あなたはヤマアラシのジレンマという言葉を聞いたことがありますでしょうか。
心理学を学んだ人や、アニメ「エヴァンゲリオン」の中で登場して初めて知った人もいるかも知れません。
筆者もこの意味こそ知っていたものの、今一度この言葉を深い理解した時に「日常生活のあの状況もヤマアラシのジレンマ効果だったんだ!」と自身の生活に役立つ心理学であることに気が付きました。
そこでこの記事では、ヤマアラシのジレンマについて知りたい!という方に向けて、どういう心理状態で回避するにはどう対処すればよいか、日常生活で起こりうる例を交えながら詳しく紹介していきます。
執筆者kaimai100
大手ゆるふわホワイト企業にて、人工知能を活用したサービス企画職に携わるサラリーマン33歳。 死ぬまでにやりたいことをリスト化したバケットリスト達成のため、大学生の頃からリストを更新し続け、達成したリストの数は200を超えるが、時間とお金がかかるリスト(例えば世界一周旅行)は達成できずに蓄積され続ける。 そこで将来FIREするために、複数サイトを運営するアフィリエイターとしてひたむきに頑張っている。そんな男です。
ヤマアラシのジレンマとは・意味
ヤマアラシのジレンマとは、実用日本語表現辞典(weblio)では以下のように説明されています。
鋭い針毛を持つヤマアラシは、互いに寄り添い合おうとすると、自分の針毛で相手を傷つけてしまうため、近づけない、というジレンマ。ショーペンハウアーが寓話として用いた表現とされる。
出典元:ヤマアラシのジレンマの意味や使い方 実用日本語表現辞典(weblio)
この寓話(ぐうわ)をもう少しストーリー調に表現すると、以下のようになります。
寒い冬のある日、ヤマアラシの一群がお互いの体温で凍えることを防ぐために、ピッタリとくっつきあいました。
けれども、お互いの針のような毛があたって痛く、また離れます。
それを繰り返しているうちに、ヤマアラシたちは適当な距離を見つけていきました。
ショーペンハウアーがそこまで意図したかは不明ですが、心理学者フロイトが心理学に例として取り入れたのがキッカケで、いつしか人間の精神構造をうまく体現する比喩として用いられることが多くなったのです。
例えば、青年期における対人的葛藤を例に言いますと、「あの子と仲良くなりたいけどこの関係が壊れてしまうのが怖くて告白できなかった…」という経験は誰しも思い当たることでしょう。
甘酸っぱい思い出と感傷的に片付けられることが多いですが、心理学で言うとヤマアラシのジレンマ効果が働いていた、ということになります。
ヤマアラシのジレンマを超簡単にわかりやすく説明すると?
ヤマアラシのジレンマを超簡単にわかりやすく説明すると、「近づきたい欲求もあるが傷つくのをおそれて一定距離以上は近づけない心理のこと」
ここであれ?と思った人もいると思いますが、実用日本語表現辞典(weblio)の説明では“自分の針毛で相手を傷つけてしまうため、“という相手に特化されていましたが、この心理の本質は自分自身が(またはお互いに)傷付いてしまうことを恐れるところにあります。
ヤマアラシのジレンマに陥りやすい人の特徴
では、どのような人がヤマアラシのジレンマに陥りやすいのでしょうか。
諸説あるので一概には言えませんが、筆者の思う特徴を一言で言うと「嫌われたくないという思いが強い人」です。
アルフレッド・アドラーの思想(アドラー心理学)を題材にした、岸見 一郎著者の嫌われる勇気のタイトルにもなっているように、人間は根本的に相手に嫌われたくないという根本的な目的(欲求)を持っています。
★「嫌われる勇気」★
筆者の経験則からの説明となることをご容赦いただきたいが、私は青春期時代、とにかく八方美人な人間でした。
人から好かれたい!(≒嫌われたくない)という気持ちが人一倍強かった私は、本当の自分をさらけ出すことなく当たり障りのないコミュニケーションを同級生と取っていました。
これにより、幅広く友人はできたものの、親友と呼べる人間はただの1人としていなかったのです。
これは、当たり障りのないコミュニケーションを取っていたこと(つまり自分に相手の針が刺さらない適切な距離を保っていたこと)が原因だと感じています。
もう少し心理を深く掘っていくと、この嫌われたくないという欲求は後天的に身についたもの(赤ちゃんには嫌われたくないなんて感情はありませんよね)ですので、「過去に恋人との喧嘩が絶えず別れることになり深い傷を負ったことがある」等の何かしらの理由があったから身についてしまったものです。
しかし、そうした経験は誰しもが経験しているものであり、ここの原因を深ぼってもあまり意味がありません。
後ほど詳しく記載しますが、大切なのは自分がそういう感情を持っていることに気づき受け入れ、適切に対処していくことです。
ヤマアラシのジレンマは嘘?本当?
前項までをお読みいただいた方は理解されていると思いますが、ヤマアラシのジレンマは確かに存在します。
心理学で用いられていることが明確な答えではありますが、私達の経験則からもその心理が私達の中に存在していることに用意に気づくことができるでしょう。
ヤマアラシのジレンマ心理状態
心理状態としては、以下のような心理状態が挙げられると思います。
- 嫌われたくない
- 人から好かれたい
- 自意過剰
よくある例として挙げると、
「肌荒れしているから外に出かけたくない」「メイクがうまくいかないからデート気分じゃない…」と思っていても、いざ人に会うと「どこが?」と聞かれた経験はありませんか?
自分が気にしているほど、相手はあなたのことを気にしていないんです。
ヤマアラシのジレンマの対処法
さて、ここまでヤマアラシのジレンマについて詳しく語ってきたわけですが、そういう状態から脱却したいという人に向けて対処法を紹介したいと思います。
改めてにはなりますが心理学ではヤマアラシのジレンマとは「近づきたい欲求もあるが傷つくのをおそれて一定距離以上は近づけない心理のこと」ですので、これを対処するということはどういうことでしょうか。
「傷つくことをおそれない強い精神力を手に入れること?」「相手と距離を詰める能力を手に入れること?」人それぞれ解は異なってくると思うので、ここでは対処法とは何を指すのか定義したいと思います。
ヤマアラシのジレンマを対処するとは、まさしく寓話のヤマアラシさん達がやっている通りで、「傷つくことを恐れずに近づいたり離れたりを繰り返して適切な距離感を見つけることができる」状態のことと定義します。
ではどのようにして「傷つくことを恐れずに近づいたり離れたりを繰り返して適切な距離感を見つける」のでしょうか。
前提として必要なことを言いますと、今自分が「ヤマアラシのジレンマに陥っている(≒傷つくのをおそれて一定距離以上は近づけていない)」と気づくことが大切です。
そのように自分を客観的に把握することができれば、無意識の中で感じている「嫌われたくない」という欲求に左右されることなく、本当に自分がなりたいと思っている状態(例えば恋人と距離を縮めた状態)になるための方法を冷静に考えることができるからです。
しかし、恋愛相談をよく受けて的確な答えを返すことができる女性が、自分のことになるとさっぱり分からない…となってしまうように、自分の心理状態を自分自身で把握・理解することは意外と難しいのです。
そこで、人との関係が何か上手く行かない…と感じた時は一呼吸置き、ヤマアラシのジレンマが働いていなかったか振り返ってみると良いでしょう。
そこに気がつくことができたら、次に紹介する親友や恋人などパートナー別に対処法を実践してみましょう。
親友の場合
「友達は多いけど親友と呼べる人がいない」「無難な会話はできるけどあまり友人のことを知らない」など交友関係が希薄だと感じている人は、ヤマアラシのジレンマに陥っている可能性があります。
親友の場合の対処法としては、あなたともっと仲良くなりたいと素直に打ち解けてみるのが良いのではないでしょうか。
親友であれば、きっと受け入れてくれるでしょう。
もしまだ親友のレベルに達していない友達であれば、勇気を出して距離を詰めていきましょう。
その営みがたとえ失敗して関係が崩れてしまったとしても、必ずあなたに行為を持ってくれる人は現れますし、そうやってコミュニケーションは磨かれていくものだと筆者は考えます。
好きな人の場合
「自分の素の状態を好きな人に見せられない」「友達以上恋人未満の関係が続いている」などパートナーになることを希望する相手との距離感を縮めることが出来ていない人は、ヤマアラシのジレンマに陥っている可能性があります。
好きな人の場合の対処法としては、親友の場合と同じで、もっと仲良くなりたいと素直に打ち解けてみるのが良いのではないでしょうか。
普段から気になる関係の相手であれば、「私もそう思っていたよ!」と良好な答えが返ってくる可能性は高いのでぜひ思いを伝えると良いでしょう。
「素の自分を出して嫌われたり今の関係が壊れてしまったりしたらどうしよう?」と思うからもいらっしゃるかも知れませんが、それで終わってしまう関係ならそれまでだったということです。
自分を偽り不安な状態のまま過ごしていくよりも、ずっと建設的だと思います。
恋愛や恋人の場合
「恋人関係が長続きしない」「気持ちがすれ違いやすい」等でうまくいかないという人は、ヤマアラシのジレンマに陥っている可能性があります。
好きな人の場合と若干異なりますが、相手に自分が思っていることを素直に伝えることが大切だと思います。
言いたいことがあるのに言わないというのは、相手にトゲが刺さらない代わりに自分に刺さっている状態です。
恋愛や恋人で悩んでいる方は、まずは自分自身をさらけ出すところから始められると良いかも知れませんね。
カップル・結婚した夫婦の場合
「結婚しているのにパートナーのことを全然知らない」「昔はもっと近い距離にいた気がするのに…」等のように夫婦仲が希薄だったり冷え切っていたりする場合は、ヤマアラシのジレンマに陥っている可能性があります。
似たような回答となり恐縮ですが、やはり大切なのは相手に自分が思っていること(もっと昔のようにデートしたりしたい!等)を素直に伝えることが大切だと思います。
しかし、結婚して距離が近すぎるがゆえに恥ずかしいという気持ちもあるかと思いますので、その場合は手紙やメール等の方法でも良いと思いますので、気持ちを伝えてみてはいかがでしょうか。
きっと昔のように二人の距離は縮まると思いますよ。
会社・仕事・職場での人間関係
社会人になってからは、私自身も一番経験しているのがこの人間関係です。
「仕事仲間ともっと仲良くしたいのにご飯に誘う勇気がない」など距離を縮めることに抵抗を覚えている人はヤマアラシのジレンマに陥っている可能性があります。
※会社・仕事・職場での人間関係は様々な要素(利害関係やハラスメント問題など)が絡み合うので一概には言えませんし、距離を縮めるのが必ずしも良いとも限りません。
ただし、それでも相手ともっと仲良くなりたいのであればそう相手に伝えるのが一番良い方法です。
仕事関係であれば、それで関係が崩れることはまずありませんし、相手も自分と同じ心理を持った人間です。きっと公私ともに仲良くなれる関係性になれると思いますよ。
親子の場合
青春期時代にはよくありがちな親子関係の場合。
「家族間のことを全然知らない」「家族間で会話が殆どない」等のように家族仲が希薄だったり冷え切っていたりする場合は、ヤマアラシのジレンマに陥っている可能性があります。
家族間の距離を縮めるためにも、自分の思うことを相手に伝えることを含めて率先してコニュニケーションを積極的に取るようにしくと良いでしょう。
ヤマアラシのジレンマの類語
ハリネズミのジレンマの類語は、下記ような言葉が該当します。
- 板挟み
- あちら立てればこちら立たず
- 立ち往生
本来の言葉の持つ意味としては全く別のものになりますが、どちらに行くこともできず、苦しんでいるイメージがあるという点では似ていますね。
ちなみに「ハリネズミのジレンマ」と呼ぶ方もいますが正しくは「ヤマアラシのジレンマ」となります。
このハリネズミのジレンマという言葉が広がったのには、ただこの2種の動物が似ているからではありません。
ヤマアラシのジレンマを英訳すると「hedgehog’s dilemma」となるのですが、hedgehog単体で訳すとハリネズミなんです。(ヤマアラシ単体はPorcupine)
hedgehog’s dilemmaという言葉を見た人が誤って日本語訳した結果、「ハリネズミのジレンマ」という言葉が産まれたんですね。
ヤマアラシのジレンマはエヴァで有名に!何話?
ヤマアラシのジレンマは、アニメ「新世紀エヴァンゲリオン」第3話「鳴らない、電話」の赤木リツコと葛城ミサトが車の中で会話するシーンで登場します。
また、第4話「雨、逃げ出した後」のサブタイトルにも用いられています。
何故このサブタイトルが付けられたかは諸説ありますが、「他者との間に心の壁(ATフィールド)を作ってしまい、周囲の人とうまく距離を縮めることができない主人公碇シンジの葛藤を表現する言葉」としてピッタリだったからでしょう。
ヤマアラシのジレンマ 書籍
本記事をお読みになった方は、ヤマアラシのジレンマがどういうものか概ね理解いただけたかと思います。
さらにもっと深く知りたい、という方におすすめの本を紹介します。
発売日が1974年とかなり古い本ですが、ヤマアラシのジレンマに特化した内容の本です。
様々な人間関係をトピックスとして取り上げて、その関係に対して著者の見解を述べる形で話が進むため、色々なケースを知りたいという方にはピッタリの内容だと思います。
なお、本著は三菱UFJ銀行会長 園潔氏もリーダーの本棚(2020年2月)で推薦されています。
人間関係とは「社会的存在としての人間」と「個性としての人間」のぶつかり合い。そう喝破しています。納得感がありました。いつの時代も社会にこぎ出す若者は悩みを抱えます。そんなときに挑戦してほしい一冊です。
人付き合いの深い悩み 『山アラシのジレンマ』で突破|NIKKEI STYLE
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まとめ
いかがだったでしょうか。
この記事では、ヤマアラシのジレンマについて知りたい!という方に向けて、どういう心理状態で回避するにはどう対処すればよいか、日常生活で起こりうる例を交えながら詳しく紹介してきました。
人間関係とはそれぞれの個性同士のぶつかり合いですので、悩みを抱える人も多いと思いますが、人間にはこの心理状態があるということを理解し気づくことが、良好な人間関係を築き上げるきっかけになると筆者は信じています。
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