人が亡くなる前には、その予兆や、身体的な変化が見られます。
さまざまな予兆が見られますが、目にも変化が表れるといわれています。
大切な人とのお別れはつらく、悲しいものですが、予兆や変化を知っておくことで心の準備もできるのではないでしょうか。
こちらの記事では、亡くなる前後に起こる目の変化について解説します。
死が近い人の目に起こること
亡くなる前に起こる目の変化には、どのようなものがあるのでしょうか?
起こることが多いといわれている、8つの変化をまとめました。
(1)目に力が入らなくなる・目の勢いがなくなってくる
亡くなる前になると、目に力が入らなくなるといわれています。
これは、食事や水分が取れなくなると、体重が減ることで顔が痩せたり、顔の筋肉が衰えてしまったりするためです。
また、目が落ちくぼむといった変化もでてきます(※1)。
また死が近づいていることのおよその予測として、死亡前1週間以内に目の勢いがなくなってくる・注視能力が低下するとも言われています。(※2)
(※1)出典:小さなお葬式「死亡前の兆候と死の3徴候の違い!悔いのない別れをするためには」
(※2)出典:第7回新たな看護のあり方に関する検討会資料 (mhlw.go.jp)
(2)目を見開くことがある
亡くなる前は目に力が入らなくなってしまいますが、元気になったかのように、一時的に目を見開くことがあるそうです。
このように、意識がなくなってきたり、食事ができなくなったりして寿命が尽きそうに見えていた人の症状が一時的に回復することを「中治り(なかなおり)現象」といいます。
なぜ、このような現象が起こるのでしょうか?
その理由は、寿命が尽きようとしている細胞を守るため、体のあらゆる器官が懸命に働き始めるからです。
その中でも、特に脳が長く生きようとして、「脳内麻薬」と呼ばれる幸福感を生み出すホルモンが分泌されるため、このような現象が起きるといわれています(※2)。
その際に、目をパッチリと見開き、話ができるようになる場合があります(※3)。
(※2)出典:Coeurlien「亡くなる前の予兆・前兆とは?そのとき家族にできること」
(※3)出典:東洋経済オンライン「「人生の最期」の7日間に起きる知られざる現象 名医が教える「ご臨終」の不思議な世界」
(3)ほとんどの時間、目を閉じて過ごす
病気などで、しゃべることも自分で身体を動かすこともできない場合、寝たきりとなっていることもあります。
また、目が見えなくなっていたり、意識も朦朧(もうろう)としたりしていることもあるでしょう。
そのような場合は、ほとんどの時間を目を閉じて過ごしています(※4)
(※4)DIAMOND online「1000人の看取りに接した看護師が教える、最期を迎える人によく起こる、不思議な現象とは【書籍オンライン編集部セレクション】」
(4)夜中に目が覚めたり、目を開けたまま眠ったりすることも
上述した通り、食事がとれなくなり、筋力や体力が落ちることからも、少しの動作でも疲れるようになります。そして、ほとんどの時間を眠って過ごすようになります。
そのため、昼夜逆転してしまい、夜間に起きるようになる人も。
この理由について、夜中に亡くなることを恐れるからではないかとも考えられています。
さらに弱ってしまうと、目や口を開けたまま眠ったり、会話ができなくなったりすることもあります(※5)。
(※5)出典:在宅ホスピケア「在宅ターミナルケア ハンドブック P.2-3」
(5)涙が出てくる
筋肉の弛緩(しかん)により、まぶたを閉じられなくなった場合、目が半開きの状態で、涙を流すこともあるようです。
泣いているように見えると心配になりますが、これは、悲しさなどの感情的なものではなく、目の角膜の乾燥による生理現象です(※6)。
(※6)出典:半蔵門スマイルライン矯正歯科「死亡する24時間前に起こる人の身体的変化について」
(6)せん妄による幻覚を引き起こす
亡くなる前になると、脳の働きも低下し、幻覚や幻聴の症状が出る「せん妄」を引き起こすことがあります。
他にも、急に大声を出す、手や足をバタバタさせる、などの症状が出る場合もあるそうです。
せん妄は薬の副作用によって起こるケースもあります。そのため、原因が分かれば、症状を緩和させることができます(※2)。
せん妄の治療として、一般的なのは薬物治療です。抗精神病薬が使用されます。
そして、せん妄の原因となった薬剤の服用を中止することもあります。
また、せん妄の症状を軽減するためには、安心して過ごせる環境に整えることも大切です。
特に、幻覚(幻視)には、部屋を片付けて、見通しを良くすることが効果的だといわれています。
視界から余分な物をなくすことで、物影などの見間違いを防ぐことができるためです(※7)。
(※7)出典:健達ねっと「せん妄の治療ってどのようなことを行う?起こる原因、症状も解説!」
(7)お迎え現象による幻覚を引き起こす
「お迎え現象」という言葉を耳にしたこともあるのではないでしょうか?
お迎え現象とは、自らの死に臨み、すでに亡くなっている人やペットなど、通常は見ることのできないものを見る経験のことです。
中には、失われた故郷の風景などに誘われる人もいるそうです。
亡くなる前は呼吸が乱れやすくなり、脳に酸素が届きにくくなるために引き起こされる幻覚といわれています(※2)。
せん妄と似ていますが、何が違うのでしょうか?
せん妄の特徴は、突然発症し、数時間から数週間にわたって継続し、かつ症状が時間とともに変化するというもの。その症状も、突然暴れ出す、意味不明なことを口走る、妄想・幻覚・幻聴、攻撃的になるなどで、お迎え現象とは似て非なるもののような気がする。
※引用:現代ビジネス「死ぬ直前に人間が体験する「虫の知らせ」と「お迎え現象」の正体」
お迎え現象も、医学的には「せん妄」と診断されますが、せん妄もお迎え現象も、どちらも原因は明確にされていないそうです。
しかし、症状があまりにもひどい場合は治療の対象になります(※8)。
(※8)出典:現代ビジネス「死ぬ直前に人間が体験する「虫の知らせ」と「お迎え現象」の正体」
(8)穏やかな表情になり、ほほ笑むこともある
上述した通り、亡くなる前になると、ほとんどの時間を寝て過ごしたり、目の周りの筋肉も衰えて目の力がなくなったりします。
しかし、中には穏やかな表情になり、ほほ笑む方もいるそうです。
筆者の父親は、病気で亡くなる一ヶ月前、「幻聴」を走馬灯のように楽しんでいた。父は病気の影響で耳がほとんど聞こえていなかったのだが。
※引用:現代ビジネス「死ぬ直前に人間が体験する「虫の知らせ」と「お迎え現象」の正体」
「面白いんだ、この頃。小さい頃から聞いてきた会話や音楽や、さまざまな音が、ずーっと蘇って聴こえてくる。だからこうしてベッドに寝たきりでも、全然退屈しないんだ」と微笑んだ。
そのときの患者さんは、呼吸が安定していて、とても穏やかな表情をされるのでした。
※引用:DIAMOND online「1000人の看取りに接した看護師が教える、最期を迎える人によく起こる、不思議な現象とは【書籍オンライン編集部セレクション】」
(中略)
きっと、安心感に包まれてすごされていたからだと思います。
第六感が働き、息子さんがそばにいてくれたのがわかっていたのかもしれません。
亡くなる前に見えるといわれる「走馬灯」を楽しむ人や、家族がそばにいることを感じて安心する人など、その理由はさまざまです。
苦しそうな表情が続くよりも、穏やかな表情になったり、ほほ笑んだりしてくれると、こちらも少し安心した気持ちになりますよね。
亡くなる前に目の色はどうなる
目の色が濁る
亡くなる前に目の色に変化は起こるのでしょうか?
瞳孔が散大・対光反射が見られない
※引用:小さなお葬式「死亡前の兆候と死の3徴候の違い!悔いのない別れをするためには」
目の色の変化として、「目の色が濁ったようにみえる」といわれています。
医師が死亡の判定をする際の条件の1つに、「瞳孔拡散」があります。
通常、目は瞳孔に入る光を調節するため、虹彩筋で瞳孔の大きさを調節しています。虹彩筋は、明るいと収縮し、暗いと散大する筋肉のことです。
死亡すると全身の筋肉が弛緩(しかん)し、瞳孔が開かれます。また、光に対する反射もなくなり、収縮しなくなります(※1)。
そのため、亡くなる前になると、目の色が濁ったようにみえると考えられています。
亡くなった後の人の目の変化
ここまで、亡くなる前の目の変化について解説してきました。
亡くなった後にも、目に変化はあるのでしょうか?
瞳孔の大きさが変わる
変化の1つとして、瞳孔の大きさが変わるといわれています。
上述した通り、医師が死亡の判定をする際の条件の1つに、「瞳孔拡散」というものがあります。
私たちがいう「黒目」とは、瞳孔と虹彩を合わせた部分を指します。
瞳孔は、黒目の真ん中の透き通った黒い部分です。そして、瞳孔の周りにある、茶色や焦げ茶色をした部分が虹彩です。
瞳孔は、光を感じる機能を持っています。
一方で虹彩は、伸縮することによって瞳孔の大きさを調整し、目の中に入る光量を調節しています。カメラで表すと「絞り」のような役割をもっています。
また、目と脳は「視神経」と「動眼神経」という2つの神経でつながっているため、目の中に入った光は、視神経を通じて脳に伝わります。
それにより、脳は、脳から出ている動眼神経を通じて、目の中に入ってくる光量を調節する指令を出します。その指令により、虹彩を縮ませたり、緩ませたりします。その一連の流れにより、瞳孔の大きさは変わっているのです。
虹彩が縮むと、黒目の周りの茶色い部分が狭くなります。つまり、瞳孔が開いていて大きい状態になります。
反対に虹彩が緩むと、目の周りの茶色の部分が広くなります。瞳孔が小さくなったということです。
瞳孔が開いたからといって、すぐに亡くなったと判定するわけではなく、呼吸・心臓・脳の機能が止まるなど、条件がそろったと判断されたときに、亡くなったと判定されます(※9)。
(※9)出典:MAG2NEWS「「瞳孔が開く」とはどういうこと? どうして開くの?」
目が開いてしまう
亡くなった後に、目が自然と開いてしまうことがよくあるそうです。
亡くなった人の目が開いていたら、少し驚いてしまうかもしれません。しかし、対処法もあるため、閉じさせてあげることは可能です。
目が開いてしまう原因の1つは「乾燥」だといわれています。これは、目の表面が乾燥することにより、まぶたが下がらなくなるためです。
目薬をさしてあげると目が閉じられるようになる場合もあるようです。
また、反対に湿りすぎても目が開いてしまうそうです。目の表面の水分でまぶたが滑ることにより、閉じられなくなってしまうためです。
その場合は、綿棒などで目の水分を拭き取ることで解消するといわれています(※10)。
(※10)出典:ご遺体のお医者さん「ご遺体の目が閉じなくて困ったら」
まとめ
亡くなる前後に起こる目の変化について解説しました。
亡くなる前は、身体的にさまざまな変化が起こりますが、目を見るだけでも分かることがたくさんありました。
大切な人とのお別れは悲しいですが、このような予兆や変化を知っておくと、少しでも心の準備をする時間をもてるのではないでしょうか。
コメント
勉強になりました。
勉強なりましたありがとうございます
そういうことなんですね。いつか体験すると思うので、教えてくださりありがとうございました。