介護の仕事は、3Kの仕事と呼ばれ一般的にネガティブなイメージを持たれやすいです。「介護職に就きたい」と思っていても、体力的、精神的負担から挫折してしまうことも少なくありません。介護職において、排泄介助や自分と体格の違う利用者様の移動介助などは必須の業務内容です。
さまざまな悩みを抱え「介護職に向いていない」と思い離職してしまうケースも多いことから、若いうちから介護につかないほうが良いと言われています。しかし、若いからこそ介護職に就くことで得られるメリットもあります。
今回は、介護に若い人はつかないほうがいい理由から介護職のメリット、介護業界の実態について紹介します。
介護に若い人はつかない方が良い理由
介護に限らず若い人はその将来性から、わざわざきつい仕事を選ばなくても負担の軽い仕事に就いた方がいいと言われることが多いのではないでしょうか。ここでは、なぜ介護職に就かないほうがいいと言われているのかその背景を掘り下げます。
3K
一般的に介護の現場は、汚い・きつい・危険の3Kと言われています。
介護施設を利用するのは高齢者であり、シモのお世話はもちろん自分よりも体格の大きい人を抱えて移動しなくてはいけないなど、体力・精神力共に必要です。
自力でトイレにいけない人には、排泄介助やおむつ交換を行わなくてはいけないため、他人の排泄物に嫌悪感がある人にはきつい仕事と言えるでしょう。また、食べこぼしなども多く、汚れを気にする人は抵抗を感じてしまうことも多いです。
他にも、高齢者は抵抗力が弱く集団感染のリスクがあります。集団感染が起きた場合、働く自身にとっても感染のリスクが高まるため、危険と隣り合わせと言えるでしょう。
また、自分と体格の違う利用者様を介助する場合、転倒や身体的負担などにより利用者様はもちろん、自身もケガをしてしまう可能性もあります。病気やケガへのリスクがある仕事と言えるでしょう。
理想のイメージとのギャップ
介護をテーマにしたドラマや漫画に感化し、理想を持ち介護職を選んだ結果、現実と理想のギャップに悩むケースも多いです。多くのテレビや漫画では、現実の介護現場とそん色がないよう描かれていますが、「優しいおじいさんやおばあさんが、ゆっくりとお茶を飲み、優しく支える介護職員」というイメージでは到底勤まらない厳しい世界です。
認知症を患った利用者様の場合、意思疎通が取れず会話もままならない、時には威嚇され辛い思いをしてしまうかもしれません。誇張している部分はありますが、何かしらの介護が必要な人が入所しているため、常に現場は慌ただしく走り回っている職員が多いです。
そのため、実際の介護の現場を目の当たりにし、自分では職務を全うできるのか不安になってしまうケースも少なくありません。
離職率の高さ
介護職は将来性があり、安定して長く働いていくことができるというイメージで就職を決める場合があります。公益財団法人介護労働安定センターが実施した「介護労働実態調査」によると令和3年度の、訪問介護員・介護職員の2職種合計の離職率は14.3%です。平成27年度の17.6%をピークに離職率は減少していることが分かります。
令和2年度に、厚生労働省が実施した雇用動向調査の離職率の比較を見てみると宿泊業・飲食サービス業の離職率が1番高く26.9%となっており、訪問介護員・介護職員の2職種合計の14.9%よりも高い離職率となっています。
介護業界の離職率は改善されつつあり、イメージが先行している部分もあると言えるでしょう。
職場の人間関係
現在の介護業界を支える人材の多くは65歳以上が中心となっています。業種別では訪問介護員が4人に1人が65歳以上となり、全従業員数の約12.3%を占めます。利用者様も高齢者、スタッフ仲間も年齢が離れた人が多いと「職場の人間関係が合わない」と悩んでしまうかもしれません。
特に介護の現場では、チームで利用者様を支えることが多いため、良好な人間関係を築く必要があります。勤務歴の長い人や上司など、関わる年齢の多さから考え方の違いなどにより、若い世代がなじむことができないまま離職するケースも多いです。
複雑な人間関係に疲れてしまう前に、上司や同僚に相談しストレスを溜めずに悩みを解消することが重要です。
介護職のメリット
売り手市場
厚生労働省が実施した「一般職業紹介状況」によると介護サービスの職業の令和2年の有効求人倍率は3.88倍です。有効求人倍率とは、求職者1人につき何件の求人があるのかを示す指標です。介護職を求職している人に対し、約3〜4件の求人がある状態になり、売り手市場の職種と言えるでしょう。有効求人倍率が高いほど、就職や転職がしやすくなるので、ン求める条件の所を希望しやすくなります。
介護職が売り手市場となっている背景には、高齢化社会における需給のバランスや介護サービスの多様化が挙げられます。少子高齢化が進む現在の日本では、介護が必要となる高齢者が急速に増え、全国的に介護施設が増加しています。また、多様化するニーズに答えるために充実したサービスを提供するためにも、多くの人材を必要としています。
キャリアアップを目指せる
介護職には資格を持たずに就くことができる仕事内容もあります。
しかし、国家資格を所持して活躍できる仕事内容もあり、さまざまな角度からキャリアアップが可能です。
まず介護職の代表的なキャリアアップ方法は以下の流れになります。
- 介護職員初任者研修(旧ヘルパー2級)
- 介護福祉実務者研修(旧ヘルパー1級)
- 介護福祉士
介護職員初任者研修は、所定のスクールなどを受講し、修了試験に合格することで取得できます。介護未経験でも、130時間9科目の座学や実技などのカリキュラムを受講することで、必要な知識を学ぶことができます。
介護福祉士実務者研修は、所定のスクールなどで450時間20科目の座学や実技などのカリキュラムを受講し、修了試験に合格することで取得できます。介護職員初任者研修を取得している場合には、一部の受講内容が免除されたり受講費用の割引を受けることが可能な場合もあります。国家資格である介護福祉士の受験資格が、2017年1月に改定されたことにより3年以上の実務経験に加えて、介護福祉士実務者研修を取得しておく必要があります。
介護福祉士は、介護職の中で唯一の国家資格です。3年以上の実務経験と介護福祉士実務者研修のルートと、3年以上の実務経験と介護職員基礎研修、喀痰吸引等研修のルートの2種類のうちどちらかの受験資格を満たす必要があります。介護職員基礎研修は2012年度に廃止されており、新たに介護福祉士を目指す場合は3年以上の実務経験と介護福祉士実務者研修のルートのみになります。介護福祉士としてキャリアアップすることで、介護のスペシャリストとして貢献ができ年収約30万円〜60万円の増加が見込めます。
他にも介護業界で活躍できる仕事内容は下記です。
- 管理職
- ケアマネージャー
- 生活相談員
- サービス提供責任者
- 看護師
- 精神保健福祉士
- 理学療法士
- 作業療法士
- 言語聴覚療法士
- 社会福祉士
- 社会福祉主事
- 独立・開業
働けば働くほどキャリアを積み上げることができ、培った経験を活かして、さまざまな方面で介護業界で活躍できます。
スキルを身に付けることができる
介護職に従事する場合には、正しい知識とケア技術が必要です。これらの知識がないと、利用者様はもちろん自身のケガなどを誘発してしまいかねません。
介護技術としてボディメカニクスと呼ばれる最小限の力で効果を引き出す技術があります。
ボディメカニクスを活用することで、介護における腰痛など身体の負担を抑えることが可能です。これは、日常生活でも不測の事態があった場合に役立つ技術です。
また同様にコミュニケーション能力も必要です。利用者様やそのご家族と接する機会も多く、第一印象を決める身だしなみや話を聞く技術、電話やメール対応などのやり鳥も必要です。他の企業に勤めた場合にも必須のスキルであるコミュニケーション能力を高めることができ、自分の年齢の離れた利用者様を相手にすることで幅広いスキルを得ることができるでしょう。
自由な働き方が可能
負担の大きい介護業界では、長時間労働などの改善など働き方改革への対応が行われています。人出不足も問題になっており、都会や地方などどこでも求人で溢れています。転勤が無い場合が多い介護業界では自宅から通いやすいかなども考慮し、安心して長く務めるkとができます。また、夜勤だけや日勤だけの勤務や、パートやアルバイトと言った多様な働き方が可能です。
正規雇用が期待できる
不安定な社会情勢から、パートや派遣、契約社員と言った非正規雇用が増加しています。新型コロナウイルスが流行した際に、職を失った人の多くが非正規雇用の人々です。2021年には「同一労働同一賃金」への改革が進められてきていますが、現在も正規雇用と非正規雇用の格差は残っていると言えるでしょう。
介護業界では、売り手市場ということもあり未経験でも正規雇用をしてもらうことができる可能性が高いです。正規雇用になることで、給与や賞与はもちろん、健康保険や厚生年金、雇用保険などの各種保証を受けることができます。景気に左右されない介護職は、安定した職業とも言えるでしょう。
介護職の実態
公益財団法人「介護労働安定センター」が令和2年に発表したデータを参考に、現在の介護職の実態について紹介します。
給与・賞与ともに増加
令和1年は平均所定内賃金234,439円、平均賞与599,506円でした。令和2年の平均所定内賃金は、前年度より8,696円増加の243,135円、平均賞与は26,588円増加の626,094円でした。
そのうち管理者の平均所定内賃金は382,036円、平均賞与866,872円と、キャリアアップを図るほど、高い給与水準を期待できます。
介護職員等特定処遇改善加算
令和元年10月に創設された介護職員等特定処遇改善加算。全産業と比較して給与が低いとされる介護業界で、経験や技能ある介護職員の給与を引き上げ、現場定着や介護職員の確保につなげるために実施されています。
この表でもわかる通り、令和2年度では全体の約75.9%が算定したとしており、処遇改善に努めていることが分かります。
また、各事業所において加算額を配分する職員範囲については、職員全体の処遇が最も多く38.5%になっており、介護職員全体の処遇改善は29.2%でした。今後も算定されていく事業所が増えれば、デメリットである低賃金がクリアされる可能性を秘めています。
介護業界の悩み
介護業界で働いている人の多くは、人出が足りていないと感じています。しかし、休んだ時に自分の代わりに担当できる人もいるとして、突然の残業がほとんどないことや日頃から有休をとりやすいなど、有給や残業等の労働環境が改善されているとしています。また、新型コロナウイルス感染症の影響で、前年度よりも健康面での不安を訴える人が倍近く増加しています。人出不足や低賃金は解消されつつあるものの、健康面などのリスクに備える必要があると言えるでしょう。
しかし「今の勤務先で働き続けたい」という人が年々増加していることからも、労働環境の改善が行われ働きやすい職場になっていると言えるのではないでしょうか。
出典:公益財団法人 介護労働安定センター「令和2年度 介護労働実態調査結果について」
まとめ
今回は介護に若い人はつかない方が良い理由や介護職のメリット、介護業界の実態などについて紹介しました。
一般的に精神、体力ともに負担が大きい介護職。近年では介護業界における処遇改善や労働環境改善がされており、若い人でも働きやすい職場環境に整いつつあります。
今後も少子高齢化により、介護職のニーズは高まります。若いうちから経験を積み、キャリアアップを図ることで多様な働き方を実現できるのではないでしょうか。
最後までお読みいただきありがとうございます。
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