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マインドフルネスをやってはいけない人がいる?危険性・悪影響・デメリットについて解説

マインドフルネスをやってはいけない人がいる?危険性・悪影響・デメリットについて解説

ビジネスにおける能力開発や、精神疾患の治療などといった分野、そして、ライフスタイルとして、マインドフルネスは、世間に普及するようになりました。瞑想を含めたプログラムの効果を実感している方々も、増えています。

しかし、いまだに『マインドフルネスは怪しい』という見方もあります。

また、瞑想そのものにも、非科学的なイメージがつきまとっています。瞑想をすることによる副作用についても、心配されています。

もちろん、欧米式のマインドフルネスが、わが国に輸入されてから、それほど長い歴史があるわけではありません。信用できないと思われるのも、当然だと思います。

しかし、その一方で、禅寺では、それとまったく同じ瞑想法や態度が、数百年にわたって実践されてきたことも事実です。

この文章では、マインドフルネスはほんとうに危険なのか、ということについて、できるだけ偏見のない情報をもとに、その誤解を解いていきたいと思います。

マインドフルネスは宗教か

マインドフルネスでは、心を安定させて、毎日の生活に気づきをもたらすために、瞑想を推奨しています。

しかし、世間では『マインドフルネス=瞑想』という誤解されたイメージが、ひとり歩きしてしまっていることも事実です。そのため、それが、怪しい宗教のようなものだ、という固定概念をもっている方々がいます。

確かに、マインドフルネスの起源となっているのは、仏教が伝えてきた、禅の瞑想法です。心の迷いをなくすための修行として、紀元前5世紀頃、インドで仏教の開祖となった、ブッダが確立した瞑想が、東南アジアの各地に伝えられながら、受け継がれてきたのです。

しかし、たとえマインドフルネスが瞑想を利用しているとしても、マインドフルネスと、宗教を、分けて考えている研究者や精神科医は多いです。

おそらく、瞑想にネガティブなイメージがつきまとっている理由の一つは、カルトやマインド・コントロールを連想させるためだと思われます。修行法を、カルト的な宗教団体が悪用してしまったような、負の歴史もあります。『マインドフルネス』という語の語感から『マインド・コントロール』を連想する方々も、ほんとうにいるようです。

しかし、マインドフルネスのプログラムでは、それを実践する方々に布教活動をさせるようなことは、ありません。瞑想に集中することを口実として、無理やり、世間とのかかわりを断たせるようなことも、しません。万が一、そのようなことをさせるような団体に遭遇したならば、その団体を信じないほうがよいです。

マインドフルネスの目的は、日常生活のあらゆることに集中力をもって臨むようになることです。自己の心や、周囲のことにたいして、今この瞬間の体験に気づき、ありのままに受け入れる、という生き方をすることができるようになることです。

それが禅とのかかわりがあることは事実ですけれども、現代では、むしろ、信仰とは関係なく、ビジネスや、精神医療で瞑想を活用しようとする傾向のほうが強いです。

だから、基本的に、教義などといったことは気にしなくてもよいのです。毎日のスケジュールに瞑想を組み込むからといって、熱心な信仰をもつような必要はありません。

また、現代では、瞑想の効果が、心理学や神経科学などといった分野で、証明されるようになってきています。コンピューターを使った、脳の画像診断によって、瞑想が脳にもたらすポジティブな効果がわかっています。神経科学の見地では、マインドフルネスの実践は、大脳の注意力を高める部位である、前部帯状回皮質(ACC)を活性化させます。感情のコントロールにかかわる前頭前野や、自己を一歩引いたかかわり方で捉える能力(脱中心化)にかかわる部位にもよい影響を与えることなども、実験によって証明されました。

また、雑念や空想を統括する神経ネットワークである、デフォルトモード・ネットワーク(DMN)の活動が、マインドフルネスの実践によって統合されます。この診断結果は、マインドフルネスを継続すれば、雑念が減る、ということを意味しています。

そして、脳は、訓練をすることによって、その構造そのものがポジティブな方向に変化します。このことを、脳の可塑性とよびます。マインドフルネスの実践を継続することができるようになれば、記憶力にかかわる部位である、海馬が大きくなることがわかっています。

これらの検証結果が示しているとおり、すでに、瞑想という方法そのものは、非科学的なものではなくなっているのです。脳の活動については、まだわかっていないことが多いといわれているため、今後の研究しだいでは、これまで指摘されていなかったような瞑想の効果がわかる可能性もあります。

『東洋の宗教で伝えられてきた瞑想が、実際には、科学的にも理にかなった方法だった』ということが、事実なのです。

禅病(魔境)に陥る危険性はあるか

瞑想にともなうリスクとして『魔境』が挙げられることがあります。

『魔境』は『禅病』とよばれることもあります。『禅病』という名前のとおり、間違った瞑想のやり方を実践してしまうことから発生する症状です。心理学的に言えば『精神疾患』ということとなります。それは、催眠に似たようなトランス状態と説明されることもあります。

たとえば、禅だけではなく、絵画の世界でも有名な、白隠という禅僧がいました。白隠は『禅病』にかかったことがありました。その症状は、現代でいうノイローゼのようなものだった、という人もいます。

しかし、あるとき、彼は、禅病を治すための、2つの瞑想法を伝えられました。第一の方法は『軟酥の法』とよばれています。この瞑想法は、自分の頭の上に、卵くらいの大きさの、良い香りがする金色のクリームがあるというイメージをしてから、そのクリームが頭の上から身体全体に浸透していく様子を想像する、というものです。

そして、第二の方法は『内観法』というものです。マインドフルネスでは『ボディー・スキャン』とよばれています。この方法では、左足の指から順番に、足の甲、かかと、足首、脛、ひざ、脚といった身体の各部位に注意を向けます。右足も、同じ順番で注意を向けたあとは、さらに、腰、胴体、背中、胸、肩、両腕、首、顔へ、続けておこないます。

これら方法を実践するようになったあと、3年たたないくらいの期間で、白隠の精神状態は改善した、といわれています。

『軟酥の法』には、今のところ、科学的なデータや根拠がありませんけれども『ボディー・スキャン』の効果は、すでに証明済みです。マインドフルネスの著名な研究者であった、ジョン・カバットジンは、精神疾患に罹患した患者に『ボディー・スキャン』を実践させて、その効果があることを実証しています。この実践によって、思考から離れて、普段は意識していないような、身体からのメッセージを受け取ることができるようになります。

そして、その結果として、身体の全体感を取り戻すことができるのです。
もともと、心理学におけるマインドフルネスは、精神疾患の治療を目的としていました。カバットジンが仏教から学んだ瞑想を、治療プログラムに取り入れたことが、欧米式のマインドフルネスのもととなっています。

だから、禅寺や、マインドフルネスの専門家が推奨しているような、正しい方法で瞑想をおこなっているならば、禅病にかかるような心配はありません。

マインドフルネスを教える立場の方々は、おのおのの生活にマインドフルネスを取り入れている場合が多いです。そのため、瞑想によって得られる感覚的なことについても、彼らは、熟知しています。

スリランカ生まれの、バンテ・グナラタナという僧侶は、マインドフルネス瞑想では魔境に落ちるようなことはない、と断定しています。正統なマインドフルネスのやり方そのものは、精神に悪影響をもたらすようなものではありません。いわんや、ビジネスに携わる方々が能力開発として瞑想をする場合には、もともと、大きな精神的問題はないのですから、心配は無用です。

精神疾患を改善する瞑想

マインドフルネスが、うつ病などといった精神疾患を改善する効果について、もう少し、詳しく述べることとします。

現代のわが国では、うつ病を発症する方々が増え続けていることが、問題視されてきました。

行動療法とマインドフルネスを組み合わせた治療プログラムは、カバットジンが確立した『マインドフルネスストレス低減法(MBSR)』のほかにも、ツインデル・シーガルや、マーク・ウィリアムズなどといった心理学者たちが、研究してきました。患者向けに、医療のためのマインドフルネスは、日々、見直されています。

精神疾患から回復に向かうようにするためのマインドフルネスを、臨床マインドフルネスとよびます。その応用範囲は、うつ病や統合失調症、不安障害といった精神疾患だけではなく、疼痛や、薬物依存の再発を予防するために適用されることもあります。

臨床の経験や研究をつうじて、実践面でも、改善がおこなわれています。たとえば、臨床に携わる研究者のあいだでは、『MBSRのプログラムは、患者が時間に余裕がない場合や、体力的に無理がある場合には不適切なのではないか』という旨の議論がなされています。医療に利用できる瞑想プログラムのために、一人ひとりの患者に合ったプログラムを組むことが、臨床医にも求められているのです。

具体的な臨床マインドフルネスの効果として、注目するべき事実は、海馬が大きくなる、ということです。

なぜなら、海馬によい影響を与えるマインドフルネスは、うつ病を予防したり、それらの症状を、原因から改善したりする効果があるといえるからです。

大きなストレスを受けた人の脳は、海馬が萎縮してしまいます。海馬の萎縮が、うつ病など精神疾患の原因となります。瞑想を続けるだけで、萎縮していた海馬が回復します。そして、うつ病が改善するのです。抗うつ剤よりも、瞑想の効果のほうが回復効果がある、というケースも報告されているほどです。

また、脳のストレスを感じる部位にも、瞑想が効果をおよぼします。脳の中では、扁桃体が、ストレスを受け取る部位です。ここは、不安障害とかかわっています。扁桃体がストレスによって肥大すると、不安障害の原因となりますけれども、反対に、マインドフルネスの継続には、扁桃体が小さくなる効果があります。そうなれば、自然に、過剰なストレスに悩まされるようなことが減ります。

臨床マインドフルネスの効果が認められていない精神疾患もあります。

しかし、基本的には、マインドフルネスをやってはいけない人というのは、いません。いきなり無理なプログラムを組んで実践することは逆効果ですけれども『坐禅を続けることができるようになったならば、つぎは、ボディー・スキャンをやってみる』というふうに、できることから段階を追って実践してみることが大切です。

また、先ほども述べたとおり、万が一、瞑想による悪影響が出たならば、それは、やり方が正しくないためです。とくに、精神疾患を発症している方々の場合は、セラピストと話し合いながら実践することが原則です。

患者の心を回復させることを目的とした、臨床マインドフルネスでは、もちろん、セラピストによる誘導が必須とされています。もしも、不安で悩んでいたり、感情のコントロールがうまくできなくて悩んでいて、マインドフルネスを試してみたいと考えておられるならば、気軽に相談してみるとよいです。
セラピストは、クライアントに合わせたやり方を提案してくれます。

まとめ

マインドフルネス瞑想は、非科学的なものではなく、むしろ、科学的な裏付けがある、脳の訓練法です。

また、瞑想だけがマインドフルネスではありません。その目的は、日常生活のあらゆることにオープンに注意を向けて、ありのままを受け入れることです。そして、人間としての全体性を取り戻すことです。

だから、瞑想は、毎日15〜45分くらい、長くても1時間くらい実践すれば、事足ります。もしも、時間の都合などによって、瞑想をすることができない日があったとしても、その日のうちに、一つのことに集中したことがあるならば、それでよいのです。

個人的に瞑想を実践するだけでも、効果を実感している方々は多いです。

しかし、それでも、いまいち実感できなかったり、あるいは『自分のやり方が正しくないのではないか』と思うことがあれば、瞑想会や、講座を探してみるとよいです。近年は、オンライン瞑想会が増えています。そのため、初心者でも気軽に、誘導型のマインドフルネス瞑想を実践しやすくなっています。インターネットのレビューなどを確認しながら探せば、信頼の置ける講師を見つけやすくなります。

なによりも、結論としては、正しいマインドフルネスの知識や、正しい瞑想法を身につければ無難だ、ということです。もしも、効果に疑問があるならば、一度、体験してみてから、その後も続けるか否かを決めてもよいと思います。

kunitada
執筆者

『文化的なことを記事にする』という目的をもって、ライターをしています。2021年に、マインドフルネススペシャリスト資格を取得。その時期のご縁から、マインドフルネスや心理学について執筆する機会をいただくこととなりました。ふだんは、美術や文学についての文章も書いています。

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