がセレンディピティによるイノベーションにつながるでしょう。
おわりに
近年、ビジネスや科学の世界で話題になっているセレンディピティとは、何かを探しているときに目的とは別の価値がある何かを見つける能力や才能のことです。
重大発明の30~50%程度が意図しない偶然の結果生まれたと言われているほどですから、セレンディピティは単なる偶然とは大きく違います。
セレンディピティはビジネスや科学の世界で特に注目されていますが、スピリチュアルな意味からしても、運命を左右するほどの出来事を引き寄せることで知られています。
魂が今の人生で経験したいことや学びたいことをセレンディピティが運命の案内役として導いてくれるのかもしれません。セレンディピティとよく似たものとして、シンクロニシティと呼ばれる概念があります。
両者共「偶然」が介在している点では共通していますが、シンクロニシティでは天使などの高次元の存在が何度でもメッセージとしてシンクロニシティ現象を見せてくれるのに対して、セレンディピティは一度見逃すと終わってしまいます。
そのため、シンクロニシティ以上にアンテナを立てて見逃さないようにする必要があります。
また、シンクロニシティは何もしてなくても、天使たちが偶然を通じて見せてくれるのに対して、セレンディピティは何かを探していたり、研究開発しているなどの行動をしていない限り現れません。
行動している人間しか恩恵を受けることができないのがセレンディピティだと言えるでしょう。
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