「毒親」
このインパクトのある言葉は、1989年に出版された本、「毒になる親 - 一生苦しむ子供 -」から誕生しました。
我が子の発達・成長に大きな悪影響を及ぼすかかわりをする親を意味します。
医学用語でも学術用語でもなく、俗的な表現です。
今回は、毒親とはいったいどんな親なのか、何が問題なのかを解説していきます。
そして、自分の親が毒親だった場合にできることと、自分が毒親にならないためにできること、この2つの視点で、毒親の乗り越え方も考えていきます。
毒親とは
毒親とはその名の通り、子どもにとって毒のように有害な影響を与える親のことです。
では、子どもにとって毒のように有害な影響を与える親とは、具体的にどんな親でしょうか。
本の中に書かれているのは、下記の様な親たちです。
「神様」のように絶対的な親
子どもが一人の人間として自立することを認めず、いつまでも未熟な存在としてしか扱わない
基本的な養育の義務を果たさない親
食事、生活など、生きていく上で、成長する上で必要なものを与えてくれなかったり、学習機会を与えなかったりする
コントロールばかりする親
全てを過剰にコントールし、子どもが自己を確立することを阻止する
アルコール中毒の親
アルコール依存で、子どもに親としての適切なかかわりができない
残酷な言葉で傷つける親
「お前のために言っている」などと言いながら、子どもを辱めたり侮辱したりする言葉を使う
暴力をふるう親
暴力をしつけの一環として正当化して叩いたり蹴ったりする
性的な行為をする親
子どもに対し性的な行為を強要したり、性的行為を見せつけたりする
上記に上げた親は、タイプは違えど、全て「毒になる親」の本の中に登場する毒親です。
毒親の特徴
自分の親が毒親なのか、悩む人は多いと思います。
親の関わり方が悪いのか、自分の受け止め方の問題なのか、
その判断はなかなか難しいものです。
ただ、受け止め方が形成されるのは育った環境によってです。
自分の受け止め方に問題があるのかも、と、自責的に感じるのは、もしかしたら、その受けとめ方自体、毒親によって形成されたものかもしれません。
「毒になる親」の本の中では、親のかかわりに問題があるのかどうかを知るためのヒントが書かれてします。
以下に項目をいくつか引用させてもらいました。
あなたの親は…
- あなたの人としての価値を否定するようなことを言ったり、侮辱したり、ののしったりする
- 終始批判ばかりしている
- あなたを叱る時に体罰を与える
- しょっちゅう酒に酔っていたり、薬物を使用したりしている
- 精神状態が不安定で、あなたを一人ぼっちにしている
- 色々な問題を抱えており、あなたが世話をしなくてはならない
など
これらの項目を参考に、あなたの親が、毒親の特徴に当てはまるのかどうか、確認してみると良いでしょう。
毒親が子どもに与える影響
毒親が子どもに与える影響は多岐に渡ります。
子どもの頃は、下記の様な反応が見られることが多いです。
『過剰適応』
親の言う事が絶対で、逆らう選択肢がない
異様に「いい子」に振舞う
『怯え』
親の言動にいつもビクビクしている
親の機嫌を損ねないように気を遣いながら過ごす
『罪悪感』
親の機嫌が悪い原因は常に自分にあると思いがち
『自己否定』
自分は存在していたらダメな存在なのでは、という自分を否定する感情がある
また、毒親が子どもに与える影響は、その子どもが大人になった時まで及びます。
毒親に育てられると、大人になった時に下記の様な影響が出ると言われています。
- 対人関係が安定せず、いつもこじれてしまう
- 自分がどんな人間で、どう感じているのか、ということを考えるのが苦手
- 自分の本当の姿が誰にの愛されないと思っている
- 物事がうまくいくと、なぜか不安になる
- リラックスしたり、楽しく時間を過ごすことが苦手
など
子どもの頃の影響を見ても、大人になってからの影響を見ても、毒親が及ぼす子どもへの影響は多大であることが分かります。
毒親に育てられた人の特徴・性格的な傾向
毒親に育てられた人の性格的な傾向は様々ですが、比較的多くみられる特徴を3つ挙げました。
1)人との適切な距離感が分からない
他者に対し、どこまで心を開いていいかがよく分からない人が多いです。
すぐに人を信用してしまう、依存してしまうなど、距離感がつかめずべったりとくっつきすぎてしまう人がいます。
その結果、相手に鬱陶しいと思われ、傷つけられたり、関係を切られたり、という出来事が起こりがちです。
そうなると、人との距離感がますますわからなくなり、今後は逆に引きこもったり、関係を回避したりする場合もあります。
誰かを理想化してみたり、気に入らなかったら一気に冷めて逆に攻撃的に振舞ったり、とにかく人間関係が安定しません。
2)本当の自分が分からない
親の顔色を見ながら生きてきたため、「自分」というものがよく分からない人が多いです。
自分の本当の性格が何なのか、自分はどうしたいのか、といった質問になかなか答えられません。
何となく、「自分は偽物だ」という感覚を持っているという人もいます。
3)完璧主義
何事も完璧にしないと気が済まない、という性格を持つ人も多くいます。
自分に対してだけでなく、人に対してもそれを強要することがあり、人間関係がこじれることもあります。
完璧でないと不安、完全でない自分は認められない、そんな気持ちが心の奥底にあり、物事を臨機応変、柔軟に考えることができません。
毒親チェック診断!
様々なチェック診断が存在するようですが、ここでは、最初に毒親という言葉を提唱した「毒になる親」の本の中で書かれている文章を参考に、毒親かどうかのチェックポイントを挙げてみましょう。
現在のあなたと親の関係は、以下の7項目中、何項目当てはまりますか?
- あなたが人生において決定することの多くは、親がそれをどう思うだろうか、ということが基準になっている
- 親の考えに反対するのに勇気がいる
- あなたを威圧したり、罪悪感を感じさせたりして、あなたを自分の思い通りに行動させようとする
- 金銭的な事を利用して、あなたを自分の思い通りに行動させようとする
- 親がどういう気分でいるかは、自分にかかっており、自分に責任がある
- 自分が何をしても、親は満足することが無い
毒親にも様々なタイプがいるので、全ての項目に当てはまることは少ないと思いますが、
半数以上当てはまる場合、あなたの親は「毒になる親」である可能性があります。
なぜ毒親になるの?
毒になる親は、基本的考え方が全て自己中心的です。
何事も自分都合が優先されます。
一般的に成熟した親は、
「子どもも自分の人格を持つ一人の人間である」
という当たり前の考えを持っています。
「親と言えども、子どもを傷つけてはいけない」という考え方や
「子どもはそもそも間違ったり失敗したりするものだ」という思いを持っています。
一方、毒親は、自分自身も偏った考え方の家庭環境で育っていることが多いです。
例えば、「子どもはただ親の言う事を聞くべきだ」
「養ってやっているのだから、いちいち子どもの意見など聞く必要がない」
「子どもは自分の所有物に過ぎない」
など、偏った考え方を持った環境の中で育ったため、自分が親になった時も、親本位に振舞うことに疑問を感じません。
逆を言えば、成長する過程で、世間の様々な価値観に触れ、自分は毒親に育てられたかもしれない、と振り返る事ができれば、毒親の連鎖は断ち切りやすくなります。
ですが、多くの場合は、毒親の連鎖に気づかず、自分が親になった時に、子どもにとって毒になるかかわりをしてしまうのです。
毒親を持ってしまったときの対処法・対策!
自分の親が毒親かも?と思った場合、とにかくまずは誰かに相談することから始めてほしいです。
できれば、親子関係に詳しい専門家に相談しましょう。
話すことで、状況が整理され、この先の対処法が見つかりやすくなります。
また、「なぜ自分の親だけこんな毒親なのか…」と追い込まれていたとしても、専門家に相談すると、実は似たようなケースを知っていたり、同じような家庭の問題に対応したことがあったりするので、適切な対策を一緒に考えてくれるでしょう!
もしあなたが18歳以下の子どもであれば、次のような相談先を利用すると良いでしょう。
○学校のスクールカウンセラー
昔はあまり浸透していなかったスクールカウンセラーですが、今ではどこの小、中学校にも当たり前に配置されていると思います。
高校でもスクールカウンセラーがいる学校がほとんどです。
自分の親との関係に悩んだ時は、まず学校のスクールカウンセラーを頼ってみましょう。
相談した内容が、先生や両親に伝わってしまうのでは?と心配するかもしれませんが、それは、カウンセラーに秘密にするようちゃんとお願いすれば大丈夫です。
カウンセラーには守秘義務があるので、勝手に話をばらされて、周りの人に知られてしまうということはまず起こりません。
あなたの気持ちを最優先にしながら、親との付き合い方についてアドバイスをくれるはずです。
○チャイルドライン
チャイルドライン® 18さいまでの子どもがかけるでんわ (childline.or.jp)
チャイルドラインは、全英児童虐待防止協会(NSPCC)という英国の児童保護慈善団体を母体としておこなっている、子どものための無料相談窓口です。
相談の方法は、電話とチャットがあります。どちらの方法でも良いので、とにかく自分のやりやすい方法で相談をしてみましょう。
○24時間子供SOSダイヤル
子供(こども)のSOSの相談窓口(そうだんまどぐち):文部科学省 (mext.go.jp)
文部科学省が運営している子ども専用の相談窓口です。
相談の方法は電話です。フリーダイヤルなので通話料無料で電話ができます。
また、このサイトには、自分の地元の相談窓口を探すことができるページもあります。
直接会って話せる対面相談、電話相談、SNS・メール相談など、様々な手段で相談できるサービスが紹介されていますので、自分が利用しやすい方法で相談できる場を探せます。
既に18歳以上で成人しているけど、毒親との関係にずっと悩んでいる、という方は、下記のサイトを参考にしてみると良いでしょう。
厚労省が、様々な相談サービスの情報をまとめています。
きっとあなたにあった相談先が見つかるはずです。
毒親にならない方法
もし、今、自分は毒親かもしれないと不安になって調べていて、この文章を読んでくれている人は、安心してください。
あなたは、自分を客観的に捉えようとしていますので、その時点で毒親にならない道は開かれています!
(深刻なレベルの毒親は、自分の教育は正しいと思っている可能性が高く、自分の関わりが子どもに悪影響を与えているなどとは考えないでしょう…)
ただ、自分1人で子どもとの接し方を振り返り、改善していくには限界があります。
視野が狭まり、アイデアがなく、結局子どもとうまく接することがきない。
そんな自分を責め、更にストレスが溜まり、ますます子育てで行き詰まる…
このような悪循環に陥ってしまうからです。
悪循環を断ち切り、毒親から卒業するためには、あなたをサポートし、納得のいくところまで伴走してくれる人が、絶対に必要です。
一緒に子育てをしているパートナーに相談したり、あなたのことを理解してくれている友人に話すのもありでしょう。
定期的に話を聞いてもらい、客観的な立場から、子どもとの接し方のアドバイスをもらいましょう。
もし身近に相談相手がいなければ、子育てに特化した専門家に相談してみましょう。
専門家は子育てに関する知識が豊富です。
時には、あなたとあなたの親の関係性も振り返りながら、あなたに合った子どもとの接し方、コミュニケーションを一緒に考えてくれるでしょう。
相談先を探す時は、まず自治体の子ども家庭支援センターを頼ってみると良いです。
子育て悩みに特化して、無料で相談を受付けていますので安心して相談ができます。
ただ、予約が取りにくい、わざわざ相談に行くのが大変、時間がないなど、子ども家庭支援センターは利用しにくい、という方もいると思います。
その場合は、近場でカウンセリングを受けられるところを探したり、オンラインで相談できるところを探してみてください。
私も、心理カウンセリングアプリ「NAGON」で、不定期ですが子育てなんでも相談を受け付けております。
毒親にならないためにどうしたらよいか、相談にのることができますので、よろしければご相談ください。
まとめ
最後に、毒親の話をする上で最も大切なことを伝えたいと思います。
それは、「あなたは悪くない」「悪いのは毒親だ」ということです。
毒親に育てられた人は、自分が悪い子だ、という罪悪感を心の奥底に植え付けられていることが多いです。
それは、誤った考えです。
だからこそ、繰り返し声を大きくしてお伝えします。
毒親があなたを大切にしなかったのは、毒親の責任であり、あなた自身には何の責任もありません。
もし、あなたが今親になっていて、我が子に同じようなかかわりを繰り返しそうになって悩んでいるのであれば、「よく気がつきましたね!」とお伝えしたいです。
それは、毒親の世代連鎖を断ち切るチャンスになるからです。
一人で苦しまず、誰かに相談をしながら、毒親の連鎖を断ち切っていきましょう。
参考文献:Amazon.co.jp – 毒になる親 一生苦しむ子供 (講談社+α文庫) | スーザン・フォワード, 玉置 悟 |本 | 通販
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