「初心者が最初に巡り会いたい『深楽しい』西洋占星術講座」にようこそ!
いつも記事を読んでいただきまして、本当にありがとうございます。
今回は、「中年の危機」についての記事です。
前回の記事では、サターン・リターン(土星回帰)について解説させていただきましたが、
文末で、中年の危機について触れました。
中年の危機は、「中年期に訪れる転機」を意味していますが、
言葉を付け加えるならば、ネイタルとトランジットのトランスサタニアンがハードアスペクトを形成することで、
「公私ともに、大きな転機(葛藤・受難)を迎える時期・体験」を意味します。
中年の危機は、「ミッドライフ・クライシス」や「第2の思春期」といった表現もされます。
私たちは、29歳前後のサターン・リターンによって、
社会に取り込まれる中で自我意識を喪失し、再生させる転機を経験しますが、
これは、太陽期(34・35歳)ほどにまで影響を与えます。
なぜなら、私たちは火星期からやっと、「自己実現」を始めることができるからです。
自然の摂理や人間心理は、秒単位で決まっているわけではありませんが、順序や段階、流れがあります。
私たちにとって中年の危機の時期は、29歳前後の土星による抑圧(サターン・リターン)を経て、
「自己経験値を発展させるための深堀りや方向転換、軌道修正」などの事柄を体験することになり、
内面と外面の現実の擦り合わせを促されます。
この「擦り合わせ」は、トランスサタニアン天体による「超越的な働き」によって起こりますので、
私たちは体当たりで自分自身の変容・脱皮という通過儀礼を経験することになるのです。
古典的な概念では、トランスサタニアンは「目視(認識)できない=取り扱わない」となっていますが、
現代の文明や情勢を鑑みた時、土星以降の天体の力の影響を無視することはできません。
今回の記事では、中年の危機によってもたらされる体験が、私たちの人生にどのような働きを持ち、
危機が去った後に、どのような生き方や在り方を望むことができるか、
ということについて解説させていただきます。
以下のリンクは、天王星・海王星・冥王星のトランスサタニアンの解説記事です。
振り返りや復習にご活用ください。
トランスサタニアンの3天体の品格/品位については諸説ありますが、
当講座では、以下のような品格/品位を採用しています。
中年の危機やサターン・リターン、ソーラー・リターン、ルナ・リターンでは、サインも重要ですが、
どのハウスで「変化」や「転機」が訪れるかを知ることの方が重要です。
カイロン/キロン・リターンと2回目のサターン・リターンを迎える前、
トランスサタニアンの3天体からの「お試し」を強制的に受けさせられるわけですが、
それは、私たちに備わっている生命力・創造性を引き出すためだと考えられます。
時間は常に進み続け、時代は回り続けるのに対して、
私たちが自分の人生を実のあるものにし、手応えや充実感、生きている実感を掴めるかは、
その時々の波乱や受難、葛藤に真剣に取り組むことで報われるはずです。
中年の危機に限らず、人生設計や自己実現、
「自分を生きるとは?」という本質的・根源的な命題に対する内省の時間を持ち、
自己対話を深めることは、誰でもない自分自身のための投資であり、自分への愛となるでしょう。
誰もが自分だけの世界(人生)を生き、誰とも比べることができない現実の中で、
占星術を活用し、「あなたにだけ起こる流れとその恩恵・祝福」を見出してください。
中年の危機は、私たちを強く、また、優しく、逞しく育てるための成熟の機会です。
現実や人生、自分自身に一度絶望したり、悲観したりしても、
必ず嵐が過ぎ去る時が訪れることを見据えて、「今の体験」・「今の実感」を大切にしてください。
それでは、今回も最後まで楽しんで読んでくださいね!
人生のステージと天体の関わり
まず、占星術的な観点における、人生のタイムスケジュールと、
ネイタルとトランジットの天体の関わりによって起こる人生のライフサイクルを提示したいと思います。
以下の表に、年齢に応じた、ネイタルとトランジットの天体の関係性をまとめました。
尚、表に表記されている時期(年齢)は、平均的な時期であることと、
個人天体の回帰(リターン)を除いて、
人生に強いインパクトを与える時期のみに焦点を当てていることを予めご了承ください。
*木星は12年サイクル(リターン)のみを、土星は約7年のサイクル(1/4・2/4・3/4・4/4)の表記をし、
小惑星カイロン/キロンのリターン(回帰)を付け加えています。
*進行の月は、約29.5年サイクル(リターン)のみを表記しています。
*ネイタルの天体には「n」を、トランジットの天体には「t」を付けて表記しています。
人生のライフサイクル
中年の危機
人生のライフステージは、年齢によって大別されます。
人生のライフステージは、
幼年、少年、青年、壮年、中年、高年という風に5つの区分で大別することができますが、
更に細かく分類したものが、上記の表の区分です。
「中年期」と呼ばれる時期・期間は、40~64歳であるため、
壮年期の中盤から熟年期に以降する間の「成熟期間」と考えることができます。
占星術の観点に当てはめますと、
ネイタルとトランジットのトランスサタニアンのハードアスペクトが形成される時期が、
中年期に当てはまります。
火星期から木星期に移行する際に、私たちは心の成熟が求められるわけですね。
木星期を終え、土星期に入る際には、2回目の土星回帰を迎えることになりますが、
その前に、トランスサタニアンによる「中年の危機」と、カイロン/キロンの回帰が待っています。
本記事では、トランスサタニアンによる中年の危機に焦点を当てていますが、
全体像として、上記のような人生の流れを予め知っておくことで、
公転周期の長い天体の影響と年齢との相関関係を踏まえて、
現状を把握するためのお手伝いができれば幸いです。
以下のリンクは、カイロン/キロンと土星回帰についての解説記事です。
振り返りや復習、参考のためにご活用ください!
中年の危機①【n冥王星 – 90° – t冥王星】
1つ目の中年の危機は、冥王星によって引き起こされます。
土星とトランスサタニアンの3天体は、逆行の期間が半年前後あるため、
人生スケールで捉えた際、数年のズレが生じます。
冥王星による中年の危機は、36~42歳頃に迎えるとされています。
冥王星は、太陽系の最遠に軌道を持つ天体で、太陽とは表と裏の関係にあります。
また、冥王星は、「火星のハイヤー・オクターヴ」の天体という位置づけをされ、
火星とともに、冥王星は蠍座のルーラーです。
そのため、トランジットの冥王星によるネイタルの冥王星とのスクエア(90度)のアスペクトは、
精神的に強烈な葛藤を与えます。
火星は「行動力」や「実現力」を象徴する天体ですので、
上位互換・太陽系の最遠の天体である冥王星は、
私たちから選択肢を奪い、羽交い絞めにし、八方塞がりにするほどの影響量を持ちます。
先ほど人生のライフステージについて触れましたが、
土星のサイクルが現実的な大きな節目を示し、壮年期から熟年期への移行のうち、
特に中年期において、心の成熟が必要不可欠となることが分かります。
太陽期までの約35年間は、外面の世界からの刺激や影響を受容する中で、
内面の世界で自我意識を育てていく期間です。
ですが、この自我意識やセルフイメージは、私たちの元々の個性や本性ではなく、
外部環境から輸入されてきたものであることに、私たちは徐々に気づいていくもので、
押し付けられた役割や義務をこなすことに辛抱できなくなってくるのが、
火星期から始まる私たちの成長プロセスと言えます。
本講座では、「人は火星期(35歳以降)になって、ようやく成人を迎える」という表現をしています。
冥王星による中年の危機は、
これまでの人生を歩んできた中で、良いも悪いもすべてひっくるめて、
「本来の私(あなた)を実現すること」に意識を向かわせます。
冥王星の象意は、「根源的な力」や「破壊と再生」などを表し、
内面・外面問わず、私たちの価値観や生き方、在り方を強く揺さぶり、
強制的に変容を引き起こすように働きかけるのです。
これまでは、30半ばを「働き盛り」という言葉で表現されることが少なくありませんでした。
ただ、この表現さえも、「思い込み(刷り込み)」で、老年期でも生涯現役で活躍される方もいれば、
若くして社会的な名声を掴み取る方もいます。
もちろん、飛び抜けた天才性を発揮することができる人には、
そのような人生に相応しい天体の配置があるのかもしれませんし。
ですが、1位を取る人が存在するためには、2位以降の人が存在しなくてはいけませんし、
逆に、2位以降の人が存在するためには、1位の立場の人が存在する必要があります。
冥王星は、私たちに「自分の生命を全うすること」を強く求めます。
極端に言えば、「自分の人生以外に選択権を行使すべきではない」という強い訴えです。
中年期、または、火星期において、
私たちはある程度、自分の欲望や影響力などを自覚できる年齢と心の成熟度に至っています。
その上で、「自分の人生をどのように生きるのか?」という命題に突き当たった時に、
「挑戦」と「現状維持」、もしくは、「逃避」などの分岐点に立ち、
私たちは自分の意志だけを頼りにしなくてはいけなくなります。
私たちは、この「自分の意志を頼りにする」という体験や立場を、自ら望んで設けようとはしません。
なぜなら、私たちの本能は、より安定的に、平穏に暮らすことを望むからです。
とはいえ、それと同時に、
私たちは「これまでの自分」に退屈さや無力さなどの、鬱屈した気持ちを抱いています。
「私はこのままでいいのだろうか?」や「私は本当は何を望んでいるのだろうか?」など、
自己肯定と自己否定、自己信頼と自己不信、自己受容と自暴自棄など、
私たちは人生のサイクルのある時点で、内面世界と外面世界とを行き来しながら、
一向に満たされない自分自身と世界に対して、「限界」を感じてしまうのです。
こうした思考や感情(マインド)は、自然の摂理に則って、
人類の集合的無意識の成熟を進めるために、
誰にもやって来る意識進化・意識変容によって引き起こされます。
その代表的なライフイベントが、中年の危機です。
時間は不可逆的ですので、巻き戻ることはありません。
そもそも、時間という概念すら、私たちの「創造物(概念)」とも言われています。
私たちが何もしなくても、怠惰でも多忙でも、人生は素知らぬ顔で進み続けていきます。
冥王星による中年の危機は、最もインパクトが強く、自分の内面と向き合うために、
現実的・状況的に困難や葛藤、受難を体験させます。
何が起こるかは、その人の人生次第ですが、
重要なことは、「誰がこの変容を引き起こしているのか?」ということです。
中年の危機に限らず、人生に起こるあらゆる体験は、
「誰もが自分自身に与えている体験」という視点を持つことは、簡単なことではありません。
若い時には若い時の苦労がありますし、
成熟してきたと思ったら、思いがけない状況に遭遇することもあります。
「なぜ?」や「誰が?」といった理由探しや原因探しをしたところで、誰も答えを与えてはくれませんし、
答えを知ったところで、目の前の現実を放棄することはできませんので、
粛々と現実を受け入れ続ける必要があります。
天に、最初に強烈なインパクトを与えることで耐性をつけさせる、という意図があるのかは分かりませんが、
その後、海王星と天王星による中年の危機が続きます。
それだけではなく、2回目の土星回帰を前に、カイロン/キロン回帰が控えていますので、
私たちは「完全な平穏」や「完璧な理想」が許されるのは、眠っている時か、息を引き取る時ではないか、
と思えるほどに、人生には大波小波が続きます。
冥王星は、「根本的な価値の変容」をもたらしますので、
中年期において、あなたの人生における重大な決断や選択、意志決定を迫るでしょう。
それは、長い目で観れば、「必然的な学び」であると捉えることはできますが、
葛藤や受難の渦中において、
言い換えるなら、近視眼的に観れば、
「不遇」や「不運」としか感じられないような出来事が降って湧いてきます。
ただ、人生に起こることは、事実(現実)としては、当たり前のことが起きているだけで、
私たちが考え、求めているような意味も意義もなく、
植物の種が育ち、芽を出し、果実を実らせ、
枯れては次の種と大地の養分になっていく通過点でしかないのかもしれません。
それと同時に、当たり前に起こるのだから、必然性を伴っていると言えますので、
あらゆる物事に興味関心を持ち、様々な解釈や見解を検討しながらも、
結局はシンプルな(保留的な)答えに行き着くことになるかもしれません。
火星と冥王星は、「極端さ」という性質を持ちますが、
私たちが人生に対して持つべきものは、
極端な思想や哲学、実践値(経験値)ではなく、
また、「様々な極を体験する」だけでなく、
ふり幅のある経験から、どのような生き方・在り方をしてもいいのだと、自分に開き直って(自分を許して)、
堂々と、また、飄々と日々を営む心の自由さなのかもしれません。
あなた以外の人や、実体の無いものたちからの要求や要請は、
あなたの人生に影響を与えるけれど、あなたから選択の自由を奪うことはありません。
現実的にできるか否かについては、その時々の状況にも依りますが、
私たちが常に意識を向けるべきは、自分自身の内面です。
冥王星による中年の危機は、私たちの意識を内面に向け、
また、心の底をひっくり返し、温めてきた思いも不平不満もすべて放出し、
まさに、「スクラップ&ビルド(再構築)」を私たちに体験させ、
私たちにより人生の醍醐味を味合わせようと手を変え品を変え、心の成熟を促すのでしょう。
中年の危機②【n海王星 – 90° – t海王星】
2つ目の中年の危機は、海王星によって引き起こされます。
海王星は、時期によって、最遠の天体である冥王星よりも遠い軌道を持つ場合があり、
約20年の間、冥王星と位置関係の逆転が起こることがあります。
海王星による中年の危機は、40~43歳頃に迎えるとされています。
海王星は魚座のルーラーであるとともに、「金星のハイヤー・オクターヴ」の天体です。
魚座は水サイン、金星は受容性の天体ですので、情緒や感性に関わるのが海王星ですが、
海王星は広大な無意識の領域を司っています。
無意識と言えば、月ですが、月は個人の無意識の領域を司りますので、
規模はもちろんのこと、作用の仕方も異なります。
海王星は、土星が象徴する「境界線」や「枠」とは正反対の象意を持ち、あ
らゆる隔たりを「融解」し、浸透性や共感性の働きを持つ天体です。
そのため、海王星による中年の危機は、精神的な価値観の変化をもたらします。
海王星の象意に、薬物やアルコール、ギャンブル、逃避行動による「麻痺状態」がありますが、
それらは現実との繋がりを持てなくなるほどの精神不安によって引き起こされる、と言っても過言ではありません。
冥王星はどちらかというと、「逃がさない」働きを表しますが、
一方で、海王星は「逃避」へと意識を向けさせる働きがあります。
このように表現すると、
まるで海王星が「悪魔の囁き」のような働きをするように聞こえますが、
実際は、「〇〇でなければならない」という制約・制限を外したり、
自分にとって危機的な状況から身を引くために、一時的・短期的な逃避をすることで、
心と無意識と紐づく自我意識の崩壊を防ぐ側面がありますので、
一概に「悪魔的な働き」をするわけではありません。
ただ、金星と同様に、海王星が促す「甘いそそのかし(罠・幻想)」に飲み込まれ、自制心を失ってしまうと、
アルコール中毒やギャンブル中毒、薬物や他者への依存で後戻りができなくなる場合があります。
海王星と魚座は、最も深遠なる霊性や神秘性に繋がる意識やエネルギーを持ちますが、
それは言うなれば、現実性や肉体性を軽視したり、無頓着・無関心に陥りやすい性質であり、
私たちの本能と精神に刻まれている本来の姿や在り方と言えるかもしれません。
それと同時に、それまで精神性を高めたり、心の成熟に対して、強い関心が無かった場合に、
海王星による中年の危機のタイミングで、内面性や精神性を重視するようになり、
それまでの生き方と在り方とは真逆な方向性に進む人もいます。
海王星と魚座は、執着や同化といった固着的な状態をもたらす、現実性や肉体性を否定するだけでなく、
超越する働きを持ちますので、海王星による中年の危機によって、
内面世界の浄化や調整が進むことが考えられます。
壮年期の終盤の時期は、「社会的な私(顔)」を成り立たせることに躍起になったり、
または、入れ込み、他者や社会との接点を多く持つことで、
受け取る刺激や影響が多くなる時期ではありますが、
それと同時に、「自己表現が達成されなければ現実創造が進まないこと」を痛感する期間です。
特に、火星期の終盤から木星期への移行は、
個人主義から全体主義へと移行するプロセスの中で、
「自分の持てる力を出し尽くす」ということが命題となりますので、
公私ともに、自分自身を保つための、何かしらの精神的な支えが必要不可欠になります。
海王星は、アルコールや薬物などの中毒性の他、「詐欺」や「騙し」などの象意を持ちますので、
社会的・現世的な利潤・メリットを追い求める中で、
悪意のある他者からの裏切りに遭う体験を表したりもします。
冥王星による中年の危機では、金銭的な損失を経験し、再起を計る人もいれば、
海王星による中年の危機において、物質的な損益を経験するだけでなく、
辛い経験が発端となって、現実逃避や自己不信、人間不信に陥る場合がありますので、
自分自身にも他者に対しても、健全な意識で捉え、物事の道理を弁えることが大変重要です。
海王星の年齢領域は、84歳以降の老年期に当てはまりますが、
中年の危機は、まだまだ肉体的にも現実的にも地に足をつけて、自我意識を活用しなければいけません。
そのため、海王星による中年の危機は、
「より善く人生を生きる」という命題のために、精神性を高める物事に触れ、
現実で味わうことができる喜びを体験する場面を増やすために、
非現実的・非常識的な事柄に触れ、感化されることが望まれます。
冥王星による中年の危機の後は、自我意識の再生に奮起しようとしている時期ですので、
悪意のある人の口車に乗ってしまう、自分の弱さを予め戒める気持ちが必要であると同時に、
どのような状況でも、自分に言動の選択権(自由)があることを忘れず、
逃避行や幻想に惑わされ、人生の主人公を降りないことが重要です。
中年の危機③【n天王星 – 180° – t天王星】
3番目の中年の危機は、天王星によって引き起こされます。
天王星は、「水星のハイヤー・オクターヴ」の天体で、天王星は、土星とともに水瓶座のルーラーです。
面白いことに、水瓶座は、土星が築いてきた枠を活用することと、
逆に、飛び越えようとする両方の性質を兼ね備えています。
そのため、ネイタルチャートの土星のサインが水瓶座の場合と、
天王星のサインが水瓶座の場合では、性格や人生の歩み方に大きな差が出るのです。
通常私たちは、太陽期を迎える前の、21~23歳頃に、天王星のハーフリターンを迎えるのですが、
天王星の影響はそれほど強くないとされています。
もちろん、人によっては、天王星の働きが強い配置をネイタルチャートにあることで、そうでもない場合もあるでしょう。
例えば、天王星が12ハウス側から東の地平線(1ハウス・カスプ)から5度以内に位置し、
ライジング・スター(上昇星)であったり、アンギュラー・ハウスに位置していたり、
水瓶座に位置している場合(1996~2003年生まれ)です。
これらは、気質や性格に強い影響を与えますが、
人生のライフステージという観点においては、少し話が変わります。
天の采配なのかは分かりませんが、ライフステージにおける葛藤や受難は、
ネイタルとトランジットの天王星のオポジション(ハーフ・リターン)の時期まで、
また、自我意識が確立されるまではその激震が保留される、
または、猶予が与えられることが少なくありません。
その代わりに、それまでに築いてきた自我意識や信念体系、価値基準が崩壊する体験を、
私たちは中年期・壮年期の終盤に体験するのです。
天王星による中年の危機は、40~43歳頃に迎えるとされています。
人によっては、冥王星と海王星、そして、天王星による中年の危機を断続的に経験し、
総仕上げとして、カイロン/キロン・リターンを経験する人もいるでしょう。
公転周期の長い天体から危機がもたらされる、というのは数字的な想定です。
そのため、人によっては、順序に関係なく、
天体の強さと出生時の天体の配置によって、中年の危機におけるトランスサタニアンの影響が重なったり、
連動しているかといったことなどは、ホロスコープから読み解く必要があります。
天王星は、トランスサタニアンの中で、土星とカイロン/キロンに最も近い天体です。
そのため、ネイタルとトランジットの冥王星・海王星のスクエア(90度)のアスペクトよりも、
ネイタルとトランジットの天王星のオポジション(180度)・ハーフ・リターンの方が、
現実的・物質的な影響が強い場合が少なくありません。
ただ、物事の順序として、潜象的な変化が現実的に現れてきますので、
冥王星と海王星による精神的な葛藤や受難を経験し、
総仕上げとして、天王星からの働きを受け入れることで、中年の危機は、現実的に人生に浸透する、と考えられます。
カイロン/キロン・リターンと2回目のサターン・リターンに向けての人生経験
これまで、冥王星 ⇒ 海王星 ⇒ 天王星の順番で中年の危機を解説してきましたが、
この順序は、天体の運行スピードによるものです。
ネイタルチャートによれば、中年の危機のスパン・感覚が極端に短い場合がありますので、
個人の人生に起きる「劇的な変化」や「衝撃」の時期や影響力の程度は、
ネイタルチャートに示される要素次第と言えます。
天王星による中年の危機を経験した後、
私たちはまるで、牢獄から解放されたような現実を再び手に入れますが、
その際、身も心もボロボロであるものの、まだまだ生きていける不思議な感覚も手に入れることになるでしょう。
なぜなら、「生かされている猶予」は、「自分を活かす可能性・伸びしろ・余地」だからです。
そのため、2回目のサターン・リターンの前に訪れるカイロン/キロン・リターンの前に、
主観的な自己認識と社会的な役割に対する理解を進めるきっかけとして、中年の危機があると考えると、
私たちがいかに1人で、勝手に、自由に生きているわけではなく、
世界と繋がって生かされているか、ということが実感することができるでしょう。
古典占星術では、月から土星までの天体の他に、レグルスやアルゴル、スピカなどを採用する場面がある一方で、
現代占星術では、カイロン/キロンの他、リリス、四大小惑星だけでなく、
数えきれない数の小惑星をリーディングに採用し、
より多角的な解釈と世界観をもたらそうとする傾向があります。
当講座では、カイロン/キロンと四大小惑星までの解説に留めていますが、
リアルタイムでトランスサタニアンの3天体の影響を実感している私たちにとって、
土星とトランスサタニアン、そして、カイロン/キロンの働きはより深く理解する必要があることは事実です。
カイロン/キロンは、私たちに与えられた能力や才能、天才性が、
最初はトラウマや傷、形容し難い哀しみや無価値観から発展・開花されることを象徴する天体(小惑星)です。
私たちが自分の人生を生きている喜びや安心感、充実感は、どの年齢領域やライフステージでも得られますが、
「至高の達成感や喜び」は、内面に根差している影や闇、傷を光や光明、使命に転換しない限り得ることはできません。
この場合の闇と光は、二元的・対極的なものではなく、
まるで植物が育つように、種の状態が闇・影、果実が実った状態が光・光明である、
という流れ・成熟段階がある、とご理解ください。
生来的に与えられた能力や才能、天才性の開花の第1関門として、
私たちが体験するものは、「産みの苦しみ」であり、「認めることの苦しみ」です。
「自己理解が苦しみである」というのは不思議、且つ、理不尽ではありますが、
これは、私たちの自我意識や心理構造が、外的要因や環境によって形成され、
私たちがその事実を知った後に、
自我意識の喪失(アイデンティティ・クライシス)を経験する流れを汲み取る、と納得できるでしょう。
次に、他者が抱えている自分と似た「闇」や「心の傷」に対して、
違う角度・外側からのアプローチや、自らの恥部や心を相手に差し出すことで、
闇と闇が溶け合うことで光が生まれる体験によって、
私たちは「他者を通した救済」を体験します。
それこそが、長い年月をかけて形成された
「私(あなた)」という自我意識とともに育ってきた、「心の傷」や「心の闇」の成就であり、
内なる闇を光に転換させることで、
自分の生命が生かされていることへの喜びや達成感、感動、充実感、大安心(だいあんじん)の境地です。
私たちは月が司る闇から生まれ出て、再び月が誘う闇へと還っていくプロセスを生きています。
「年齢は記号」という表現がありますし、
確かに早くから精神的に成熟した人は多いのですが、
「実際に身を持って体験したエネルギー」や「実践によって培われたエネルギー」は、
机上の空論や妄想を一蹴するだけでなく、絶大な安らぎと癒しをもたらします。
そのため、「本来の自分の能力・才能・天才性を開花・活性させる」だけでなく、
世のため・人のためという「世界と繋がっている生命としての働き」を全うできるのは、
中年の危機を経て、木星期を歩み始めた頃と言えるのです。
そのため、心の成熟は加齢や年齢に依るものではなく、
実践・体験が伴っているか、によって判断することができますし、
その人の振る舞いや言動、存在感によって、無意識的に伝わるものだと言えるでしょう。
カイロン/キロンが私たちに促す闇の解放と光への転換は、
子どもを出産したり、養子縁組をすることによって親になることと、
家族や知人、他人の子どもの世話やお守りをすることの違いは、
血筋や血縁の問題ではなく、「自覚」や「役割」であり、
自らの人生経験に裏付けられた物事に責任・実践があるかどうか、
という「当事者意識」と「実践・経験」に見出すことができます。
子どもがいるか否かではなく、当事者として取り組んでいるか、が重要なのですね。
私たちの人生・世界は、二元性によって成り立っていますが、それは外面の世界の話です。
「たのしい」や「かなしい」、「さみしい」といった情緒に、様々な感情が入り混ざっているように、
内面の世界は混沌としています。
混沌とした世界こそが、内面・心・無意識の世界です。
月と土星は、個人の心と無意識の領域に根付いている(宿っている)影や闇を司るとともに、時間を司る天体です。
私たちの人生が果てしなく可能性に満ちているのは、
土星までの7天体の働きにより、骨格や土台、骨格、構造の中で駆動するシステムだけでなく、
二元性や物質性を超えた超越天体の働きが関与・介入するからです。
寿命が現代ほど長くなかった古代では、
トランスサタニアンの影響を受け止める器(身体)が育っていなかった時代、という解釈もできますし、
単純に、大宇宙のシナリオの段階において、タイミングではなかったのかもしれません。
とはいえ、物質性・身体性に守られ、支配されている私たちが、
超越天体の働きをまともに受け止めることはできません。
言うなれば、生身の身体で、超高温の熱を浴びたり、宇宙空間に出たら、私たちの身体は滅びてしまいます。
そのため、土星はトランスサタニアンの天体の働きから私たちを守ってくれている、という観方もできるのです。
そして、カイロン/キロンは、土星とトランスサタニアンの橋渡しの役割として、
受胎・出産の段階から、
私たちが後天的に自覚し、開花し、開発し、他者のためにその力を使えるようにと、
肉親や周囲の環境から、
癒えることがないように思える傷や痣が
私たちに授けられていることを教えてくれる存在なのです。
中年の危機は、カイロン/キロン・リターンに備えて、
自我意識の崩壊と再生、そして、発展のために訪れる宇宙からのギフトであり、試練であると言えるでしょう。
カイロン/キロンは、以下の記事で詳しく解説していますので、是非覗いてみてくださいね!
中年の危機は「自分を目覚めさせる」ために起こる運命!
今回は、トランスサタニアンの3天体によって引き起こされる「中年の危機」について解説させていただきました。
敢えて「引き起こされる」という表現をしているのは、
トランスサタニアン天体の働きが強引で、且つ、理不尽だと思わされる節があるからです。
働き盛りと言われる30代半ばを経て、私たちはより成熟していきます。
成熟した人の背景には、必ずと言っていいほどに、その人なりの苦労や受難、葛藤があるものです。
私たちは苦労をしようとしまいと、寿命が訪れたなら、肉体という器を脱ぐ他ありません。
そのため、私たちは積極的に自分の人生の流れと運命に意識的になり、
現実に対して能動的に創造性を発揮することで、
誰かや何かのためではなく、自分自身の生命の働きに報いることができます。
「中年の危機」は、30代後半から40代前半、もしくは、40代半ばに起こる、
「自己超越のための受難と変容の機会」であり、「成熟のための充電期間」です。
まずは、ネイタルチャートで、
トランスサタニアンの3天体がどの場所(半球・ハウス・サイン)にあるかを確認し、
トランジットのトランスサタニアンの3天体がハード・アスペクトを形成する時期を知りましょう。
ネイタルの天体が持つ資質を引き出すために、トランジットの天体は刺激を送り、
人生に準備された出来事の引き金を引きます。
ですから、ネイタルチャートの理解は絶え間なく続けながら、
自己理解と世界への理解を深めていく必要があるのです。
中年の危機によって揺り動かされる「エゴの立場」や「エゴの自尊心」は、
刹那的であり、表面的であり、いくらでも改良の余地があることを教えてくれます。
私たちという存在は、名前や肩書きでも、印象や評価でもなく、かといって、思考や感情そのものでもありません。
トランスサタニアンの3天体は、私たちがそもそも多次元的な存在であることを教えてくれます。
例えば、肉体は3次元、心や記憶は4次元、意識は5次元以上に存在していると仮定したなら、
私たちは肉の塊でも、浮遊する霊体でも、プラズマのような掴めない存在でもなく、
複合的・多次元的に存在する奇跡的な存在なのです。
そして、私たちが自分の人生を生きることができる時間や空間、他者と触れ合って、
自分という存在を観測・体験する機会は限られています。
1日1日が大切である理由は、「奇跡の今」が二度と帰って来ないからではありますが、
それとともに、「最善の機会が今にしか起こらないこと」が、常に実現しているからです。
苦しい時も、哀しい時も、寂しい時も絶えず繰り出してくる人生ですが、
それらを感じられるのは、あなたが楽しい時も、嬉しい時も、安らかな時も知っていて、
その対極的な感情の違いを体験しているからに他なりません。
ですからどうか、人生が四苦八苦だけでなく、
喜怒哀楽という緩急のついた、山あり谷ありの物語であり、
あなたは必ず、達成感と安らぎに辿り着くことができる旅を歩んでいることを忘れないでください。
トランスサタニアンのメッセージは、「今、目に見えるもの以上に体験できるものがある」です。
中年の危機を経て、より成熟した、自愛に満ちたあなたの未来が訪れますように。
今回も最後まで読んでいただきまして、本当にありがとうございます!
次回は本講座の総まとめとしまして、「総集編:深楽しいホロスコープ・リーディング」をお届けします。
ほぼすべての記事が長文であるにも関わらず、毎回の記事を読んでくださり、心より感謝しています。
本講座内の記事を何度も周回して、あなたの占星術ライフに活用してくださると幸いです。
それでは、次の記事でお会いしましょう!
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