YOKU STUDIO による連載企画、SPIRITUAL REBIRTH PROJECT。
「チャクラ 再生」シリーズ、第2弾です!
「チャクラ」といえば、身体の中心軸に沿って並ぶ、7色の光の玉。
では、そもそも「チャクラ」とは何で、どのような役割を持つものなのでしょうか?
今回はその歴史的背景を探りながら、「チャクラ」の意義について考えていきます。
古代インドにおける身体観
「チャクラ」はもともとサンスクリット語で「輪」を表す言葉です。
そこからも分かる通りインドに起源を持つ概念であり、紀元前のヨーガの聖典などにも、「チャクラ」に関する記述が見られます。
古代のインド医学においては、人間の身体を、「粗大身」、「微細身」、「原因身」という3層に区分しました。
通常私たちが感知できる肉体=「粗大身」。
肉体を包みこむように存在している身体層=「微細身」。
さらにその上の身体層=「原因身」。
このような形で区分されていたんですね。
そして、このそれぞれの身体層には、「プラーナ」と呼ばれる生命エネルギーが流れる脈絡系としての「ナディー(ナーディー)」が存在しているとされます。
「ナディ」は、脊柱の中心菅に沿うものと、その左右を交叉するように各身体の箇所に到達するものがあり、網目状に無数に存在していると考えられています。
その「ナディ」の中心点こそが、「チャクラ」なのです。
各身体層をつなぎ合わせる「チャクラ」
そして注目すべきは、この「チャクラ」に想定されている、重要な役割です。
「チャクラ」は、「粗大身」-「微細身」-「原因身」という各諸身体を繋ぐ結節点となって、「プラーナ」のやりとりを可能にするものなのです。
「微細身」や「原因身」は、私たちが普段意識していない、エネルギー的な身体層。しかし、肉体と密接に連結して存在しており、私たちの生にとって不可欠なものです。
だから、各身体層の内部においてエネルギーを循環させるだけではなくて、それぞれを横断するような形で、エネルギーのやりとりを円滑に行っていくことが重要になるのです。
超心理学者で、ヨガなどのインド思想に造詣の深い本山博氏は、以下のように述べています。
チャクラには、より高い次元のプラーナ(生気)を摂取し、これを物理的次元の生命力に転換下降せしめ、チャクラと連結しているナディ(気道)を通じてこれを身体全体に配分する働きと、逆に、プラナーヤーマ、ムドラー、チャクラへの精神集中、瞑想を通じて物理的次元の生命力(例えば、性力、精液等)をより高い次元のプラーナ(例えば微細身のプラーナ)に転換上昇せしめ、これを微細身のナディを通じて微細身の全体にいきわたらせる働きとを行うといわれている。
本山博「解説」(C・W・リードビーター『チャクラ』、本山博・湯浅泰雄訳、平河出版社、1978 年、153-190 頁)、176 頁。
ここで言う「プラナーヤーマ」、「ムドラー」というのは、ヨガの修行法。
(「プラナーヤーマ」は呼吸法、「ムドラー」は手や指で「印」というシンボルを作る方法です。)
つまり、ヨガの修行というのは、チャクラを経由して肉体のエネルギーを昇華し、より高次元の身体層に届ける役割を担っていたんですね。
そしてそれは同時に、「チャクラ」から高次元の身体層のエネルギーを取り入れる実践でもある。
ここに、ヨガにおいて「チャクラ」が非常に重視された理由があります。
つまり「チャクラ」というのは、古代インド思想において、まさに各身体層のエネルギー交換地点であり、生命維持装置のような役割を持っていたんですね。
宇宙との接点としての「チャクラ」
そして近代に入ると、古代インド思想が欧米圏に輸入されると、「チャクラ」という概念も全世界的に普及することになりました。
そのような運動のなかで、徐々にその定義も変化していきます。
「チャクラ」という考え方を欧米圏に紹介する上で重要な役割を果たしたのは、ジョン・ウッドラフ(筆名:アーサー・アヴァロン)の著書『蛇の力』(原題:The Serpent Power, 1918)、C・W・リードビーターの著書『チャクラ』(原題:The Chakras, 1927)などです。
神智学協会(「ハイアーセルフ 再生」でも取り上げた、H・P・ブラヴァツキーが創立した協会)の一員として活躍したリードビーター(1854-1934)は、実際にインドに渡ってヨーガや瞑想の修行をして知識を得、神智学の理論のもとにそれを再解釈しました。
『チャクラ』のなかで彼は、このように述べています。
チャクラ、つまり力の中枢とは、ある人の身体から他人の身体あるいは他の事物へとエネルギーが送られるときの連結点を成している。少しでも透視能力のある人ならば、エーテル的身体にそなわったチャクラを容易に見ることができる。それは円形で、表面が皿のように凹んで、渦巻状になっている。(中略)これら七つの輪はいつも回転していて、高次の世界(存在領域)から下って来る力が、各チャクラの開いた口へと流入している。この力は、(神智学でいう)太陽のロゴス Solar Logosの第二領域から流れ出てくる生命力のあらわれであって、われわれはそれを原初的な力(もとの力)とよんでいる。この力は、その性質からみて七種類に大別され、すべてのチャクラにおいてはたらいているものではあるが、ふつうそれぞれのチャクラでは、七種類の力の中のそれぞれ一つが最もつよく作用している。このエネルギーの流入がなければ、生理的肉体も生存できない。したがって力の中枢であるチャクラは、誰でも活動しているのであるが、その発達が十分でない人間の場合には、チャクラの活動は比較的にぶく、生存に必要な原初的エネルギーを辛うじて受け入れるに足りる渦ができているにすぎない。チャクラが発達してくると、チャクラは輝き出し、生命の光が脈打ちはじめ、巨大な量のエネルギーがチャクラを通って流れ込み、その結果、それまでになかった能力や可能性がひらけてくるようになるのである。
(同上 17-19 頁)
リードビーターはこの著書のなかで、インド思想における 3 つの身体層の区分を、神智学における身体層の区分(肉体-「エーテル体」-「アストラル体」-「メンタル体」-「コーザル体」)に重ね合わせていますが、特に「エーテル体」の位相における「チャクラ」について語っています。
ここで重要なのは、インド思想を神智学の体系に結びつけた彼が、各身体層を流れるエネルギーの起源として、「太陽のロゴス」を挙げていること。
それは、あらゆるエネルギーの発端としての宇宙そのもの、「ワンネス」と言い換えられるものです。
「チャクラ」を通して、そのような全ての根源とのエネルギーの交流を成し遂げることができれば、その人の「それまでになかった能力や可能性がひらけてくる」と彼は語るのです。
つまり、「チャクラ」の役割を生命維持装置のみに留めるのではなく、宇宙との一体化を獲得するための鍵として強調しているわけです。
このような彼の考え方が、20世紀後半のニューエイジ運動を経て発展した、人間の意識の次元上昇(宇宙との一体化)を目指す「アセンション」言説における、「チャクラ」の概念に、大きな影響を与えていると考えられます。
次回は、この「アセンション」言説における「チャクラ」の役割を深掘っていきます!どうぞお楽しみに。
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