YOKU STUDIO による連載企画、SPIRITUAL REBIRTH PROJECT。
今回は、「カルマ 再生 -中編-」です!
前回は、近年とてもネガティブなイメージが付いている「カルマ」という言葉は、もともとシンプルな物理法則のような意味で使われていたことをお伝えしました。
結果として私たちの目の前に現れている現象には、必ず何らかの原因があるという、原因-結果の因果律。
その原則が、現世だけではなく、過去世や未来世という生まれ変わりの⻑いサイクルのなかで作用し続けるのだ、という考え方が、「カルマ」の根本です。
つまり、現世で私たちが直面する色々な出来事に作用している、現世というくくりを超えたあらゆる魂の記憶が、すべて「カルマ」だと言えるんです。
過去世における「善い行為」「悪い行為」が原因となって、現世における「幸せ」「不幸せ」が生まれるといったストーリーは、「カルマ」の部分的な理解にすぎません。
たとえば、「前世で人々のために働き徳を積んだから、今世ではお金持ちになれた」、あるいは「前世で悪事をたくさん働いたから、今世では病気がちだ」など…
しかし、私たちが普通イメージする「カルマ」って、ほとんどこのようなものですよね?
特に、病気や事故、辛い別れや痛い失敗などを引き起こす原因となるような、前世で犯した罪=「カルマ」だと思っている方は、かなり多いと思います。
今回は、「過去世の罪が現世に影響を与えているから、その罪ほろぼしをしなければならない」という、「贖罪」にフォーカスした「カルマ」のイメージが、これほどまで普及した背景に、歴史的に迫ります!
近代スピリチュアリズム的「カルマ」=宇宙の「摂理」
「カルマ」がそもそもインドの宗教・思想に由来する⾔葉だったことは前回お話した通りですが、近代ヨーロッパのスピリチュアリズムにおいても、「カルマ」はかなり重要な概念でした。
はじめに検討してみたいのは、「世界三⼤霊訓」の⼀つである、「シルバーバーチの霊訓」です。
シルバーバーチとは、1920 年頃から、イギリスの降霊会において活躍した⾼級霊のことです。
(かつて地上でレッド・インディアンだった霊だとよく誤解されているのですが、あくまでその霊的⾝体を中継点として⼈間に働きかけてきただけであって、実際にはもっと⾼次元の存在であったと考えられています。)
モーリス・ハーバネルを霊媒として伝えられた数多くのメッセージは、「霊訓」として書物にまとめられ、特に⽇本においては⾮常に⾼い⼈気を獲得しています。
シルバーバーチは、はっきりと「カルマ」という⾔葉は使っていません。
しかし、この宇宙を⽀配し、物理的にも霊的にも作⽤する⼤原則を、「神の摂理」、「⼤霊の摂理」と呼び、⾮常に重視しています。
摂理に逆らった⽣き⽅をする⼈は、⼀⼈の⼈間であろうと⼤勢の集団であろうと、⺠族であろうと国家であろうと、いつかはその代償を払わなければなりません。摂理の働きが完璧であることはいつも説いている通りです。その働きは⼈間の⽬には⾒えないかもしれませんが、原因と結果は常に連鎖しています。摂理がそのようになっているからです。何度も述べてきたことですが、それを改めて説くのは⼤霊の摂理がすべてだからです。
(A・W・オースティン編『霊的叡智の宝庫 シルバーバーチの教え(新版・上)』【電⼦書籍版】、近藤千雄訳、スピリチュアリズム普及会、2017 年、「六章 すべてを⽀配する神の摂理」より)
シルバー・バーチが重視する「摂理」とは、まさに原因-結果の因果律であり、「カルマ」の考え⽅とほぼイコールであることが分かると思います。
シルバーバーチは、私たちの⼈⽣の⼤きな⽬的は「霊的進化」だと説きます。宇宙を⽀配するこの「摂理」にのっとって⾏動できるようになることが「霊的進化」であり、そうすれば真の安らぎと幸福が得られるのだと。
つまり、私たちが現世において経験する様々な苦しみというのは、(過去、あるいは過去世において)この「摂理」に反したから⽣まれるものであり、それを償うことによって魂が成⻑できるのだと語るのです。
「カルマ」=霊的成⻑のための試練
このシルバーバーチの思想ですが、若⼲「スポ根」的にも感じます。(「苦労しなければ成⻑できないんだ!だからめげずにがんばれ!」というような…)
特に、「なぜ早死にしてしまう⼦供がいるのか?」という質問に対する回答には、その「スポ根」性がかなり明確に⽰されています。
早死にする⼦供たちは、(前世)で何か摂理に反したことをしているのです。それを償うには、そうした厳しい体験を通して⼤霊の戒めを学ぶしかないのです。(中略)
(同上、「⼗章 霊的進化の道を歩む神の⼦供たち」より)
苦悶と病苦と悲哀を体験した⼈間は、他⼈の苦しみに⼼を配る、⼤きな魂へと成⻑するようになります。やりたい放題の⼈⽣を送り、はかない幻を追い求めている魂は、いつかは真実に直⾯しなければならなくなります。安楽な⽇々を送っている⼈を⾒て羨ましがることはありません。その⾏く先には過酷な⼈⽣が待ち受けているのです。
地上界にあっても霊界にあっても⼈間は、ありとあらゆる体験を積まなければならないようになっています。いかなる体験にも必ず学ぶべき教訓があります。あらゆる体験を乗り越えて初めて本当の⾃我を確⽴し、魂の内奥の完全性に⾄ることが許されるようになるのです。
シルバーバーチは、⼈⽣におけるたくさんの試練を、「摂理」に反した罰として⽣じたものだ捉えながらも、そのような経験こそ、魂の成⻑に⽋かせないものだと語ります。
ここで強調されているのは、現世における物理的な幸せと、霊的な幸せとは全く別のものだということです。
ただ平穏にのほほんと⽣きている⼈よりも、⾟い出来事に直⾯し苦しんでいる⼈の⽅が、過去世や未来世を含めた「霊的進化」の過程から⾒ればより進んでいて、より「幸せ」なのだというのが、シルバーバーチのメッセージなのです。
このような、現実の苦しみは過去世の罪の償いであり、⼈間の魂の成⻑のために不可⽋な試練だとする考え⽅は、「守護霊 再⽣ -中編」でも紹介した、ウィリアム・ステイントン・モーゼス『霊訓』(1883)や、アラン・カルデック『霊の書』(1857)にも通じるものです。
つまり、イギリスを中⼼とした近代スピリチュアリズムにおいて中⼼的だったのは、霊的成⻑のための試練としての「カルマ」論だったと⾔えるのです。
「カルマ」=⾟い現実を受け⼊れるための⼿段
近代スピリチュアリズムにおいて、このような「カルマ」の捉え⽅が主流となり、多くの⼈々に受け⼊れられた背景として想定されるのは、やはり当時の社会状況だと思います。
近代というのは、資本主義が発展し、⼈々の⽣活も⼤きく変化していった時代です。第⼀次世界⼤戦、そして第⼆次世界⼤戦へと突き進んでいく、戦争の時代でもありました。
時代の潮流に押し流され、様々な不条理な出来事に直⾯するなかで―戦争というのは、その最たる例だと思いますが―、⼈々はそれでもなお前を向いて⽣きる必要があったはずです。
そんな時、現世での苦しみを、宇宙的な⼤原則としての「摂理」に結びつけながら、それを(もう変えることのできない)過去世の罪の償いであり、霊的成⻑のきっかけと考えなさいと説いた、スピリチュアリズムの教えというのは、現代とは⽐べ物にならないほどの強く、多くの⼈々の⼼に響いたのではないでしょうか?
「どうしてこんなに⾟い出来事が私に起こるのだろう?」と打ちひしがれた時、「それはかつて犯した罪を償うためだ」、あるいは「それは成⻑のための試練だ」という答えを与えてくれる教えは、たしかにその絶望を和らげるのに役⽴ちます。
⽣きる希望を失ってしまうほどの⾟い現実を、なんとかして受け⼊れる⼿段として有⽤だったからこそ、近代スピリチュアリズムにおける「贖罪」的「カルマ」のイメージがここまで普及し、現代にも影響を与え続けているように思います。
次回は、このような「贖罪」的カルマ⾔説とはテイストが異なる、未来思考の「カルマ」⾔説の系譜について、ルドルフ・シュタイナーを出発点として考えていきます!
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