人間関係リセット症候群とは
人間関係リセット症候群は、病名や心理学用語ではありません。
「人間関係を自ら断ち切る」という行動やそうしたくなる気持ちを表すために、いつの間にか出来上がっていた造語です。
この行動や気持ちが起きるタイミングは人それぞれ違い、年末年始や3月末といった節目の時期であったり、思い立ったら突然ということもあります。
人間関係をリセットしたくなる背景
可能性はいくつか考えられますが、専門家の間でよく言われているものの1つに「『常に他の誰かと絶え間なく繋がり続けなくてはならない』という世相に息苦しさを感じているのではないか」があります。
携帯電話が普及し、今ではスマホが当たり前のように日常に存在します。
そして、スマホユーザーの方のほとんどが、LINEやTwitterといったなにかしらのSNSアプリを使っていることでしょう。
SNSアプリは総じて「人と気軽にコミュニケーションを取る、自分の気持ちや状態を伝える」ことに特化したものです。
このような性質もあり、例え面と向かって会っていない時間でも、誰かとすぐにつながり続けられる状態ができあがっています。
これがポジティブな側面を持っているのは事実です。なかなか会えない人と気軽に連絡が取れるというありがたみは、特にここ数年感じたという人も多いと思いのではないでしょうか。
しかし一方で、誰かとつながり続ける状態がしんどくなるタイミングは誰しもあります。
私生活がうまくいっていない時に楽しそうな友人の投稿を見たら苛立つでしょうし、返事をすぐに返さないと機嫌が悪くなる人から連絡が来たらうんざりするでしょう。
このような日々の小さなズレや疲れの積み重ねから、「もうこの人とつながるのは嫌」「今の自分には必要ない」といった気持ちになり、結果として人間関係をリセットする行動に移るのだと考えられます。
リアルな日常場面では誘いを断って徐々にフェードアウトするなど、徐々に関係を薄くする手段はたくさんあります。
しかし、SNSはそれが難しいのです。
SNSには様々な機能が付けられてきましたが、ネットで方法を調べれば繋がっているかどうか簡単に確認できてしまうため、「自分の行動は相手に筒抜けなのではないか」と思い疲れてしまうという人もいます。
人間関係リセット症候群のやりがちな行動
※人間関係リセット症候群は病名ではありません。
既存の連絡先やSNSを削除する
スマホに入っている電話帳やSNSのアカウントを全て一気に削除します。
突然音信不通になる人もいれば、大々的に宣言してやる人もいます。
後者の場合、宣言を知った人たちから良くも悪くも「注目を浴びられる」という副産物があるため、注目を浴びたい・構ってもらいたい・自分が大切にされているが確認したいがために、繰り返し行う人もいるようです。
連絡先を改めて作り直す
人間関係をリセットした後、新たに連絡先やSNSアカウントを作り直し、新たな人間関係を築こうとする人もいます。
連絡先やアカウントを一新すると、過去の人間関係は引き継がれません。
「新しい自分」として新しい人間関係を模索し、「より良い人間関係」を作れるよう努めていると考えられます。
ある意味ではポジティブな行動とも言えます。しかし、頻回にわたって繰り返しているようであれば、一度じっくりご自身と向き合うと良いと思われます。
人間関係リセット症候群になりやすい考え方
自分の気持ちに鈍感
「自分が今どう感じているのか」に注意を払わない、違和感を感じても無視をしがちな人は、知らないうちに人間関係の疲れを重ねていることがあります。
言葉にできない疲労感や気持ち悪さが募り、限界を迎えたある日突然爆発するということがあり得るので注意が必要です。
NOと言わない・言えない
所謂「いい人」といわれやすい人です。
周りから求められると、自分の状況や気持ちに関係なく断ることができないため、余計周囲の人間から頼られる…という悪循環にはまっている様子が度々見受けられます。
いざ自分の気持ちを振り返ると「私は利用されてばかり」などと、静かに不満を募らせていることが多々あります。
しかし断れない・断り方を知らないため、代わりに人間関係をリセットするという手段を取る人もいるようです。
100点満点以外認めない
失敗に目が行きがちな人や完璧主義な人に多い考え方です。
「友達なら常に返事をするはず」「大切ならこんなことはしない」等、自分や他人に常に完璧な行動や関係を求める傾向にあります。
1つでも失点があると満足できないため、人間関係に不満を抱えやすいと考えられます。
必要以上に自分の行動をネガティブに捉える
完璧主義の人が陥りがちな考え方の1つです。
自分の行動や言動を振り返ったり、相手のささいな反応を見て「自分はいけないことをやってしまったのではないか」と考えて落ち込みやすい傾向にあります。
相手は気にしていなかったり偶然体調が悪かっただけということも多いのですが、この考え方をすると自分のネガティブな想像だけで相手の気持ちを分かった気になりがちです。
その結果「私はこの人と友達でいてはいけない」といった自責の気持ちから、人間関係をリセットする行為に及ぶ人もいるようです。
常に新しいことに興味があり行動に移す傾向にある・日常に変化があった
上昇志向の強い人が、自然と人間関係リセットのような行動をとることもあります。
新しいことに挑戦するなどして日常生活に変化があると、自分の価値観は少しずつ変わるものです。
すると、旧来の人間関係に疑問や違和感を覚え、距離を置きたいと考える人もいます。
また、結婚や出産などで日常生活に変化があり、現在の関係の優先順位が変わる人も多いです。
それが結果的に、人間関係をリセットしているように傍からは見えるのかもしれません。
HSPの人に多い?
HSPとは「生まれつき非常に感受性が豊かで繊細な気質を持っている人」のことを指します。
これは病名ではなく、人間の性格の個人差を説明する理由として「このような気質の人もいるのではないか」と考えられた結果生まれた概念です。
HSPの特徴として、想像力の豊かさ・繊細さが挙げられます。
相手の表情などといった細かな情報を拾いやすいため、周りの人が気づかないことにも気づいてしまい疲れやすいという傾向があります。
また、豊かな想像力がネガティブな方向に進むと、必要以上に人に気を配ったり、落ち込んでしまうこともあり得ます。
そのため、人間関係に疲れやすい気質であるとは考えられます。
しかし、残念ながら、HSPかどうかを判断する検査は確立されていません。
元々の気質なのか、それまでの人生経験の結果としてHSPっぽくなっているのかの判別も難しいため、人間関係リセット症候群はHSPの人に多いとは言い切れないのが現状です。
人間関係リセット症候群の対処法4つ
自分のストレスに気づく習慣を作る
自分のストレス度合や理由を振り返る時間を持つと、自分の管理に役立ちます。
寝る5分前にその日の疲れを点数化し、その点数になった理由を考えるのです。
例えば、「今日は60点。大体はうまくいったんだけど、××が妙なことを言ってて心配になって、その対応に疲れたんだろうな」といった具合です。
理由まで考えるようにすると、自分がどんな状況にストレスを感じやすいのかがわかるようになります。
ストレスへの対処法も考えやすくなるだけでなく、言語化によって誰かに相談しやすくもなるので、是非習慣化しましょう。
自分の気持ちを表現する練習をする
自分の気持ちを言葉にする機会を増やし、練習してみましょう。
気持ちの表現は一見簡単そうに見えるのですが、実は言葉選びの知識や練習が必要なのです。
人にいきなり話すのは恥ずかしい…という人は、日記をつけてみるのはいかがでしょうか?
日記は短くても問題ありません。
実は、メンタルヘルスの維持に日記は効果があると科学的に証明されています。
一度自分の気持ちや考えを書きだすと、自分で内容を客観的に見ることができるため、頭の整理がしやすくなるのです。
また、人と話すという方法もお勧めです。
誰かに直接会っても良いですし、最近は電話やオンライン通話、チャットもあります。
公的機関が出している相談サービスを利用し、気持ちの整理を手伝ってもらう方法もあります。
人と話すことの利点は、自分1人で考えなくても良いということです。
1人では浮かばない表現方法やアイデアが生まれやすいので、自然と表現の知識も身に付きます。
但し、中には詐欺や勧誘といった悪質なものもあるので、利用するサービスや人選びには気を付けましょう。
自分の気持ちを相手に伝え、折り合いをつける経験を積む
人間関係をリセットしがちな人の中には、人間関係トラブルの対処法として関係を断ち切るしか方法を知らないという人もいます。
手っ取り早い方法ではあるものの、これだけでは継続的な人間関係を育むという経験が積めません。
自分の気持ちを表現する練習をする中で、相手と折り合いが付けられるポイントを探す方法を考えましょう。
人と練習をしている場合は、具体的なアドバイスをもらえることもあります。
人間関係のコツをテーマにした書籍を参考にしても良いでしょう。
他人の評価を気にしない癖をつける
みなさんは、今日見た人の表情や言動をすべて覚えていますか?
おそらく、自信を持ってYESと答えられる人は少ないと思います。
このように、人間は案外見ているようで見ていないし、聴いているようで聞いていないことが日常茶飯事です。
それは自分だけでなく、相手も同様です。
試しに「昨日の夜ごはんはなんでしたか?」と誰かに聞いてみましょう。
即答する人もいれば、少し悩んで思い出す人もいますよね。
覚えていたとしても、細やかな味などは覚えていないのではないでしょうか。
このように、案外人間って適当に物事を見ていることが多いんです。
すべての物事を拾い評価していたら、単純に疲れてしまうためだと考えられます。
有名人のスキャンダルでさえ、時間が経つと感じ方がマイルドになっていませんか?
「所詮、人の評価はその場限りなんだな」という意識で過ごすようにしてみると、人間関係に振り回されにくくなるかもしれません。
人間関係リセット症候群の人の恋愛傾向
相手への期待が高い
「彼氏は彼女に奢るのが当たり前」「常に僕を楽しませてくれるだろう」
「毎日連絡をくれるのが愛している証拠」
上記のように、相手への期待が高すぎる・多すぎると、それに当てはまらない場合相手に幻滅しやすくなります。
期待外れだとがっかりした末に、「あなたは私の理想ではない」と簡単に関係を切ってしまう傾向が考えられます。
自分や他人への評価が極端
「私は常に要求を聴いてもらって当然」「自分は価値がないから、付き合ってくれるだけでもう奇跡」
など、極端な自己評価をする傾向にあるかもしれません。
自己評価が極端だと、相手に対する行動も極端になりがちです。
そのため、突然衝動的に「別れる」と言ってしまっている可能性もあり得るでしょう。
「1人の人間」として、自立した行動を心がけよう
上記の2つの傾向の共通点として、「自分という1人の人間として、自立した行動が苦手」というものが考えられます。
常に相手ありきの考え方なので、相手のちょっとした行動や言動から刺激を受けやすくなっているのです。
自分でできることは自分でこなす、自分で自分の機嫌を直す手段を作る、相手がいなくても楽しめる趣味を作るなど、自立した行動を意識して増やしてみましょう。
人間関係リセット症候群の病気の関連性
人間関係リセット症候群と似た行動傾向を持つというだけで、病気や障害と結びつけ決めつける行為は社会的なリスクが伴い大変危険です。
生活に支障が出ている等の明確な影響がある場合・家族や友人などが困ったり心配している場合は、精神科・心療内科の医師や地域の福祉窓口、臨床心理士・公認心理師に相談したほうが良いです。
そのうえで、この章を参考にしていただけたら幸いです。
人間関係リセット症候群とうつの関連
うつ状態・うつ病は、心身のエネルギーを使い果たしているため、正常な思考判断が難しい状態です。
そのため、うつ状態・うつ病の方は、自分や周囲の人に気を配った行動が出来なくなっている場合が多いです。
元気がないので、頻繁だった連絡が急に減ったり、連絡をしても反応が薄い・あっても元気がないという様子はよく見られます。
本人に悪気はありません。むしろ元気だった頃のようにできないため苦しんでいることもあります。
状態が悪化すると出てくる危険な兆候の1つとして「突然身辺整理を始める」というものがあります。
その一環として、人間関係に手を伸ばし、連絡先を削除したり、親しい人に意味深な文章を残してブロックする人もいます。
このような場合、早めに本人や周囲の人と状況を共有する連絡を取ったり、本人を病院に連れて行った方が無難です。
人間関係リセット症候群と発達障害の関連性
「生活に支障が出ており、診断基準を満たし、医師が診断がして初めて発達障害と言える」
「発達障害の特性は、個人によって濃淡が違うだけで、万人に備わっているかもしれない」
という2点を念頭に読み進めていただけたら幸いです。
まず、発達障害の特性の1つとして「見通しの持てない状況を嫌う」があります。
この特性が強い傾向にある人は、変化することそのものに強い不安・恐怖を抱きやすいです。
周囲に全く理解者がいないといった状況でない限り、自分から人間関係をリセットする行動には移りにくいのではないかと考えられます。
もう1つ、関連がありそうな特性として「衝動性」があります。
思い立ったら後先考えず行動してしまうため、そのなかで人間関係をリセットする人もいるかもしれません。
しかしよく話を聴いてみると、本人なりに不安な気持ちを積み重ねており、「こんなときどう行動したらよいかわからない」などと困った結果、リセットしている場合もあります。
また、「うっかり返信を忘れていた」「相手がどう思っているのか考えるのが苦手で。返事はしなくていいかと思った」等という理由で、結果的に人間関係をリセットしているように見えてしまうこともあるようです。
発達障害云々という面も考慮しつつ、その人自身の考え方や困っていることはないか等といった面に注意を向けていただくと良いでしょう。
まとめ
いかがでしたか?
人間関係リセット症候群は、自分にも知人にも起こりうることです。
ご自身を労わりつつ、ゆっくり向き合っていけると良いですね。
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