今回、私たちはNPO法人神奈川県中途失聴・難聴者協会の森理事長にインタビューを行いました。
森理事長は、協会の運営に深く関与し、中途失聴・難聴者のためのコミュニケーション方法の学習や、協会の法人化、そして中途失聴・難聴者が抱える課題や困難について語ります。
森理事長の経験と視点から、中途失聴・難聴者が自分らしく生きるために必要なこと、そして社会全体がどのように理解と支援を深めるべきかについての洞察を得ることができます。
――森理事長はどのようにして協会の理事長になることになりましたか?
森理事長:
協会に入会して4年目の時に、まだNPO法人になる前でしたが当時の会長に推されました。
協会の運営のあり方に興味があって協会のことをいろいろ勉強しました。
――どのようにして手話や要約筆記などのコミュニケーション方法を学んできましたか?
森理事長:
手話は協会を知る前に町の手話講習会に一年間通ったのが初めてです。
聞こえが落ち始めて身体障害者手帳を取得した時です。
その時は完全失聴に備えるために早いうちにと始めました。
要約筆記は入会してから県の要約筆記者養成講習会で受講生と一緒に勉強しました。
要約筆記者は難聴者が育てるということを学びました。
協会の例会などでは団体派遣を、コロナワクチン接種ではすべて手書きの要約筆記派遣を利用しました。文字通訳なのでコミュニケーションの不安が全くありません。
利用することで居住地の要約筆記者の経験を積ませることも大事と思っています。
――協会の理事長としてどのような役割や責任を担っていますか?
森理事長:
協会を代表して国や県そして社会に対して手話を使う「ろう者」と違う中途失聴・難聴者や要約筆記のことを発信することです。
人口の1割は聞こえに困っているといわれています。
この方達に協会の存在を知っていただくために協会をPRしていくことです。
そして会員にとっても聞こえない、聞こえにくいことを忘れるオアシスのような居場所である協会を安定して運営維持していくことが大切と思っています。
――協会の法人化についてどう思いますか?
森理事長:
任意団体の時は会員同士の親睦など内輪の活動だけでした。
もっと社会に発信していくため、そして行政や関係団体に信頼される必要があると考えNPO法人化をしました。
NPO法人化してからは外向けのイベントなどを増やしたおかげで会員が増えてきました。
NPO効果と思っています。
そのほかに助成金や行政の支援も受けやすくなってきました。
――中途失聴・難聴者に対する社会的な認知や理解についてどう思いますか?
森理事長:
手話を使う、ろう者と違って中途失聴・難聴者は見えない障害者とも言われていてまだまだ理解や認知は遅れています。
また地方にいくと情報が少なく福祉サービスなどの格差が大きいです。
行政の中でも中途失聴・難聴者や要約筆記のことを知らない職員や議員がいるのが残念です。
――中途失聴・難聴者が抱える課題や困難についてどう思いますか?
森理事長:
特に、小さいころからの難聴者は聞こえにくいことからどうしても積極的に行動ができません。自分から聞こえない、聞こえにくいことを発信しないと周りから理解や配慮をしてくれません。
社会が中途失聴・難聴者のことを理解してもらえれば「聞こえにくい」と言いやすくなります。
その様な社会環境にしたいと思います。
また、最近は高齢化社会になり加齢性の難聴者が増えています。
難聴者は認知症になりやすいといわれていますので早めに適切な補聴器の使用をして社会参加を促進
させる必要があります。
――中途失聴・難聴者が自分らしく生きるために必要なことは何だと思いますか?
森理事長:
やはり、聞こえない、聞こえにくいことを周りに伝えて積極的に支援を受けることです。コミュニケーション支援を受ければ他のことは何でもできるので自分らしく生きられると考えています。
要は聞こえにくい障がいを受け入れることです。
そうすれば周りに「実は聞こえにくいです。紙に書いてもらえますか」などと言えると思います。
――最後にこのインタビューを見ている方にメッセージをお願いします
森理事長:
聞こえない、聞こえにくいこと以外は要約筆記などの情報保障支援があれば健聴者と同じように社会参加ができます。前向きに行動してほしいです。
健聴者の皆さんにお願いですが、聞こえにくいのかなと気づいたらさりげなく正面に向いて口を大きめに開けてゆっくり話してほしいです。
口を読み取ることも難聴者のコミュニケーション方法のひとつです。
マスクを外して話してくれるとうれしいです。
どうぞよろしくお願いいたします。
おわりに
今回のインタビューを通じて、森理事長の深い洞察と経験から学ぶことができました。
中途失聴・難聴者が直面する課題や困難、そしてそれらを乗り越えるための戦略についてのお言葉は、私たち全員がより包括的で理解のある社会を築くための重要なガイドとなります。
最後に、森理事長からのメッセージを心に留めて、私たちができる最善の支援を提供することを忘れないようにしましょう。
それは、聞こえにくいと感じたときには、相手に向かって口を大きく開けてゆっくり話すこと、そして可能であればマスクを外して話すことです。
これらの小さな行動が、中途失聴・難聴者のコミュニケーションを大いに助けることでしょう。
最後に、もし聞こえに困っている方がいらっしゃいましたら、特定非営利活動法人 神奈川県中途失聴・難聴者協会への入会をおすすめします。
協会は、聞こえに困っている方々が自分らしく生きるための支援を提供し、共感と理解のあるコミュニティを形成しています。
一人で悩むのではなく、協会とそのメンバーと共に、聞こえに困ることを乗り越えていきましょう。
公式URL:特定非営利活動法人 神奈川県中途失聴・難聴者協会
facebook : 神奈川県中途失聴・難聴者協会
主な活動場所(神奈川県聴覚障害者福祉センター)へのアクセス
住所:藤沢市藤沢933−2
(JR線・小田急線藤沢駅北口より徒歩10分)
コメント