大好きで結婚した相手だけど、一緒に暮らしているうちに段々こんな悩みを抱え始める女性がいます。
「夫の些細な言動がずっと気になってしまう…」
「夫とのコミュニケーションでものすごく気疲れする…」
なぜこんなに疲れるのか、気にする私がおかしいのだろうか。戸惑いや罪悪感で更にもやもやと悩んでしまう女性、結構いらっしゃるようです。もしかしたら、それは「HSP(ハイリー・センシティブ・パーソン/Highly Sensitive Person)」の特性を持っているからなのかもしれません。今回は、HSPの女性が持つ特性についてと、夫との関わりでなるべく疲れない方法などについてまとめてみました。
そもそもHSPとは
HSPとは、視覚や聴覚などの感覚が敏感で、環境や他人からの刺激を受けやすい特性を生まれつき持っている人のことです。一説では4人〜5人に1人はHSPの気質を持つと言われています。
HSPの気質を持たない人からしたら、「そんなの気にしすぎ」とか、「考えすぎだよ」と言うような些細なことでも、HSPの方は過敏に感じとり気になってしまいます。自分が意図せずとも自然に五感がフル活動しているので、どうしても受け取る情報が多くなり、それで疲れてしまうのです。
ただ、このアンテナの過敏性は裏を返せば、「共感性が高い」「感受性が強い」とも言えます。HSPの気質が役立つ場面もありますので、HSPだからといってそれが悪い特性だと、全てネガティブに捉える必要はありません。自分の特性をよく理解し、色々と敏感に感じとってしまいそうな場面では刺激を減らすなど、上手にアンテナを調整できるようになることが最も大切です。
HSPを表す4つの特性『DOES』
HSPの具体的な特性は「DOES(ダズ)」と呼ばれる4つの特性によって説明ができると言われています。4つを一つ一つ見ていきましょう。
1)深い処理(Depth of processing)
HSPの方は考えが複雑で、何事も思慮深く考えてから行動に移ります。
・一つのことを深く掘り下げて調べるのが得意で、豊富な知識を持つ
・相手がお世辞や建前で話しているとすぐに気がつく
・考え方が短絡的でその場のノリを重視するような関係・付き合いが苦手
2)刺激への過剰反応 (Overstimulation)
周囲の刺激に対し過敏に反応します。
・周りの人が見落とすような些細な変化でもストレスを感じる
・人ごみや騒音などで強いストレスを感しる
・相手の何気ないひと言で深く傷つき、長く引きずる
3)高い共感力 (Emotional reactivity and Empathy)
感情豊かで、他者に対しても感情移入しやすいです。
・周囲から『気が利く人』と評価されやすい
・近くで怒られている人がいると自分のことのように落ち着かない
・落ち込んでいる人やイライラしている人の雰囲気につられて自分も似たような気持になる
4)敏感な感覚 (Sensitivity to Subtleties)
五感が非常に敏感なので、周囲の音や光、においなど、外部環境の刺激が気になります。
・時計の秒針が気になって集中できない
・周りの人は気にならないレベルの匂いも察知する
・肌触りや手触りなどにこだわってしまう
HSPの特性は女性に多い?
統計学的な話として、HSPが女性に多いというデータはあまり無いようです。ただ、日本では女性に繊細な気配りや高い共感性を求める傾向が古くからあります。日本的な文化背景の影響もあり、周囲の刺激に対し感度を高めておかなければならない、常に周りに配慮できることが良いと言われながら育ってくる女性も多いでしょう。
そうなると、そもそもHSPの特性を持っている女性は、過敏性をうまく調整して和らげることよりも、もっと敏感に周囲の人の感情に配慮して行動しなくてはならない、そう学んでしまいます。特性とうまく付き合うことよりも、より鋭敏に研ぎ澄ますことが良しとされるような教育を受け、更に苦しむ女性は少なくないと思います。結婚してからも、夫の感情を敏感にキャッチして、夫の感情に合わせて行動するのが美徳、それが当たり前と思い込んでいると、毎日が非常に苦しくなります。ある種強迫的に夫の言動や表情が気になり、それで疲れ果ててしまう危険が高いです。
HSP妻が結婚生活でつまずきやすいこと
HSP妻は、結婚後に夫との間でどのようなストレスを抱えやすいのか、主なストレスをみていきましょう。
◼︎夫の不機嫌に振り回されてしまうストレス
HSP妻は、他人の感情を敏感に感じ取るため、夫がイライラしやすい人であると、そのイライラの影響をまともに受けてしまいます。夫の機嫌が気になりすぎて、家事が手につかなくなるほど過度なプレッシャーやストレスを感じてしまいます。中には、自分は無関係なのに「自分のせいで夫が不機嫌なのでは?」ともんもんと悩み疲れてしまう人もいます。
◼︎夫がいると家事や育児を完璧にできなくてストレス
HSP妻の頭の中には、完璧主義傾向を持つ方もいます。一つ一つの家事を完璧にこなしたい、子どものお世話はこうやってやらないと気が済まないなど、自分の中で納得するレベルまで完璧に遂行しようとします。そこで夫に手伝ってもらうことがあると、夫が行う家事が中途半端に見えたりがさつに見えたり、自分とは異なるやり方にイライラしてストレスを感じることがあります。ただ、それで期待通りではない夫に対しイライラが向かうというよりかは、夫にうまく伝えられない自分や、夫にこんなことでイライラしてしまう自分に対し責任を感じるのがHSPの特徴だといえます。私が気にしすぎなんだ、私の伝え方が悪いから理解してもらえないんだとか、こんな夫と結婚した自分の見る目がなかったなど、自己指定の言葉がたくさん浮かびやすいです。
◼︎自分ではコントロールできない刺激が多すぎてストレス
HSP妻は刺激に敏感です。自分1人で暮らしていて、ゆったりとマイペースに過ごせれば、刺激はある程度コントロールできます。しかし、結婚して夫と一緒に暮らし、またそこに子どもも誕生すると、自分ではコントロールできない刺激に日々さらされることになります。次から次へとイレギュラーなことが起きたり、予定も振り回されたりして、刺激があふれた生活に疲弊してしまいます。自分の過敏な特性をよく理解し、ゆっくり回復する時間があればまだ良いのですが、多くの場合それは不可能です。夫や子どもがいると生活スピードが速く、回復したと思ってもまたすぐ次の自分以外の家族が生み出す刺激に影響を強く受け、いつまでたっても回復する暇が与えてもらえません。
夫に特性を理解してもらうためにできること
夫にHSPの特性を理解してもらうことは容易ではありません。まず、夫がHSPの傾向を少しでも持っているかどうかにも大きく左右されます。HSPの特性を少しでも持っている方であれば、共感的に寄り添い、HSP妻の辛さを理解しようとしてくれるでしょう。しかし、問題は全くHSP的な気質を持たない夫の場合です。結婚当初は、繊細な自分とは全く異なるおおらかさや豪快さが魅力的にみえて結婚したかもしれません。ですが、生活を共にする中で、両者に歩み寄りがなければお互いの違いはストレスを生む原因になりかねません。HSPの特性を理解しにくい夫に対し、どうHSP妻の辛さを分かってもらうか、お悩み別に方法をまとめてみました。
◼︎夫の不機嫌に振り回されてしまうストレスへの対処法
夫と自分は別の人間、だという大前提をしっかり腹落ちさせる必要があります。
お勧めの考え方は、アドラー心理学の「課題の分離」です。
課題の分離とは、『他者が結果を引き受けることに対し勝手に介入し、一喜一憂しない』という考え方です。夫がイライラしているのは、妻のせいでもなんでもなく、妻にはどうすることもできない、と考えます。「そんな冷たい考え方できない!」と思うかもしれませんが、それが夫婦の健康のためなのです。結局、イライラしている夫は、イライラすると自分で決めてその言動を行っています。だから、妻にはどうすることもできない、夫が自然に機嫌を直せばよいのであって、妻は「夫の機嫌を直すために生きているのではない」のです。妻は自分が結果を引き受ける自分の課題に向き合い、必要な行動を精一杯行えばそれで問題ないのです。少し難しい考え方かもしれませんが、コツをつかんでくると本当に様々なストレスを手放すことができます。
お勧めの参考サイトを載せておきますので、良かったら参考にしてみてください。
【参考サイト】ライフハックアニメーション
アドラー心理学の課題の分離をもっと詳しく分かりやすく解説!
◼︎夫がいると家事や育児を完璧にできなくてストレスへの対処法
HSP妻側の問題として、些細なほころびも許せず、家事や育児を完璧にやらないと気が済まない!という傾向で悩まされている方は、夫との役割分担を明確にしてみるとよいでしょう。家事・育児において、自分が担当するもの、夫に任せるものに分けます。夫に任せて物に関しては、自分の基準で完璧を求めず、完璧じゃなくて自分が気になる部分はそっと後からフォローしましょう。夫に自分と同じ基準の完璧さを求めることで苦しむくらいであれば、最初から、(夫はきっと7割くらいの達成度で終わるだろう。気になる部分は私がやればいいや)と、いい意味でのあきらめの気持ちを持っておくと良いです。夫に自分と同じような繊細さを期待したり求めたりするのは苦しいので、不十分さに気づいたら自分がやればよい、そう割り切ってしまうと、夫婦ともに気持ちが楽になります。
◼︎自分ではコントロールできない刺激が多すぎてストレスへの対処法
日々、やることが多すぎて刺激の多さに圧倒され続けているHSP妻の方は、定期的にお休みをとることが大切です。長期休暇の際に、夫に子どもを預けて少し一人でリラックスする時間を長めにとったり、自分が安心できるスペースで刺激を最小限にしてほっと一息ついたり。そういったお休みが、日常のあわただしい喧噪で疲弊した心身を癒してくれます。そんな時間は持てない、と思った方は、たった5分間でもいいので、【閉眼安静】をしてみてください。椅子に座り、背もたれに身を任せ、目を閉じて、じっと5分間安静にするだけでOKです。アイマスクがある方はアイマスクを使用するとなお良いです。この5分間の閉眼安静は、脳の疲労回復に非常に効果的であることは研究によって分かっています。5分間であれば、毎日のちょっとした隙間時間で実行可能だと思います。ぜひ試してみてくださいね。
セルフチェックを使って互いの違いを受け入れよう
HSP妻の繊細さや過敏さを夫に理解してもらうことは簡単ではないかもしれません。ですが、諦めずにコミュニケーションをとることが、何より夫婦関係を安定されるためには大事なことです。自分で説明するのが苦手、という人は、検索するとさまざまなHSP度を測定するチェックリストがWEB上で公開されていますので、夫婦で一緒にチェックしてみると良いと思います。お互いの結果を見せ合えば、こんなにも感じ方や考え方が違うのだと、まずはお互いの違いを知ることになります。違いを知ることは、夫婦関係を安定させるために必要なプロセスです。ぜひ夫婦でチェックして、両者の違いを確認し、お互いの違いを受け入れていきましょう。
【参考サイト】
・HSP診断 簡単セルフチェック
https://d21.co.jp/news/event/hsp-self-check/question
・HSP診断テスト
https://hsptest.jp
・HSP自己診断テスト
https://www.gentosha.jp/article/16833
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