「初心者が最初に巡り会いたい『深楽しい』西洋占星術講座」にようこそ!
いつも記事を読んでいただきまして、本当にありがとうございます。
今回の記事では、
「出生前の日食と月食が起こるハウスで示される人生の運命」について解説させていただきます。
前回は、日食と月食についての基本知識や、
出生前に起こる日食と月食の概要とホロスコープでの表示の仕方について解説させていただきました。
出生前の日食と月食は、ネイタルのノード軸と近い位置で起こりますが、
少しの違いを読み取り、解釈することで、
自己分析と人生に組み込まれている運命の概要が分かります。
占星術、並びに、ホロスコープ・リーディングは、
天体が、ハウスという地上の現場と、
サインという天空の背景(意識・エネルギー)という天と地の間に存在する
時間と空間の中での振る舞いを読み取ります。
今回は、出生前の日食と月食とハウスの組み合わせによって導き出される、
あなたの人生の運命の根源の象意や象徴について解説させていただきます。
出生前の日食と月食についての記事は、そこまで深堀りされることがありませんので、
是非、今回の記事で沢山の気づきやヒントを拾っていただければ幸いです。
それでは今回も、是非最後までお付き合いくださいね!
ハウスとハウスルーラー
現代占星術ではあまり馴染みがないかもしれませんが、
ハウスには、サインと同様にルーラーが存在します。
天体が特定のハウスでサインで品格 / 品位を得るように、
天体はジョイの状態を獲得します。
ジョイは、12ハウスすべてで起こるわけではありません。
以下の表に、ハウスとハウスルーラー、
そして、天体がジョイの状態になるハウスをまとめました。
尚、ハウスルーラーにはトランスサタニアンは含まれません。
ハウスはサインと同様に、天体の働きによって成り立っています。
ハウスの象意や象徴は、天体の働きと照応する事柄を示す、ということです。
そのため、出生前の日食と月食が起こるハウスは、
ハウスルーラーによって示される象意・象徴に関連した意識を強調する、と考えると自然です。
カルディアン・オーダーでは、太陽と月のみがサインを支配・守護し、
その他の5つの天体は2つのサインのルーラーですが、
ハウスルーラーはカルディアン・オーダーとは関係がありません。
月は、太陽と陰陽の関係にあり、受容性の象徴ですから、数字で言えば「2」を象徴します。
そのため、ハウスに当てはめますと、パートナーシップの7ハウスが相応しいとされています。
水星は、月と同様に、1つのハウスのハウスルーラーです。
水星は、知性やコミュニケーションを象徴する天体と広く認知されていますが、
太陽にとっての秘書のような立場です。
また、6ハウスは「厄介事」や「使役する」といった象意を持ち、
水星はこれらの象意のナチュラルーラーであるため、
6ハウスのハウスルーラーとして相応しいとされています。
水星は「詐欺師」の意味も持っていたり、
頻繁に逆行と順行を繰り返す天体でもありますし、
男性天体にも女性天体にも成り代わることができますので、
「曲者」のような性質を持ちます。
一筋縄ではいかない仕事や人間関係、人生における重要な選択・決断に関わる天体と考えますと、
水星の働きを適切に活用しなければいけない、という意味では、
アヴァージョンの6ハウスのハウスルーラーは水星が適切ではないかと考えられています。
金星は「美」と「喜び」の星と広く認識されていますが、
ベネフィック(吉星)としての表部分、
もしくは、誇張表現だけが独り歩きをしているような側面があります。
なぜなら、人間は自分に甘くなり、快楽を追求すればするほどに自堕落になってしまい、
こういった快楽主義や自己愛を金星が象徴するからです。
ちなみに、自己愛は本能の欲求や欲望に掻き立てられ、
その要求を持たすことで満たされる満足感を示します。
対して、自愛とは、快と不快といった二元性の区別ではなく、
どのような状況であっても肯定する包括的な満足感を示します。
金星は前者の自我意識(エゴ)の声に応え、心を満たす働きに貢献する天体です。
金星のみ、ハウスルーラーとジョイのハウスが一致します。
5ハウスは「創造性」や「自愛」を象徴しますが、
自制心を利かせることなく、際限なく欲望や欲求を満たそうとすれば、
必ず後から帳尻合わせをするハメになります。
金星は12ハウスのルーラーでもありますが、アヴァージョンの12ハウスは、
隠れた場所で自らの嗜好を誰にも気兼ねせず満たそうとする働きを示します。
この働きは、恥や罪といった側面だけではありませんが、
表立って行動してはいけない、もしくは、そうしないようにする意識が働く物事すべてに当てはまります。
一説では、5ハウスでの過度の自己愛の追求の結果は、
12ハウスでツケを払うことになる、と言われています。
そういう意味では、金星は「ルシファー(堕天使)」や「月に成り代わろうとする星」といった異名を持つことから、
抗えない魅力や衝動の働きを持つ天体と言えます。
太陽は、4ハウスと9ハウスのハウスルーラーです。
太陽が最も低い(深い)場所である4ハウスのハウスルーラーであることは意外に思われるかもしれません。
色んな解釈ができますが、最も深く、暗い場所や意識状態であっても、
反対の半球では太陽が変わらず輝いています。
それと同じように、私たちがどんなに暗い場所や低い場所にいても、
太陽は私たちの内面に宿っている、と考えるならば、
私たちを生み、活かしている環境である家族や先祖、家庭といった象徴は、
私たちの生命力の根源であり、ルーツですので、
太陽が4ハウスのハウスルーラーであることは、不思議なことではないのかもしれません。、
また、11ハウスは、10ハウスで達成された自己実現の後に築いていく、
精神的な満足と安らぎのステージです。
友人や理想は、意外と遠くにあるもの、
または、時間をかけて築くことで見えてくるものと考えるべきなのかもしれません。
学生時代の同級生や近所の幼馴染といった幼い頃に出会った人たちは、確かに縁がある人ですが、
生まれ育った環境は、私たちの自我意識が選んだものではなく、
人生の初期設定としての登場人物、と考えるならば、
高尚な人物や理想を共創する人たちになり得るかと言えば、そうではない場合が多いはずです。
哲学的なことを言えば、どんなに裕福であっても、
語り合える仲間や同士、友人が居なければ、宝の持ち腐れであるのが、人生かもしれません。
太陽は、あまねくエネルギーを分配する生命力の権化です。
私たちそれぞれの小宇宙で輝いている太陽は、
掛け合わさることで何倍もの輝きを発することになりますが、
そのためには、「意志の共鳴」が必要となります。
4ハウスとは異なり、11ハウスは主体性を発揮し、
精神的な繋がりを実現しようとする意志によって体験される事柄や状況を表すため、
太陽が11ハウスのハウスルーラーであることも自然といえるでしょう。
火星は、3ハウスと10ハウスのハウスルーラーで、
どちらのハウスも主体性を発揮することで、物事の変化と発展が生まれます。
10ハウスは最も高い場所(天頂)であるため、太陽が相応しいように思われますが、
実のところ、「目立とうとする」ことや、
「影響力」や「権力」を振るうなどは、火星の衝動性の表れです。
10ハウス「天職」を象徴するハウスと広く認識されていますが、
更に踏み込みますと、「個性を世に押し出す」という性質がありますので、
火星が10ハウスのハウスルーラーであることは自然なことと言えるでしょう。
3ハウスは、自分の身近な環境において、
興味のある分野や人、情報、場所などと繋がろうとする働きを象徴します。
3ハウスでは月がジョイとなり、「女神のハウス」と呼ばれ、
対向の9ハウスでは太陽がジョイとなり、「神のハウス」と呼ばれます。
3ハウスと9ハウスのハウスルーラーを比べますと、火星と木星となりますが、
月が3ハウスでジョイとなるのは、月が常に満ち欠けをし、心の移り変わりを象徴し、
常に外部環境に影響を受ける性質と合致します。
対して、太陽は、木星が示す「豊穣」や「恩恵」、「発展」や「拡大」の働きを示す出来事において、
自らの意識を進化させるためには、周囲の環境や他者、社会通念などを排して、
どこまでも自らの探求心を優先させることが必要であり、
その「無心の状態」が、太陽が生命力を象徴することと合致します。
木星は2ハウスと9ハウスのハウスルーラーです。
2ハウスは土地や所有を象徴し、9ハウスは真理探究や自己探求を象徴します。
ハウスに序列はありませんが、高低さや経験値の差、環境の違いは自然と生まれます。
赤ちゃんがスーツを着ず、大人がおしゃぶりをしないように、
私たちは確実に時間の制約・制限と、可能性と不可逆性の法則・働きに支配されています。
木星の働きは、2ハウスにおいて自らの物質的欲求と保護を満たす事柄を、
9ハウスにおいて自らの精神の向上と発展を満たす事柄に影響を与えます。
土星は、1ハウスと8ハウスのハウスルーラーです。
土星は身体部位の「皮膚」や「骨」に対応する天体なのですが、
その根底の象徴は「境界線」や「時間」にあります。
1ハウスは、12ハウスが象徴する「全体性」からの分離によって生まれる個性(個の意識)を、
8ハウスは、1ハウスで生まれた個の意識(自我意識)の喪失と再生といった意味を持ちます。
どちらの場合・状況においても、「変質」という変化が生まれます。
更に言えば、伝統占星術(古典占星術)やインド占星術では、
「カルマ」や「輪廻転生」の概念を強調している側面があり、
土星は1ハウスと8ハウスにおいて、カルマや魂の成長の働きを与えるとされています。
古代の(占星術の)概念では、
「魂は1ハウスにて物理世界に入り、8ハウスから出ていく」とされ、
その際に、土星が時間と生と死に携わると考えられていたようです。
8ハウス以降でも、私たちの人生は続いていきますが、
7ハウスで得たパートナーシップの経験により、自我意識は変容・変質せざるを得なくなります。
葛藤や対立を経て、新しい自分に生まれ変わり、
その後、9ハウス以降の活動に励むことができる通過儀礼のような体験が必要となります。
金星の行(くだり)で、人は快楽を求める、とお伝えしたように、
私たちは厳しさや苦しみ、恐怖を回避したくなります。
ですが、土星はその逃避や回避を許しません。
1ハウスにおいても、分離体験が始まることで、魂が一旦傷つき、
その後の人生で癒しながら、更なる成長をする、と考えますと、
この世に生まれて来ることさえも、苦しみの始まりである、
という概念は受け入れづらいのですが、納得せざるを得ないものあります。
別の記事で、伝統占星術(古典占星術)におけるハウスについて詳しく解説していますので、
是非そちらの記事も参考にしてください!
ハウス別の出生前の日食と月食のテーマ・課題
サインで言えば、対極のエネルギー・意識の反発や差によって、
得手不得手、喜びと不安、未知と親しみのように、二元性の働きが感じられますし、
ハウスでも、外向性と内向性、個人性と集団性、近辺と遠方といった対極性が表されます。
出生前の日食と月食がどのハウス・サインで起こったのか、
また、ネイタルのノード軸と同じハウス・サインであるのか、
それともズレているのかを確認します。
そして、トランジット(現行)のノード軸の影響で、
現状はどのハウスとサインのテーマや課題が強調されるのかを確認します。
出生前日食は、人生のテーマと目的を、
出生前月食は、人生のテーマを成し遂げるための課題である、と考えられています。
「人生が始まる前に成し遂げると誓ったテーマとその課題」という表現もされています。
日食は、太陽と月がコンジャンクションする新月の時に起こります。
太陽と月、そして地球が一直線に並ぶ時、「新しい流れ」が始まります。
これは自然の摂理であり、その摂理に添って、私たちは生きていますので、
人生において、歩みを進めるための方向性(ハウス)と意識・使命感(サイン)を、
出生前の日食から見出すことができます。
また、月食は、太陽と月がオポジションとなる満月の時に起こります。
月のサイクル(月の満ち欠け)のピークから陰り始めることから、
物事の完了や手放しを象徴し、
人生スケールでは、過去に根付いた価値観や否定的な観念を解放することで、
未知に対する恐怖心や過去・親しみのある環境に対する執着を断ち切ることの難しさを示し、
その学びを克服するための特徴が、出生前の月食が起こるハウスとサインに表されます。
人生の歩み方はASCがベース
出生前の日食と月食の解説の前に、
ホロスコープの原理として見るべきポイントは、ASCにあります。
出生前の日食と月食の割り出しには、出生時間が必要です。
- ASCのサインと度数を確定させるするため
- 太陽と月のハウスとサイン・サインの度数を確定させるため
- ノード軸と、出生前の日食と月食の正確なハウスとサインの度数を確定させるため
母子手帳に記載されている出生時間は絶対ではありません。
なぜなら、出生のタイミングは、出生の定義によって、数十秒~数分ズレることがあるからです。
細かい話ではありますが、インドでは、複数のタイマーを使って、
複数の出生のタイミングを記録するというケースがあるそうです。
胎児が母胎から離れ、新生児となるタイミングをいつにするかは重要です。
例えば、双子でも、天体のハウスとサインが異なる場合があります。
考えられるタイミングは、以下の4つに絞られるのではないかと思われます。
- 母胎から顔を出した瞬間
- 母胎から完全に離れた瞬間
- へその緒が切られた瞬間
- 新生児が呼吸を始めた瞬間
とはいえ、出生前の日食と月食は、
数分~数十分の間でハウスとサインを移動してしまうことはほとんどありません。
重要な点は、ASCのサインとサインの度数が変わることで、
ホロスコープの持ち主の自我意識の根本が変わってしまう、ということです。
ノード軸と出生前の日食と月食は、運命の流れを表しますが、
その運命の流れを歩む主体性はASCです。
ASCのサインとその度数は、
月と太陽の不変性と進化性、過去性と未来性という対極の性質が収まる器のようなものですので、
ホロスコープ・リーディングは必ずASCを見ることから始める必要があります。
それでは、ハウスとサイン別の出生前の日食と月食のテーマと課題について解説させていただきます。
ハウス別・出生前の日食のテーマ
出生前の日食が起こるハウスは、
人生をかけて成し遂げるべき宿命的なテーマに関する、具体的・現実的な現象や出来事、状況を表します。
出生前の日食 in 1ハウス
1ハウスは、自我意識・エゴ、人格、セルフイメージ、外界に与える印象、主観、肉体を象徴するハウスです。
出生前の日食が1ハウスで起こる時、これらの象徴が生まれ変わることで、
人生・現実に変化が起こることが暗示されます。
何のための変化かといいますと、「より善い自分を体験するため」です。
現代占星術では、1ハウスと牡羊座を結び付けて考える側面があります。
また、「1ハウス=ボディ」という概念は、自我意識と肉体の両側面に当てはまります。
牡羊座の象意を加味して1ハウスで起こる出生前の日食の意味を解釈しますと、
「新たな意志の発現・発露」や「肉体改造・改善」に着手しようとする意識が強く、
人生の転機の度に、これらの意識が反映された行動を起こす理由の源、という表現をすることができるでしょう。
1ハウスのカスプは、東の地平線であり、
魂が肉体という物質(形)を手に入れ、知性と情緒を駆使して、
物質世界を体験する機会(人生)を得て、経験を積み重ねるためのスタート地点です。
スタート地点が刷新されることで、
自我意識には新たな目的や目標を持とうとする欲求が生まれます。
この欲求は、独立心、チャレンジ精神、個性の発揮、リーダーシップの発揮などに発展します。
1ハウス、並びに、牡羊座は、「自分を表現すること」という意味で、自分自身に愛着を持ちます。
執着ではなく、興味関心があるという意味で、愛着を持ち、
実際に自分自身が起こす行動によって得られる結果までのプロセスを楽しみたい、
という欲求を望むのが、1ハウス・牡羊座の意識だからです。
1ハウスと重なるサインと、そのサインのルーラーの働きによって、出生前の日食の象意は変わりますが、
上記に挙げたような「自分自身」に関する意識の生まれ変わりが起こります。
以下が、1ハウスで起こる出生前の日食の代表的な要素のまとめです。
- 我が道を進む
- 自分の可能性を追求し、挑戦する
- 自分自身に高い興味を持つ
- 自己評価を高める行動を続ける
- 集団の中でリーダーシップを発揮しようとする
- 肉体・健康に対する関心が高く、常に強く在ろうと心掛ける
- 自己顕示欲が高く、反省や客観性を抑えて、行動と結果を優先する
1ハウスのハウスルーラーは土星です。
伝統占星術(古典占星術)では、
1ハウス(東の地平線・ASC)から魂が吹き込まれ、8ハウスから出ていく、と考えられ、
土星は1ハウスと8ハウスのハウスルーラーとされています。
土星には「境界」という象意がありますので、自我意識を持つことは、
他者と分ける境界としての「個性」や「人格」を持ち、
「自然を分かつ」という意味で「自分」という意識を持ちます。
出生前の日食は、直接的に土星に働きかけるわけではありませんが、
1ハウスの象徴には土星が関わっている、という背景を知ることが重要です。
出生前の日食 in 2ハウス
2ハウスは、「形」を伴うあらゆる物事に紐づくハウスで、
金銭や収入、財産や資産、物欲や消費欲求、所有物や所有欲、物を扱う際の価値観やお金の使い方の他、
安心感や自分にとっての心地良い動き方や働き方、
両親や先祖から受け継いだ能力とルーツなどを象徴します。
1ハウスで自我意識が生まれ、肉体を得た魂は、
次に、2ハウスで物質的な価値に強い欲求を抱きます。
2ハウスの出生前の日食をネイタルチャートに持つ場合、
自分自身の生活や人生に関わる物質的な豊かさと安心感を築く意識が高くなります。
金銭や所有することに純粋な興味関心を持ち、
実際に財力や経済力を持つ人生を送ろうと心がけます。
また、自然と親や血縁関係者と深く関わろうとするのも特徴で、
自分を大切にしてくれる人や、助けてくれる人も、2ハウスの象意です。
2ハウスは、4ハウスが象徴する家族や先祖との繋がりや環境ではなく、「継承したもの」を継承します。
そのため、出生前の日食の影響は、継承した能力や才能を活かした結果、
物質的な豊かさを得るように働きかけるのです。
2ハウスの主な象徴は「自分で自由にできる金銭・所有物」です。
そのため、不動産や融資などは当てはまりません。
太陽が生まれ変わる日食と2ハウスの組み合わせは、「循環」と「体験」がキーワードとなります。
物質・形あるものは、長く、大切に使っていても必ず寿命を迎えますが、
物体とその物を持つことになった背景が意識にあるため、
ただ所有しているだけで安心感が湧きます。
また、身体が健やかであることで、人生の喜びを十分に体験することができます。
そのため、食に対するこだわりも高くなるでしょう。
豊かさは、多くを持つことだけを意味するわけではなく、
安心感と充実感を味わえる肉体があってこそ、その価値を体験することができます。
2ハウスの出生前の日食は、豊かさと安心感をワンセットで捉え、
現実的な豊かさと、精神的な安らぎを持続させようとする意識を高めます。
以下が、2ハウスで起こる出生前の日食の代表的な要素のまとめです。
- 金銭や物質に対する頓着・愛着・執着が高まる
- 経済力を高めることを早くから意識し、実際に富を築く
- 継承する立場になる
- 親や先祖から引き継いだ能力と才能を自覚し、発揮しようとする
- 金融に関わる機会が多い
- ビジネスセンスが先天的に高い
- 自らの力で稼ぐことに喜びを感じる
- 生計を立て、不安の無い日々を送ることを大切にする
伝統占星術(古典占星術)では、2ハウスのハウスルーラーは木星とされています。
木星は「繁栄」や「恩恵」といった、物事の循環と発展、豊穣を司る天体です。
そのため、2ハウスの出生前の日食は、
自分の持ち物や、自分を守り育てるものに強い関心を持ち、転機が巡ってくる度に、
豊かさと安らぎのために働き方を変えたり、食事の質を工夫したりして、
長期的なスパンで人生を捉える意識を育てます。
出生前の日食 in 3ハウス
3ハウスの本来の象意は、兄弟姉妹やいとこ、近所の人、
近い距離の移動、通学や通勤、メールや電話などの連絡などです。
現代占星術では、上記に加えて、初等教育や知的能力、話すことや欠くこと、
考えること、伝えることといったコミュニケーションに関わる象意を加えています。
更には、出版や常識、アイディアの出所なども3ハウスに含まれます。
3ハウスで重要となる体験は「動くこと」や「繋がりを持つこと」です。
学習や対話、移動のどの場面においても、必ず「変化」が生まれます。
3ハウスの出生前の日食は、
身近な範囲で体験することができる変化に対して強い関心を持つことを象徴します。
「運命」や「運気」という言葉には、
必ず自分自身が主体となって動くことで、変化が生まれる、という意味が込められています。
「差をつける」や「変化をつける」といった事柄に対する欲求は、
日々の生活に刺激を取り入れることを促します。
それが、他者とのコミュニケーションや学習意欲、小旅行などに反映されるのでしょう。
以下が、3ハウスで起こる出生前の日食の代表的な要素のまとめです。
- 好奇心が旺盛で、行動力が高い
- 学習意欲が高い
- 柔軟な考え方・捉え方をする
- 定職に長く就くよりも変化を求めて、多種多様な職業経験を持つ
- 短距離の出張や小旅行などの移動する機会が多い
- 兄弟姉妹との関わりが深い・多い
- 自分を表現するための情報や知識を常に求める
伝統占星術(古典占星術)では、3ハウスのルーラーは火星とされています。
サインもそうですが、ハウスは、
前のハウスに反発する、もしくは、反転させるような象意を持ちます。
木星の発展・繁栄の象意が反映される2ハウスは、持続的な豊かさと安らぎを求めますが、火
星の衝動性や活発性が繁栄される3ハウスは、
変化を求め、不要な物は切る(排除する)象意が込められています。
攻撃的な言動ではなく、目的のために取捨選択をし、自分の欲求に忠実になる、という意味では、
現代占星術で、双子座と親和性が高い、という解釈は通っていると考えられます。
3ハウスの出生前の日食は、意識をアップデートするために、
場所を変えたり、様々な情報を取り入れたり、
変化や刺激を与えてくれる人との繋がりを楽しんだりする傾向を高めます。
私たちは特別意識しませんが、
変化するということは、「過去の自分との決別」という側面を持ちます。
自分がどう在りたいのか、というセルフイメージを明確にするために動き回る一方で、
1つひとつの出来事を体験することを純粋に楽しんでいる側面もあるはずです。
3ハウスの出生前の日食は、固定的な自分ではなく、
流動的に変わり続ける自分を求める根本的な意識を育てることを促します。
出生前の日食 in 4ハウス
4ハウスは、父親(両親)、先祖、家・不動産・土地、自分の居場所、家族、
故郷、帰属意識、世襲、事務所、集合的無意識、深層心理などを象徴します。
ホロスコープの中で最も深い場所に位置する4ハウスで起こる出生前の日食は、
自分が生まれ育った環境を大切にする意識を生み出します。
日食は新月の時に起こるため、家庭や家族が与えてくれる安らぎが心の支えとなり、
その恩を返し続けようとする心理が根付くためです。
4ハウスと10ハウスは、父親と母親の対極性を表します。
現代占星術では、4ハウスと蟹座を結び付けることで、母親を象徴すると考える場合がありますが、
原理的には相応しくないとされています。
4ハウスは北の方角を表し、4ハウスに太陽がある場合、太陽は地平線の下では北に位置します。
出生前の日食なら尚更、4ハウスには父親や父性といった、太陽の影響が強くなります。
それもそのはず、4ハウスのハウスルーラーは太陽だからです。
ただ、4ハウスは最も深い場所であるため、
「失せ物(失くした物)」を見る際に、月を見る場合があります。
これはホラリー占星術で、4ハウスと月を扱う場合の話ですので、
ハウスの原理的な象意としては、太陽の影響下にあることを忘れていけません。
4ハウスの出生前の日食は、自分のルーツとの関わりを優先する意識を高めます。
そのため、家系の不動産や墓守の役割を担う立場が巡ってくる場合もあるといわれています。
家族愛の他、郷土愛や愛国心を持ち、
敵と味方をハッキリさせる性格や言動、振る舞いが強くなるともいわれています。
この点に関しては、蟹座の性質が色濃く反映されていると見ることができます。
4ハウスの出生前の日食は、自分と自分に関わる関係者、
また、共同体意識や帰属意識を大切にすることで、心の安定を得ようとするのです。
ただ、実家との関わりが強すぎることで、
社会的な立場や活動から距離を置く傾向が強くなるともいわれています。
その結果、晩婚や独身を貫く、といった人生の送り方に発展します。
4・8・12ハウスは、「終末のハウス」とも呼ばれ、
特に4ハウスは、「晩年の過ごし方」という象意を持っています。
4ハウスに太陽が位置することで、家庭が明るくなり、先祖や家族との結び付きが強くなることで、
将来の自分像に強く影響を与え、その環境や雰囲気を再現しようと意識が強くなるのです。
以下が、4ハウスで起こる出生前の日食の代表的な要素のまとめです。
- 家族や家系、親族との関わりが強い
- 父親との関わりが強く、憧れとするか、反面教師にするかに分かれる
- 自分の居場所を守り、自分の大切な人々を守る意識が強い
- 内向的になり、排他的になる傾向が強い
- 家庭と事務所を同じ場所に持って生計を立てる
- 自分の世帯を持つことに抵抗を感じやすい
- 家系に関わる不動産を継承する
- 墓守の役割を担う
- 家族や親戚を繋げる役割を果たす
4ハウスのハウスルーラーは太陽であるため、
4ハウスの出生前の日食の持ち主は、家庭や家族に意識(光)を当てようとし、
常に家族や親族、実家や持ち家、墓などを非常に気にかけます。
占星術では、「ホロスコープを回す」という概念があります。
10ハウスが最も日の目を見る場所、4ハウスは最も暗闇が深まる場所ではありますが、
太陽がどちらに位置するかで、ホロスコープの持ち主の活躍の場所が異なります。
これは性別の差と働き方に強く影響を与えます。
例えば、4ハウスに太陽や火星があれば、
家庭に仕事場や事務所スペースを作って働く方が、
会社に所属するよりも、稼ぎが良い、というケースがあります。
男性だから社会に出て働かなければならない、というのは、
社会通念や時代の背景によって一時的に支持された働き方です。
もちろん、女性よりも男性の方が肉体的に強い面はありますが、
男性よりも女性の方が痛みに対する耐性が強いという側面もありますので、
あらゆる物事を一緒くたにすべきではないでしょう。
4ハウスの出生前の日食は、自分の活動の起点を、自分を生み育ててくれた環境に置いて、
その中で活躍することが重要であると受け取ります。
その意図は、家系や血縁によって築かれている共同体意識や集合的無意識によって促され、
ホロスコープと人生の生き方に反映されている、という風に考えると、
人の人生と生き方は、自らが望み、選んでいると考える一方で、
望むように、選ぶように導かれている、という考え方もできるのではないでしょうか。
出生前の日食 in 5ハウス
5ハウスは、喜びや楽しみ、娯楽、趣味、エンターテイメント、
恋愛、ギャンブルといった快楽に関する象徴を持ちます。
その他、セックスや妊娠、子ども、独創性や創造性、投機なども表します。
5ハウスは、喜びや楽しみ、快楽を与えてくれる物事そのものを表し、
それらと自分自身を結び付ける何らかの動機があります。
これが「個人的な嗜好」です。
本来「好き」という気持ちや衝動に理由は必要ありません。
私たちは常に後付けで理由や意味、解釈を与えようとしますが、
5ハウスは、単純に「好きだからする」という事柄を表します。
そのため、5ハウスで出生前の日食を持つ人は、
「生きている実感」や「自分で在るため」のために、
自分だけの楽しみ方を持ち、その時間を非常に大切にするでしょう。
5ハウスは子どもを象徴しますので、
純粋さや童心の自分を味わう時間が、何よりも大切なのかもしれません。
実は、私たちが最も創造力を発揮する時というのは、この純真な意識の状態です。
端的に言うなら「無心の状態」や「ゾーン状態」、「変性意識」は、
あらゆる外的な制約・制限から解放され、時間さえも忘れてしまい、
思考と感情を超えて、エネルギーの源泉と繋がるため、大変パワフルな状態であるといえます。
5ハウスの出生前の日食は、自分の嗜好や道楽が、人に喜びや勇気を与える傾向を強めます。
創造性というと、芸術的なセンスばかりが挙げられますが、
どのような分野であっても、カリスマ性や影響力は、
自分が携わる物事に対して誠実であるだけでなく、誰よりもその分野で輝き、楽しみます。
私たちが自分自身を楽しませたい、と思わせるものが、
私たちにとっての喜びであり、創造性の源泉に繋げてくれます。
5ハウスは、自分自身が喜び、輝くことを第一にし、
その副産物として作品が生まれることを象徴します。
また、両想いになり、お付き合いが始まる前よりも、片想いの状態の方が、
個人的な幸福度が高いと言われるように、
5ハウスが示す喜びや楽しさは、どこまでも自己本位的です。
自己本位的で無ければ、ストイックになり、無心で活動を続けることはできません。
ですから、私たちが自分自身を丁寧に扱ったり、労ったり、喜ばせようとする時、
「世界で一番大切な人」という意識になる方が自然なのです。
5ハウスの出生前の日食は、自分自身を喜びで満たすことで、
溢れ出すエネルギーを周囲に還元する生き方を選択していくことが望ましいといえます。
以下が、5ハウスで起こる出生前の日食の代表的な要素のまとめです。
- 楽しいことが大好きで、バイタリティに溢れる生き方をする
- 趣味や娯楽を大切にする
- 子どものような純粋さを絶やさない
- 冒険心が旺盛
- 自分自身に強い興味があり、可能性を追求し続ける
- 芸術や芸能に強い関心を抱く
- 危険やリスクに関心を持つ
- 恋愛を楽しむ
- 快楽を追い求め過ぎると傾向がある
5ハウスのハウスルーラーは金星です。
金星と木星はベネフィック(吉星)であるため、
一般的には喜ばしいことや幸運を運んでくれる、と思われていますが、
実際は、もう少し深く天体の働きを知る必要があります。
木星は金星と違って、道徳心や信仰心といった精神性を重んじる側面を持ちます。
そのため、好き好みや喜びを象徴する金星は、度が過ぎると、
自堕落さや快楽主義が強くなり、後先考えずに動くことで、トラブルを招きかねません。
5ハウスの出生前の日食は、自己本位的に喜びを追求する上で、
他者や周囲に害を与えないことを自分自身に約束することで、
自分自身の喜びが周囲の喜びとなることを体感・実感することをテーマとしています。
誰かに迷惑をかけずに生きていける人は誰もいませんが、
それと同時に、自分自身を最も大切にし、喜ばせられる人は、
自分自身しかいないこともまた事実です。
太陽が生まれ変わる場所が5ハウスであることは、
自分を元気づけ、輝かせ、蘇らせるものは、常に自分の内面が知っている、
というお手本のような配置といえます。
出生前の日食 in 6ハウス
6ハウスは、健康と病気、病院、自分が対価を払って、
他者に働いてもらうこと(雇用)、義務、家畜などを象徴します。
現代占星術では、労働がメインに語られますが、
伝統占星術(古典占星術)では、労働や起業は10ハウスが司るとしています。
そのため、6ハウスの出生前の日食の解釈は難しくなります。
なぜなら、6ハウスは根本的には「害すること」や「害されること」を体験させる場所で、
それが病気や雇用に発展するからです。
とはいえ、現代占星術でも、「時間と労力の対価」として報酬をもらう、という概念を採用しています。
重要なことは、労働の目的と雇用者が誰なのか、ということです。
健康を害される主体は自分自身であり、時間と労力を捧げるのも自分自身であり、
集団の中で社会性を受け入れる・応えるのも自分自身です。
それと同時に、手術を受け入れるのも自分自身であり、
他者を雇用するのも自分自身であり、集団の中に身を置くことを決めるのも自分自身です。
6ハウスと12ハウスは、どちらも「隷属」や「拘束」が根底にあります。
そのため、6ハウスの象意にある仕事や労働、雇用は、
「人が嫌がること」や「健康を害する影響」を主体的に受け入れる、
または、他者に受け入れさせる、という解釈になります。
ネガティヴな印象や響きが強調されますが、
6ハウスはアヴァージョン(日の当たらない場所)のハウスであるため、
必要悪といいますか、仕方のない状況や出来事を表す場所であることは確かです。
ですが、常に被害者になる、という意味ではありません。
雇用する立場であっても、雇用する相手を優遇したり、金払いのいい待遇で迎えることもできますし、
医療サービスを受けることで、健康状態は改善します。
6ハウスの出生前の日食は、こういった一見嫌がられる事柄にメスを入れる立場になったり、
献身的な態度で人の役に立つ人格や精神性が顕著に育つことを暗示します。
現代占星術では、6ハウスと乙女座を結び付けることで、
神経質さと配慮の行き届いた振る舞い、過労と健康志向、医療への関心と当事者意識といった風に、
必ず人の役に立つ要素として解釈されます。
古代と現代では、摂理は同じでも、状況や時代が異なるため、体験する事柄の意味も変わります。
6ハウスの出生前の日食は、「必要とされる」からこそ、
そこに役割が生まれ、その役割を率先して取り組む精神性や態度を育てる意識を強めるのでしょう。
以下が、6ハウスで起こる出生前の日食の代表的な要素のまとめです。
- 人の嫌がる仕事を引き受けやすい
- 神経質さや、細かいことにこだわりやすい
- 健康志向になる
- 家族の病気の世話をする立場になる
- 医学や医療に関心を持ち、実際に携わる
- 自分の仕事・事業のために他者を雇用する
- ペットや家畜の世話をよくする
- 義務感や正義感が強い
- 奉仕の精神や献身的な態度が育つ
- 虐げられる体験と虐げる体験をすることで、身の振り方を省みる
- 厄介事を引き受けざるを得ない立場になる
6ハウスのハウスルーラーは水星です。
水星は、男性天体でも女性天体でもなく、
どちらにも成り代わることができる不思議な天体です。
水星は最も太陽に近い場所に軌道を持ち、
太陽によってコンバストされる確率が高く、また逆行する頻度も高い天体です。
そのため、水星は忙しく動き回ったり、思考を巡らせたりして、
自分自身の立場や役割を全うするために知恵を絞ろうとします。
6ハウスの出生前の日食は、厄介事を解決するために、
上手く立ち回ったり、どうせやらなければならないのだから、
真剣に物事に取り組む打算と誠実さで、問題解決をする適応能力が高さを育てます。
また、出生前の日食が6ハウスにあることで、
医療や健康に関する知識や技術が高くなり、
自分自身だけでなく、周囲の人の役に立つことに遣り甲斐や生き甲斐を感じつつ、
身体的・精神的な疲労を癒すために、様々な工夫をするようになるでしょう。
現代占星術では、コレクターとしての才覚を持つ、とも考えられています。
乙女座や6ハウスは、厄介事を引き受けることが多いため、
自分だけの楽しみやストレス発散方法に取り込んだり、
自分を落ち着かせることができる収集活動や、身の回りを綺麗にすることで、
自分の居場所や働く環境を心地良くコーディネートしながら、
平常心と健全な健康状態を保つことが大切です。
出生前の日食 in 7ハウス
7ハウスは、「パートナーシップ」を象徴します。
配偶者や同棲相手、仕事相手や取引先、患者など、
社会的な契約や繋がり、約束を結ぶ相手を示すのが、7ハウスです。
1~5ハウスは、自分にとっての味方となる人が多く、
6ハウス以降は、味方以外に、ライバルや厄介事を持ち込む相手を示し、
7ハウスでは、社会的な繋がりによって成立する相手を示します。
6ハウスと7ハウスが象徴する人の中には、敵やライバルが含まれますが、
この相手は素性が分かる人を示します。
7ハウスの出生前の日食は、
対人関係において誠実さを重んじ、人との交流が得意な傾向が高くなります。
7ハウスで新月(日食)が起こる場合は、人との繋がりの中にチャンスを見出し、
自分の役割や立場を活かそうとする意識が生まれます。
1ハウスで生まれた自分が、対岸の7ハウスに至ることで、
他者の立場を察し、客観的な視点を取り入れようとし、視野が広がります。
7ハウスが示す関係性は、義務と尊重のバランスです。
配偶者や仕事相手は、自分と同じようにプライバシーや選択の意志があるため、
当然対話が必要となります。
7ハウスの出生前の日食は、生まれながらに対話によって人生を豊かにする能力と才能、
また、人と人とを繋がる役割を持っていると考えられます。
7ハウスは、1ハウスから見てオポジションの場所ですので、対立と相補性の両側面を持っています。
他者との繋がりを持った時、私たちは無自覚の自分に気づかされる体験を数多くしますし、
私たち自身も、相手の無自覚の部分を気づかせる存在になり得ます。
7ハウスの出生前の日食は、「見えないところが見えるようにする」という意味では、
カウンセリングや契約を結ぶ能力に長けていることで、頼りにされる人格が育ちやすいといえるでしょう。
以下が、7ハウスで起こる出生前の日食の代表的な要素のまとめです。
- 社交性が高く、人と関わることを好む
- 不特定多数の人と関わる
- 人と人との橋渡しの役割を果たす機会が多い
- 人に合わせること、気遣いが得意
- 客観的で、広い視野を持つ
- 配偶者やパートナーを大事にする
- 裁判や争いの仲裁などに関わる機会が多い
- 契約や信用問題について意識が高い
- 自分自身の意見を抑える傾向が強い
7ハウスのハウスルーラーは月です。
月は、あらゆる刺激や影響を吸収する受容体のような役割を担います。
そのため、他者を受け入れる体験を7ハウスは象徴します。
7ハウスの出生前の日食は、
関係性を築くことと継続することに努力・工夫する意識が高く、
相手ありきで物事を考える傾向が高くなります。
現代占星術では、7ハウスは天秤座と親和性が高いと考えられていますので、
自我意識(1ハウス・牡羊座)を抑制したり、我慢したりして、
無意識にストレスを抱む自分自身を他者から指摘されることで、
主体性と客観性のバランスを取ることができます。
7ハウスの出生前の日食は、
言ってみれば、相手への働きかけによって築かれる関係性が、
自分自身の成長に還元される循環によって、人生を豊かにすることを暗示しているのです。
私たちは、他者が周囲の存在のお陰で、自分自身を知ることが出来ますし、
私たち自身も同じように、他者の成長に貢献しています。
この関係性を健全に保つか、それとも、私利私欲のために活用・乱用するかで、
人の人格と人生の質に大きな差が生まれます。
7ハウスが示す「他者」とは、関係性を築くに値する特定の人を表すとともに、
自分が自分として存在しているからこそ、自分には求められる価値があり、
相手の価値も尊重すべきであることを示す大切な人です。
7ハウスの出生前に日食は、他者を大切にしようとする意識を高めながら、
相手との対話や繋がりを通して、自尊心を整えていくことが重要なテーマといえます。
出生前の日食 in 8ハウス
8ハウスは、配偶者の金銭や資産、所有物、仕事相手や取引相手の金銭の他、
死に関わる事柄、配偶者に対する尊敬を象徴します。
伝統占星術(古典占星術)では、
土星が魂の出入りを1ハウスと8ハウスで管理しているとされています。
そのため、8ハウスは「死のハウス」とも呼ばれています。
現代占星術では、上記の象徴に加えて、
秘密やオカルティズム、サイキック、占いなども象徴するといわれています。
5ハウスはギャンブルや投機などの娯楽的な借り入れを示しますが、
8ハウスでは遺産や相続の他、借金、税金なども示します。
2ハウスが収入を示し、自らで稼ぐ能力や金額を示すのに対し、
8ハウスはあらゆる方面からの「利益と不利益を受け取る」運命の流れを表します。
その流れの元は、パートナーであったり、パートナーの家系や親戚、
または、仕事や取引先の相手だったりします。
8ハウスの出生前の日食は、自分で自由にできるお金や所有物ではないにしろ、
間接的に流れて来る、物質的な利益と不利益に関わる立場や役割が巡ってくることを示します。
また、8ハウスは「見えない敵」を表すのですが、
言い方を変えますと、「逆らえない相手」や「自分を支配する人」を表します。
8ハウスは、7ハウスで築いた関係性を更に深めることで体験する事柄を示しますので、
社会的・精神的な葛藤をもたらします。
8ハウスの出生前に日食は、深い関係性や配偶者とその家族に関わる事柄から逃れられない運命や環境を示し、
その環境から抜け出そうと工夫したり、死や神秘主義に興味を示したりすることで、
生き永らえようとする意識を高めます。
8ハウスは、6ハウスと12ハウスと同様にアヴァージョン(日の当たらない場所)であり、
土星が関係(支配)するハウスであるため、不快や不利益をもたらす体験が多いと考えられています。
ただ、暗い場所から太陽が生まれ変わる8ハウスの出生前の日食は、
人生の艱難辛苦を糧とする逞しい生命力の持ち主であると捉えることができます。
8ハウスに日食が起こる時、「自分を支配する見えない力・働き」に興味関心が向き、
自らがその力を手に入れられないだろうか、という発想が生まれます。
これは、現代占星術において、8ハウスが蠍座と親和性を持ち、
火星と冥王星の2つの天体の働きによって、物理的・精神的な力を得たい、
もしくは、行使したい、という欲求が湧く、という解釈と通じるものがあります。
原理的には、8ハウスは忌み嫌われる体験や事柄を示すとともに、受け入れざるを得ない運命を示します。
私たちは常に、メリットとデメリットの両方を与えるとともに、受け取りながら人生を送っています。
8ハウスの出生前の日食は、どちらかと言えば、
否応なしに受け取り、経験させられる暗く、重い体験を生き抜く力が備わっていて、
その力を活かす機会や場面があることを示しているといえます。
以下が、8ハウスで起こる出生前の日食の代表的な要素のまとめです。
- 配偶者やパートナーの金銭や所有物を受け取る立場を表す
- 配偶者の家族の死に関わる
- 死や死後の世界への興味が高い
- 受容性・感受性が高い
- 関係性が相手が持つ秘密やトラウマ、コンプレックスを知る立場になる
- 興味があるものに対しての執着が強い
- 集中力が高く、好奇心に従って、特定の目的のために高い行動力を持つ
- 特定の相手と濃密な関係性を築くような職業や趣味、ライフワークに携わる
1ハウスと12ハウスのルーラーである土星は、
「個」を全体から分けて、境界線を引き、個の中身を充実させるよう働きます。
その中身は、計画性や継続性、忍耐、誠実さ、責任など、
長期的に実現し、現実的な結果と精神的な成長に関わる経験です。
8ハウスの出生前の日食は、自分一人で自由に、気楽に体験する、という意識ではなく、
生まれながらに与えられた能力や環境、立場において、
巡ってくる利益と不利益、幸運と不運のどちらをも受け取る器があることを示します。
土星の管理課にあるハウスであるため、簡単に逃れることはできませんが、
真剣に向き合うことで、体験したことが無い人には分からない達成感と成果を得ることができます。
配偶者やパートナーがいない場合は、
死やオカルティズム、霊感などの事柄に強く引かれ、感受性が強く、霊媒体質や巫女体質など、
閉鎖的な環境で活躍する才能が与えられたりしますが、
一般的には認知されにくく、また、理解されにくい側面があります。
8ハウスは元々、隠れた場所や表に出してはいけない事柄、関係者だけが知り、携わる事柄を表します。
8ハウスの出生前の日食は、忌み嫌われたり、
表では見せない苦労や葛藤に対する当事者意識を強く持たざるを得なくなることで、
同じ立場の人を助ける力がつき、誰もが必ず経験する死に対しての耐性と理解を得ることを促すのです。
出生前の日食 in 9ハウス
9ハウスは、長距離の旅行、休日・祝日、外国、専門知識・専門技術、
宗教、哲学、寺院、神社、法律、夢、予言などを象徴します。
伝統占星術(古典占星術)では、9ハウスは「神のハウス」と呼ばれ、
神秘性や真理探究の意識が向かう場所とされています。
また、11ハウスは「神の精神のハウス」と呼ばれることから、
9ハウスと11ハウスは高次的な意識が働く場所であると考えられます。
対向の3ハウスは「女神のハウス」と呼ばれ、
足元や日常に潜んでいる普遍的な知恵や法則などに繋がる知性や知的好奇心を示します。
9ハウスに太陽が訪れる場合と、3ハウスに月が訪れる場合、
これら2つの天体はジョイの状態になります。
ジョイの状態の天体は、そのハウスで伸び伸びと働きます。
プライマリー・モーションでは、
9ハウスは10ハウス(天頂・正午)を過ぎた、14時~15時頃を示し、
地面に吸収された太陽光が空気中に発散され始める時間帯に対応します。
そのため、9ハウスは最も太陽の恩恵を感じる場所、と考えることができます。
逆に、天体の運行の方向であるセカンダリー・モーションでは
、10ハウスに至ろうとする個人の学びのピークを示します。
9ハウスの出生前の日食は、自らを高めようとする精神性が高く、
学問や神秘性などに打ち込もうとする衝動を生み出します。
「神のハウス」と呼ばれるだけに、
9ハウスで新月・日食を起こる時、一時的に真理探究や信仰心などへの衝動が強まりますが、
出生前の日食は、生涯を懸けて、ワイフワークとして、
常に専門知識や高等教育、専門知識などに触れようとするでしょう。
そうしますと、海外遠征や海外旅行、海外で発展した文化や情報を取り入れようという意識が生まれます。
特定の宗教への信仰心が無くても、文化的な行事やイベント事に好んで参加したり、
寺院や教会といった荘厳な雰囲気や神秘定な空気感を感じようとし、
研究対象や観測対象として、宗教や哲学、神秘主義を捉えるのも、
9ハウスの出生前の日食がもたらす意識です。
実は、占星術は9ハウスの象意に含まれます。
占い師と占星術家は、似て非なるものです。
占いは8ハウス、占星術は9ハウスの象意ですので、
どちらのハウスが強いかによって、
占いと占星術のどちらの才能や能力が秀でているか、ということが分かります。
9ハウスには、出版や広告、法律、政治なども象徴するため、社会活動に対して熱心に取り組み、
人から注目を集める仕事や立場、専門分野を持つのも、
9ハウスの出生前の日食の象意といえるでしょう。
9ハウスは、生まれ育った場所や環境とは対極の、遠くの場所や異文化を示します。
9ハウスの出世前の日食を持つ人は、海外志向であったり、外向的であったりすることで、
自分の固定概念を崩し、視野を広くしようと、活発に行動を起こすでしょう。
現代占星術では、9ハウスは射手座と親和性が高いと見なしますので、
自分の足で外国へ出向いたり、海外の流行を楽しんだり、哲学に勤しんだりと、
自己内面と意識の発展のためのフィールドワークの規模を広く設定します。
すべての人が常に外向的である、とは限りませんが、
専門分野や研究対象、関心のある事柄になると、時間を忘れて話し続けたり、
人を魅了するカリスマ性を発揮したり、イキイキとした姿を見せるでしょう。
以下が、9ハウスで起こる出生前の日食の代表的な要素のまとめです。
- 専門分野・マニアックな分野を追求する
- 大学や研究機関、専門学校に携わる
- 海外旅行や長期旅行を好む
- 海外の学校への進学を体験する
- 法律、マスコミ、出版などの業界に携わる
- 信仰心や神秘主義に興味を持つ
- 政治や社会情勢に強い関心を持つ
- 教育や研究に強い関心と適性を持つ
- 生まれ育った場所から離れ、長い間戻ってこない生活を送る
9ハウスのハウスルーラーは木星です。
木星は11ハウスでジョイの状態になり、太陽は9ハウスでジョイとなり、
9ハウスのハウスルーラーは木星で、11ハウスのハウスルーラーは太陽ですので、
これら2つの天体のハウスルーラーとジョイは反対になっています。
ミューチュアル・レセプションのような影響はありませんが、
天体の働きとハウスの象意として、
影響力が大きい天体がこのような関係性を持っていることは、大変興味深いです。
太陽がジョイとなる9ハウスは、
先ほどもお伝えした通り、太陽光の恩恵を最も実感できる場所です。
9ハウスは、個人の学びのピークの場所でもありますから、
自分の裁量の範囲で、思う存分に興味のある分野を追求するセルフイメージを示します。
そのため、9ハウスの出生前の日食は、
常に自己探求や真理探究に時間と労力を注ぎ、エネルギーを投資した分だけ、
進歩を感じることに喜びを感じやすい意識・人格を生み出します。
木星は物事の繁栄・発展を司り、太陽はあらゆる生命を活かす無償の愛(光)の象徴です。
私たちが自分の望みを果たそうとする時、手放すべきものや犠牲にすべきものが出てきますが、
それは、必要か不要かではなく、重要度や優先順位を判断した上での取捨選択です。
常に喜ばしい結果や選択ばかりができるわけではありませんが
、自分の望みに対して誠実、且つ、正直に取り組む時、私たちは損得勘定を気にすることがなくなります。
9ハウスの出生前の日食は、最も自分に対して興味を持ち、
実際的に成果を上げようとする活発な生き方を体現しようと、広い世界を冒険することを促します。
出生前の日食 in 10ハウス
10ハウスは、仕事や事業、パブリックイメージ、権威性や権力、成功や栄光、
母(両親)、結婚、公的・社会的な責任などを示します。
仕事や収入、稼ぎは、物質性を表す2・6・10ハウスに示されますが、
これら3つのハウスの象意には違いがあります。
2ハウスは、自分の能力や才能を活かす力としての稼ぎや収入を意味し、
6ハウスは、集団性に貢献する条件や適性を意味し、
10ハウスは、自分自身が実現しようとする意志が反映され、
社会に認められることで得られる成功や名声という意味での仕事や事業を示します。
そのため、10ハウスの意味する仕事は、「天職」という風に表現されます。
現代占星術では、10ハウス山羊座と親和性が高いと見なされていますので、
自己実現のための計画や忍耐、責任が必要となる代わりに、
積み重ねた経験や努力が報われる、という風解釈がされます。
10ハウスは天頂に位置し、太陽が最も高く昇る場所です。
太陽の光をダイレクトに浴びる場所では、
その人の人間性や人格、働きや言動、振る舞いなどがすべて露になります。
そのため、10ハウスの出生前の日食は、
「目立つ活動」や「公的な活動」に並々ならぬ好奇心と衝動を生み出し、
実際に表舞台に出る機会に多く恵まれます。
日本人の感覚としては、10ハウスの仕事の象意は馴染みにくく、
どちらかと言えば、6ハウスの象意に親しみを感じるかもしれません。
それは文化の違いや社会構造の違いではあるのですが、
占星術的な観点では、10ハウスにおける仕事は、自分の個性と衝動を十分に反映する、
ライフワークとしての働き方を示します。
結婚と言えば、7ハウスを思い浮かべますが、
結婚のナチュラルルーラーは太陽であるため、結婚ができるかどうかを見る際は、
太陽の状態やハウスを見るべきだとされています。
7ハウスが示すのは、自分と契約を結ぶ特定の他者と、その人との関係性であり、
結婚は社会的な繋がりですので、太陽の象意に含まれるのです。
また、伝統占星術(古典占星術)では、10ハウスは母親を示します。
「母親は家庭の中の太陽」と言われますが、子どもを誕生させる存在、
もしくは、母性の働きは、自然の摂理の象徴であると解釈すると納得がいきます。
10ハウスの出生前の日食は、事業や仕事の成功の他、
結婚や母親業に関する強い関心を持ち、非常に活動的な人生を送ることを暗示します。
世に認められる人や立場には、競争やカリスマ性、求心力、強い意志が必要となります。
そのため、10ハウスのハウスルーラーは火星とされています。
火星は、マレフィック(凶星)とされ、コントロールを外れると、
散々な目に遭う、という印象を持たれる天体です。
ですが、火星は現実創造をするためには最も必要な力であり、現実に変化をもたらす役割を担います。
10ハウスの出生前の日食は、火星が司る意志や衝動性、競争心や闘争心を上手く活かして、
社会に自分を打ち出していく意識を強く育てていくのです。
以下が、10ハウスで起こる出生前の日食の代表的な要素のまとめです。
- 世間から注目を浴びる仕事や立場を持つ
- 承認欲求を超えて、自己実現に対する意志や衝動が強い
- 個性を打ち出し、自分の強みをアピールすることに躊躇しない
- 競争に対して苦手意識を持たない
- 幼い頃から社会事業に対して、好意的な意識を持つ傾向が強い
- 母親業や、母親を援助する仕事などに関心を持つ
- 権威性や影響力を持つことに憧れる
- 隠し事をせず、正直に生きる人格が育ちやすい
- 責任を負うことをいとわない
- 人に影響を与え、感化する才能を早くから開花させる
10ハウスのハウスルーラーが火星であることで、
「栄枯盛衰」や「自主自立」、「波乱万丈」などといった言葉が連想されます。
なぜなら、太陽は必ず沈みますし、私たちは毎年年齢を重ね、必ず寿命を迎えるからです。
太陽は約100億年の寿命を持ち、現在の残りの寿命は約50億年といわれています。
私たち人類からすれば、途方もない寿命の長さですが、
重要なことは、形有るものは必ず滅びる、ということです。
幼い頃に萎縮させられる体験をし、大人になっても自分の能力や才能に無頓着、
または、周囲に遠慮することで、自分の個性や本性を出せない場合、
火星は常に不活性の状態になる、と考えられています。
火星にとっての相応しい言葉は、「若い時は苦労をした方がいい」ではなく、
「動ける時に思う存分遊んだほうがいい」となるでしょうか。
10ハウスが示す仕事や天職、世間からの注目は、
必ずしも優等生で、誰にでも好かれる人物像を求めてはいません。
むしろ、それは6ハウスで求められる、都合に間に合う働きぶりです。
10ハウスの出生前の日食は、または、火星の活性化は、
自分自身を認めることによって、周囲から認められる、という自己信頼と自己肯定、
そして、自愛の境地を極めることを促しているといえます。
火星はストレートに、自分の思いを実現しようとする働きを象徴します。
10ハウスにおいて、自分にも、社会にも、見えない誰かにも遠慮していたら、
自分自身を活かす機会を自ら逃してしまうのですから。
出生前の日食 in 11ハウス
11ハウスは、信頼関係がしっかりとした友人や親友、共同体、アドバイザー、税金や補助金などを象徴します。
12つのハウスのうち、アンギュラーハウスの次のハウスは、
その前のハウスの(人の)資産や収入を表します。
11ハウスは、10ハウスの金銭や資産を表すため、公的なお金を表すのです。
11ハウスは、実質的に、物質的なハウスの最後のハウスです。
10ハウスが最高潮・頂上ですから、後は下り坂を降りていくことになります。
10ハウスは社会活動における成功や名声を表しますが、
責任や義務、成果を常に維持し続けなければいけません。
そういった忙しい状況や立場は、やり甲斐はあるものの、
幸福度や精神的な満足、安らぎが見合っているかは別問題です。
プラシーダス方式では、10ハウスのカスプはMCとイコールですが、
ホールサイン・ハウスシステムでは、MCは9~11ハウスの間を動きます。
ホロスコープの持ち主のMC(最善のセルフイメージ)が位置する場所が、
個人の学びの領域である9ハウスなのか、社会的成功や仕事に従事する10ハウスなのか、
それとも、友人やコミュニティを象徴する11ハウスなのかで、
その人の人生の真の幸福や、目指すべき方向性と成果が変わります。
特に、11ハウスは、10ハウスで物質的豊かさと精神的な豊かさのいずれか、
もしくは、それら両方を手にする体験の後に求めたくなる他者との関係性にフォーカスが当たります。
11ハウスの出生前の日食は、自分だけの願望だけではなく、
信頼のおける友人や親友、コミュニティと繋がりを持つことで生まれる
規模の大きな活動や創造性に対して、強い憧れと渇望にも似た衝動を象徴します。
現代占星術では、11ハウスに「希望」や「理想」といった明るい象意が与えられています。
その一方で、伝統占星術(古典占星術)では、
11ハウスを「神の精神のハウス」と呼び、精神的な喜びを重んじます。
これは、9ハウスが「神の部屋」であり、ハウスルーラーが木星であることで、
精神性を高めようとする意識を高めてはいますが、個人の学びや喜びの追求に留まっているからです。
対して、11ハウスのハウスルーラーは太陽であり、
「神の精神の部屋」という実践的な体験を表します。
太陽が象徴する本質的な喜びは、物質的な豊かさを体験した後に、
自らの意志を貫くことができる環境や立ち場を確保した上で、
他者や社会に向けた献身的・協調的な活動を、
信頼関係にある友人と行うことで成立させ、実際の達成感を味わいます。
そのため、11ハウスに表される活動は、私利私欲を満たす経験が終わっているため、
利他主義に傾いた、精神性の高い活動やコミュニティを示すのです。
11ハウスの出生前の日食は、時間はかかりますが、
意識の中に常に、誰かと真の喜びを分かち合いたい、という願望が漂っていることを暗示します。
この願望は、10ハウス的な成功体験を経て実現するものですが、
人生の目的に、博愛や友人愛が宿っていますので、
必然的に、尊い願望と理想を叶えるタイミングは訪れます。
このタイミングのために、あらゆる忍耐や努力と、願望や友人との関係性を体験するのです。
10ハウスは一見、輝かしい成功や名声を意味するように思えますが、
実際のところ、矢面に立って、自分ではどうにもならない影響を受け止めながら、
弱音を吐かずに、社会活動を続けなければいけないプレッシャーを常に抱える体験を示します。
その点、11ハウスは、経験を積んだ後に、
自分の采配と他者との繋がりによって実現できる公的な活動や喜びを表すため、
11ハウスの出世前の日食は、地に足の着いた状態で、
且つ、高い理想を他者と育んでいく意識を生むと考えられるのです。
以下が、11ハウスで起こる出生前の日食の代表的な要素のまとめです。
- 関係の濃い・深い友人
- 友人との繋がり
- 共同体意識・コミュニティ活動
- 代表者を補佐する立場
- 10ハウスの事業・仕事の資金・資産
- 習い事や稽古事など、自分の嗜好に合う活動と交流
- 仕事以外の時間を大切にする
- 地に足を付け、実現可能な夢や理想を語り、更に高みを目指そうとする精神性
11ハウスのルーラーは太陽であることは既にお伝えしました。
プライマリー・モーションでは、11ハウスは正午前の数時間に当たる場所ですので、
登山で言えば、頂上が見え、疲れているのに、活力が復活するような状態を表します。
セカンダリー・モーションでは、
10ハウスから下った先が11ハウスで、物質的な成功や仕事を手にした状態で、
精神的な満足感や、友人との繋がりを大切にする余裕と気概が生まれる場所といえます。
11ハウスの出生前の日食は、
友人との強い繋がりや公的な活動が実現する前から、自己満足や自己犠牲だけではない、
「自分の喜びを求める自分と他者の欲求や願望」を満たす意識を強くします。
太陽は太陽系の王(中心点)であり、
11ハウスでジョイとなる木星は、太陽系に秩序をもたらす遠心力(ゼウス)です。
人生を始める前に、出生前の日食が11ハウスに起こることは、
ホロスコープの持ち主と世界のために、高い精神性と広い視野をもたらされることを意味し、
この特性を自覚し、実際の生活に落とし込むことで、自分への期待や約束の規模が格段に変わるはずです。
出生前の日食 in 12ハウス
12ハウスは、目に見えない敵や悪評、拘束的な働き、自堕落、
自分の行動の結果、刑務所、隔離病棟、修道院、魔術や秘術などを象徴します。
現代占星術では、上記の象徴に加え、
潜在意識(無意識)や集合的無意識、スピリチュアリティ、感情的・エネルギー的な影響力などを表します。
12ハウスは、6ハウスと同様にアヴァージョン(日が当たらない場所)のハウスで、
原理的には、6ハウスの行動の結果が返ってくるハウスと言われています。
1ハウス(自我意識)にとっての12ハウスは、最も遠い場所であり、暗い場所です。
それと同時に、太陽が地平線から昇り始める場所ですので、非常に理解が難しい場所が12ハウスです。
特に、出生前の日食が12ハウスで起こっている場合、
自分では制御できない働きに関して意識を受けますので、
日の当たらない状態を継続することで、不健全な心身の状態に陥る場合があります。
土星は12ハウスでジョイとなり、
自制心が必要であることを示しますが、12ハウスのハウスルーラーは金星です。
金星は、自らの欲求に素直でいることを第一に、自らの行動の結果を受け取る役割を果たします。
ですが、12ハウスのルーラーとしての金星は
、目に見えない領域や隠された物事に対する責任感は持てるほどの影響力はありません。
そのため、出生前の日食の他、太陽と月が12ハウスに位置する場合、
日の目に付かない場所で努力を必要としたり、
健康状態やメンタルの状態が不安定になりながらも、自分の在り方と生き方を確立させるために、
神秘的・スピリチュアルな事柄で補おうとします。
8ハウスも霊的・神秘的な象意を持ちますが、12ハウスほどの深みを持たず、
どちらかと言いますと、観察の対象や一時的な体験、
見本となる特定の他者がいるお陰で体験できる物事を指します。
12ハウスは、目に見えない領域や意識を当事者として体験し、
その働きや影響を制御することに多大な労力とエネルギーを消費します。
金星は、「月に成り代わろうとする天体」のように語られることがあるのですが、
夜の世界を統べる天体は月です。
金星は月ほどの受容性の深さは持ちませんが、
喜びに関する感度は高いため、創造性のための体験に貪欲になることができます。
12ハウスの出生前の日食は、自分自身を保つことを目的にすると同時に、
この世界を成り立たせる働きに巻き込まれながらも、
その状況・状態にあっても尚、自らに与えられた生命力と創造性を発揮するために、
日陰の場所から努力し続ける強さが宿っていることを示します。
12ハウスは秘め事や秘密、裏で暗躍するといった、表立った活動を表さない限り、
公で活動する人に強い影響力を与え、サポートする立場を表します。
そのため、12ハウスの出生前の日食を持つ人の人生は、
長期的に日陰で活動することに適性があるとともに、
秘されているからこそ求めらる活動や能力によって、他者に貢献し、
目立たないながらも活躍できる分野があることを自覚し、
その能力と才能を伸ばす運命を受け入れることで、人生に深みを出していきます。
以下が、12ハウスで起こる出生前の日食の代表的な要素のまとめです。
- 目立たない活動や、表立っては注目されない活動への適性
- 秘密、秘め事、人には打ち明けられない相談・悩み・苦悩
- 拘束的な状態・体験
- 6ハウスで起こした行動の結果を受け取る、もしくは、清算する
- 裏や影で影響力を持つ
- 表の成功者のアドバイザー・サポーター
- 潜在能力の開花・開発
- 霊的能力への理解と制御の難しさ
- 集団的無意識との繋がりと自分自身を整えることの難しさ
- 奉仕活動や献身性
- 形の無いあらゆるものに通う真理の働き
- 個人の真理の領域
- 病院、福祉、刑務所、隔離病棟、修道院
- 魔術、秘術、禁術
12ハウスのハウスルーラーは金星で、ジョイとなる天体は土星です。
土星は1ハウスと8ハウスのルーラーで、12ハウスにて本領を発揮します。
12ハウスは形や境界線、枠が取り払われた状態や不安定な状態を表し、
その状態で悦に浸る様子は、あまり一般的とは言えません。
例えば、「玉手箱」や「パンドラの箱」は、決して開けてはいけないと言われていますが、
これが言わんとすることは、秘されているものを表に出してはいけないし、
表に出したところでその働きは理解される代物ではない、ということです。
12ハウスの出生前の日食は、
自分で思い通りにできるものではない、運命的な働きこそが、この世を支配していることを
先天的に知っているような、聡明、且つ、不安定な意識を生み出します。
現代占星術では、12ハウスは海王星と親和性があると考えている所以は、
この不安定さや混沌とした世界観が相応しいと考えられているからでしょう。
12ハウスは、6ハウスとともに不自由さを与える場所であり
、「自分」という個の存在さえも、時と場所、立場を変えたなら、
自分が思っている(認識している)ような存在ではなく、
はたまた、自分の知らない要素が絶大な影響力を持っていることを痛感させるような場所です。
だからこそ、土星は境界線を設けるような働きをし、
伝統占星術(古典占星術)の時代に限らず、現代であっても、
目に見えている現象や仕組みだけでは、世界の真理は解明できず
、理解できる領域と理解できない領域を分けているのでしょう。
12ハウスの出生前の日食は、
理不尽さや不条理さを受け入れることができる意識と器量を持つ人格を育て、
人生の歩みにおいて、必ず人のためになる自分であろうとする心を育みます。
12ハウスは厄介事の集積場のような解釈をされますが、
この世とあの世の境目であると考えられるため、
どうしても、目に見えない事柄に翻弄される運命を
受け入れざるを得ない運命の残酷さを物語っているハウスといえます。
ハウス別・出生前の月食の課題
出生前の月食が起こるハウスは、宿命的なテーマを成し遂げるための課題に関する、具体的・現実的な現象や出来事を表します。
原則的に、出生前の月食は、出生前の日食と対極の意味・象徴を持ちます。
月食は日食、もしくは、ノード軸はペアで考えるべきですので、
ハウス別・出生前の日食のテーマの解説をご参照ください。
以下の画像は、前回の講座記事でご紹介したノード軸の経験値の還元をイメージ化したものですが、
出生前の日食と月食のハウスの対極性を汲み取る上で参考になるかと思います。
ハウスはサインと違って、度数を気にすることはありませんが、
ハウスには5度前ルールがありますので、
1つのハウスのメインテーマは、5度~25度に集中し、特に15度はピークである、
という概念を頭の隅に入れておかれるよいのではないかと思います。
それでは、出生前の日食の解説は、
ピンポイントで「運命の流れのテーマに関する課題」についての解釈をお伝えさせていただきます。
出生前の月食 in 1ハウス
1ハウスの出生前の月食が象徴する課題は、
「他者を受け入れること」と「自分自身を客観視すること」です。
1ハウスで月食が起こるということは、
太陽と月がオポジションであり、7ハウスに太陽が位置している、ということです。
そのため、1ハウスに位置する月は、7ハウスの太陽の光を吸収し、反射します。
これを人生の運命の流れに当てはめますと、
「自我意識」や「自分の人生のシナリオ」、「自分だけの個性」をより深くするために、
私たち自身が他者を通じて、自分自身に外からの影響や刺激を受けるように促します。
なぜなら、太陽は未来性と変化の象徴であり、月は過去性と不変の象徴だからです。
1ハウスと7ハウスは、「此岸と彼岸」というような、相容れない対極的な立場を表します。
そのため1ハウスの出生前の月食は、あなたの人生において、
自らを省みるために、他者を受け入れることと、
自分自身を客観視し、自己認識をアップデートしていくことを課題とします。
ハウスに日食や新月、ドラゴンヘッドが位置することで意識が未来へと向かうのとは違い、
月食や満月、ドラゴンテイルのハウスに与える影響は、
月という受容性に沿って、気持ちや気分、感性が変わりつつも、比較対象は常に過去です。
また、月食と満月は、月の満ち欠けのサイクルのピークであり、
太陽の光量を最大限に反射する現象ですから、
それだけ、内省的・感情的・衝動的になりやすくなります。
そのため、1ハウスの出生前の月食は、
過去の心理パターンの再現や繰り返しを省みて、現状を認める、ということを課題とします。
「認める」とは、正義と悪、善と悪のように、対立的な判断ではありません。
ただ「そうである」と受け入れることです。
1ハウスは自我意識が生まれ、個の意識を守り、育てていく場所ですので、
1ハウスの出生前の月食が与える「自分を認める」という課題は、
他者の意見や気持ちを汲み取ることを積み重ねながら、自分自身を成長させることを促すのです。
以下が、1ハウスで起こる出生前の月食の代表的な要素のまとめです。
- 自己中心的・自己本位的な在り方や生き方を振り返る現象に遭遇する
- 自分の可能性を客観的に捉える意識が強い
- 自分自身に対して興味とともに、疑いを持つため、不満を抱きやすい
- 行動を起こす前、結果が出る前から自己完結する傾向が強いため、
変化を起こす成功体験を積み重ねることが必要となる - 協調性を欠いている自覚があり、その埋め合わせとして他者を気にする
- 肉体の欲求に忠実になりやすく、衝動的になりやすく、自制心が必要になる
- 準備や動機などを気にして、なかなか初動の行動を起こしにくい
1ハウスのハウスルーラーが土星であること、また、月相がピークの満月であることで、
1ハウスの出生前の月食は、「過去の自分」や「過去の行動原理」に囚われることを示します。
1ハウスは自分自身を表しますので、「自分自身に囚われる」ということでもありますので、
1ハウスの出生前の月食を持つホロスコープの持ち主は、自分自身を多角的に評価しながら、
また、他者からの意見や刺激を受け入れながら、
凝り固まった価値観を解していくことが重要となるでしょう。
出生前の月食 in 2ハウス
2ハウスの出生前の月食が象徴する課題は、
「物質への執着」と「安らぎ・安定への執着」の解放です。
2ハウスは、所有物と安心感を築き、守り、維持することを象徴する場所です。
この場所で満月・月食が起こる時
、私たちは自分の身を守ろうとしたり、自分が持っているものに対するこだわりが強くなります。
出生前の月食は、「害悪」や「必要悪」として捉えるべきものではありませんが、
状況が芳しくない場合でも、現状維持を求める心理の強い働きを示しますので、
過剰な執着は手放す必要があります。
時間の経過と月の満ち欠けは、不条理、且つ、自然な流れとして、
必ず栄枯盛衰のプロセスを踏むことを教えます。
そのため、2ハウスの出生前の月食は、
物質的・精神的な執着を持っていることを自覚し、少しずつ手放していくことを課題とし、
実際に執着を手放す必要がある出来事に遭遇します。
また、2ハウスは「先天的に与えられた能力」として、両親や先祖から受け継いだ能力も表します。
物質に対する執着と同様に、
自分自身の能力や先代から受け継いできた能力や家業などから生まれる安定と安心感もまた、
自分自身を閉じ込めている側面があることに気づくことが重要です。
2ハウスは「自分で自由にできる金銭・所有物」を表しますが、
活用する価値があるものとそうでないもの、
何より、自分自身の人生の発展・繁栄の妨げになっている要素と対峙するような事柄が起こり得るのが、
2ハウスの出生前の月食の特徴でもあります。
満月は、ピークであると同時に、次の瞬間から太陽の光が陰り始める衰退をも象徴し、
遂には、次の準備に取り掛かり、種蒔きをする流れに入っていくことを示します。
そのため、2ハウスの出生前の月食は、
人生において「執着を手放すことで得られる変化」を自分自身に与えることが重要な課題となるのです。
以下が、2ハウスで起こる出生前の月食の代表的な要素のまとめです。
- 物質に対する執着を自覚し、手放すことを重要な課題とする
- 経済力や財力ばかりに気を取られ、健やかに日々を送ることを軽視する傾向がある
- 継承した能力にこだわることで、発展・繁栄を阻んでいる自分自身に気付くことが重要となる
- 物や金銭が減ることに恐怖を感じ、ケチになりやすい
- 自分のペースを崩すことができない
- 安定や安心を過大評価することで、かえって恐怖心が強まる
- 自らの力で稼ぐことに自信が持てない
2ハウスのハウスルーラーは、ベネフィック(吉星)である木星ですが、
金星と同様に、過剰に働くことで収集が付かなくなる働きを持ちます。
木星は道徳心や楽観主義、探求心などによって、物事を発展させようと働きますが、
2ハウスが象徴する執着や安定への思い入れが過剰に強すぎることで、
発展や循環ではなく、形骸化と内部からの崩壊を招きます。
なぜなら、本来の発展や循環は、
適度に風通しがよい部屋や水が流れる川のように、常にエネルギーの循環が起こっているからです。
2ハウスの出生前の月食がもたらす課題とは、
自らを守るために集めた物と執着心によって、足元はおろか、地中に埋もれてしまわないように、
価値観のアップデートや物質的な豊かさの循環を意識して、身の回りと内面を整えることであると言えるでしょう。
この課題は生涯を通じて取り組むもので、
効率や損得勘定、変化を拒むことなどを改めていくことで、未来性(太陽)への意識が強まります。
出生前の月食 in 3ハウス
3ハウスの出生前の月食が象徴する課題は、
「過剰な依存」や「注意の置きどころ」を改めることです。
3ハウスは伝達や近距離の移動を象徴する場所で、
この場所で月の光が最大(満月・月食)となっていることは、
それだけ、好奇心が過剰に働き、忠実に好奇心を満たそうとする衝動性が強いことを意味します。
私たちは個の意識を自分だけで保っているわけではなく、
身内や他人との関係性において、自分自身の意識を認識しています。
そのため、3ハウスが象徴するような事柄に興味を示し、
複数の依存先を持つことで、常に刺激を得ることができます。
ですが、常に外界にアプローチし続けていたり、
1つの場所に留まることなく、忙しく動き回っていたら、
体力や気力が途絶えた時に倒れてしまいます。
確かに、私たちは社会的な生き物ですから、外界との接点が一切なかったとしたら、
常に退屈で、単調な日々を過ごしているでしょう。
ただ、何事もバランスが重要で、外側や他者と常に繋がろうとし、
自分を常に世界へと押し出し続け、複数の事柄を並行して手を付けていたとしたら、
注意力は散漫になるだけでなく、常に外部刺激に依存してしまいます。
単純に表現するならば、「寂しい」という情緒と
、「何かしなければいけない気がする」という切迫感で、
落ち着きなく依存先に執着する、ということになるでしょうか。
3ハウスの出生前の月食は、好奇心を満たさなくてはいけない、という気持ちを鎮め、
時には1つひとつの事柄と丁寧に向き合い、急激な変化や刺激を持たない時間を通じて、
自分自身の内面と向き合うことを課題とします。
以下が、3ハウスで起こる出生前の月食の代表的な要素のまとめです。
- 集中力や好奇心が過剰になり、落ち着きが無い
- 動いていないと落ち着かない気持ちになりやすい
- 休むことや空白の時間に苦手意識を持ちやすい
- 複数の依存先との繋がりを大事にし過ぎる傾向がある
- 自分を表現するために、常に外界からの学ぼうとする反面、自分自身から学ぼうとする気持ちが希薄になりやすい
- 身近な存在から刺激・感化されることで、学習意欲が高まる一方、自分の本来の動機から離れ、目的と手段が入れ替わることを自覚する必要がある
3ハウスのルーラーは火星ですので、
行動そのものを起こすことに過剰に力が入るのが、3ハウスの出生前の月食と言えます。
私たちが無理に物事を動かそうと躍起になる時、世界からの反作用のエネルギーを受け取ることになります。
「物事は思い通りにいかないことが正解である」ということではなく、
最善のタイミングや順序を無視して、自己中心的に振る舞う時に調和が乱れるため、
その乱れを補うために、私たちからは反作用・反発のような働きかけが、世界側(現実)から起こるのです。
3ハウスの出生前の月食は、
自分の動ける範囲や意識が届く範囲に対して、動ける限りは手を伸ばしたくなる気持ちが強くなるため、
その気持ちを抑えつつ、「ここぞ」というタイミングで力を出すための冷静さを学ぶことが課題です。
満月のタイミングになった瞬間、次の新月のサイクルが始まっているわけですから、
衝動や気持ちのピークのまま、物事を長続きさせることは不可能です。
このことを体験的に受け入れることで、3ハウスの出生前の月食がもたらす衝動性を超越し、
柔軟な考え方と落ち着いた意識を併せ持つことで、
強迫観念的に動き回ろうとする自分自身を諫めることができるようになるでしょう。
出生前の月食 in 4ハウス
4ハウスの出生前の月食が象徴する課題は、「自立心」や「主体性」を持つことです。
4ハウスはルーツや家系に関する繋がりを象徴するとともに、男性からの強い影響をも象徴します。
この場合、影響はポジティヴな面とネガティヴな面のどちらをも内包していますが、
月食の影響は、「癒着」や「同化」という形で働きかけます。
私たちは両親や家族によって生かされ、育てられると同時に、
家庭や家系に根付いている意識や価値観を受け取っています。
少し聞こえの悪い言い方をするならば、「植え付けられている」わけです。
その家々には、固有の集団意識と集団的無意識が息づいています。
その影響を、安らぎと感じるか、退屈と感じるかは、状況によって異なりますが、
幼い頃から馴染みのある環境や価値観は強力に働きますので、
快か不快かという判断の手前から、私たちの意思決定に強く作用するのが、
両親や家庭、家系から引き継がれている価値観です。
そのため、4ハウスの出生前の月食は、こういった強力な根本的な影響に対して、
客観的な立ち位置を得るために距離を置いたり、
自分自身に根付いて、同化してしまっている価値観を自覚することを課題とします。
4・8・12ハウスは、閉鎖的・排他的な環境や立場、居心地を表し、
4ハウスは最も味方が多く、慣れ親しんだ場所であるため、
大きなキッカケや転機が無い限り、その場所を離れようと決心することは頻繁に起こりません。
4ハウスの出生前の月食による課題は、
社会に出ることの恐怖や、他者比較からのコンプレックス、対人関係の難しさを通して、
自分自身を成長させる場所へと出向くよう促すことを受け入れ、
風通しの良い環境や関係性を築く力を育てることを学ばせるのです。
以下が、4ハウスで起こる出生前の月食の代表的な要素のまとめです。
- 家族や家系、親族との関わりが成長・変化の妨げになる場合がある
- 父親や父性の影響を乗り越え、家庭や家系のエネルギー場を変える試練を受ける
- 家庭や家族に対する不満を抑えるとともに、他者からの批判を回避する傾向がある
- 内向的・排他的な自分の在り方に不自由さを感じ、外的な介入を必要としつつも、変化を恐れる傾向が強い
- 家族や家系から引き継ぐことができる立場から、自立心や開拓芯が育ちにくい
- 家庭や家系の集合的無意識の影響をダイレクトに受ける立場にありながら、
その影響を昇華するためには、長期的な道程と忍耐が必要になる - 自分のルーツに関して深く内省するだけに留まらず、
過去の出来事や先祖のエネルギーに影響されるため、意識を外向的に切り替える必要がある
4ハウスのハウスルーラーは太陽ですから、
最も身近な環境に対して恩を返したくなる気持ちは誰にでも生まれます。
ただ、私たちは常に世代交代をしながら、生命を継承していきますので、
永久的に先代からの恩恵(太陽)を貪り続けることはできません。
そのため、私たちは自分自身の中で太陽を発現させ、
後世へとその生命力を繋いでいくために、自主自立が必要となりますし、
閉鎖的な環境である家庭や家系の中に、望ましい変化や刺激を取り込みながら、物心両面を整える必要があります。
借金の取り立てのような捉え方ではないのですが、
私たちは生まれてきた以上、生かされ、育てられたことに対して、
次世代の立場から、先代から引き継いできた正と負の両方の資産や遺産を循環させるために、
不活性な部分を活性させる必要があります。
そのために最も必要なことは、親しみのある環境からの自立と健全な距離を保つことです。
ですから、4ハウスの出生前の月食は、
外側から見た健全なプライベート環境を築くために、自主性を鍛えていくことが課題であると言えるのです。
出生前の月食 in 5ハウス
5ハウスの出生前の月食が象徴する課題は、「浪費癖」や「創造エネルギー」の無駄遣いをしないことです。
少し比喩的に表現するなら、「中毒の解毒」となるでしょうか。
金星がハウスルーラーであり、ジョイとなる5ハウスは、
料理と同じように、味付けやスパイスの加減によって、創造性の発露となるか、
それとも、自堕落な人生をもたらすか、という非常に扱いの難しい学びを象徴します。
「自分さえ良ければいい」という意識と、
「自分をまず満たしてから他のことをする」という意識は、
与えられる環境や条件が同じであっても、変化・成長するプロセスと変化に差が出ます。
「自分がしたことは返ってくる」というのは、懲罰的・カルマ的なものとして捉えなくても、
「自分が植えた種」からは、それ相応の果実が生って、収穫する、というごく当たり前の摂理です。
5ハウスの出生前の月食は、
創造性の持つ強大なエネルギーの光と闇の両面に対して、
喜び(光)だけに手を伸ばしたくなり、苦しみや忍耐(闇)は避けたい、という気持ちを肥大させます。
5ハウスの象意に「ギャンブル」がありますが、
5ハウスで出生前の月食が起こり、現実的にその学びを受け取るかどうかも、
自分自身にとってはギャンブルといえるかもしれません。
なぜなら、快楽と苦痛のどちらかを選べと言われたら、
大抵の場合は、快楽を選ぶのが自然ですし、
快楽が持つ中毒性と、同じ経験を再現したいという意識が合わさることで、
この選択の傾向は強化されるからです。
金星は「愛」や「美」、そして「喜び」の星と呼ばれることが多いのですが、
どのようなものにもリスクや影の部分があることを知らなければ、「快楽の奴隷」となってしまいます。
無心になれる生き甲斐や趣味、ライフワークなどは、快楽的な側面もありますが、
本能的・概念的な自我さえも超越して、時間を忘れるくらいの創造性を発揮させますが、
現実に戻った時に、物質性に囚われることに嫌悪感を感じることがあるでしょう。
私たちはどんなに才能があったり、恵まれた環境にあっても、
常に自分だけの世界観(価値観)と、流動的に変わっていく現実の世界観を行ったり来たりしながら、
バランスを取ることから逃れることはできません。
そのため、喜びや快楽さえも、苦しみや執着を生むということ、
それ以上に、快楽主義となって、自己中心的な生き方を追求することで、
身を滅ぼすことになったり、周囲の人に迷惑をかけてしまうことがあることを自覚する必要があるのです。
以下が、5ハウスで起こる出生前の月食の代表的な要素のまとめです。
- 楽しみや喜びを何よりも優先し、後先考えずに行動したくなる衝動を抑えることが課題となる
- 自堕落な自分を好きになり、歯止めが利かなくなることで、身を滅ぼしかねない状況に自分を追いやる資質を持つ
- 何事もにも純粋な動機で手を出し、リスク回避を怠る傾向がある
- 快楽を追い求める自分を嫌悪する自分自身を改めることが重要
- 現実性やルールを軽視する傾向がある
- 快楽と現実のギャップに苦しみ、快楽を重視する傾向がある
- 創造エネルギーを外へ放出し続け、肉体と精神を疲弊させ続ける傾向がある
5ハウスのハウスルーラーは金星であり、
現実で喜びや快楽を求めた結果、12ハウスでその行いを省みる出来事に遭遇する、と言われています。
何事も渦中に居る間は、後先のことは考える暇も余裕もありません。
5ハウスの出生前の月食は、自分自身が悦に興じる前に、
自分の行いについて客観視し、ある程度のルールを自分に課したり、
現実に戻った際に感じる苦痛のアフターケアとして、
時間を余裕に取ったり、周囲の人の力を借りるなどの理解と協力が必要であることを示します。
むしろ、「自分を体験する」ために世界があり、
世界が成り立つために「自分が存在する」という概念を適用するなら、
「快楽の時間」と「苦痛の時間」は等価値であり、
どちらも尊重すべきですので、自分を真に愛し、活かそうとするならば、
やはり、快楽を成り立たせる苦痛さえも肯定すべきなのです。
出生前の月食 in 6ハウス
6ハウスの出生前の月食が象徴する課題は、
「犠牲の精神」や「過剰なサービス精神」を鎮めることです。
6ハウスと12ハウスの対極性は、現実面と非現実面で「不自由さ」を示します。
どちらのハウスもアヴァージョンのハウスであり、
創造性のエネルギーが周囲に吸われてしまうような場所や出来事、状況を表します。
6ハウスの出生前の月食は、
そういった「身を捧げる」という概念や体験を出来る限り下げながら、
「不毛な献身性」を発揮することなく、自分を守ることを課題とします。
「自己犠牲」や「献身的な行い」は尊ばれますが、
実際には、その行いが評価されるだけで、対価が支払われなかったり
、広告塔やダシに使われるだけ、といった結果になることは少なくありません。
吉凶の区別よりも、宿命論や確定論に近いのですが、
6ハウスと12ハウスは特に、このような理不尽な体験や状況に遭いやすいことを暗示します。
6ハウスの出生前の月食は、
「月(心)を守る」ということと、「自らの行いを省みる」ということを促します。
これは、どのような状況や条件で、意思決定の主体性を自分自身で行う、
または、自分自身に決定権を戻すことが重要であることを意味しています。
6ハウスは隷属的な体験や立場、役割を表す場所ですので、
6ハウスで起こる月食は、そういった待遇や状況から自分を遠ざけることを促すのです。
とはいえ、状況や周囲が求めることを拒むことができない、という場合も当然あります。
6ハウスは与えられる仕事や健康などを象徴するため、
対等な関係性が築かれることはないからです。
そうだとしても、私たちが狭い世界(環境)の中で蝕まれることを自分に許し続けていたなら、
待っているのは破滅だけです。
この破滅は、5ハウスの主体的な破滅とは反対の、
受容的な破滅であり、選択と決断の放棄に繋がるのが重要な視点となります。
以下が、6ハウスで起こる出生前の月食の代表的な要素のまとめです。
- 人や仕事、健康状態、状況に振り回される傾向が強い
- 健康を気にし過ぎることで、神経症やノイローゼになる傾向が強い
- 身体と心のケアを常に必要とする
- 理不尽な扱いや対応、待遇に遭いながらも、突破口を探す気力や余裕が封じ込められやすい
- 奉仕・献身の精神(心)を操られたり、上手く利用されたりする体験に遭いやすい
- 「都合の良い人」という印象を与えやすい
- 優しさと甘やかしを履き違えやすい
- 自分と他者を対等に捉えることが苦手
- 積極的に自分に必要なサポートを得る努力と工夫、行動力が必要となる
6ハウスのハウスルーラーは水星であるため、
日常的な思考回路は環境に影響される、ということを示しています。
環境や周囲の人からの要求に応え続けることで、思考回路は主体性を失い、
求められるがままに動かなければならない、という勘違いやバグが生まれます。
6ハウスの出生前の月食は、
こういった「不健全さ」を回避、または、取り除くための創意工夫が必要であることを示しています。
私たちが生きている世界は、無数のコミュニティ・組織が点在しながら、
間接的に繋がっていますので、どこかに必ず健全な流れを見つけることができます。
ですが、私たちが近視眼的に現実を眺め、自分を過小評価している限り、
必要以上の不当な扱いを付けたり、その状況から自分を救い出そうという意識さえも生まれません。
水星は、意識が切り替わることができる可能性(機能性)を象徴する天体です。
ですから、同じ景色を見続け、同じ場所に留まることを自分に強要するのではなく、
もっと広い世界(現実)があるという事実を知って、
自分にとって必要な環境に出会えるように、自ら進んで望ましい選択をする必要があります。
6ハウスは一見、逃れることが許されないような状況を示しますが、
意識を広げ、思い込みを外した時、「必要以上に応える必要はない」ということや、
「不健全さは正義ではない」ということに気づいた時、
あっさりとその待遇や状況を覆すための鍛錬・修練の場所であり、
永遠にその場所に居続けなければならない、ということではないことが分かります。
水星が象徴する「知性」は、単に外面の世界からの情報や知識を自分に適用させ、
自分を世界の奴隷にするためではなく、
創造性を発揮するために知性を働かせることが重要である事を示すのです。
出生前の月食 in 7ハウス
7ハウスの出生前の月食が象徴する課題は、「受け入れられることを自分に許可すること」です。
1ハウスの出生前の月食とは反対に、
7ハウスに月が位置し、1ハウスに太陽が位置することで、月は客体側の意識を強調します。
ですが、私たちはどこまでいっても主観から出ることはできません。
そのため、本講座内では「自己客観」という表現をしています。
陰陽太極図で言えば、陰の中の陽や、陽の中の陰の部分を自らの中に見出すことです。
7ハウスはパートナーシップを象徴する場所ですが、
その根底には、二元性という相反するものが互いを補完し合う関係にあると同時に、
反発する要素を持っていることを意味し、
占星術上では、太陽と月は陰陽の関係にあります。
更に言えば、「与えること」と「受け取ること」はセットで成立しますし、
7ハウスは、対等性のために契約や約束を交わす状況や関係性を表します。
裏返せば、「与える側」は同時に、「受け取られること」を「受け取る側」に許していますし、
逆に、「受け取る側」は「与えること」を「与える側」に許しています。
「許す」とは、教義的・信仰的な「赦し」とは違い、
許可を与えること、という意味です。
月が7ハウスに位置し、満月・月食が起こる時、
「受け取る体験」が強調されることから、7ハウスの出生前の月食は、
「受け入れられる体験」を積み重ねることを課題としていると言えます。
1ハウス側から見れば、7ハウスは対岸・彼岸の場所であり、
我欲を抑えて中庸な立場を獲得することによって、他者と対等な関係性を結ぶことができます。
1ハウス側の太陽は、主体性を重んじ、
7ハウス側の月は、受容性を重んじ、それぞれの役割や立場が大いに発揮される配置です。
7ハウスの月の関心事は、
「信用すること」と「信用されること」という同じ1つの立場に対して、
主体性と受容性の両面に心が向いています。
そのため、誠実さや思いやりが生まれ、
相手にメリットとデメリットの両面を差し出そうという心理が働きます。
月食の場合、この他者に対する配慮や、他者への意識(自己客観)が主体性を上回ることを問題視します。
同じ立場・関係性であっても、積極的に気に入られようとしたり、自己アピールをするのか、
それとも、相手の意見や機嫌を優先して、譲歩ばかりをするのかでは、
心持ちが随分変わりはずです。
7ハウスはそもそも、自分の領域ではないため、及び腰になるのは自然なことです。
ですが、心の動きと月の満ち欠けで言えば、
7ハウスで満月が起こり、1ハウスの太陽からの最大光量を反射する意識は、
相手によって自分の主張や感情、魅力が引き出されます。
その引き出された自分の要素を他者に受け取ってもらうことが、
成長の大きな要素であり、恐怖心を引き出す要素なのです。
以下が、7ハウスで起こる出生前の月食の代表的な要素のまとめです。
- 上辺だけの付き合いや穏便な対応が得意
- 不特定多数の人と関わりながら、特定の人に心を惹かれるやすく、そのことに無自覚になりやすい
- 人に合わせることに慣れ過ぎて、自分に合わせてもらうことが苦手
- 主体性を抑制することに慣れ、他者からのアプローチを拒否したくなる
- 信用されることに重きを置くことで、八方美人になりやすい
- 自分の意見を受け入れてもらう体験を求めながらも、拒否する
- 気遣われることが苦手、もしくは慣れない
- 緊張を解くことが苦手で、どう思われるかを過度に心配する傾向がある
7ハウスのハウスルーラーは月ですから、
他者の心の動きに非常に敏感になるのは、7ハウスの出生前の月食の影響です。
本講座では、信頼の前提に信用がある、という順序を前提としています。
もちろん、信頼関係にビジネスの話や権利が絡む場合もありますが、
ハウスの象徴から言えば、対等な関係性や契約などは、
信用という社会的価値を互いに評価し合うことで、信頼関係を築く、
という順序が適切であると思われます。
月は12つあるハウスの中で、唯一7ハウスだけのハウスルーラーで、
それだけ、「受容性」を発揮する場所が重要である、ということです。
「受け入れること」には、積極的な受容性と、消極的な受容性があります。
「積極的に待つ」という表現は、
「万事を尽くして天命を待つ」のようなスタンスを取った上での、積極的な受容性を表しています。
対して、消極的な受容性は、強制や要請に応じる姿勢で、
嫌々であるか否かは関係なく、主体的であるか、がポイントです。
7ハウスの出生前の月食は、
他者の意識や心に関心を向ける一方的なベクトルには、セットとして、
相手から自分の意識や心に関心を向けられる、という双方向の繋がりを学ぶことを課題としています。
そのため「受け入れられる体験」とは、信用されることであり、自分からアピールすることです。
月は心や無意識を象徴しますが、自分の内面に留めている世界観や価値観であるため、
他者や周囲に完全に理解されることはありません。
ですが、理解されることや受け入れられることをゴールや前提とするのではなく、
まずは、手の内を見せる、胸の内を見せるという意味で、
他者と誠実に向き合い、健全な関係性を築くためには、
受け入れられるために心を開くことを行動に移すことが挑戦であり、誠実であり、
課題に対する勇気ある一歩であるといえるでしょう。
出生前の月食 in 8ハウス
8ハウスの出生前の月食が象徴する課題は、「生への執着」です。
8ハウスで満月・月食が起こる時、
8ハウスの象意である「自我意識の喪失」や「死」にまつわる意識が強まります。
これはトランジットだけでなく、プログレスやソーラーアークの天体でも同様に、
非物質的・内面的な変容・変質を起こす出来事に遭遇することを示すからです。
8ハウスは、1ハウスと同様に土星が関わり、
魂や精神の誕生と昇華(死)に繋がりを与える場所です。
また、8ハウスは、4ハウスと12ハウスとセットで「終末のハウス」と呼ばれます。
そして、8ハウスはアヴァージョンのハウスであるため、
閉鎖的な環境や排他的な関係性や状況を表します。
そういった状況や条件において、
月食(満月)が起こることで、対向の2ハウスが象徴する「執着」が強調されます。
8ハウスの出生前の月食は、特定の他者と濃密な関係性を築き、
これまで築き上げてきた自我意識の崩壊を互いに経験し合うこと、
もしくは、オカルティズムや非物質的な働きへの関心と影響によって起こる、変性意識や超感覚から、
「生」や「生きること」を非物質側や魂の観点から観察・洞察する意識が呼び覚まされます。
8ハウスは、パートナーとの深い関係性から生まれる葛藤や対立や、
自分から離脱し、本当の意味で客観視するような意識を表します。
こういった状況や体験は、自我意識を死守しようとする私たちにとって、
「生まれ変わり」や「再生」といった通過儀礼となり、
恐怖心と安らぎが融合する、非現実的な側面が強調されます。
そのため、秘密や口外できない対話、
セラピーやカウンセリングといった象意も含まれるのが8ハウスなのです。
その他、パートナーの金銭や所有物に関して、
依存的になったり、期待したりする意識も強まります。
対向の2ハウスと異なる点は、「自分で自由に扱えない・使えない」ということであり、
主体性は相手にあり、継承や相続といった手順や手続きが必要となります。
以下が、8ハウスで起こる出生前の月食の代表的な要素のまとめです。
- 生への執着を持つことで自我意識が生まれ変わる
- 配偶者とその家族の死に関わることで、自らの死生観を改める
- 受容性・感受性の高さから、他者に強い影響を受け、主体性が弱体化しやすい
- 相手の秘密や弱みに対する関心が強くなり、境界線を簡単に超えようとすることでトラブルが生じやすい
- 自分自身よりも、他者への興味や執着が強くなりやすい反面、相手に同じことを求められると恐怖心を抱く
- 精神的な疲労を溜めやすく、ガス抜きやリフレッシュ、リラクゼーションが必須となる
- 死や死後の世界への興味関心が強い反面、世俗的な事柄に興味が薄くなりやすいことで、逆に、地に足をつけることを強制される出来事に遭遇した際に、信頼できる人に頼ることが課題となる
8ハウスは、1ハウスから築いてきた成長が一旦リセットされる場所です。
それは、土星によって境界線を再び引かれることであり、
特定の他者との関係性の間に生まれる変容体験です。
土星は死神ではありませんが、人生で全うすべき役割を強制する働きを持つため、
8ハウスの出生前の月食は、精神的に成長するために、
葛藤や受難から逃れることができない厳しい体験が用意されていることを暗示します。
そういった経験は、自我意識の喪失や死をもたらすことはありますが、
完全なる死を意味するわけではありません。
私たちは大抵の場合、一日の終わりに寝て、
意識は物質世界から精神世界(無意識の世界)に還り、
次に目が覚める時には、同じ自分であっても、
昨日の自分とは別人となり、生まれ変わりを経験している、と言われます。
細胞の生まれ変わるサイクルや、1年に1度やって来る太陽回帰、
12年に1度訪れる木星回帰など、
私たちは色んなリズムで、生まれ変わりを体験しているのです。
私たちは、普段は死を意識の外に追いやっていますが、
実は、常に死と背中合わせであることを、自分自身とパートナーに当てはめることで、
生への執着が強まり、より善い自分であろうと意識しますし、
相手を大切にする気持ちが強まります。
8ハウスの出生前の月食は、
死や喪失の体験や知識に触れることで、人生に起こる不条理さと喜びの両面に対して、
体験的に理解を獲得することを促すのです。
出生前の月食 in 9ハウス
9ハウスの出生前の月食が象徴する課題は、「知識を知恵にすること」です。
9ハウスは、太陽がジョイとなり、対向の3ハウスは、月がジョイとなります。
太陽は未来性を、月は過去性を象徴し、
前者は遠くへと意識を向け、後者は近くの環境に意識を向けます。
9ハウスで満月・月食が起こる時、
月は3ハウスに位置する太陽の光を受け、反射します。
これは、自己探求や真理探究といった、自分と世界を繋げ、理解を深める学びを、
日常という普遍的な環境に落とし込むことを象徴します。
遠くの国の文化や慣習は、自分の環境と毛色が違うことは当たり前(自然)ではありますが、
人間である以上、衣食住や人間の心理構造、肉体の機能が異なる、ということはあり得ません。
自分より遠い場所にあるものは、そのままでは娯楽や道楽です。
娯楽や道楽が悪いわけでも、不要であるわけではありませんが、
9ハウスは「神の部屋」と呼ばれ、木星がハウスルーラーですので、
単なる机上の空論ではなく、現実的、且つ、体感的に身になる体験・実践が重視されます。
そのため、9ハウスの出生前の月食は、
専門知識や海外からの影響を得て、それらをどのように活かすか、ということが課題となります。
「活用」や「応用」は、ビジネスにしなければいけないとか
、教育や指導しなければいけない、とかのレベルでよく使われる言葉・意味ですが、
誰もが専門家にならなければならない、ということではありません。
哲学や思想、宗教、研究などが古代から現代にまで継承され、発展し続けている理由は、
私たちを逃避させるためではなく、
日常生活を成り立たせる自然の摂理や、誰にでも通っている真理の働きを見出すことで、
日々を穏やかに、また、楽しんで過ごす知恵が無数に存在するからです。
表現や分野が違っても、私たちは知覚・認識するだけでなく、共通項を見つけたり、
逆に、不一致を見出したりと、向学心や好奇心が文明を発展させていきます。
9ハウスの出生前の月食は、
遠くにある知識を知覚で知恵に変える、錬金術的とも言える、
真理を普遍的に体現することを大義・課題とするのです。
以下が、9ハウスで起こる出生前の月食の代表的な要素のまとめです。
- 早くから海外志向・外国への憧れを持つ
- 1つのことにのめり込み、他のことに興味を示さない
- 退屈さや単調さを嫌い、大衆的・集団的な流れから距離を置きやすい
- 自己探求や真理探究に強い関心を持ち、排他的な思想を持ちやすい
- 出版や広告に携わり、あらゆる刺激を求める傾向が強い
- 信仰心や神秘主義に傾倒し、独特な思想や価値観を持ちやすい
- 教育や研究に関心と適性を持つ反面、自分と合わない場所では能力を発揮しにくい
- 生まれ育った場所への郷愁を持ち、美化する傾向が強いものの、刺激と変化を断ち切ることができない
- 海外や長期出張の機会に恵まれ、喜びや生き甲斐を感じるものの、根無し草のような生き方をする自分に対して、どこかやるせなさを感じる
木星がハウスルーラーである8ハウスは、
意識を遠くへと向ける運命の流れが強く働きます。
太陽がジョイとなるハウスでもあるため、
生き甲斐を見つけたり、変化の予感が感じられたなら、
その正体を突き止めようとする衝動が抑えられなくなります。
そのような魅力的な場所で満月・月食が起こる時、
その衝動に飲まれることで人生が展開していくことを、私たちは無意識で知っています。
8ハウスの出生前の月食は、「遠くへ導かれる感覚」に従いながら、
後ろ髪を引かれる思いを簡単に忘れて、それでも、結局は故郷へ戦利品や成果を持って帰る、
という凱旋的な帰郷をする流れを辿る傾向が強まります。
9ハウスや木星は、凶意とは無縁のような印象を受けますが、
実際のところ、動いている間は、寂しさや哀愁などを感じることがありますが、
一過性のものであることが多いでしょう。
それは、私たちにとって「自己探求」や「真理探究」が「自己実現」に必須であり、
無心になったり、ゾーンの状態に浸ること以上に、至福を感じることはないからかもしれません。
そして、9ハウスは個人の学びのピーク(限界)の領域であり、
責任や義務無しに、創造性を発揮することを許される環境ですので、
9ハウスの出生前の月食は、その他のハウスに比べて、楽観的な影響が強いといえます。
出生前の月食 in 10ハウス
10ハウスの出生前の月食が象徴する課題は、「需要を受け入れる(認める)こと」です。
10ハウスはホロスコープの天頂の場所であり、最も日の目を見る場所です。
太陽が10ハウスに位置すれば、正午を意味し、
月が10ハウスに位置すれば深夜を意味するように、
10ハウスで満月・月食が起こった際には、感情や無意識の働きがピークに達します。
このことから、10ハウスの月、並びに、満月・月食を社会的に捉えますと、
大衆的な心理や興味関心に応えることを意味します。
つまるところ、「求められることに応えること」であり、
「自分に求められることに応えること」です。
それは、世間や周囲、社会からの需要・要請に対して、
自分の能力や才能、立場や役割で応えることが、
10ハウスの出生前の月食の大きな課題という風に解釈することができます。
ネイタルの月が10ハウスや11ハウスに位置している場合、
他者や社会の需要に応える資質が高く、その能力が備わっているだけでなく、
認知され、支持されることを示します。
ただ、月のこのような引力めいた魅力は、
自分のメリットや願望ではなく、他者や大衆が求める需要に応えることによって支持される、
という点を押さえる必要があります。
なぜなら、月は幼少期の世界観や自我意識の内面性を象徴し、
「何もせずに評価される」のは、乳児や幼児の時期だけだからです。
その点、人生経験を重ね、他者と繋がり、艱難辛苦がありながらも、
自分の成長に喜びを感じるようになると、私たちは個性と社会性を融合させることに成功し、
「求められること」と「実現したいこと」を区別し、
TPOに合わせたり、マナーや作法、ルールに自分を寄せることで、
社会的な評価を受けることができます。
これは、人間の概念・観念の働きによるシステムですので、
自然の摂理と同様に、個人で対向できる働き・構造ではありません。
ですから、月の働きをそのまま表・社会に出すのではなく、
あくまで、「受容体」や「感受体」として、
自分の能力や才能、感性を活用し、他者や社会に求められることで、
結果、自分の願望に繋げる、という順序を辿る必要があるのです。
月が象徴する「純粋性」は、
必ずしも他者や社会に許容されたり、評価されるものではありません。
月は最も傷つきやすく、影響を受けやすい心を象徴しますので、
個人としても、無防備に心や無意識を丸裸にすることは得策とは言えません。
公的な活動をする上で、プライベートな側面を出すことはあっても、
社会を家庭に置き換えることはできませんし、
その必要もありませんし、そのようなことは辛いはずです。
10ハウスの月、または、満月・月食は、
他者の心理に共感した上で、自分ならどのように表現するか、活動するか、
そして、社会的な活動に発展させるか、という工夫が必要となります。
そして、10ハウスの出生前の月は、
影響力(引力)を発揮するために、無邪気さや純粋さを内に温めたまま、
社会的な役割を全うすること自体を認め、自分がその役割を全うすることによって、
自己実現が叶うことを認めることが王道であり、
最も願望実現が叶う近道であることを悟ることを課題とするのです。
以下が、10ハウスで起こる出生前の月食の代表的な要素のまとめです。
- 注目を浴び、評価されることを過剰に求める
- 自然体のまま評価されることを望みながらも、そうではない現実や社会に対して恐怖心を抱きやすい
- 競争や評価をする側としては適性を持つ反面、追いかけられる立場や評価されることに関しては苦手意識を持つ
- 心をオープンにすることには慣れているが、常に自分を曝け出さなければいけないという強迫観念を抱きやすい
- 母親や母親像に対して強いイメージや偏見を持ち、それらを自分に適用させる傾向が強い
- 責任を負うことを望みながら、突然、その立場から逃げたくなることがある
- 人に影響を与えることに喜びを感じながらも、その影響力を保つことに自信が持てない
- 経験に裏付けされた自信を持つために、まずはロールモデルとなる人や人物像に影響される体験が必要不可欠となる
10ハウスは火星がハウスルーラーであるため、
最も注目される場所で伸び伸びしたい気持ちになり、
時に、我を忘れて、他者や社会に合わせ過ぎるのが、
10ハウスの出生前の月食と月の特質です。
10ハウスは「お披露目の場」であると同時に、
その活動を維持しなければいけなかったり、常に評価や責任が伴いますので、
精神的な疲労が蓄積しやすいため、メンタルのケアが必須です。
加えて、10ハウスの月や、満月・月食は、
他者や集団の意識や無意識から影響を受けるため、
自分自身の心と無意識との間に境界線を引く必要があります。
それは、「社会が求める自分像」と、
「自分が社会に打ち出す自分像」との間で生まれるギャップがあればあるほど、
無理をしたり、過剰にサービスをしなければいけない気持ちになるため、
社会生活と私生活、外面(そとづら)と素の自分のバランスを保つことも課題と言えます。
10ハウス・天頂に月が昇っている間、顕在意識は鎮まり、
感情や無意識(潜在意識)の働きが有利になりますので、
「求められる役割」に気づき、社会的な成功や評価を順序を踏んでいけば、
それらを獲得し、自己受容と自己肯定が進みます。
重要なことは、感情や衝動に飲まれることなく、
また、他者や社会からのニーズを見極めて、
自分自身が活躍できる武器と舞台を明確に知り、
舞台の上では、公の自分という演者を演じることに罪悪感を持たず、むしろ、楽しむことです。
出生前の月食 in 11ハウス
11ハウスの出生前の月食が象徴する課題は、「自己尊重」と「自愛」です。
11ハウスは、実質的に、社会生活の高み・頂(いただき)の領域であり、
10ハウスで獲得した成功や体験を活用して得られる理想や友人(親友)を象徴します。
11ハウスで満月・月食が起こるということは、
5ハウスに太陽が位置し、創造性のエネルギーを11ハウスに転換される、ということです。
11ハウスに位置する月は、他者と精神的に共感・共振し、
社会活動を行ったり、自立した者同士が繋がり、コミュニティ・共同体を設立するなど、
社会のルールと個人の思想を合致させることに対する強い関心と衝動を持つを示します。
11ハウスの根本的な象意は、「博愛」や「自由」、「友人」です。
これらの体験・体感を得るためには、
9ハウスの自己探求と、10ハウスの社会的成果の両方を経て、自分の強みと弱みの両方を知り、
他者や社会に求められる自分と、自分が打ち出したい自分像の違いを理解した上で、
過剰に社会的立場や肩書きを押し出さなくても、
信用と信頼を獲得でいる領域・ステージに立つ必要があります。
11ハウスの出生前の月食は、高い理想や信念を持ち、
そのために必要な経験を積み重ねることに恐怖心や抵抗は感じませんが、
自分に対する自信や理解といった、
創造性の源泉となる力を発掘し、活性させることを課題とします。
なぜなら、自分自身と人生に敬意を払い、自分自身を大切な存在として扱うことができない限り、
他者と対等と理想を語り合い、社会性と個性を擦り合わせながら、
個人同士の繋がりと意志を相乗効果で高めていくことは不可能だからです。
11ハウスは、プライマリー・モーションでは、
天頂(10ハウス)に向かっていく流れにあり、
セカンダリー・モーションでは、天頂から下っていく流れにあります。
どちらの流れにおいても、11ハウスは心地良さと喜びを感じます。
10ハウスから下る流れは、
社会的に求められ、活躍できる時期を過ぎ、衰退を辿ることを意味し、
満月・月食と同等のサイクルのステージにあります。
ですが、11ハウスの境遇は、社会的なプレッシャーや責務から解放され、
本格的に自由や理想のために、経験と能力、人脈や経済力を駆使して、
活躍の場所を変えることができるため、
体力や闘争心によりも、精神性や道徳心が有利になり、
精神的には安定するどころか、喜びが溢れている状態を示します。
そのため、このような状況や心境、境遇に至ることを生涯の目標とし、実現させるためには、
11ハウスの出生前の月食を持つ人は、
「自己尊重」や「自己信頼」、「自己肯定」といった自愛を追求する必要があります。
人生に起こるすべての出来事は、影響力や規模の大小の差はあれど、
必ず成長・進化の栄養・資源になり、長期的なシナリオとして、
自分自身と現実(人生)を受け入れ、愛し、尊重することは、
未来で出会う友人や築くことになるコミュニティや共同体を実現するための、
重要な要素であることを知り、
日々の生活の中で、自分と最も健全な関係性を築くことが重要です。
以下が、11ハウスで起こる出生前の月食の代表的な要素のまとめです。
- 友人(親友)との繋がりに対する強い憧れ
- 共同体意識に対する強い衝動
- 自主自立や客観性、理想を実現しようとする意志を自分に許可する
- 公の活動に強い関心を持つ
- 社会に強い影響力や発言力を持つ人物に憧れる
- 自分に無い能力や素質、天才性を持つ人に惹かれる反面、自分に自信が持てないことが根強い悩みとなる
- 仕事以外の活動を強く意識することで、家庭や仕事を軽視する傾向がある
- 多種多様な活動や社会交流の場に出向きながらも、自分の強みを上手くアピールすることに抵抗がある
- 求められることと、求めることのバランスを学び、実践することが課題となる
11ハウスのルーラーは太陽であり、
本質的には、私たちが生き甲斐を感じることができるのは、
達成感を味わい、それを評価されることである、と言えます。
それは5ハウスでも同様ですが、
5ハウスは自分を満たし、喜ばせることを象意とし、他者への影響をそれほど重視しません。
対して、11ハウスは、5ハウスで培った創造性を活かし、
個性という天才性を発揮し、同じ境遇や意志を持つ者と繋がりを持つことで、
一人では成し得なかった活動やネットワークを築き、
そこで生まれる友人愛や博愛の精神を象徴します。
11ハウスの場所では、誰もがそれなりの人生経験を積み、
今後の成し遂げたい理想や活動とともに、壮年期としての在り方や生き方、
そして、終末への準備や次世代に残したいものなど、
広く、深い人生観と道徳心を語り合う精神性が強調されます。
太陽がハウスルーラーである4ハウスで満月・月食が起こる場合と異なり、
11ハウスで起こる満月・月食は、
高いところから世界を見渡すような広い視野と心を象徴します。
そのため、11ハウスの出生前の月食は、
太陽の働きが根付く境地にまで自分を高めようとします。
それはすなわち、太陽のように輝く自分像(セルフイメージ)の実現です。
自分を高めようとする時、強みも弱みも、得意も苦手も、好きも嫌いも、
自分のすべてを受け入れる必要がありますし、
他者に受け入れてもらう経験も必要です。
11ハウスは、広く、風通しの良い団体やコミュニティを象徴しますので、
そういった場で、自己アピールができるのは、
損得勘定や浅知恵で立ち回ろうとする軽薄さを卒業した、
成熟した心を持つ人であり、自己受容を徹底した人といえます。
11ハウスにおいて、友人を求める心が強調されるのは、
私たちが分離した個性を集わせ、心を通わせることで、
孤独や寿命を受け入れ、世界(現実)に祝福されることによって、
自分たちが生かされていることに気づくからです。
11ハウスの出生前の月食は、
そうした高尚な境地に至るために、どこまで自分自身を尊重し、
また、他者を尊重するか、という命題を課題としています。
そして、この課題と向き合い続ける人には、
「類は友を呼ぶ」という法則の通りに、
共に悩み、共に喜びを分かち合える人と出会う機会に恵まれるでしょう。
出生前の月食 in 12ハウス
12ハウスの出生前の月食が象徴する課題は、「自己救済」です。
12ハウスの根本的な象意には「隔離」や「隔絶」があります。
12ハウスは、最も孤立した状況と精神状態を象徴する場所であるため、
いくら他者や周囲の人が介入しようとしても、
精神や無意識の領域である12ハウスの働きには届きません。
そのため、12ハウスに月が位置する時、また、満月や月食が起こる時、
心は物質性や現実から隔離され、孤独と葛藤に苛まれる体験をします。
トランジットの月が12ハウスに位置する時は一過性ですが、
ネイタルの月やプログレスの月が12ハウスに位置している場合は、
長期的・中期的な影響を持つため、
苦痛や混乱、自己不信などが内面に渦巻いて、外界との接触を持つ気力が湧きません。
12ハウスは6ハウスとともに、拘束的・強制的な運命の流れが滞留する場所です。
アヴァージョンであるこれらの2つのハウスで起こる満月・月食は、
他のどのハウスのペアで起こる満月・月食に比べて、
自己内面との対峙が非常に強い強制力で促されることになります。
それも、孤独や孤立した状態で自分自身と向き合いながら、
外界の刺激や影響を受けることになるので、
最も辛い心境を経験することになるのです。
そのため、12ハウスの出生前の月食は、
どのような状態の自分であっても、どのような感情に塗れていても、
自分だけは自分の味方で居続けることが重要となり、
「自分が自分の救世主であり続けること」が課題となります。
12ハウスの月は、自暴自棄や自己破壊の衝動が強まります。
12ハウスのハウスルーラーが金星であることもあってか、
心(月)が求める喜びを自分に与えようとする時、
外界からは遮断・隔絶された状態では、
「幻想」や「妄想」といった非現実的な世界や感性に傾倒しがちになります。
金星は「月に成り代わろうとする」天体と言われていますが、
月が闇の世界の女王から引きずり降ろされても、
太陽を支える役割を金星は果たすことができません。
天体の年齢領域で言えば、金星は思春期の時期に対応し、
この時期は、何をしても許されると同時に、実現できることが限られています。
月は幼少期(0~7歳まで)の世界観を象徴しますが、
幼い子(月)と知性が働く子(金星)では、後者の方が危なっかしいと言えます。
なぜなら、知性が働くとは言っても
、身体的にも精神的にも、そして、社会的にも未発達・未熟な状態では、
楽しみに興じることに何のリスクも恐れも抱かないからです。
その点、幼い子には、親の養育と監視が付きますので、
外界を冒険する規模は極端に狭くなります。
このように、金星と月では、純粋さや好奇心、目の付け所が異なります。
更に、12ハウスでジョイとなる天体が土星であることで、
アヴァージョンの12ハウスは拘束的な状況や状態が与えられます。
12ハウスの満月・月食は、6ハウスの太陽に照らされることで起こりますが、
非物質的・非現実的な働きが通う場所(12ハウス)に、
集団や組織の中で拘束される場所(6ハウス)から光が差し込む構図・対極軸という風に表現することができます。
人生にこの構図・対極軸を当てはめますと、
「囚われの身」や「依り代」のように、時間と空間を無視した形で、
常に何らかの強制力を受けている状態が平常となります。
12ハウスは、4ハウス以上に暗く、深く、そして、不吉な場所です。
ただ、囚われる身や拘束される体験があるからこその、
自分自身を体験する、という魂のシナリオ・計画があるとし、
その物語に緩急や起承転結があるとするならば、
究極的な自己受容は、12ハウスにおける「自己救済」です。
そして、12ハウスの出生前の月食は、
自己救済を通じて得た経験を、限定的・閉鎖的な環境と条件において、
同じ悩みや苦しみ、受難や逆行に苛まれる人の希望に転換させることを、灯台の光としています。
本講座では、すべての人の人生とホロスコープは、
最善の仕組みと法則に則った計画に従って、
運命の流れが決められている、と定義しています。
もちろん、不自由な状態よりも、自由な方がいいですし、
波乱万丈よりも平穏無事の方がどんなに喜ばしいでしょうか。
ただ、私たちが自分自身を受け入れ、人生を生きようと自分自身と誓いを立てる時、
あらゆる状況や条件は、「設定」や「演出」という仕掛けになります。
「この世には自分以外の人がいない」という表現がありますが、
これは、捉え方を変えれば真実です。
私たちは自分の身体や脳、心から出ることができず、
他の人と同じ場所に居ながら、同じ時間に居合わせながら、別の世界を見ています。
「認識」が人間の個性を決め、多様な個性を成立させているわけですから、
12ハウスの出生前の月食を持つ人の人生もまた、
その人のために用意された人生と、運命の流れがあって然るべきなのです。
自分自身を救済するために、俗世的な方法や根性論が役に立たないからこそ、
12ハウスは精神と無意識、魂などに意識を向けます。
自己救済をすると決める人は、
その決意という約束を自分自身と交わし、守り続けることで、
人生をその人の魂が望む形で発展させていき、
その成長・発展のプロセスは、全体性(宇宙意志)に確かに貢献することを忘れないでください。
以下が、12ハウスで起こる出生前の月食の代表的な要素のまとめです。
- 目立たない場所に閉じ込められる気持ちや感覚から逃れたくなる意識を払拭することができない
- 秘密や苦悩、他言できない事柄が舞い込んできやすい
- 6ハウスの結果を受け取り、昇華することで成長する
- 裏や影で人の役に立つ
- 表に出ることや活躍することを阻む強制力がついて回る
- 霊媒体質や過敏体質により、エネルギーの消費を抑えることが課題となる
- 自我意識を手放したい衝動に駆られるような出来事や状況に遭いやすい
- 陰徳を積みながら、確実に恩恵が返ってくる
- 形の無い無形の学びや導きを頼りに、自分自身を支え続ける必要がある
- 集団的無意識との繋がりから、真我や超意識に繋がろうとし、物質性や現実性が希薄になりやすい
- 病院、刑務所、修道院などの特定の場所に限らない、孤立した状況や状態、不安定な精神状態、エネルギーの乱高下
- 目に見えない働きが収束する領域に繋がりやすく、自分自身の中で境界線や枠を持つことが重要となる
12ハウスの出生前の月食は、最も耐えがたい課題を与えると言っても過言ではありません。
なぜなら、自己救済は、他者の直接的な介入や干渉が邪魔になるからです。
助け舟を出す側も、見守り、待ち続けるという課題や受難を経験しますが、
当事者として苦痛を受けることはないため、
どちらが辛いかと言えば、状況的に厄介事の渦中に囚われ、
突破口を得ることができず、状況に打ちのめされている側であることは間違いありません。
ただ、このような場合でも
、「見守る側」は、「見守ること」を「見守られる側」から許可されていて、
「見守られる側」もまた、「見守る側」によって、
「見守られること」を許可されている、という意味では、
相補的・補完的な関係性にあることは変わりません。
立場や役割が異なっていても、同じ共通の体験を互いが成立させている、という意味では、
どのハウスに出生前の月食が位置していても、
必ず誰かのテーマを成立させている、という貢献的な立場があるのです。
12ハウスは、1ハウスから始まった自我意識の発展・成長が、11ハウスで完了し、
次第に形や意味を失って、自我意識が12ハウスという時間と空間が消失した領域に至ります。
また、12ハウスは、1ハウスへと昇っていく最も低い(深い)場所でもあります。
本講座では、輪廻転生やカルマ、生まれ変わりなどを表立っては扱いませんが、
非物質的な世界において、「今の私」が記憶をリセットし、
時代や場所を変えて生まれ変わる、というような概念は取り上げることは控えています。
それは「過去世」や「前世」といった、
繋がりや影響があるように思われている事柄においても同様で、
「今の私」ではない存在を同一視しないことで、
現世という現実を捉えることが重要だと考えるからです。
とはいえ、占星術は、非物質的な世界や神秘的な法則などに精通している分野ですから、
カルマや輪廻転生、生まれ変わり、過去世や前世などに対する概念や認識は多分にあります。
筆者としては、明確な答えがないままに、誰かの言葉をそのまま拝借して、
持論のように解説に用いることを控えていることを予め御承知いただければ幸いです。
人は誰もが自分だけの認識によって、自分の世界(人生・現実)を生きています。
その世界の在り様は、
その人のホロスコープに描かれている要素が複雑に絡み合いながら、表面化することもあれば、
一生をかけても解読できない秘密や謎で伏せられ続ける場合もあるでしょう。
12ハウスの出生前の月食は、
そのような不可思議で、不条理さが解明されない中で、
それでも、生命が与えられているからには、自分自身には救済する価値があり、
自己救済を進めていく中で、多くの導きと奇跡を体験することが課題であり、
自己救済をすることで得られる感動体験であることを示しています。
ですから、どんなに苦しくても、
「自分だけが辛いわけじゃない」という言葉で自分を追い詰めることは止めて、
自分という小宇宙を救うことに努める人生は、
自己救済という愛の体験の根幹のテーマであり、課題であると、ご自分を褒めてください。
あなたの自己救済に懸ける労力とエネルギー、そして時間は、
あなたの月は太陽を慰め、包み込み、世界の創造活動に貢献しているのですから。
出生前の日食と月食が起きるハウスは、運命のテーマと課題を教える?!
今回の記事は、出生前の日食と月食について、
ハウスという現実的、且つ、客観的な出来事や象徴として、とても濃密な内容を解説させていただきました。
インターネットを探しても、
1つひとつのハウスについての出生前の日食と月食に関する解釈や見解を多く見つけることはできません。
今回の記事は、筆者の見解と世界観が多分に反映されていますが、
あなたの知りたかったことや知らなかったことが見つかることを念頭に解説させていただきました。
出生前の日食と月食は、母胎から離れる前に受ける強大な影響と象徴を持ち、
出産・誕生後から、一生涯を懸けて追い求める、または、達成しようとするテーマと課題です。
言い方を変えるならば、
バーテックスとアンチ・バーテックスを超えた、「魂が用意した人生から迫られるテーマと課題」です。
何気なく過ごせる日々(時間)もあれば、
激動の変化や転機に押し流されるように、
心と時間を忘れるように、慌ただしく過ごす時もあるでしょうし、
何もできない無気力状態の時や、
望んでもいないのに表舞台に追い立てられるような時もあるでしょう。
どんな状況であっても、どんな立場であっても、
必ず、後で意味や価値をつけることができますし、
一度自分自身を肯定することができたなら、
新しい困難や受難が巡って来ても、
「自分にとっての最善の解釈をする」という選択をし続けることで、
私たちは自分自身を守り通すことがでいます。
「後で」というところがミソなのですが、
予め何が起こるかを決めつけたとしても、人生は何が起こるかは分かりません。
ただ、占星術は、「人生が自分に何を求め、魂の望みを叶えるか」ということに対して、
自我意識の自分に対して、自分にしか分からない、
また、納得できないような閃きや知恵を与えてくれます。
出生前の日食と月食には、
自然の摂理の流れの中で、一瞬一瞬に特異点が打たれ、
その点に魂が計画をスタートさせることで、
全体性の循環という規模を成り立たせる、という大きな背景があることを知り、
人生を俯瞰して捉えることで、
近視眼的な視野を広げ、わずかでも安らぎと余裕が生まれてきます。
私たちはどこまでいっても、
「自分を知りたい」という根本的な好奇心を捨てることはできません。
それならば、気になったその瞬間から、自分を知ろうと、
自分を体験するための材料を集め始め、
点と点を繋げ合わせながら、意欲的に人生という謎解きに取り組んだ方が、
長くも短い人生を大いに堪能することができるはずです。
出生前の日食と月食は、あなたがあなたを体験するための、源流となる運命を教えてくれます。
今回は非常に長く、濃い内容となりましたが、楽しんでいただけたでしょうか?
今回の記事は、ハウス別の解説に留まりましたが、
次回はサイン別の出生前の日食と月食が示す運命の流れを、エネルギーや意識の観点から解説させていただきます。
今回も、最後までお読みいただき、誠にありがとうございました!
次の「出生前の日食と月食その3:サインで知るあなたの運命とは?!」の解説記事でお会いしましょう!
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