運動して体を傷めたり、寝違えて首が痛くなったりしたときに、応急処置として気軽に使える「湿布」。
筋肉痛や関節痛などを緩和するためだけでなく、狭心症や心不全の治療、気管支喘息(ぜんそく)などの治療で用いるものなど、さまざまな種類があります(※1)。
筋肉痛などにおいては、貼ると痛みがじんわりと治るため、常備している方も多いのではないでしょうか?
このように、便利な湿布ですが、どこにでも貼っていいというわけではありません。
こちらの記事では、湿布を貼ってはいけない場所について解説します。
(※1)出典:レモン薬局「貼り薬 ・ 塗り薬」
湿布を貼ってはいけない場所とは
湿布を貼ってはいけない場所とは、具体的にはどこなのでしょうか?
例を見ていきましょう。
目の周囲や粘膜に湿布を貼ってはいけない
多くの湿布には、注意事項として「粘膜に貼ってはいけない」「目には貼ってはいけない」といったことが記載されています。
なぜ、目の周囲や粘膜に貼ってはいけないのでしょうか?
それは、目は特に敏感で、湿布特有のスースーする感覚を目で感じると、涙目になり、目を開けていられなくなるためです。
目の周辺の打ち身などがあると、つい貼りたくなるかもしれませんが、やめておきましょう。
湿布を目の近くに貼ってはいけないのは、どうしてなのですか?
目は敏感だからです。
試しに目の下に湿布を貼ると、目がスースーして涙目になり、目を開けていられなくなります。ですから、目の近くに湿布を貼ってはいけません。
※出典:Yahoo! JAPAN 知恵袋
湿疹、かぶれ、傷口などの場所に湿布を貼ってはいけない
目や粘膜と同じように、多くの湿布には「湿疹・かぶれ・傷口にも貼ってはいけない」といった注意事項が記載されています。
その理由は、健康な皮膚に貼っても皮膚が赤くかぶれる可能性があるためです。
湿布を貼ったという物理的な刺激でかぶれることもありますが、湿布に含まれる成分が合わないためにかぶれる場合もあります。
一方で、湿布を貼ったこと自体が原因ではなく、湿布を貼った後に日光に当たることによって赤くなってしまうケースもあります。
これは、「光線過敏症」という副作用です。「ケトプロフェン」という成分を含む湿布でよくみられます(※2)。
また、湿布には皮膚を刺激する効果があります。それゆえに、傷口に貼ると状態が悪化してしまうため、貼らないほうが良いと考えられています(※3)。
健康な皮膚でも、湿布を貼ることによってかぶれることがあるため、もともとかぶれている場所や傷口、湿疹には貼らないようにしましょう。
また、かゆみやかぶれ、発赤などの症状が出た場合は、使用を中止し、医師に相談することをおすすめします。
(※2)出典:静岡県立こころの医療センター「意外なシップの落とし穴」
(※3)社会医療法人 将道会 総合南東北病院「湿布について」
みずむし・たむし等で化膿してる場所に湿布を貼ってはいけない
上述した通り、湿布には皮膚を刺激する効果や副作用があり、皮膚がかぶれたり赤くなったりすることがあります。
そのため、みずむしやたむしなどで化膿(かのう)している場所にも貼らない方が良いでしょう。
化膿とは、細菌に感染して傷口が膿んでしまうことをいいます。化膿の状態が長く続くと、治るのが遅くなってしまいます(※4)。
中には、「みずむしに湿布を貼ったら良くなってきた」という情報もありますが、より悪化してしまい、治るのが遅くなる可能性もあります。
みずむしやたむし専用の薬を使用したり、病院で医師に診てもらったりすることをおすすめします。
(※4)出典:くすりと健康の情報局「傷・化膿した傷の原因」
サロンパスを貼ってはいけない場所
湿布の中でも特に有名な「サロンパス」。
鎮痛消炎成分のサリチル酸メチル10%配合で筋肉のコリや痛みをほぐす効果があることや、はがすときにも痛くないことなどが特長で(※5)、多くの人に愛用されています。
しかし、そんなサロンパスにも貼ってはいけない場所が存在します。
(守らないと現在の症状が悪化したり、副作用が起こりやすくなります。)
※引用:Hisamitsu「商品情報 サロンパス」
次の部位には使用しないでください。
(1)目の周囲、粘膜等。
(2)湿疹、かぶれ、傷口。
(※5)出典:Hisamitsu「商品情報 サロンパス」
ロキソニンSテープを貼ってはいけない場所
サロンパス同様、湿布の代表格である「ロキソニンSテープ」。
鎮痛消炎効果をもつ、ロキソプロフェンナトリウム水和物が配合されており、肩・腰・関節・筋肉の痛みにすぐれた効果を発揮することが特長です(※6)。
幅広い場所に効くといわれる、ロキソニンSテープですが、貼ってはいけない場所は共通のようです。
2.次の部位には使用しないで下さい。
※引用:一般用医薬品 : ロキソニンSテープ「使用上の注意」
(1)目の周囲,粘膜等
(2)しっしん,かぶれ,傷口
(3)みずむし・たむし等又は化膿している患部
(※6)出典:第一三共ヘルスケア「ロキソニンSテープ」
首は湿布を貼ってはいけない場所って本当?危険?
寝違えたり、運動などで首を傷めてしまったりしたとき、首に湿布を貼る方も多いのではないでしょうか?
しかし、首の後ろ(頚部)に湿布を貼るのは良くないという意見もあります。
首の後ろには、中枢神経という重要な神経が集まっています。
湿布に含まれる消炎鎮痛剤などが、その中枢神経を刺激してしまうようです。
具体的には、神経を刺激することで、過敏になり、より緊張させ痛みを感じやすくなってしまうといわれています(※7)。
もし、首の後ろに湿布を貼ったことで、痛みが悪化してしまった場合は、使用を中止しましょう。
とはいえ、病院で処方される場合もあると思います。
その場合は、医師から聞いた用法・用量を守った上で使用するのが良いでしょう。
(※7)藤田接骨院「首の寝違えにシップ(湿布)薬なんか貼ってはいませんか?実はこんなことにも・・・」
湿布を心臓の近くに貼ってもいいの?
さまざまなところに効果があるといわれる湿布ですが、心臓の近くに貼るのは大丈夫なのでしょうか?
実際に、気になっている方も多いようです。
胸に湿布を貼っても大丈夫ですか?
なんか心臓にわるいような気がして…全然平気です。そんなことでは心臓は悪くなりません。
※引用:Yahoo! JAPAN 知恵袋
一般に心臓が悪いというのは、刺激伝導がうまくいかない場合。
心臓の構造の問題であり、外からの刺激は電気刺激以外であれば大丈夫です。
胸や心臓であっても、皮膚にかぶれや傷口がなければ、貼っても問題はなさそうです。
しかし、胸や心臓が痛い場合は、深刻な病気やケガの恐れもあるため、医療機関で診てもらうのが良いでしょう。
また、心臓にトラブルを抱えている人は、湿布を使用する際、特に注意が必要だといわれています。血圧を上昇させたり、病状を悪化させたりする危険性があるためです。
湿布に含まれる薬剤であるNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)は、長期間使用していると体内に水分を貯留させる作用があります。それにより、頻脈などの不整脈、息切れ、浮腫(むくみ)といった心不全の症状が表れるケースがあります。人工透析の患者さんにも同じような症状がみられるそうです。
このような危険性もあるため、心臓にトラブルがある人は安易に湿布薬を使わないようにするのが良いでしょう(※8)。
狭心症や心不全の治療、気管支喘息で用いられる貼付剤(※9)には専用のものがあるため、その場合も医師に相談しましょう。
(※8)出典:日刊ゲンダイ ヘルスケア「心臓にトラブルがある人は湿布薬を安易に使ってはいけない」
(※9)出典:トーアエイヨー 医療関係者向け情報「Q13.フランドルテープは肩こりに貼る湿布みたいな効果もあるの?」
喉の痛みがある!喉に湿布を貼っても大丈夫?
皮膚にかぶれや傷口がなく、目の周りや粘膜でなければ、ほとんどの場所に使用できる湿布。
喉の痛みがあるときに、喉付近に貼るのは大丈夫なのでしょうか?
耳下腺炎・顎下腺炎の場合、治療で冷湿布を用いる場合もあるそうです(※10)。
しかし、病院で診断され、他の薬とともに処方された場合の治療方法です。
そのため、湿布のみで痛みが治るというわけではないでしょう。
また、扁桃炎(へんとうえん)などでのどが痛いときにも湿布が効果的だといわれています。
うがいを何度も行い、扁桃腺の近くに冷湿布をします。また、抗生物質による治療が必要になります。
※引用:えらべる倶楽部「のどが痛い、つかえる」
この場合も、湿布だけで治るのではなく、抗生物質などの治療も併用する必要があります。
喉周辺の皮膚にかぶれや傷口がなければ、湿布を貼ること自体は問題ありませんが、病院で治療を受けた上で使用するのが良いでしょう。
(※10)出典:あさくさばし耳鼻咽喉科「喉(のど)の病気」
湿布に頼りすぎないようにしよう
さまざまな痛みに効果のある湿布ですが、皮膚のかぶれ・傷口・発赤などの症状がある場合は使用できなかったり、副作用でかぶれたりする場合もあります。
また、喉の痛みなどにも効果があるといわれていますが、風邪などの場合は病院で診てもらうのが良いでしょう。
ドラッグストアなどでも手軽に購入できる湿布ですが、薬剤やさまざまな成分が含まれているため、用法・用量を守って使用する必要があります。
2022年度診療報酬改定で上限63枚に制限されましたが、それでも少ない量とはいえません。
※引用:日刊ゲンダイ ヘルスケア「心臓にトラブルがある人は湿布薬を安易に使ってはいけない」
また、湿布は「経皮吸収型鎮痛消炎剤」といい、痛みを止める成分が皮膚から吸収され全身にまわる鎮痛剤です。
湿布の種類によって濃度が異なるため、副作用が出ることもあります。
主な副作用としては、上述した光線過敏症だけでなく、皮膚障害や臓器障害などもあります(※11)。
さらに、湿布薬は種類によって作用時間が異なります。多くの湿布が「1日1回貼付」または「1日2回貼付」です(※12)。
1日1回貼るタイプのものを半日貼って剥がしても、成分の多くは皮膚にすでに浸透しているため、はがした後も効果が持続します。
※引用:やら整形外科「湿布の効果は何時間?いつ貼るといい?」
このタイプであれば、大体8〜10時間くらい貼れば成分の多くは皮膚に浸透し、はがした後も効果が持続します。
早く治りそうだからといって、大量の湿布を長時間貼り続けると、かぶれの原因にもなるため、湿布に頼りすぎないようにしましょう。
そして、喘息の患者さんや妊婦さんに使用してはいけない湿布もあります。
一部の湿布には喘息の患者さんには喘息を誘発する危険性があります。また妊娠の時期にもよりますが妊婦さんに使用してはいけないものもあります。
※引用:一般社団法人 大阪ファルマプラン「湿布の貼りすぎに注意」
用法・用量を守って正しく使用しましょう。
(※11)出典:一般社団法人 大阪ファルマプラン「湿布の貼りすぎに注意」
(※12)出典:やら整形外科「湿布の効果は何時間?いつ貼るといい?」
まとめ
湿布を貼ってはいけない場所について解説しました。
万能薬ともいえる湿布ですが、貼ってはいけない場所もあることが分かりました。
気をつけて使用しましょう。
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