赤ちゃんが授乳後などに舌をペロペロと出していると、「何か意味があるのではないか?」「体調が悪いのではないか?」と気になる方も多いのではないでしょうか。
こちらの記事では、赤ちゃんが舌を出す理由や病気の可能性、注意すべきことなどについて解説します。
赤ちゃんが舌をペロペロ出す理由とは?
赤ちゃんが舌をペロペロと出す理由として考えられるものをご紹介します。
舌を動かすことを楽しんでいる
赤ちゃんが舌を動かすことを楽しんでいることが考えられます。生まれたばかりの赤ちゃんは自分の体にも新しい発見がたくさんあります。そのため、自分で舌を動かしたり、口から出したりできることに気づき、それを楽しんでいるのです。
「ハンドリガード(Hand regard)」といって、生後2〜5カ月くらいの赤ちゃんが自分の手をじっと見つめたり、ぎこちなくグーパーを繰り返したりするのと同じように、自分の体に興味を持ち遊んでいるのだと考えられます。
口の中が傷ついている
口の中が傷ついていることも考えられます。まだ食べ物をうまく噛めなかったり、何でも口に入れてしまったりする赤ちゃんは、口の中に傷がつく可能性も高いといえます。
舌を何度も出す場合は、口の中に違和感を覚えていることも考えられるため確認してみましょう。傷がある場合は病院を受診することをおすすめします。
風邪で呼吸がしづらい
普段は鼻呼吸をしている赤ちゃんも、風邪で鼻呼吸ができなくなると口で呼吸をするようになります。慣れない口呼吸でうまく呼吸ができないため、舌を出しているということも考えられます。
何度も舌を出していて呼吸も苦しそうな場合、鼻がつまっていないか確認しましょう。
歯の生え始めで口の中に違和感がある
乳歯が生え始めるタイミングで、口の中や歯茎に違和感を覚えている可能性があります。
生後6〜9カ月ごろになると、乳歯が生え始めます。歯茎にそれまでになかったむず痒さを感じるため、それを紛らわせようと舌を出して口を動かしているのだと考えられます。舌を出すだけでなく、口の中の違和感によって不機嫌になる赤ちゃんも多いようです。
「新生児模倣」の可能性もある
赤ちゃんが舌を出すのは「新生児模倣」の可能性もあります。
「新生児模倣」とは、目の前の大人の行動を見て、新生児がその真似をすることです。例えば、目の前の大人が口を開けたり舌を出したりするのを見て、それを赤ちゃんが真似するように口を開けたり舌を出したりするといった現象です。
当初は大人の動作や表情(刺激)に反射的に反応しているだけだと考えられていました。しかし、研究によって大人の行動や表情を新生児がしばらく見つめた後に模倣を行うことが明らかになったそうです。このことから、新生児模倣は反射的なものではなく、他者を観察した上で自発的に行っているものだと考えられるようになりました1。
舌が大きい
口の中に違和感がなくても、舌のサイズが比較的大きめの赤ちゃんはペロペロと出すことが多いようです。
舌が大きいという特性を持つ疾患については後述しています。
授乳後に舌を出す理由は?
赤ちゃんが授乳後に舌を出すのはなぜなのでしょうか?
考えられる理由はこちらです。
げっぷを出したがっている
授乳後に舌を出す理由の1つとして、げっぷを出したがっているということが考えられます。
ミルクを飲む際に胃の中に空気がたまりますが、赤ちゃんは自力でげっぷを出すのが難しいため、授乳後にげっぷをさせる必要があります。
しかし、げっぷをさせても胃の中に少量の空気が残ってしまうことがあります。赤ちゃんが苦しそうに舌を出している場合は、げっぷを出したいというサインかもしれません。もう一度抱っこをして、げっぷを出させてあげましょう。
原始反射
もう1つの理由としては、「反射」が考えられます。
生まれたばかりの赤ちゃんが、誰に教わることもなくミルクを飲むことができるのは、哺乳のための反射が備わっているためです。このような反射を「原始反射」といいます。
哺乳に関する反射の1つに「舌挺出反射」というものがあります。これは、吸ったり飲んだりできないものが口の中に入ると、舌で押し出して出そうとする動きのことを指します。このような哺乳に関する反射は、哺乳中心の時期が終わる生後4〜6カ月ごろに消失します2。
赤ちゃんが舌を出すのは病気が原因?
赤ちゃんが舌を出していると体調不良や病気が原因なのではないかと心配になる方もいると思います。実際のところ、どうなのでしょうか? 関連性のある症状や病気をご紹介します。
風邪をひいている
上述した通り、風邪による鼻水・鼻づまりによって鼻呼吸ができなくなり、口呼吸になっている可能性があります。いつも舌が出ている場合や、息が苦しそうな場合は風邪をひいている可能性が高いでしょう。赤ちゃんは基本的に鼻呼吸のため、慣れない口呼吸で舌が出てしまうのです。
鼻をチェックして、鼻水が出ているのであれば吸引してあげましょう。また、鼻が詰まっていて息が苦しそうな場合や、ミルクを飲みづらそうにしている場合は、小児科や耳鼻科を受診するのが良いといえます。
ダウン症などの可能性
ダウン症(21トリソミー)は、21番染色体が1本多く存在することで起こる疾患です。700〜1,000人に1人の確率で発生するといわれています。
ダウン症には、筋肉の緊張度が低いという特性があります。また多くのケースで、知的な発達に遅れがあります。
ダウン症の特徴として、舌を口の中に入れて閉じることや鼻呼吸をすること、舌を口の中にしまって飲み込むことなどが苦手だということが挙げられます。
口内の緊張度が低く、さらに舌が大きいことによって口を閉じるのが難しく、舌が前後に大きく動いてしまうのです。食べ物や飲み物も舌で押し出しやすく、舌が出た状態になります3。
舌が出るという特徴を持つ疾患はダウン症だけではありません。
例えば、先天性甲状腺機能低下症(クレチン症)は、舌が大きく口が開くという症状が出る可能性があるといわれています4。
とはいえ、舌が出ているから何らかの疾患であるとは言い切れません。上述したような風邪や反射的な反応の可能性もあります。気になる場合は病院で相談しましょう。
月齢によって異なる! 赤ちゃんが舌を出す理由
赤ちゃんが舌を出す理由は月齢によっても異なります。
月齢ごとの理由を解説します。
月齢0〜3カ月ごろ
生後すぐから3カ月ごろまでは、体だけでなく口まわりの筋肉も発達していません。
口を閉じるのには筋力が必要なため、その段階では口を閉じるのが難しく、舌が出てしまうのだと考えられます。
月齢3~6カ月ごろ
赤ちゃんが少しずつ成長する中で、自分の体にも興味を持ち始めます。すると、ハンドリガードのように体の部位で遊ぶようになります。舌の存在や、口を開けて舌を出すことができることに気づいた赤ちゃんは、舌を出して遊ぶようになるのです。
月齢6~9カ月ごろ
生後6カ月を過ぎると乳歯が生え始めます。歯が生え始めると歯茎がむず痒くなり、違和感を覚えるようになります。このむず痒さや違和感を和らげるために、口を開けたり舌を出したりしているのだと考えられます。
また、この時期になると離乳食を始める赤ちゃんも多いです。空腹のサインとして、舌を出している可能性もあります。
月齢9カ月〜
9カ月を過ぎたころには、口まわりの筋肉をしっかりと使えるようになるため、口を閉じることも上手になります。また、1歳を過ぎると乳歯も生えそろってくるため、歯茎のむず痒さや違和感も落ち着きます。それによって、ペロペロと舌を出すことが減っていくでしょう。
舌を出さない方がいい?
赤ちゃんが舌を出す理由について解説してきました。
舌を出す頻度があまりにも多いと、細菌が口に入るのではないか? 歯並びに悪影響を及ぼすのではないか? と心配になる方もいると思います。
舌を出すのをやめさせた方が良いのでしょうか?
その答えは、無理にやめさせる必要はないといえます。
口の中に細菌が入り、感染するのではないかと心配になりますが、唾液には殺菌作用もあるため、赤ちゃんが元気であれば無理にやめさせる必要はないでしょう。
しかし、赤ちゃんが口にすると危険なものを身の回りに置かないことは大切です。赤ちゃん用のおもちゃであっても、なめることがあるのであればウェットティッシュで拭くなどして清潔に保ちましょう。
また、赤ちゃんが舌を出すことによって歯並びが悪くなるのではないか? という疑問についても、心配ないといえます。
歯が生えそろった後や大人であれば、舌の位置が歯並びに影響します。しかし、赤ちゃんはまだ歯が生えそろっていないため、舌を出すことが歯並びに影響することはないと考えられています。
もし、舌を出す癖が4歳以上になってもなくならない場合は、歯科クリニックに相談するのが良いでしょう。乳歯が生えそろった段階でも舌を頻繁に出す癖があると、歯が舌の力によって押し出され、歯並びが悪くなってしまう可能性があります5。
赤ちゃんが舌を出しているときに注意すること
最後に、赤ちゃんが舌を出しているときに注意することをご紹介します。
口の中が傷ついていないか確認する
まずは、口の中が傷ついていないかどうかを確認しましょう。
口の中に傷があるとミルクを飲めなかったり、泣いたりします。無理に飲ませるのではなく、一度確認してあげることが大切です。
よだれを拭き取る
舌を出すことによって、口まわりや手などの皮膚によだれがついてしまうことがあります。よだれがついたままだと、肌荒れしやすくなります。また、衛生面でも気になる方が多いと思います。
そのため、皮膚によだれがついていたら、ガーゼやティッシュなどでこまめに拭き取ってあげましょう。清潔に保つことが大切です。
鼻水を取る
鼻がつまっている場合は、鼻を温めたり、綿棒やガーゼなどで優しく拭き取ったりしましょう。寝ている間に舌が出ているときも、鼻づまりで息がしづらくなっている可能性があります。
げっぷを出させる
授乳後、げっぷを出させても、全て出しきれずに胃の中に空気が残っている場合があります。その場合は抱っこして背中を優しくたたき、げっぷを出させてあげましょう。
いつも舌が出ていて気になる場合は病院で相談する
いつも舌が出ていることや、舌が比較的大きいことが気になる場合、病気を患っている可能性もあります。気になる場合は、早めに病院を受診して相談しましょう。
おわりに
赤ちゃんが舌を出す理由や病気の可能性、注意すべきことなどについて解説しました。
赤ちゃんが舌を出すのにはさまざまな理由があり、月齢によって異なることも分かりました。「病気なのではないか?」と気になる場合は、早めに病院で相談しましょう。
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