出生前診断に関する意見は多様ですが、一部の人々は診断を受けなかったことで深い後悔や憂鬱を感じることがあります。
SNSなどでは匿名で心の内を吐露する方も多く、そうした声には「私の人生はもう終わり、この子とともに惨めな人生を送るのだろうか」という切ない疑問や自責の念が散見されます。
たとえば、第二子がダウン症であると知った母親は、「出生前診断を受けなかったことが一生の後悔」とつぶやいています。
彼女は同じ病院の患者や障害者の親との交流会に参加することすら「惨め」と感じ、自分の人生や家族が今後どれだけの差別や困難に直面するのかという不安に苛まれています。
このような意見は、出生前診断の重要性や選択肢を考慮する際の一つの側面と言えるでしょう。
もちろん、ダウン症の子供がいる家庭が全て不幸とは限りませんが、出生前診断を受けることで多くの家庭が何を期待し、何を避けたいのか、その選択の背後にある感情や状況を理解する手がかりになるかもしれません。
このような実情を知ることで、出生前診断の是非を検討する際に、より多角的な視点で考え、準備をすることができます。
この記事では、出生前診断を受けなかったら後悔するのか、また出生診断を受けることによる後悔もあるのかといったことについて考えていきたいと思います。
出生前診断の本当の意義は?赤ちゃんを救うこと?
出生前診断とは、そもそもなぜ行われるのでしょうか。
「選べなかった命」出生前診断の誤診で生まれた子、というノンフィクション作家の河合香織さんの本があります。これは、実際にあった話です。
出生前診断で「異常なし」と報されて子供を産んだが、実は誤診でダウン症児だと告げられ、三カ月後、様々な合併症を抱えた乳児は、苦しんだ末に亡くなりました。
このように生まれてきて何かしらの疾患を持って生まれた赤ちゃんに対して適切に対処できるようにするのが、出生前診断の本当の意義と言われています。
この本では、主人公の光が誤診した医師を提訴しますが、裁判の過程で見えてきたのは、そもそも現在の母体保護法では、障害を理由にした中絶は認められていないということ。
要するに、法律上、胎児の異常を理由とした妊娠中絶はできないのです。
しかし、赤ちゃんがダウン症だとわかった親の9割近くが中絶を選ぶという現実があります。
この本の口コミには「自分の時代にはこの様な技術がなくて悩まずに済んだと思います。」という声も。
出生前診断をめぐる様々な当事者の声が見えてきます。
出生前診断を受けるか受けないか―その後悔の重さは?
出生前診断は、医学的には素晴らしい進歩と言えますが、それがもたらす心の負担は決して軽いものではありません。特に後悔という感情は、受けるか受けないかで形を変えますが、それぞれにその重さがあります。
日本で出生前診断といえば、NIPT(新型出生前診断)が一般的ですが、この検査は平成25年4月に一般になりました。人類の長い歴史の中で、出生前診断を受けて後悔するというのは、医療が進歩したからこそ、ここ数十年でできた、新しい悩みとも言えます。
出生前診断を受けなかった後悔
XなどのSNSでつぶやいている方のように、出生前診断を受けなかったことで後悔している人も少なくありません。特定の疾患や障害を持って生まれてくる可能性を早い段階で知らなかったため、精神的に大きなショックを受ける場合があります。この後悔は、一生涯にわたる親子の関係にも影響を及ぼす可能性があります。
出生前診断を受けた後悔
一方で、出生前診断を受けて何らかの障害が見つかった場合、それがもたらす後悔もまた大きいです。診断結果によっては、続けるかどうかの選択を迫られることもあり、その選択が将来にわたって心に重くのしかかることも少なくありません。
医療の進化で今まで選択する必要がなかったことにも選択できるようになったからです。
出生前診断を受けたいと思ったら、ぜひ受けてください。
出生前診断には賛否が分かれるテーマでもあります。それでも、私たちの立場としては「出生前診断を受けたいと思ったら、ぜひ受けてください。それが望ましくないと感じたら、無理にする必要はありません」と考えます。
何故なら、子どもを生むかどうか、そして出生前診断を受けるかどうかは、結局のところ親の選択です。誰にもその選択を強制されるわけではありませんし、胎児が選択する権利が科学的に明確にされているわけでもありません。この点からも、最終的な決断は親が行うべきだと考えています。
また、民法第3条では「私権の享有は、出生に始まる」と民法が明示しています。この観点からも、親が子どもを産むかどうか、そして出生前診断を受けるかどうかの選択は、親の自由と言えるでしょう。
一人一人の状況は違いますから、何が「正しい」か「間違っている」かは一概には言えません。出生前診断で得られる情報が一部の人々にとっては価値があるかもしれませんが、その逆に、倫理的または宗教的な理由で出生前診断を避けたいと感じる人もいるでしょう。
このように、最終的な選択は個々の親が自らの状況や価値観に基づいて行うものであり、それが最も重要だと私たちは考えます。
NIPTについてはこちらも参考にしてみてください
早期NIPT(新型出生前診断)とはどういう検査? | ヒロクリニックNIPT
無痛分娩から出生前診断まで―日本の出産環境が女性に課す負担
出産は喜びに満ちた瞬間である一方、その背景には数々の決断と負担が存在します。特に日本の出産環境は、多くの女性にとって厳しいものとなっています。
例えば、日本では、無痛分娩がまだ一般的ではありません。多くの医療機関で提供されていないため、女性が選択できる余地は少ないのです。欧米やフランスでは無痛分娩が広く受け入れられており、その選択が当然のように提供されています。日本で無痛分娩を希望する女性は、選択肢が狭く、場合によっては遠くの医療機関を訪れる必要があります。
さらに、出生前診断も日本では高額で、保険適用外とされている場合が多いです。フランスなどでは出生前診断は無料であり、女性が安心して選べる環境があります。このような違いが、日本の女性が出産に対して抱く不安や負担を増大させています。
日本では「根性」や「我慢」が美徳とされがちですが、出産に関してもその影響を受けています。無痛分娩や出生前診断を選ぶことが、なんらかの形で社会から評価されることがあります。このようなプレッシャーが、女性自身の選択を制限している場面も少なくありません。
出生前診断に関するサポートにしても、カウンセリングや遺伝カウンセリングなどのサポート、出生前診断を受けなかった場合のサポートなど、今後の課題は山積みです。
おわりに
今回の記事で取り上げたように、出生前診断は多くの人々にとって複雑な問題です。
一方で技術の進歩によって、より多くの選択肢が生まれているのも事実です。
ですから、もし出生前診断を検討しているなら、しっかりとした情報と専門の医師の意見を参考にして、自分自身で最良と思われる選択をすることが重要です。
私たちはあくまで情報提供をする側として、多角的な視点からこの問題を考察してきました。
出生前診断の「後悔」は個々の状況や価値観に依存するものであり、一概に「良い」または「悪い」とは言えません。
そのため、この記事が、皆さんが出生前診断に関する独自の意見や選択を形成する一助となれば幸いです。
最後に、出生前診断がもたらす可能性とリスク、心の負担と希望、これらすべてを総合的に考慮した上で、自分とパートナー、そして未来の子供にとって最もよい選択をすることが大切です。
何が正解かは一人ひとり違いますが、その選択を尊重し合える社会を目指していきたいと思います。
皆さんが抱える疑問や悩みに対する答えがこの記事で見つかれば、それが私たちの最大の喜びです。
何か新しい視点や情報が得られたら、それを他の人々と共有することで、より多くの人が良い選択ができる社会を形成していくことが可能です。
出生前診断の問題は簡単なものではありませんが、多くの選択肢と視点があるからこそ、一人一人の個々の状況に最適な選択ができるのではないでしょうか。
それでは、皆さんが出生前診断に関して、またはそれ以外のことでも、より豊かな選択をしていただけることを願っています。ありがとうございました。
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