女性の健康や美、女性らしい丸みのある体づくりに深く関わる女性ホルモン。
「女性ホルモンにはどんな役割があるのか?」「女性ホルモンの量を食事などから増やすことはできるのか?」と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。
こちらの記事では、女性ホルモンの役割や「女性ホルモンを増やす食べ物は存在するのか?」という疑問への答え、そしておすすめの食事やNGな食生活について解説します。
病院勤務5年、保育園勤務12年。現在は病院で勤務しています。SNSやネットなどで食の情報がたくさんありますが、正しい食の知識を発信し、みなさんの健康に少しでも役に立てるようようにしていきたいです。
女性ホルモンを増やす食べ物はない
結論からいうと、女性ホルモンを増やす食べ物はないといえます。
そもそも、女性ホルモンとはどのようなものなのでしょうか?
女性ホルモンには、卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲストーゲン)の2種類があります。これらのホルモンは、毎月一定のリズムで脳からの指令により卵巣から分泌され、月経や排卵、精神状態の安定化、代謝アップ、女性らしい丸みのある体形を作る、肌のツヤや潤いを守るなどの役割を担っています。
そんな女性の心身にとって深く関係する、とても大切なホルモンですが、年齢とともに減少してしまいます。
女性ホルモンの分泌量のピークは20代後半から30代前半で、30代後半になると少しずつ低下しはじめます。
その後は減少し続け、特に閉経前後である45〜55歳には激減します。閉経前後のこの時期を更年期といい、不安感やイライラ、発汗など女性特有の不調が生じやすくなります。また、仕事や家庭でのストレスや疲れ、体力の低下などでホルモンバランスも乱れがちに……。
女性ホルモンの減少について対策すべく、食事などからその量を増やしたいと思う方もいるかもしれません。
しかし冒頭でお伝えした通り、女性ホルモンを増加させる食べ物は存在しません1。
とはいえ、女性ホルモンに似た作用を持つ成分を含む食べ物や飲み物はあり、それらを摂取することでバランスを整えることができると考えられています。
女性ホルモンに似た働きをする成分がある
女性ホルモンに似た働きをする成分として、大豆イソフラボンとエクオールが挙げられます。
大豆イソフラボンは、更年期に減少するエストロゲンと似た作用がある植物性成分です。更年期障害の緩和だけでなく、骨や肌の健康、生活習慣病予防への効果も期待されています。
大豆イソフラボンはフラボノイドの一種で、豆腐や納豆、みそなどの大豆食品に含まれています2。
また研究により、ダイゼイン(大豆イソフラボンの一種)という成分が、消化管の中で分解された後、体内で腸内細菌により代謝され、エクオールという成分になることが明らかになっています。
エクオールも、女性ホルモンと似た働きをする成分で、更年期に生じる症状の緩和や健康増進への効果が期待されています。
エクオールが体内で多く作られている人ほど、更年期症状が軽いというデータもありますが、エクオールは作れる人と作れない人に分かれます。
日本のように大豆をよく食べる国では、約半分の人がエクオールを作る腸内細菌を持っているといわれています。大豆を食べる習慣がない欧米では約20~30%とのことです。また、日本でも、大豆を食べる量が少ない若年層では腸内細菌を持つ人が約30%にまで減少しているというデータもあるそうです。
また、エクオールの成分を健康食品として摂取した場合、次のような効果もあるといわれています。製品や含有量によって効果が異なるため、あくまで一例としてご参考ください3。
- 骨量を保つ
- ホットフラッシュの改善
- 首・肩コリの軽減
- 動脈硬化リスクの低下
- 糖尿病リスクを示す、ヘモグロビン・エー・ワン・シー(HbA1c)の低下
- 目尻のシワの改善 など
女性ホルモンに似た働きをする成分を多く含む食べ物や飲み物
上述した通り、女性ホルモンに似た働きを持つ成分を含むため、大豆イソフラボンを多く含む大豆食品の摂取が良いといえます。
これらの食品を日常的に摂取することがポイントです。
その他にもバランスの良い食事を心がけることが重要です。
大豆食品はもちろんのこと、肉や魚のたんぱく質、炭水化物、野菜、良質な油(少量)をバランスよく食べるのが良いでしょう。
ぬかづけや納豆などの発酵食品やバナナ、ブロッコリー、アボカドなどに含まれるオリゴ糖や、野菜などに含まれる食物繊維を多く摂取し、腸内環境を整えることも大事です。
また、大豆イソフラボンやエクオールのサプリメントも販売されています。女性ホルモンを増加させることは不可能ですが、似た作用を持つ成分を補うことはできます。
体調や健康状態と相談した上で、サプリメントの活用も検討してみるのも1つの方法です。薬を服用している方や治療中の方は、医師に相談して決めましょう。
女性ホルモンのバランスを乱す食生活チェックリスト
食生活が乱れていると、女性ホルモンのバランスも乱れやすくなります。
女性ホルモンのバランスを乱すような食生活をしていないか、チェックしてみましょう。
バランスのとれた食事の摂取
高たんぱくで栄養価の高い食事を摂取していますか?
肉、魚、大豆などのたんぱく質の摂取を忘れずに摂取しましょう。上述した大豆イソフラボンを含む食品を取り入れ、バランスの良い食事を毎日心がけましょう。
適度な水分補給
毎日の水分摂取量は十分ですか?
私たち人間の体は約60%が水分でできているといわれています。水分量が少ないと体調不良や病気になる危険性もあります。
また、体内の細胞が機能するためには十分な水分補給が必要です。さらに、水分を取ることで老廃物を排出できるため、体の状態が良くなります。水分補給に用いるのはコーヒーや紅茶、ジュースなどの飲料より、純粋な水がおすすめです。
実際に、厚生労働省も「健康のため水を飲もう」推進運動を実施しています。1日の水分排出量の目安に合わせ、1日2.5ℓの水が必要だと呼びかけています4。
また、水分補給に加え、適度な運動も行うと理想的です。
甘いものや加工食品の摂取頻度に気をつける
砂糖や甘味料、加工食品をよく摂取していますか?
精白された糖や炭水化物は血糖値を急激に上昇させます。血糖値の変動が大きくなるとインスリン(血糖値を調節するホルモン)が効果を発揮しにくくなります。その影響で、ほてりやのぼせなどの更年期症状、ホットフラッシュが起こりやすくなってしまいます。そのため、特に更年期の女性は摂取のしすぎに注意した方が良いといえます。
お菓子やジュースなどの加工食品には砂糖や甘味料が多用されているため、少量の摂取を心がけましょう。
適切な体重管理
適切な体重を維持していますか? また、急激な減量やリバウンドは避けていますか?
女性ホルモンのバランスを保つには、体重の管理も大切です。
エストロゲンは脂肪の燃焼にも関係しています。そのため、更年期に分泌量が減ると脂肪が燃焼しにくい体になってしまいます。
それにより、相対的に男性ホルモンが増加し、皮下脂肪や内臓脂肪がつきやすくなってしまうのです。
過度なダイエットの実践
過度の食事制限など、健康に悪影響を及ぼすようなダイエットはしていませんか?
特に更年期に皮下脂肪や内臓脂肪がつきやすくなることで、ダイエットを始める人も多くなります。
しかし、過剰な食事制限や無理のある運動により、ホルモンバランスを崩してしまう可能性があります。その結果、逆に痩せにくい体になってしまうことも……。
バランスの良い食事や適度な運動で、健康的に痩せましょう。
規則正しい食事習慣
食事の時間は決まっていますか? また、朝食をとる習慣はありますか?
体内時計が乱れると、睡眠障害やうつ病、肥満、糖尿病、免疫・アレルギー疾患、がんなどの発症にもつながる可能性があるといわれています。
その体内時計を調整するのには、朝食が重要です。臓器などにある副時計は、日光の明暗に左右されず、朝食によって動き始めるそうです5。
そのため、朝食を取ることや規則正しい食生活を送ることが、健康的に過ごすためのカギといえるでしょう。
もし、朝食を取っていない人や昼食・夕食を抜いてしまうことがあるという人は、朝昼晩、規則正しく食事をとることを意識してみるのがおすすめです。
カフェインとアルコールの摂取量が多い
カフェインやアルコールを摂取しすぎていませんか?
日々の習慣になりやすいカフェインやアルコールの摂取ですが、飲み過ぎは健康に良くないといわれています。
カフェインは、睡眠の質を低下させるだけでなく、鉄分やマグネシウム、カルシウムなどの女性の体調に深く関係するミネラルの吸収を邪魔してしまう作用や利尿作用もあります。
実際に、貧血や冷え、疲れ、便秘の症状がある女性の多くは、鉄分やマグネシウム、カルシウムの栄養素が不足しているというデータもあります。
アルコールもカフェインと同様に、女性の体調に影響を与えます。
例えば、エネルギー代謝に必要なビタミンB群は、アルコールによって消耗されてしまいます。ビタミンB群の消耗が進むと、代謝の低下や疲れやすさに発展します。
疲れやすさや体調不良を感じている女性は、アルコールの摂取量を減らしてみることをおすすめします。
さらに、エストロゲンはアルコール分解を抑制する作用があります。そのため、エストロゲンの量が減少する排卵後から月経前の期間は酔いやすくなります。
また、エストロゲンが減少する影響により、閉経後にお酒に強くなる人もいるそうです。しかし、女性は男性と比較するとアルコール依存症の進行が早いといわれています。お酒に強くなったからといって、飲み過ぎには注意しなければなりません。
冷たい飲み物の摂取
冷たい飲み物を頻繁に摂取していませんか?
冷えた飲み物は内側から体を冷やしてしまいます。慢性的に体が冷えると、自律神経や女性ホルモンのバランスが乱れてしまいます。また血流が悪くなり、栄養分や酸素が行き渡らなくなります。
冷えによって女性ホルモンのバランスが崩れたり、分泌量が減ったりすると、妊娠しにくくなる場合もあります6。
また、内臓が冷えると食べた物の消化を遅らせる可能性があり、健康面でも良くありません。
夏の暑い時期でも、常温や温かい飲み物を飲むよう心がけましょう。
ファーストフードやインスタント食品の摂取
ファーストフードやインスタント食品を頻繁に摂取していませんか?
これらの食品には、防腐剤などの添加物が多く含まれています。添加物の中には、女性ホルモンの分泌を妨げてしまうものもあるため、注意が必要です。
健康のためにも、適度に摂取しましょう。
おわりに
女性ホルモンは体や心の健康に大きく影響する、重要なホルモンです。
年齢によって、その分泌量は減少するため、体調や年齢に合わせてホルモンバランスを整えることが大切です。女性ホルモンを食事から増やすことはできませんが、似た働きをする成分を摂取したり、バランスの良い食事や適度な運動、十分な睡眠を心がけたりすることで、心身の健康をサポートしましょう。
こちらの記事が、女性ホルモンについて疑問を持っている方の参考になれば幸いです。
もし、他に何か気になることやご質問がありましたらお聞かせください。
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