多様化する現代。
さまざまな生き方や働き方が存在します。
そんな中、子どもを産まないという選択をする人も増えています。
共働きで子どもを意識的に作らない、持たない夫婦、また、その生活観のことを「DINKS(ディンクス)」といいます。
「Double Income(共働き)No Kids(子どもを持たない)」の頭文字をとったものです。
意識的に子どもを持たないという価値観を指すため、結婚して間もないため子どもがいない夫婦や、子どもがほしいが子供がいない夫婦などは通常、DINKSには含めません。将来的に子どもを持つつもりの場合は「Dinky」と呼ぶことがあります。
多様化する生き方を尊重しあう世の中になりつつある現代ですが、そんなDINKSに対して批判的な意見を持つ人もいます。
子どもを産まない人はずるいのか?
「結婚したら子どもを産むのが当たり前だ」と思っている人の中には、意識的に子どもを産まない人に対して「ずるい」「自己中」だと思っている人もいるようです。
また、「子供を持たないなんて親不孝」「子供を持たないと人間的に成長しない」などの厳しい意見も……。
なぜそのような批判的な意見が生まれるのでしょうか?
子どもを産まない人はずるい! という人の主張
自分が子どもを産んで苦労したから人にも同じ経験をさせたい
理由の1つとして、「自分が子どもを産んで苦労したから、人にも同じ経験をさせたい」という考えがあるようです。
子育てには金銭面・体力面、時間面など、さまざまな負担があるのも事実です。そのため、中には「自分の苦労を他の人にも味わってほしい」と思う人もいるようです。
少子化を助長し国家の衰退を助長するだけ
また、日本の少子高齢化問題も、DINKSへの批判的な意見を生み出すひとつだと考えられます。
少子高齢化が進むと、労働人口が減るなどの経済的な影響があるほか、地方自治体の維持が困難になる、医療・介護費を中心に、社会保障に関する給付と負担のバランスが取れなくなる、など国としても困ることが多くあります。
実際に、2018年、自民党の二階俊博幹事長が、「子どもを産まない方が幸せじゃないかと勝手なことを考えている人がいる」「皆が幸せになるためには子どもをたくさん産んで、国も栄えていく」などと述べたというニュースも話題になりました。
政府は妊娠や出産、不妊治療に関する給付金・補助金を用意したり、男性の育休取得率を上げようと試みたり、さまざまな取り組みをしています。
多様化が進む一方で、政府やメディアによって、社会的にも子どもを産んだほうがいいという同調圧力が高まっている側面もみられます。
しかし、実際のところ、妊娠や出産、不妊治療に関する給付金・補助金だけで十分なのでしょうか?
例えば、金銭面を懸念して、子どもを産まないという選択をしている人にとっては、収入の増加や、生活費や税金の負担を減らすことの方が重要かもしれません。
DINKS・子どもを産まない人がずるいと妬まれる理由
なぜ、「子どもを産まない人はずるい」と妬まれてしまうのでしょうか?
その理由をいくつか見ていきましょう。
金銭的な負担から妬んでしまう
子どもを産んで育てることには、金銭的にもかなりの負担がかかります。
DINKSは、自分のためにお金を使えたり、子育て世帯より貯金がしやすかったりするため、そういった点を妬んでしまう人もいるようです。
また、中には「自分はお金や時間を費やして、子育てをしている。日本の少子高齢化の改善に貢献しているのに、DINKSは何もしていない」という意見もあるそうです。
今の日本では経済面での不安を持つ人も多くいます。
生活するお金、老後のためのお金……。物価高や増税など、1人で生活するのにもお金がかかりますが、子どもがいるとさらに教育費などもかかります。
そんな経済面の不安からも、労働しやすく、貯金もしやすいDINKSを妬んでしまうというケースもあるでしょう。
DINKSは自分の人生を楽しんでいるように見える
子どもを産むと、長期間仕事を休むことになったり、自分の時間を自由にとれなくなったりと、行動的・時間的な制限もかかってしまいます。
また小さな子どもがいると、旅行で長期間、家を空けることも難しくなるでしょう。
その一方で、DINKSは趣味や遊ぶことにも比較的時間を使いやすいです。子どものために仕事を休む必要もありません。
欧米では子どもをベビーシッターに預けるという習慣が一般的ですが、日本ではまだそのような習慣が広まっていないこともあり、「子どもを産むと自分の時間がなくなってしまう」「どんなときも子どもが優先で、親は我慢しなければならない」という考えに至ってしまう人もいます。
そういった背景から、自由に見えるDINKSを羨ましいと思ってしまうのかもしれません。
男性社会では、出産と子育てでキャリアを諦める現実も
上述した通り、政府が男性の育休取得率増加に取り組んだり、企業もさまざまな制度を設けたりしています。
実際に、育児・介護休業法が2021年に改正され、男女とも仕事と育児を両立させられるような制度を新設しました。
厚生労働省が発表した「2021年度雇用均等基本調査」によると、男性の育休取得率は9年連続で上昇し、過去最高の13.97%となりました。
しかし、「2025年までに育休取得率30%」という政府の目標とはかなりの差があります。
また、日本企業ではまだまだ男性に有利な、いわゆる「男性社会」だといわれる環境も多く、出産・子育てというライフイベントが女性のキャリアにとって不利になってしまう可能性があります。
出産・子育てにより、思い描くキャリアを諦めなければならなかった女性は、子どもを産まない選択をして理想のキャリアを描いていく女性を妬んでしまう場合もあります。
産休・育休を取得しても不利にならない、安心して働ける環境が理想です。
誰もが働きやすい社会の実現にはまだまだ、多様性への理解や、制度の改善が必要でしょう。
キャリアチェンジを気軽にできない
子どもがいる場合、転職なども気軽にはできなくなるでしょう。
「興味のある仕事・会社があるが、年収が今より下がってしまう……」なんてことも。
そういった場合、子どもにかかるお金まで考える必要がなく、やりたいことに挑戦しやすいDINKSのことを妬んでしまう可能性があります。
「子どもを産まないのは親不孝だ」という主張
「子どもを産んだことで親孝行をした」と考えている人の中には、産まない人に対して「親不孝だ」と思う人もいるようです。
「自分は子どもを産んで育てて、大変な経験をして親孝行をしたのに……」と、産まない人に対して妬んでしまうようです。
孫が生まれたことを喜んでくれる親がほとんどだと思いますが、何が親孝行になるのかは、人によって異なります。
「子どもを産んだほうがえらい」「子どもを産んでこそ一人前だ」という考え
確かに、子どもを産んで育てるということは大変で、すごいことです。
しかし、そのすごさを産んでいない人と比較するのには無理があります。
「頑張った自分を認めてほしい」という欲求が、自由に見えるDINKSへの妬みにつながっている可能性があります。
子どもを産んだ人も、産んでいない人も、すばらしい1人の人間です。
どちらかがえらい、一人前だと比較する必要はありません。
本当はDINKSに憧れているという人も!?
本当はやりたいことがあったけど、結婚し子どもを産むことが幸せだという世間の目を気にして、自分の人生を選択した人もいるかもしれません。
その場合は、DINKSという生き方に憧れがあり、妬んでしまうこともあるでしょう。
心に余裕がない、今の生活に幸せを感じられないから
子どもがいる・いないは関係なく、自分の心に余裕がないときや、今の生活に幸せを感じられないときは、人のことを妬んだり、批判したりすることで、自分を保とうとしてしまいます。
「隣の芝生は青く見える」という言葉がありますが、家庭がうまくいっていないときや、何かに焦っているとき、自由で楽しそうに見えるDINKSを妬んでしまう人もいるかもしれません。
子どもがいないほうが離婚のハードルが低くなる
2008年の子どもがいる夫婦・いない夫婦の離婚率によると、子どもがいない夫婦が10%。子どもがいる夫婦が0.76%と、子どもがいない夫婦の離婚率が高いことがわかります(それぞれの母数が異なるため、正確な数値ではありません)。
離婚したくても、親権者や養育費の支払いなど、子どもがいると話し合って決めなければならない問題がたくさん出てきます。
そのため、DINKSの方が離婚のハードルが低くなるという見方もできます。
そういった観点からも、DINKSが妬まれる理由があるといえるでしょう。
多様性の時代!DINKSという新しい生き方を認めよう!
子どもが自立するまで、自分の時間がなくなるのはつらいです。
また、「どんなときも子どもを優先して親は我慢すべきだ」という考えを強要されるような環境にいると、さらに追い込まれてしまいます。
もし、結婚後も人生をかけてやりたいことがあるのであれば、子どもを持たないというのも選択肢の1つです。
DINKSであることも、決して間違った選択ではありません。
また、夫婦で決めることでもあります。
本来、他人に口を出されるべきことではありません。
「何が幸せか」は人によって異なります。
DINKSに限らず、誰かの人生を妬んだり、誰かを攻撃したりするのはやめたほうがいいです。
すでに子育てをされている方も、そういう生き方もあるのだと、DINKSを認められるほうがきっと心が軽くなります。
子どもを産まない人は賢いという人もいる
批判的な意見がある一方で、「今の日本で子どもを作らない人は賢い」という意見もあります。
ひろゆきさん「賢い人は子どもを作らない」
旧「2ちゃんねる」開設者・元管理人で、近年、配信で有名なひろゆきさん。
動画の中で「賢い人(まともな人)は今の日本で子どもを作るという判断ができない」と話します。
また、「子どもを作る人はベーシックインカム(お金)があろうがなかろうが作る。賢い、後先を考える人も子どもを作る社会にしたほうがいい」といいます。
今、子どもを作らないと決めている人が、もし子どもを作るという選択に変えても、お金や生活に困らない社会になるのが理想です。
夫婦で共働きをしていても、女性が育休・産休を取得した場合、可処分所得は半分になってしまいます。
そうなってしまうと、今の日本では生活・子育てをしていくことが厳しい家庭も多いのではないでしょうか。
また、「お金があると人は不安を感じなくなる」ともいいます。
社会に不安を感じなくなる構図を作れば、もう少し子どもの将来にも希望が持てるでしょう。
まとめ
DINKSという生き方に対して、「ずるい」という人の意見をまとめました。
DINKSはまだ少数派ということもあり、少子化問題や妬みなどから、批判されてしまうこともあるようです。
多様化する社会。どんな生き方を選択しても、互いを尊重しあえる社会になるといいですね。
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