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マインドフルネスはビジネスで役立つ!

マインドフルネスはビジネスで役立つ!

瞑想による集中力や注意力の訓練をつうじて、全体的な生き方を得ることが、マインドフルネスの目的です。

その効果は、ビジネスの分野で活用されるようになりました。

この記事では、マインドフルネスが仕事に与えるよい影響や、ビジネスパーソン向けのマインドフルネスについて述べようと思います。

【ビジネスでマインドフルネスが必要とされる理由】

なぜ、ビジネスの分野で瞑想を取り入れる企業が増えているのか。

その遠因は、アメリカで、1960年代から、禅の科学的な効果が研究されてきたことにありました。

そのころから、心理学や神経科学の研究によって、禅の瞑想が、実際に集中力を高めたり、ストレスを減らす効果がある、ということがわかってきました。昔は非科学的なものだと考えられていた禅が、その効果を証明されたのです。

そして、ビジネスの分野でも、マインドフルネスを導入する企業が増えました。

たとえば、アップル社の創業者であった、スティーブ・ジョブズは、マインドフルネスを実践していました。彼は、乙川弘文という日本人の僧侶から、禅の指導を受けていました。

また、アメリカのグーグル社でエンジニアをしていた、チャディー・メン・タンは、社員に向けたマインドフルネス・プログラムとして《サーチ・インサイド・ユアセルフ(SIY)》を開発しました。彼は、名刺の肩書き部分に『陽気な善人』と書いて、実際にその肩書きを自称するなど、業界の中ではユニークな人柄で知られています。

メンの《SIY》のプログラムは、マサチューセッツ大学の教授であった、ジョン・カバットジンの《マインドフルネスストレス低減法(MBSR)》というプログラムを参考としています。カバットジンは、精神疾患の治療法として、はじめて、禅の瞑想を導入した研究者でした。

近年、わが国でも、逆輸入のような形で、ビジネスパーソン向けのマインドフルネス・プログラムが実践されるようになりました。

もともと、わが国では、禅の文化が浸透していました。著名なビジネスパーソンの中にも、東洋思想を学んでいた人々はいました。松下幸之助は、そのようなタイプの経営者のうちの一人でした。

そのため、わが国では、マインドフルネスは、受け入れられやすかったのです。

近年では、国内の企業が、マインドフルネス研修を推奨するようになってきています。フリマサイトを運営している、メルカリ株式会社などでは、社員のためのマインドフルネスをおこなっています。

ただ、歴史的な理由だけで普及したのではありません。

マインドフルネスの実践が、ビジネスによい影響をもたらす、ということは、実際の効果という観点から、事実であるといえます。

なぜなら、瞑想で訓練した注意力を、仕事で発揮することによって、作業能率を高めたり、職場の人間関係を改善したりする効果が期待できるからです。

たとえば《SIY》のプログラムで、メンが目的としていることは、マインドフルネスの実践によって、EQ(情動的知能)を高めることです。

EQというのは『こころの知能指数』のことです。

たとえば、生活の中で、自己の情動をコントロールしたり、他者の感情を読み取りながらコミュニケーションをとる、などといった能力が必要となることがあります。

それらの、情動にかかわる能力が、EQです。EQは、思考の知能指数である、IQとは異なります。実際の生活では、IQとEQという両方の能力が調和していることが、のぞましい状態です。

マインドフルネスの訓練によって、EQを鍛えることができるのです。

そして、その訓練は、だれでも、簡単に実践することができるのです。

【EQとマインドフルネス】

マインドフルネスがEQにもたらす影響は、神経科学によって説明することができます。

マインドフルネスを実践しているとき、脳の、注意をつかさどる前部帯状回皮質(ACC)や、情動を調整する前頭前野が活性化します。このはたらきによって、自己を一歩引いたかかわり方で見ることができるようになります。自己を客観的に捉えるようになることは『脱中心化』とよばれています。

そして『脱中心化』は、仏教で『無我』と表現される状態のことである、といわれています。

メンによれば、EQを鍛えることによって『優れた職務遂行能力』『抜群のリーダーシップ』『幸せのお膳立てをする能力』という三つの恩恵を受けることができます。

それらのうち、三番目にある『幸せのお膳立てをする能力』は、仕事という枠の中だけの恩恵ではありません。

それは、より広く、生活そのものにかかわる能力です。

禅の思想は、生き方そのものについての哲学でした。

マインドフルネスも、また、禅がもととなっていますから、ビジネスという範疇だけにとどまらない要素を含んでいます。マインドフルネスの実践が仕事にもたらす成果は、ポジティブな生き方による結果にすぎないのです。

自己がほんとうの幸せを得ることができれば、仕事でも、よい結果がついてくるのです。

【ストレスマネジメント】

精神的なストレスを手放すことができるようになる、ということは、マインドフルネスの効果として、よく知られています。

人間の脳は、注意が散漫なときには、雑念や空想などといったことを統括する、デフォルトモード・ネットワーク(DMN)とよばれる神経ネットワークの活動が不安定となっています。この状態は、ネガティブな考えが湧きやすい状態です。

ヘイセンキャンプという研究者は、脳の画像診断法で、マインドフルネスが脳にもたらす効果を調べました。

そして、その結果として、彼は、マインドフルネスの実践がDMNの活動を統合する効果がある、という結論を導き出しています。マインドフルネスは、ネガティブな雑念を減らす効果があるのです。

また、脳には、ストレスを感じる中枢である、扁桃体という部分があります。ストレスが多いほど、扁桃体が肥大化する傾向があります。

このストレス中枢も、マインドフルネスを実践することによって、小さくなることがわかっています。

心理学では、ストレスに対処する能力は、ストレス耐性とよばれています。マインドフルネスの効果は、実践者のストレス耐性を強化させるのです。

はじめて心理療法に禅の瞑想を導入した研究者であった、ジョン・カバットジンは《マインドフルネスストレス低減法(MBSR)》という治療プログラムを開発しました。彼のプログラムは、もちろん、精神疾患の治療を目的としたものでした。

そして《MBSR》の理論を参考として、ビジネスに応用しようとしたのが、グーグルのメンによる《SIY》だったのです。メンの著作では、まえがきをカバットジンが執筆しているなど、お互いにかかわりがあったことも、事実です。

カバットジンは『時間ストレス』『対人ストレス』『仕事ストレス』という三つの観点から、マインドフルネスの実践によってストレス耐性を養うプロセスを説明しています。

『仕事ストレス』について、彼は『仕事は、私たちをより広い世界と結びつけてくれるものでもあります』と述べています。

ただし、仕事が、収入を得るための手段という認識となってしまうことは、よくあることです。おそらく、ほとんどの人々は、生活のために、仕方なく今の職業にかかわり続けている、という感情を、もったことがあると思われます。

マインドフルネスを活用して、仕事のストレスに対処する方法は、ただ瞑想を仕事の合間におこなう、ということだけではありません。

カバットジンが勧めているのは、仕事を、自己の成長のためにおこなう、ということです。

いま任されている仕事が、社会の中で、なんらかの意味で貢献をしている、という観点から、自己の作業を見直してみるのです。

そして、瞑想で養った集中力を、業務の中で発揮したり、同じ仕事をしている仲間を、より信頼することなどに意識を向けるのです。仕事を意識的にとらえることによって、問題処理能力が高くなります。

問題を解決することが簡単にできるようになれば、ストレス要因は、おのずから減っていきます。

【仕事の合間におこなうマインドフルネス】

たとえば、会議をすることとなっている日に、ほかのだれよりも先に、会議室に到着したときのことを想定してみましょう。

ほかの人々を待っている時間が、5分から10分ほどあるかもしれません。

そのようなときには、呼吸瞑想で、心の準備をしておくチャンスです。人前で意見を述べるときには、平常心を保っておく必要があります。それよりも前の段階として、自己のこころを調整しておくことは、重要なことです。

このような自己調整は、休憩時間のあいだにすませておくこともできます。

たとえば、仕事の合間に15分くらい休憩時間があると仮定します。そのうちの5分間、軽い運動をして、そのあと5分間、呼吸瞑想でクールダウンしたとしても、残りの5分間が余ります。

このような時間の利用法は、心身を整えるための、効果的な方法です。運動で交感神経を刺激したあとに、呼吸瞑想で交感神経と副交感神経のバランスを整えることができるのです。

【思いやりとリーダーシップ】

リーダーシップときいて、われわれが思い浮かべるのは、野心をもって事業を拡大していくようなイメージであるかもしれません。

しかし、実際に、リーダーに求められる能力は、野心よりも、むしろ、思いやりであるといえます。

ビジネスコンサルタントである、ジェームズ・C・コリンズは、カリスマ性のあるリーダーよりも、謙虚な、人格者という特徴をもったリーダーを重要視しています。もちろん、野心はあるのですけれども、その野心を、個人的な利益を超えた善に向けているようなリーダーが必要だ、ということです。スターバックスジャパンのCEOなどといった、いくつもの大企業で経営を担当していた、岩田松雄は、コリンズのリーダーシップ論に同意しながら「人間を磨いておくことこそ、実はリーダーの最低条件なのです」と述べています。

《SIY》で身につけることができるリーダーシップも、また、コリンズや岩田が述べているような、謙虚なリーダーシップです。

メンは、そのことを『思いやりのあるリーダーシップ』とよんでいます。他者にたいする思いやりや、世界にたいする思いやりをもとに考えて、行動するようなリーダーに、信頼できる人々がついてくるのです。

リーダーに必要な思いやりの力を訓練する瞑想も《SIY》のプログラムの中にあります。《善良さを増す瞑想》では、呼吸に合わせて、自己のこころの中にある善良さを意識します。吸う息で、善良さを吸うことをイメージします。吐く息では、その善良さを世界に向けて吐き出します。

善良さという概念をイメージしにくい場合には、自己の善良さを『白い光』というイメージに置き換えながらおこないます。

《善良さを増す瞑想》のほかにも、マインドフルネスの基本的な瞑想である静坐瞑想(坐禅)や、自己と他者の幸せを願いながらおこなう瞑想である《慈悲の瞑想》も、思いやりを増すためには、有効です。

より実践的な訓練として、傾聴術なども、おすすめすることができます。

傾聴術では、相手の話を受け入れて、その相手がどのような気持ちで話しているか、ということを尊重します。相手が「わかってほしい」と思っているのは、どのようなことなのか、ということを、想像しながら聴くのです。

そして、ほんとうに相手の身になって話を理解しているか否かを確認するために、自己の考えた言葉で、返します。

この技術は、プロの心理カウンセラーさえも、簡単にできるものではありません。

しかし、傾聴術は、相手にたいする愛情となるだけではなく、自己の人生を豊かにします。もしも、悩みを相談されるようなことがあったならば、相手の身になって、傾聴することを心がけるとよいです。

【まとめ】

マインドフルネスの瞑想は、基本的に、どこでも実践することができます。空き時間で心を整えることができるのです。

現代のビジネスパーソンは、マルチタスクに追われています。複数の業務を同時にこなさなければならないような業務形態では、脳は、DMNの状態となりやすくなってしまっています。

しかし、近年では、企業が、マインドフルネス研修を推奨している場合もあります。もしも、そのようなプログラムに参加できるようならば、検討してみるとよいです。

また、お寺などでおこなわれている、一般向けの瞑想会でも、集中力を高める効果は、期待できます。無料で参加できるものもありますから、基本的な座り方を知るために、一度、体験してみるくらいの気持ちで参加することもできます。

キャリアアップのつもりで参加したあとに、それ以上の人生観に気づくことも、あるかもしれません。

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