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別班とは?実在するのか?日米の密約から生まれた自衛隊の闇組織を徹底調査

別班とは?実在するのか?日米の密約から生まれた自衛隊の闇組織を徹底調査

2023年夏に放送されているドラマの影響で、話題になっている「別班」。
実際に耳にしたり、インターネット上で見かけたりした人も多いのではないでしょうか?
こちらの記事では、別班について詳しく解説します。

ドラマ『VIVANT』で注目された「別班」とは?

番組制作、取材、インタビューイメージ

2023年7月に放送開始のTBS系「日曜劇場」で放送中のテレビドラマ、『VIVANT』。そのドラマの中で「別班」という組織が登場し、話題になっています。

ドラマでは、別班は自衛隊の影の諜報部隊として描かれており、「美しき我が国を汚す者は何人たりとも許さない」を信条に、合法・非合法は問わず任務を遂行。日本を狙うテロ組織などを裏で取り締まっており、テロを未然に防いでいます。

『VIVANT』はフィクションであるため、ドラマで描かれているような別班は実際には存在しないといえるでしょう。
しかし、別班が実在するという証言や記事、書籍などは以前から出回っているようです。実際のところ、どうなのでしょうか?

日米の密約の背後にある歴史

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日米の密約から生まれたといわれる別班ですが、密約とはどのようなものなのでしょうか?
日米密約は、1960年の日米安全保障条約の改定、1971年に署名された沖縄返還協定に付随し、日米両国政府の間で交わされた秘密の約束といわれています。

日本では「密約問題」として、長年問題視されています。

日本政府や歴代政権は、密約の存在を否定してきました。しかし、2009年9月に発足した鳩山由紀夫内閣で、岡田克也外務大臣(当時)は密約の存在について外務省に調査を命じました。それに伴い、有識者委員会による検証も指示しました。
その対象となったのは4つの密約です。

①安保条約の改定にあたり、核兵器を積んだアメリカの艦船が事前協議なしに日本の港に寄港したり、領海を通過したりすることなどを容認したとされる密約。

②安保条約の改定にあたり、朝鮮半島で有事が起きた場合、アメリカ軍が事前協議なしに日本の基地から出撃することを容認したとされる密約。

③沖縄返還にあたって、沖縄に配備されていた核兵器を撤去するものの、有事の際には沖縄に再び核兵器を持ち込むことを容認したとされる密約。

④沖縄返還にあたって、本来、アメリカが負担すべき基地撤去後の原状回復費用400万ドルを日本が肩代わりしたとされる密約。

NHK 政治マガジン ねほりはほり聞いて!政治のことば「密約問題」

調査・検証の結果、①と④については広義の密約が存在していたことを認定しました。特に①は、非核三原則との兼ね合いから最も注目されていました。②については、過去に密約があったことを認め、③は密約があったと断言できないとしました。

この調査・検証によって、日米の安全保障をめぐる文書の情報公開は前進しました。しかし外務省によると、この件において文書の開示を行いましたが、多くの重要文書が意図的に廃棄されていたそうです。そのような背景も含め、さらなる問題の追究が必要だと指摘する声もあります12

「別班」の起源と活動内容

武装した自衛官

まず、別班の起源を見ていきましょう。

1954年、日米相互防衛援助協定(MSA協定)が締結され、「陸上自衛隊と在日米陸軍が合同で諜報活動を行う」といった内容の秘密協定も結ばれました。そして1956年頃より、自衛隊の研修が本格的に始まりました。この研修を「MIST(Military Intelligence Specialist Training)」といいます。

陸上自衛隊では「MIST」に語感が近い「武蔵」が暗号名として使用されるようになりました。1965年、「武蔵」という呼び方は廃止され、それ以降は「特勤班」または「別班」「小金井」と呼ばれるようになったといわれています。

では、別班はどのような活動をしているのでしょうか?

別班は、冷戦時代から日本周辺のロシアや中国、韓国、東欧などにダミーの拠点を置き、身分を偽装した別班員に人的情報収集活動(ヒューミント)を行っているといわれています。

日本の脅威である国や、脅威となる可能性のある国の軍事情報を収集するなどの活動をしているそうです。3

また、日本国内で抱き込んだ在日朝鮮人を北朝鮮に入国させて情報を送らせたり、在日本朝鮮人総聯合会に協力者を作って工作活動をさせていたりするという話もあります。

別班のような組織がひとりでに活動することは、安全保障や外交に悪影響を及ぼす可能性もあるため、大変危険であるといえます45

別班のメンバーと彼らの訓練

別班のメンバーはどのような人たちで、メンバーはどのような訓練を受けてきたのでしょうか?

別班のメンバーである別班員になるには、陸上自衛隊小平学校(現・陸上自衛隊情報学校)の心理戦防護課程(DPO課程/対心理情報課程)を修了しなければならないといわれています。

心理戦防護課程では、特殊な訓練を受けることになります。有識者によると、元別班員から「違法な活動をしても人を籠絡し、必ず情報を収集する人間へと育てる。相手の心の中を見透かすような冷徹なまなざし」といった印象を受けたそうです6

さらに、この課程を首席で修了した人の中から、一定の基準に達した人のみがメンバーになれるそうです。所属する数十人のメンバー全員がいわゆるエリートである別班員。友人や近所の人との付き合いに制限があったり、通勤ルートを毎日変更しなければならなかったりと、とても厳しいルールが存在するといううわさもあります。

そんな別班員の中には、プレッシャーやストレスから精神的に壊れてしまったり、社会的に適応できなかったりする人もいたようです。また、非合法なことはできないと辞めていく人もいたとのことです7

別班の現在と問題点

ビジネスマン シリアスなビジネスイメージ

別班が現在、どのようになっているのかも気になりますよね。別班の現在と問題点についても見ていきましょう。

1973年以降、別班は東京・六本木に拠点を移し活動規模を縮小したとされています。その背景として、金大中事件の発生により、「赤旗(現・しんぶん赤旗)」などに大々的に掲載されたことが挙げられます。

それ以降の別班についての情報は明らかになっていないようですが、六本木の米軍赤坂プレスセンターにある500部隊の関連部署に再就職した別班のOBもいるといわれています。

その後、陸上自衛隊の部署にはさまざまな改編がありましたが、かつての別班に当たる部署が廃止されたという話は聞かないという説もあります8

そんな別班の問題点は、上述した安全保障や外交に悪影響を及ぼす以外にも存在します。

もし自衛隊が別班の活動を、首相や防衛庁長官にも知らせることなく行っているとしたら、文民統制(シビリアン・コントロール)から大きく外れることになります。さらに、別班員が非人間的で特殊な訓練を受け、違法な活動をしているとすれば、別班員の人権問題も浮上するでしょう。

また、『自衛隊の闇組織 秘密情報部隊「別班」の正体』(講談社現代新書)の著者である石井暁さんは、2013年に書いた記事の発表前後に、ある自衛官から別班に関する記事を出すことについて「あなたを消すくらいのことはやる」と脅されたり、「最低限、尾行や盗聴は覚悟しておけ」などと警告されたりしたそうです。

石井さんはあるインタビューで、秘密保護法の施行によって今後、別班のような都合の悪い自衛隊に関する情報を取材できなくなり、隠蔽される可能性があることを懸念していました9

秘密保護法とは、特定秘密の保護に関する法律です。具体的には、漏えいしてしまうと国の安全保障に大きな支障を与えるとされる情報を「特定秘密」に指定。その情報を取り扱う人を調査・管理することで、情報を外部に漏らしたり、外部から知ろうとしたりする人などを処罰することで特定秘密を守ろうとするものです。

この秘密保護法は、2013年12月6日に成立、同年12月13日に公布、翌年12月10日に施行されています。

審議の過程では、国民による反対の声が大きくなっていましたが、国会で十分な審議時間が確保されず、法案の問題点も解消しないまま採決されました10

現在はすでに施行されているため、昔のように取材できなくなってしまった情報がある可能性もあります。

さらに、文民統制を大きく逸脱している影の組織が、知らない間に海外で勝手な武力行使に及ぶ危険性は決してゼロとはいえないとも語っていました。

また、別班が存在するとすれば、活動資金が不明確な点も問題点といえます。予算上の処理がどうなっているのか? など、いろいろと気になりますよね。

その他にも、米軍との密接な関係を指摘する関係者が多い点なども問題視されているようです11

実際には存在するのか? 別班の真実を追求

路地裏の髭の人

このように、別班は実在した、もしくは現在もするという証言や記事がたくさんある一方で、日本政府はその存在を否定し続けています。

日本政府は、別班はこれまで存在したことがなく、現在も存在していないことが確認されていることから、これ以上の調査を行うことは考えていないとしています12

2013年には「総理も防衛相も存在すら知らない」「海外の要員は自衛官の籍を外し、他省庁の職員になっている」などの関係者証言が報道されています。

菅義偉官房長官(当時)は「陸上自衛隊にこれまでも存在していないし、現在も存在していないと防衛省から聞いている」と記者会見にて否定したそうです。

さらに、小野寺五典防衛相(当時)は参院国家安全保障特別委員会において、別班が独断で海外での情報活動をしていたとの報道に関して、「再度しっかり確認していきたい」と述べた旨が報道されていました。しかし、陸上幕僚長が調査に消極的で相違があることを見せたといった報道もあり、その真偽はいまだ不明のままといえます13

また、有識者によっては、過去に別班は存在するが、別班の海外展開についてはないという意見もあるようです14

上述した通り、別班については、さまざまな証言をもとに書かれた記事や書籍が存在します。しかし、日本政府がその存在を否定しているということから、「実在しない組織」とされているといえます。

まとめ

ドラマ『VIVANT』で話題となっている別班について解説しました。

ドラマはあくまでフィクションであり、さらに日本政府が別班の存在を否定し続けていることから、現時点では実在しない組織とされていることが分かりました。

しかし、さまざまな証言があるのも事実。その存在の有無はいまだ謎に包まれています。

別班がテロなどの悪から日本を守ってくれる組織として良い捉えられ方をするのか、もしくは非合法な活動をする悪い組織として捉えられるのか? ドラマでの描かれ方によって、そのイメージも変わってくるでしょう。

  1. コトバンク「百科事典マイペディア 「日米密約」の意味・わかりやすい解説」
  2. 沖縄県公文図書館「沖縄県公文書館収蔵資料に見る日米安保50年 ~「密約」をめぐる米側解禁文書を中心に~仲本 和彦†
  3. 東京新聞「謎に包まれた陸上自衛隊「別班」とは?…政府は「ない」と言うけれど TBSドラマ「VIVANT」で注目」
  4. 現代ビジネス「『VIVANT』で話題!首相さえ知らない謎の部隊「別班」とは? ホンモノの別班OBが明かす、自衛隊“闇組織”の正体」
  5. J-WAVE NEWS「自衛隊の闇組織「別班」とは…総理大臣も防衛大臣も存在を知らない!?」
  6. 東京新聞「謎に包まれた陸上自衛隊「別班」とは?…政府は「ない」と言うけれど TBSドラマ「VIVANT」で注目」
  7. 現代ビジネス「『VIVANT』で話題!首相さえ知らない謎の部隊「別班」とは? ホンモノの別班OBが明かす、自衛隊“闇組織”の正体」
  8. AERA dot.「「金大中拉致事件」に関与した吉田茂が創設した自衛隊「影の部隊」とは?」
  9. ダ・ヴィンチ Web「人に身分を明かせない極秘スパイチーム、自衛隊の“闇組織”の全貌とは?」
  10. 日本弁護士連合会「秘密保護法とは?」
  11. ダ・ヴィンチ Web「人に身分を明かせない極秘スパイチーム、自衛隊の“闇組織”の全貌とは?」
  12. 衆議院「衆議院議員鈴木貴子君提出陸上幕僚監部運用支援・情報部別班(別班)に関する質問に対する答弁書」
  13. YAHOO! JAPAN ニュース「「VIVANT」秘密部隊「別班」本当に菅義偉官房長官が否定していた「存在してないと聞いている」総理も知らない部隊と国会騒ぎ」
  14. 東京新聞「謎に包まれた陸上自衛隊「別班」とは?…政府は「ない」と言うけれど TBSドラマ「VIVANT」で注目」

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