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獣医師の年収が低い理由

獣医師の年収が低い理由

獣医師を目指せる大学は、全国に17校存在します。

国家資格である獣医師免許を取得するだけでも難関なのに、一般に、人間の医者に比べ、獣医師の年収は低いと考えられがちです。

一般的な動物病院での初任給は、約23万円から25万円程度です。

新卒大卒の初任給が約21万円、大学院修士課程修了で約23.8万円なので、同程度の初任給しかもらえないことが分かります。しかし、動物病院などで働く獣医師は、獣医師全体の約4割未満です。多岐に渡る獣医師の仕事内容から年収が1,000万円を超える人もおり、年収はさまざまと言えるでしょう。

今回は、獣医師の年収について紹介します。動物が好きで将来は獣医師として働きたい人や、今後キャリアアップを目指し収入を上げたい人のためにも、獣医師の仕事内容から年収などを比較します。

獣医師の年収が低いとされている理由

獣医師の年収が低いとされている理由の1つとして、家庭における愛玩動物である犬や猫などの飼育数の増加から獣医師数も増えており、飽和状態であることが挙げられます。以前はペットの数よりも動物病院の方が多く、3,000万円以上稼ぐ獣医師もいたりと比較的年収は高い傾向がありました。しかし、農林水産省が発表した「都道府県別飼育動物診療施設の開設届出状況」によると、令和3年度では全国で16,478件開設しています。これには産業動物と小動物も含まれており、産業で応物では4,043件、小動物その他では12,435件です。平成29年は11,839件なので、年々増加していることが分かります。

また、同じ医療でも人とペットでは保険適用の範囲が変わります。人では3割の治療費負担で診療できるのが、ペットでは全額自費です。

高額な治療費が必要な場合、病院への受診を躊躇する飼い主もいます。

他にも動物病院で必要な設備などに膨大な費用が必要です。治療費などをぎりぎりまで下げても、利益を上げることが難しい現状と言えるでしょう。少ない利益の中で、必要設備や人件費などをまかなうため、ほかの職種と比較し動物病院の勤務医の年収は低いとされています。しかし、前述でも述べているように獣医師の仕事は多岐にわたり、仕事内容によっては高収入を得ることができる場合もあります。

出典:農林水産省「令和3年都道府県別飼育動物診療施設の開設届出状況

獣医師の平均年収

厚生労働省が発表したデータによると、獣医師の平均年収は、令和3年度で約592万円とされています。

このデータでは平均年齢は36.1歳、勤続年数は約6.8年、月の超過労働は約21時間です。一般的な日本人の平均年収は約461万円とされているので、比較しても決して獣医師の年収が低いわけではありません。むしろ、高い部類に入るでしょう。

出典:厚生労働省「令和3年度 賃金構造基本統計調査

年代別平均年収

大学を卒業して間もない獣医師が雇われて勤務する場合、年収は約350万円程からと言われています。経験を積み、スキルを高めるにつれ一人前として認められるようになり、年収が上がっていきます。

20代

20代の平均年収は約528万円です。

20代前半など、獣医師学科卒業したばかりの人では見習いやアルバイトとして働いている人も多く、平均年収は約350万円程度と低くなっています。これは、見習いやアルバイトでは賞与が支給されないパターンも多いことから、年収が低いと推察されます。

30代

30代の平均年収は約593万円です。

経験やスキルも上がり、30台後半では約700万円台の年収を得る人も増えてきます。女性獣医師では、結婚や妊娠などで一次キャリアが中断されてしまう場合もあり、30代では女性よりも男性の方が年収が高い傾向です。

40代

40代の平均年収は約664.5万円です。

40代から働き盛りとして年収が上がってきており、開業を決意するのもこの年代に一番多いです。そのため、開業医と勤務医の差が出始めているのが特徴です。

50代

50代の平均年収は約1,116万円です。

全年代で一番高収入なのが50代です。開業医としてバリバリ働いて結果を出している人も多く、50代後半では平均年収約832万円となっています。

しかし、厚生労働省が発表している「賃金構造基本統計調査」では、開業医の年収は集計されていないため動物病院勤務の獣医師のみの結果になります。母数自体も少なくデータは毎年変動するため、実態を反映していない可能性に注意してください。

規模別の獣医師の年収

獣医師の年収は、勤める企業規模が大きくなるにつれ比例するように高くなります。

10人〜99人の事業所では平均年収約509万円ですが、1,000人以上の事業所となると格段に上がり平均年収約1,114万円です。しかし、母数自体も少なくデータは毎年変動するため、実態を反映していない可能性に注意してください。

獣医師の仕事別年収と内容

獣医師の代表的な仕事は、町の獣医さんと呼ばれる動物病院での勤務が有名です。しかし、動物病院で勤務する獣医師は全体の約4割程度です。他にも、動物園や水族園、製薬会社、JRAなどの馬を専門に診る獣医師など仕事内容は多岐にわたります。

ここでは、主な選択肢として「小動物臨床獣医師」「産業動物臨床獣医師」「公務員獣医師」「産業動物臨床獣医師」「一般企業獣医師」「動物園・水族館獣医師」の6つについて紹介します。

小動物臨床獣医師

動物病院などに勤務する獣医師の年収は、約300万円〜数千万円程度です。犬や猫などのペットの診療に従事しており、町の獣医さんとして働いています。犬や猫などの、小動物を特定として診る場合もありますが、他の小動物も診断する総合的な動物病院が一般的です。小動物の種類は多岐にわたるため、一人前になるにはさまざまな経験とスキルが必要になります。特に近年のペットブームから、ハムスターやウサギなど多くの知識が必要となり、求めるニーズに応じられるようにならなくてはいけません。

必要な経験やスキルを蓄え、独立開業した場合は平均年収約1,000万円以上となっており、成功すれば高収入が期待できます。しかし、集客にうまくいかなかったりとリスクもあり、失敗した場合には勤務医以下の収入になってしまう可能性もゼロではないので注意が必要です。

公務員獣医師

公務員として勤務する獣医師の年収は、約600万円〜650万円程です。

平成30年度のデータによると、家畜伝染病の予防や食肉検査などで約9,353人の獣医師が従事しています。

公務員獣医師は、大きく国家公務員と地方公務員の2つに分けられます。国家公務員獣医師では、厚生労働省や農林水産省管轄の検疫所などに勤めます。地方公務員獣医師では、家畜保健衛生所や食肉衛生検査所、公営動物園・水族館などに勤めます。海外からの輸入食品や動物などの病原菌を国内にいれないよう事前に防止したりと幅広い仕事があり、それによって業務内容や年収も異なります。そのため、動物の体調管理などの診療以外にも、検査などに関して幅広い知識が必要です。

産業動物臨床獣医師

産業動物診療として勤務する獣医師の年収は、約400万円〜600万円程です。家畜や家きん(産業動物)の診療に従事します。牛や馬、豚などの産業動物の診療を主にします。

他にも日本中央競馬会(JRA)に属し、競走馬などの診療を行う場合、年収が比較的高く1,000万円超えを目指すことが可能です。JRA獣医師は倍率も高く、勤務するのは狭き門と言えるでしょう。主に研究職や臨床獣医師の2つの業務内容を選択できます。競走馬の治療や予防注射など防疫業務が主な仕事です。

研究職の場合は、競走馬に関するすべての研究や調査などに携わります。近年の採用実績は年間平均で5人ほどとなっており、人気の就職先でありながら募集人数は極めて低いです。

他にも酪農臨床獣医師として、家畜などの伝染病対策や病気やけがの治療、生産性や収益性の向上などにも勤めます。酪農臨床獣医師は、獣医師が不足しており多忙な業務内容が問題視されています。しかし、国も問題を認識しており日本の発展のためにも今後改善されることが見込まれます。

一般企業獣医師

一般企業獣医師として勤務する獣医師の年収は、約600万円〜800万円程です。製薬会社やペットフードメーカー、ペット保険会社、獣医学関連出版社などで獣医師の資格を活かして働くことが可能です。

なかでも製薬会社は、薬の開発に必要な動物実験を行ったりし、年収600万円以上と、部署によっては800万円以上を見込めます。他にも一般企業では、会社の福利厚生が充実している場合が多く、交通費や住宅手当などの恩恵を受けることができます。安心や安定に重きを置きたい場合には、一般企業獣医師を目指してみるのもいいかもしれません。

動物園・水族館獣医師

動物園・水族館獣医師として勤務する獣医師の年収は、約400万円〜450万円程です。

都道府県や市町村などが運営する公営動物園や一般企業などが運営する民間動物園などで野生動物の診療に従事します。例えば、上野動物園や旭山動物園などが公営動物園に該当します。

公営動物園で働きたい場合には、獣医師として都道府県や市町村に就職することが一番の近道です。公務員として就職後、配属先に動物園を希望します。しかし、あくまでも希望なので必ずしも動物園で働けるとは限らないので注意してください。

最近では動物園獣医師として募集をしている自治体もあるので、確実に動物園獣医師になりたい場合はそのような自治体から応募をすることをおすすめします。

民間動物園は、小規模な所が多く獣医師の募集はごく少数で年収も低い傾向です。同様に、すぐに現場で活躍できる人材を求める傾向が高く、新卒での就職はかなり不利になると言えるでしょう。そのため、年収が低くてもどうしてもここで働きたいというような人に向いています。

まとめ

今回は、獣医師の年収について紹介しました。

獣医師の年収は、仕事の内容や経験により約300万円から数千万円以上まで幅広く変わります。

動物が好きで獣医師として働いていても、年収が低かったり労働時間が長かったりと環境によっては疲弊してしまうかもしれません。しかし、獣医師の資格を活かして働ける仕事は多く、スキルや経験に応じて環境を選択できます。

将来、獣医師として働きたい場合には学生のうちから解剖学や生理学などの基礎を固めましょう。現場では、日々目まぐるしく時間が過ぎていき覚えることも膨大です。そのため、基礎がよく理解できていないと現場に出たときに大変な思いをしてしまうかもしれません。働き方や働く環境の選択肢が多く、年収の幅も大きい獣医師の仕事。若いうちは思うように稼ぐことができず苦労することもあるかもしれませんが、キャリアアップすることで高収入を得ることができます。

もし、今の現状に悩んでいる場合はぜひ参考にしてみてください。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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