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母乳を長く飲んだ子の特徴!メリット・デメリット

母乳を長く飲んだ子の特徴!メリット・デメリット

母乳育児は赤ちゃんにとってもお母さんにとっても、大変素晴らしい経験です。実際に、WHO(世界保健機関)では、2歳以上になるまでは食事で栄養を摂取しながら母乳を続けることを推奨しています。

しかし、母乳をいつまであげるべきなのか、長く飲むことは良いことなのか、悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
こちらの記事では、母乳を長く飲んだ子の特徴や卒乳時期について解説します。

母乳育児の長期化に関する最新の研究

母乳育児の長期化に関する最新の研究

上述したように、母乳育児については、WHOが2歳以上になるまでは母乳を継続することを推奨していたり、一般的に卒乳は1歳6カ月ごろが目安だといわれていたりします。

実際に、研究によると母乳を飲んでいる子のうち、42%は1歳6カ月以降も授乳を継続していたそうです。さらに自律授乳(​​赤ちゃんが母乳を飲みたいときに飲ませる)においては、決まった時間に規則的に授乳するお母さんが4割、不規則に授乳するお母さんが6割でした。
前者は空腹のリズムを形成し、食事量を増加させることに影響したため、自然な卒乳に向かいやすいことが分かっています。

一方で後者は、その後も母乳を継続するケースが多いようです。さらに、不規則に授乳することは小食の原因になるとも考えられています1

不規則な授乳は小食により食経験を浅くしてしまうため、自然な卒乳が難しくなり、母乳を継続し、長期化しやすくなるといえるでしょう。

母乳育児の長期化に関する専門家の見解

母乳育児の長期化に関する専門家の見解

母乳育児を長く続けるメリットは、赤ちゃんとお母さん双方にあります。しかし、一方でデメリットもあります。

赤ちゃんにとってのメリット
  • 腸内の善玉菌を増加させ、悪玉菌が定着しにくくなる
  • 感染症やアレルギーにかかりにくくなり、重症化しにくくなる
  • 口まわりの筋肉や舌、あごが発達する
  • 具合が悪く離乳食を食べてくれないときも、母乳であれば飲みやすい
  • お母さんとの絆が深まる
お母さんにとってのメリット

  • 乳がんや卵巣がん、子宮体がん、心臓病、糖尿病などの発症率が低下する
  • 授乳期間が長ければ長いほど、上記のリスクが低下する
  • 愛情ホルモン「オキシトシン」が分泌され、心身がリラックス状態になる
  • 赤ちゃんとの絆が深まる
  • 妊娠中に増加した体重が減少しやすくなる
  • 産後の体が元に戻るの早める

一方で、デメリットはこちらです。

  • ビタミンD不足になりやすい
  • 鉄分不足になりやすい

ビタミンDには、免疫力を高めたり、骨や歯などを丈夫にしたりする働きがあります。
母乳に含まれるビタミンDは低濃度のため、母乳のみで育った赤ちゃんはビタミンD不足になることがあります。
しかし、ビタミンDは適度な日光浴により補うことが可能です。また、離乳食が始まれば、食事によって補うこともできます。そのため、過度な心配は必要ないといえます。

一方、鉄分は貧血予防や神経発達のために重要な栄養素です。生後6カ月以上になると、胎児のときに貯蔵していた鉄分が減少するといわれています。また、母乳のに含まれる鉄分量は少ないため、母乳のみを飲んでいる場合は鉄分不足になりやすいと考えられています。

6カ月を過ぎたら離乳食で栄養を補ったり、鉄分が含まれている育児用ミルクを離乳食に活用したりしましょう2

母乳を長く飲んだ子の特徴

母乳を長く飲んだ子の特徴をご紹介します。

小児白血病のリスクが低い

小児白血病のリスクが低い

アメリカで行われた研究によると、母乳を6カ月以上与えられた赤ちゃんは、母乳を全く与えられない、または6カ月未満しか与えられなかった赤ちゃんより、小児白血病のリスクが少し低くなるそうです。

この研究における「母乳」は、母乳のみを与えるだけでなく、乳児用粉ミルクや牛乳などの補完的な食品や飲料と組み合わせて授乳することも含んでいます3

将来、糖尿病になるリスクが低い

母乳育児は、赤ちゃんが成長したときに肥満になったり、1型糖尿病・2型糖尿病を発症したりするリスクを低下させる効果もあると考えられています。
特に、1型糖尿病に関する研究の授乳期間は12カ月以上でした45

情緒が安定し、ストレスに強くなる

情緒が安定し、ストレスに強くなる

授乳をする度に、お母さんと赤ちゃんの体内の愛情ホルモン「オキシトシン」のレベルが上昇します。研究によると、授乳期間が長いほど、愛着の安定性が高くなり、乱れが少なくなるといわれています6

また、母乳育児は、親の離婚や別居に伴う「心理社会的ストレス」に対する回復力とも関連しているそうです。実際の研究によると、母乳育児を受けなかった被験者のグループには、親の離婚・別居による不安リスクの上昇が見られました。一方、母乳育児を受けた被験者のグループでは、その関連性がはるかに低かったようです7

これらの研究から、母乳を飲むことや長く継続することは、愛着や不安リスクに何らかの影響を及ぼすことが分かります。

愛着が安定することや不安リスクが低いことは、情緒が安定し、ストレスにうまく対処していけることにもつながるでしょう。

視覚が発達し、不正咬合のリスクも軽減される

視覚が発達し、不正咬合のリスクも軽減される

赤ちゃんの頃に母乳で育てられた子どもは、粉ミルクで育てられた子どもより、視覚が発達するといわれています。この研究では、母乳育児が立体視の成熟に効果をもたらすのではないかと結論づけています8

また、母乳育児は不正咬合(ふせいこうごう)のリスクを軽減させる効果もあるといわれています。
研究によると、母乳育児を受けたことがある被験者は、母乳育児を受けたことがない被験者よりも不正咬合を発症する可能性が低かったそうです。さらに、母乳のみで栄養を与えられていた被験者は、完全母乳育児をしていない被験者よりも不正咬合を発症するリスクが低いという結果も出ました。

そして、母乳育児の期間が長い被験者は、母乳育児が短い被験者よりも不正咬合を発症する可能性が低かったそうです9

知能が向上する

知能が向上する

1,312組以上の母子を対象にしたアメリカの研究では、授乳期間が長ければ長いほど、子どもの3歳と7歳時点での知能が向上する傾向があることが分かりました。

母乳による授乳期間が長いほど、3歳時点での受容言語能力がより高くなる傾向が見られました。しかし、母親のIQや在胎期間などの影響を除いて考えたところ、3歳・7歳時点での知能と言語能力の上昇は弱まったそうです。

また、母乳のみの授乳(授乳期間:〜6カ月)においては、授乳期間が長くなるほど知能・言語能力の上昇が見られました。
さらに、3歳時点の視覚運動能力についても授乳期間との関連性がややあることが分かりました1011

むし歯のリスクが上がる

むし歯のリスクが上がる

母乳を長く続けると、小児白血病や糖尿病などの病気リスクが低下したり、知能が向上したりと比較的良い特徴が多いように思えますが、デメリットも存在します。

それは、むし歯のリスクが上昇することです。

卒乳の時期とむし歯の発生に関する研究によると、卒乳の時期が遅くなるにつれ、むし歯の発生が増加するそうです。

これは授乳期間が長い(卒乳が遅れている)場合、砂糖を含むお菓子や飲料を与える回数が多いことや、就寝前〜夜中の授乳が多くなることが原因と考えられます。

寝ている間は唾液の量が減少して、虫歯の原因菌が増殖しやすくなります。

また、哺乳びんの不適切な使用によってできたむし歯を「哺乳びんう蝕(しょく)」といいます。哺乳びんで飲む場合、飲料が前歯に触れる時間が長くなることから、むし歯が発生しやすくなるといわれています。

哺乳びんう蝕を防ぐのに1番大切なのは、やはり歯磨きをすることですが、それ以外にもできるだけ早期にコップでの水分補給が可能になることが望ましいといえます。

さらに、乳歯が生え始めて離乳食が始まったら、哺乳びんの使用を避け、寝ながら授乳することは控えるのが良いでしょう12

母乳を長く飲むメリット・デメリット

ここまで、母乳を長く飲む子の特徴について解説してきました。
それを踏まえて、母乳を長く飲むメリットとデメリットについて簡単に解説します。

母乳を長く飲むメリット

病気リスクの低下や体重減少、スキンシップにより絆が深まるなどのメリットがあります。

  • 母乳は赤ちゃんに大切な栄養素
  • 母乳は免疫物質や抗菌物質を含むため、免疫力が上がる
  • 感染症やアレルギーにかかりにくくなり、重症化しにくくなる
  • 口腔発達や腸内環境、神経発達にも良い影響を与える
  • スキンシップにより、赤ちゃんとお母さんの絆が深まる
  • お母さんの体重減少につながる
  • お母さんが乳がんや卵巣がん、子宮体がん、心臓病、糖尿病などを発症する確率が低下する

母乳を長く飲むデメリット

睡眠不足などによるストレスやむし歯リスクの上昇、栄養バランスの偏りなどがデメリットといえます。

  • お母さんと赤ちゃん、両方に負担がかかることもある
  • 母乳育児は乳腺炎や乳頭痛などのトラブルに悩まされることもある
  • 夜間授乳による睡眠不足や生活習慣の乱れにより、ストレスがたまることもある
  • ビタミンDや鉄分などの栄養素が不足することがある
  • 離乳食の進み具合や食事の栄養バランスに注意する必要がある
  • 赤ちゃんがむし歯になりやすい
  • お母さん以外の人に赤ちゃんを預けにくいこともある

卒乳時期について

卒乳時期について

卒乳時期については、さまざまな目安があります。例えば、一般的には1歳6カ月頃といわれることが多いですが、WHO(世界保健機関)は2歳以上になるまでは食事で栄養を摂取しながら母乳を続けることを推奨していたり、4歳くらいが理想だという小児科もあったりします。

このような目安がある中で、なかなか卒乳ができないと焦ることもあるかもしれません。しかし、卒乳の時期には個人差があります。お母さんと赤ちゃんの心身の健康状態や、赤ちゃんの成長、食事の状況を考慮した上で、自分たちのペースで進めていくことが大切です。

なかなか卒乳ができない子でも、例えば保育園入園などのライフイベントに合わせて進めることもできます。

そもそも「卒乳」とは、赤ちゃんが自然に母乳・ミルクを必要としなくなることをいいます。自然な流れで卒乳をする子もいれば、お母さんが断乳を決意して進める場合もあるでしょう。
どちらにしても、急に母乳をやめるのではなく、段階的にやめていくのが良いといえます。

おわりに

母乳を長く飲んだ子の特徴や卒乳時期について解説しました。
さまざまな研究結果から、健康や知能への影響が見られることが分かりました。

「母乳をいつまで続けるべきなのか?」「長く続けても良いのか?」と悩んでいる方の参考になれば幸いです。

監修者
庄司 奈南
庄司 奈南
保育園栄養士10年目

その他の資格

専門学校を卒業してから、保育園栄養士として勤務しています。自身の妊娠を機に、食生活に関しても意識するようになり、プレママやお子さんのいるママさんの食に関するお悩みはもちろん、それ以外の方の食に関するお悩みを解決できるようにお役立ちできたらうれしいです。

  1. 日本食生活学会誌 第31巻 第4号 229-240(2021)[論文]「1歳6か月以降の児における不規則な母乳の与え方と継続状況および行動に関する検討」
  2. 母乳育児情報サイト ぼにゅ育「母乳育児を長期的に続けるメリットと懸念点とその対策法とは?【助産師が解説】
  3. National Library of Medicine「Never Versus Ever Feeding Human Milk and Childhood Leukemia: A Systematic Review [Internet]」
  4. National Library of Medicine「Infant feeding in relation to islet autoimmunity and type 1 diabetes in genetically susceptible children: the MIDIA Study」
  5. National Library of Medicine「Long-term consequences of breastfeeding on cholesterol, obesity, systolic blood pressure and type 2 diabetes: a systematic review and meta-analysis」
  6. National Library of Medicine「Breastfeeding and its relation to maternal sensitivity and infant attachment」
  7. National Library of Medicine「Breast feeding and resilience against psychosocial stress」
  8. National Library of Medicine「Infant nutrition and stereoacuity at age 4-6 y」
  9. National Library of Medicine「Effect of breastfeeding on malocclusions: a systematic review and meta-analysis」
  10. National Library of Medicine「Infant feeding and childhood cognition at ages 3 and 7 years: Effects of breastfeeding duration and exclusivity」
  11. MEDICAL TRIBUNE「母乳の授乳期間長いほど子供の知能向上か―米研究」
  12. 厚生労働省 e-ヘルスネット「卒乳時期とむし歯の関係」

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