人と比較しない方が幸せになる。そんな話を聞いたことはありませんか?確かに、自分と他人を比較することを手放せたらどんなに心は楽になるでしょうか。
今回は、比較することをやめたいけど、どうしても他人と自分を比べて落ち込んでしまう、気がついたら比較して苦しんでしまう、という方に向けて、どうやったら比べることをやめられるのか考えてみました。少しでも生きやすくなるための参考になれば幸いです。
なぜ人は誰かと比べるのか
「ヒトは社会的動物である」と言う言葉を聞いたことあるでしょうか。これは古代ギリシアの哲学者アリストテレスが言った言葉が起源とされています。もう少しかみ砕くと、ヒトは本能的に周りの人と共同体を形成して生きる動物であるということ、社会の中で群れることで生きていく生物だということを意味しています。
そして、この本能こそ、私たちがどうしても他人と自分を比較してしまう心理を持つゆえんです。遥か昔から、ヒトは社会の中で、自分と周りの人を比較し、どこが同じでどこが違うのか、敏感に感じながら生きてきたのです。コミュニティの中で異質な存在であれば、その社会からは弾き出され、同じであれば、受け入れられる。これが繰り返され進化してきたのが人間なのです。だから、比較する事は生存するために必要な機能として私たちに元々プログラムされている心理とも捉えることができるでしょう。
現代は平和な世の中なので、比べないと生存に関わる、とまでは言いません。ただ、やはり社会の中で自分の立ち位置がわかる、場の空気を読んで振る舞うことができる、こういった能力を持つ人は重宝されます。自分と他者の違いを敏感に見極め、瞬時にすり合わせたり、逆に違いを利用してうまく目立つ能力とも言い換えられます。現代でも、こうした能力がある方が上手に生きていけるでしょうし、それが求められる場面もあります。うまく合わせられない存在を排除しようとする人も、いまだにいるかもしれません。
まとめると、自分と他人を比較する能力は、もともと備わっていた生きるための力であり、現代においても求められる場面が多いということが分かります。
人と比較する人の心理的特徴
他人と自分を比較することは元々プログラムされている心理だとお話ししましたが、その中でもとくに比較することにとらわれてしまう性格の持ち主がいます。その人たちが持つ主な心理的特徴は大きく分けて2種類あります。
■負けず嫌い
少しでも他人より自分の方が優れていたい、勝負ごとに負けるのは大っ嫌い、そういう気持ちが強い人は、常に周りと自分を比較する意識を強く持っています。闘争心が強いので、スポーツ、勉強、どんな分野でも向上心をもって自分を高めていくことができるというメリットもあります。ただ、比較することばかりにとらわれると、他人が自分より上の成績を取ることが許せなくなり、劣等感、醜い嫉妬や妬みに繋がってしまう場合もあります。
■極端に低い自己肯定感
自己肯定感が低い人は、自分が人より劣っていると心の底で思っているので、周りの人の動向を過敏に気にしてしまいます。テストなど成績が出るもので良い結果を手に入れている友達や、SNSなどで人気の投稿をしている人を見ると、うらやましい気持ちと同時に、(それに比べて私はなんてダメなんだろう、、、)(どうせ私なんて、、、)といった感情が自然と出てきてしまいます。誰かに比較されたり、ダメ出しをされたわけではないのに、勝手に比較して勝手に自分で落ち込んでしまうのが、自己否定感が強い人の特性です。
人と比べることで起こるデメリット
他人と比較することに終始とらわれやすいタイプは、そこまでは気にしないタイプの人よりもストレスを抱えやすいです。健康面や行動面に悪影響が出てくる場合があります。
■健康面への悪影響
他人と自分を比較し、勝っている劣っていると常に頭の中で葛藤を続けている人は、気が休まる暇がありません。まず心配なのは、自律神経の失調です。気が休まる時間が持てず、常に気を張ってしまいがちというのは、交感神経が優位な状態、つまり過剰に緊張した状態が続いていることと同じです。過緊張状態は、長く続くと食欲や睡眠の乱れなど体の面に悪影響を及ぼします。更に、集中できない気、持ちが落ち込む、イライラするなど、メンタル面にも悪影響が出てくるでしょう。体と心、両面で不調が続くので、更に状態が悪化していくという負のスパイラルを起こします。
■行動面への悪影響
他人と自分を比較することに執着していると、次第に自分の行動が全て【他人軸】に左右されるようになります。比較している相手の言動によって、自分の言動が振り回されてしまう状態です。
例えば、自分の中で比較対象としている相手が自分より良い結果を出していたとします。すると、それが悔しくて相手より良い結果を出そうと行動を始めます。それが自分が頑張る原動力になっているうちは良いのですが、相手の足を引っ張ってやろう、陥れてやろうといった言動に走る場合があります。例えば、SNSで自分より相手の方が輝いて見えたら、その相手に対してネガティブなコメントを書き込むことに注力するような行動です。嫉妬に支配され、冷静な言動ができなくなってしまっている状態です。負けず嫌いの心理的特性が悪い方向で向かってしまった場合に起こる行動です。
逆に、人より劣っている自分が嫌で全く行動できなくなってしまう人もいるでしょう。これは、強すぎる自己否定感の心理特性を持っている人が陥りがちな行動です。世の中は自分より優れた人たちばかりだと自分で自分を追い詰め、社会に出て人と交流するのが怖くなり、家に引きこもってしまう場合があります。
人と比べることをやめると得られるメリット
人と比べることをやめられると、比べてばかりいた頃よりは圧倒的に幸せになれます。なぜ幸せになれるのかというと、大きく3つのメリットがあるからです。
■体の健康度が上がる
常に人と自分を比べる緊張感から解放されるため、副交感神経が優位になるリラックス状態の時間が増えます。すると、自律神経が整い、様々な体の不調が改善するでしょう。睡眠の質が向上し、睡眠リズムも整いやすくなります。食欲も、過食や拒食などの乱れがなくなり、おなかがすいた、ご飯がおいしいという健康的な感覚が取り戻せます。
■心の健康度が上がる
人と比較すると生まれやすい劣等感や焦燥感、嫉妬心といった、いわゆるネガティブな感情を感じる時間が減ります。もちろん、これらの感情を自分の原動力として努力の行動などを増やしていければ問題はありません。しかし、うまく消化できないと抑うつ気分やイライラなどの原因になりやすいので、やはり人との比較をやめた方が心は健康的に、ポジティブでいられるでしょう。
■【自分軸】で物事を判断できるようになる
人と比べることにとらわれている状態は、常に【他人軸】で動いているということと同じです。他人軸とは、他人の言動が、自分がどう行動するかの判断に大きく関わっているという意味です。それが、人と比べることをやめると、自分の行動を【自分軸】で決めることができるようになります。【他人軸】では、人と比べた時の評価が基準となります。相手と比べて足りないから頑張る、相手より劣っていると思うから凹む。この繰り返しです。
それが【自分軸】になるとどうでしょうか。自分が何を大切にして行動するかといったら、自分の考えを大事にすればよくなります。他人がどうだから、他の人がこうだから、という基準を気にせず、自分がやってみたいと思ったことを基準に行動できるようになります。
人と比べることをやめる方法
ここまでは、人と比べることをやめることが、心身の健康にとってどれだけポジティブで、幸せに生きられるようになるかについてまとめてきました。ただし、肝心なのは【人と比べることをやめる方法】だと思います。やめたいと思っている人はたくさんいるけれど、なかなかやめられなくて困っている人が多いのが現実です。そこで、ここからはどうやったら人と比べることをやめられるのか、具体的方法について解説していきます。
■比較相手は過去の自分にする
負けず嫌いが強いタイプの人は、頭の中にいる『他人』を、『昨日の自分』に置き換えるよう意識してみてください。自分との比較ですから、嫉妬や僻み(ひがみ)という感情は起こりません。負けず嫌いのエネルギーを良い方向で使うことができます。昨日の自分に負けないように、今日の自分の行動を決めることができるため、【自分軸】で動いていることになります。
■比較に気づいたら気づいた自分を褒めてそっと手放す
人と比較することは無意識に行われていることが多いです。そのため、頭の中に誰かが出てきて自分と比べている思考に気づくことがまず大切です。気づいたら、(あぁ、また比較しちゃっていた)と自分を責めるのではなく、(比較していることに気づけた!良かった!)と考えます。そして、その比較対象の相手にバイバイをして、頭の中から出て行ってもらいましょう。これは繰り返し行うことで効果を発揮する方法です。『比べている自分に気づく→気づけて良かったと考える→手放す』このサイクルをトレーニングすることで、比較する時間をどんどん短くしていくことができます。
■自分が喜ぶことをとことん考える
人との比較は、ある意味他人に動かされているとも言えます。その人が基準であり、その人と比べて自分がどうあるか、で言動が左右されるからです。他人を介在させず自分のために時間を使おう、本当に自分が喜ぶことをしようと、毎日自己暗示をかけてみてください。自分が好きだからそれを食べる、自分が気になるからそこに行く、自分が楽しいからそれを楽しむ。誰かに言われたから、誰かがお勧めしてたからその行動をとることをやめます。自分のこころに聞いて、自分がやりたいからやる、自分が大切にしたいことに、意識を集中してみてください。そこに、他人が入ってくる余地はありません。
人と比べることをやめたい時におすすめの本
人と比べることをなかなか手放せないときに読んて欲しいお勧めの本を紹介します。比較を手放すきっかけになれば幸いです。
〇『嫌われる勇気 自己啓発の源流「アドラー」の教え』
有名な本なのでどこかで耳にしたことがあるかもしれません。他人の評価を気にせず自分の価値観に従って生きる勇気がもらえます。
〇多分そいつ、今ごろパフェとか食ってるよ。
第1回メンタル本大賞 【大賞】を受賞したことで有名になった一冊。つい誰かのことが気になり比べてしまう心が、すっと楽になるヒントがたくさん書かれてします。
例外的に人と比べても幸せな人
ここまで、人と比べることはマイナスが多いからやめた方がよい、という話をしてきましたが、例外的に、人と比べても平気な人、むしろ幸せに生きられる人もいます。
それは、比べることで自分の立ち位置を確認し、闘志を燃やせるタイプや、結果が振るわず誰かに負けてもあっけらかんと受け入れられる楽観主義の人です。比較はするけどあくまで参考データにすぎず、最終的には【自分軸】で自分の行動を決められる人だといえます。そういうスタンスで立ち回れる人は、人と比べようが幸せに生きられるでしょう。
【自分軸】を探すことが幸せになる第一歩
誰かと自分を比べることは自然に備わった心理なので、たまに比べるくらいであれば問題視する必要がありません。問題なのは、比べるのをやめなくては!と焦ったり、比較してしまう自分を否定して抑圧したりすることです。もし比較している自分に気がづいたら、まず、「自分はどうしたいんだろう?」と自分に問いかけてあげましょう。この【自分軸】で生きるトレーニングを繰り返
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