「ご臨終です」
ドラマや映画などで、医師のセリフとして耳にすることが多いのではないでしょうか?
こちらの記事では、「臨終」の意味と、臨終が近い人の表情について解説します。
臨終とは
「臨終」とは、「人が死のうとするまぎわ。死にぎわ。末期(まつご)また、死ぬこと」を意味します(※1)。
正しくは「臨命終時(りんみょうしゅうじ)」といいます。「終わりに臨む」、つまり周囲の人が一つの命が終わる場に居合わせるということです(※2)。
(※1)引用:weblio辞書「デジタル大辞泉」
(※2)出典:やさしいお葬式「臨終とは?臨終の意味から前後の流れ、家族が亡くなった際にすべきことまで完全解説!」
臨終前後の流れ
突然死や事故死を除いて、臨終が近づき、亡くなるまでにはある程度の時間があります。
一般的に、病院では、医師が数時間以内に臨終を迎えることを予測すると、危篤状態に陥ったという旨を家族に連絡をします(※2)(※3)。
危篤から臨終を迎えたあとまでの流れを解説します。
(※3)出典:安心葬儀「危篤とはどのような状態?危篤の連絡を受けたときにすべきこと」
危篤
危篤とは、病気や老衰によって、意識がなくなり、回復の見込みがなく、いつ亡くなってもおかしくない状態のことを指します。
しかし、危篤を宣告されたからといって必ず亡くなるというわけではありません。人によって、危篤の状態が続く時間が異なりますが、基本的に回復する可能性は低いとされています(※2)(※3)。
危篤の際におこる症状をまとめました。
危篤の際におこる症状
- 意識が途切れがちになり、呼びかけてもほとんど反応がなくなる
- 血流も滞り、顔色は白っぽくなる。手足も冷たくなってくる
- 口をパクパクさせ、あえぐような下顎呼吸をするようになる。この状態になると、呼吸中枢の機能がほぼ失われているため、1~2時間で臨終となることが多い
下顎呼吸は苦しそうに見えても、本人は苦痛を感じていないことが多いそうです。そのため、酸素吸入などを行わないことがほとんどです(※2)。
死亡確認・臨終
医師が「死亡」と判定する、3つの条件があります。
・呼吸の不可逆(その状態になったら元に戻らないこと)停止=呼吸停止
※引用:やさしいお葬式「臨終とは?臨終の意味から前後の流れ、家族が亡くなった際にすべきことまで完全解説!」
・心臓の不可逆停止=心停止
・瞳孔拡散(対光反射の喪失=光をあてても瞳孔が小さくならない)
3つすべてが確認されると、医師から死亡したことと死亡日時が伝えられ、臨終となります。
医師が死亡と判定しなければ、亡くなった人は公的には死亡したことを認められません。また、死亡診断書がなければ遺体を動かすこともできません。
そのため、自宅で亡くなった場合や、亡くなっているのを発見した場合は、病院に連絡するか、119番通報をして指示を仰ぐ必要があります。
また、病院で亡くなった場合は、すぐに死亡診断書を作成してもらえます。しかし、それ以外の場所で亡くなった場合は、医師が死亡と判定した後に、死亡診断書を依頼しなければなりません(※2)。
末期の水
亡くなった人には「末期の水」を与えます。これは「死に水」ともいわれており、仏教の儀礼の一つです。「故人があの世で渇きに苦しまないように」という意味があります。
茶わんや桶(おけ)にきれいな水をくみ、割り箸の先にはさんだ新品の脱脂綿やガーゼ、新品の筆先に含ませて故人の上唇の左側から右側へとなぞり、下唇も同様にします。
※引用:やさしいお葬式「臨終とは?臨終の意味から前後の流れ、家族が亡くなった際にすべきことまで完全解説!」
続いて、故人の額、鼻、顎も左→右の順で湿らせていきます。鼻だけは上から下へと行うのが一般的です。
一般的に、配偶者または喪主、故人の子、親、兄弟姉妹、子の配偶者、故人の孫の順に、末期の水を取ります。「故人との血縁が濃い人から行う」と覚えておくのがよいでしょう(※2)。
エンゼルケア
エンゼルケアは、主に病院のスタッフが故人に行う一連の処置のことをいいます。
故人が身を清めて旅立つための準備だけではなく、遺体の腐敗防止や感染症対策のためでもあります。
エンゼルケアの主な内容はこちらです。
- 点滴などの医療器具の抜去や取り外し
- 注射痕や気管切開などの創傷部位を、防水性のドレッシング材でふさいだり縫合したりする
- 排泄物の処理
- 口腔の消毒
- 遺体をアルコールやお湯で拭く
- 遺体をお風呂に入れて洗う(近年ではあまり行われない)
- 髪を整える
- ひげや産毛をそる
- 含み綿で頬をふっくらとさせる(やつれが目立つ場合)
- 死に装束に着替えさせる
- エンゼルメイクをする(身づくろいや化粧)
亡くなると、血液が体の下側に集まるため、顔色が蒼白(そうはく)になります。
そのため、男女問わず、チークや口紅を用いて血色を補います。これは、病院のスタッフだけでなく、葬儀会社のスタッフが行う場合もあります(※2)。
臨終が近いことを知らせる表情7つ
(1)顔がおじぞうさまのようになる
顔がおじぞうさまになった。と見舞いの人が言い始める。
※引用:松原市「第90回 死期へ向かう道程-6」
臨終が近いと、表情に変化が現れてきます。
顔の筋肉が衰え、表情が豊かではなくなります。その様子を「おじぞうさまのようになった」と表現する人もいます。
(2)目と手に力が入らなくなる
まず気付きやすいのが「食事や水分が取れなくなる」「体重が減っていく」といったことでしょう。それに合わせて目が落ちくぼむといった変化もでてきます。
体は、弱ってきていると感じると心臓などに優先して血を回すため、末端である手足が冷たくなります。
※引用:小さなお葬式「死亡前の兆候と死の3徴候の違い!悔いのない別れをするためには」
食事や水分が取れなくなるため、体重が減り、顔が痩せてしまうことから目にも力が入らなくなります。
また、心臓に優先して血を回すため、血流が全身に回らなくなり、手足が冷たくなり、皮膚の色も青紫色に変わってきます。そして、だんだんと手足にも力が入らなくなってしまいます。
やさしくさすってあげるのが良いでしょう(※4)。
(3)手鏡現象がなくなる
「病人の手鏡」は一週間程前から始めますが、目と手に力なくなり手を映す回数がへる。
※引用:松原市「第90回 死期へ向かう道程-6」
「病人の手鏡」とは、手を合わせてこすり、手のひらへ顔を手鏡で映すようにして見る姿のことをいいます(※5)。
上述した通り、痩せたり、血流が全身に回らなくなったりすることで、手に力が入らなくなってしまうため、手鏡現象もだんだんと減ってくるといわれています。
(※5)出典:松原市「第90回 死期へ向かう道程-6」
(4)目を見開く
意識がもうろうとし、口にいっさい食べ物を入れない状態の患者さんが突然、目をパッチリと開け、「水を飲みたい」「アイスが食べたい」などと訴える
※引用:東洋経済オンライン「「人生の最期」の7日間に起きる知られざる現象 名医が教える「ご臨終」の不思議な世界」
このように、危篤状態だった患者さんが急に元気になる様子に驚くことがあります。この現象を「中治(なかなお)り現象」と呼びます。死を間近にした人におこる、不思議な回復です。
この現象を目にすると、「もしかしたら、このまま回復して元気に暮らせるのではないか?」「病気が治るのではないか?」と期待してしまう家族も少なくないのです。
欧米でも、この現象は「last rally(ラスト ラリー)」と呼ばれますが、日本語に訳すと「最後の回復」という意味になるでしょう。
なぜ、このような現象が起きるのでしょうか?
人が死に近づくと、寿命が尽きようとしている細胞を守るため、体のあらゆる器官が懸命に働き始めます。その中でも脳の働きは重要で、「脳内麻薬」と呼ばれる微量物質を分泌することで、少しでも長く生きられるように努めます。
脳細胞から分泌される代表的な物質には、ドーパミン、セロトニン、オキシトシン、アドレナリンなどが存在します。ドーパミンは、喜怒哀楽と深い関係があります。意欲を高めたり、幸福感をもたらしたりする作用があるので「脳内麻薬」と呼ばれています。
また、セロトニンは、感情や行動などをコントロールし、精神を安定させる働きがあることから、「幸せホルモン」と呼ばれています。
さらに、オキシトシンも幸福感をもたらします。これらの物質にアドレナリンなどの作用が加わることで、「中治り現象」が引き起こされるのではないかといわれています(※6)。
(※6)出典:東洋経済オンライン「「人生の最期」の7日間に起きる知られざる現象 名医が教える「ご臨終」の不思議な世界」
(5)目の色が濁る
瞳孔が散大・対光反射が見られない
※引用:小さなお葬式「死亡前の兆候と死の3徴候の違い!悔いのない別れをするためには」
通常、目は瞳孔に入る光を調節するため、虹彩筋で瞳孔の大きさを調節しています。
虹彩筋は、明るいと収縮し、暗いと散大する筋肉のことです。
死亡すると全身の筋肉が弛緩(しかん)し、瞳孔が開かれます。また、光に対する反射もなくなり、収縮しなくなります。
これは、医師が死亡の判定をする際の3つの条件のうちの1つである、「瞳孔拡散」に当てはまります(※4)。
そのため、臨終が近いと、目の色が濁ったようにみえると考えられます。
(6)肌の色が変わる
3日くらい前になると、私達が一般に『死相が出た』といいますが、顔の相が変わり肌の色が変わり始めます
※引用:松原市「第90回 死期へ向かう道程-6」
臨終が近づくと、呼吸のリズムが変わったり、意識が薄れて反応が難しくなったり、会話ができない状態になったりするといわれています。
また、上述した通り、血流が悪くなることから、肌の色が変わったり、手足が冷たくなったりすることもあります。
(7)とても穏やかな表情になる
ときどき息子さんがお見舞いにやって来ます。
※引用:DIAMOND online「1000人の看取りに接した看護師が教える、最期を迎える人によく起こる、不思議な現象とは【書籍オンライン編集部セレクション】」
そのときの患者さんは、呼吸が安定していて、とても穏やかな表情をされるのでした。
きっと、安心感に包まれてすごされていたからだと思います。
第六感が働き、息子さんがそばにいてくれたのがわかっていたのかもしれません。
一方で、表情がとても穏やかになるケースもあるようです。
寝たきりの状態であったり、脳梗塞で麻痺(まひ)があったりすると、拘縮(体の関節が固まっていったり筋肉が緊張したりした状態)になることが多いそうです。しかし、穏やかな表情になった患者さんは、拘縮もほとんどなく、筋肉も緊張していなかったとのことです(※7)。
(※7)出典:DIAMOND online「1000人の看取りに接した看護師が教える、最期を迎える人によく起こる、不思議な現象とは【書籍オンライン編集部セレクション】」
まとめ
「臨終」の意味と、前後の経過、臨終が近いことを知らせる表情について解説しました。
個人差が出る部分もあり、さまざまな表情があることがわかりました。
家族や大切な人との最期、後悔しないためにも、臨終が近い人の兆候や表情の特徴を知っておきましょう。
仏壇については下記サイトで詳しく解説されています。
コメント