YOKU STUDIOによる連載企画、SPIRITUAL REBIRTH PROJECT。
今回は、「輪廻転⽣ 再⽣」シリーズの番外編です!
前回は、YOKU STUDIOが再定義した現代版「輪廻転⽣」を、スピリチュアルだけではなく、哲学(現代思想)の領域からも考えてみよう!という⽬的のもと、フランスの哲学者ジャック・デリダが提唱した「散種」という概念を紹介しました。
「散種」とは、ある「記号」の意味伝達のモデルを⾔い表したもの。
ある「記号」に確定的な意味が内在していて、それが過去-現在-未来へと受け継がれていく、という⼀般的なイメージではなく、「記号」⾃体には意味はなく、それが様々に伝達され解釈されていく過程で、その都度その都度新たな意味が付与され、⽣成されていく、というモデルのことです。
「この記号はこういう意味である」というように、固定化された「正解」を過去に求めるのではなくて、「いまここ」における意味の⽣成変化としての「散種」の運動性を捉えていくのが、デリダが重視したことでした。
今回はこの「散種」のモデルを、記号の意味伝達のレベルにとどまらず、私たちの⽣死、そして「⽣まれ変わり」という、より実存的なレベルに結びつけて考えていきます!
アセンションした「輪廻転⽣」というのは、「いまここ」に⽣きる私が、時間・空間を超えた様々な他者と、「散種」的な「⽣まれ変わり」のネットワークで結びつくことだと思うのです。
他者が撒いた「種」を、いま現在を⽣きる私のなかで、新たに芽吹かせること。そして、いま現在を⽣きる私が撒いた「種」を、どこかの誰かが、新たに芽吹かせること。
その「散種」と芽吹きの連続こそ、アップデートされた「輪廻転⽣」の形なのではないでしょうか?
全15 回にわたってお届けしてきた⻑期シリーズ「輪廻転⽣ 再⽣」も、今回が最終回!
どうぞ最後まで楽しんでいただければ嬉しいです。
・「散種」のモデル=⽣/死の脱構築
前回の記事でお伝えしたように、「脱構築」を志向する哲学者・デリダにとって、「散種」のモデルは、とても重要でした。
なぜなら「散種」は、単に記号の伝達モデルというだけにとどまらない可能性を持つものだったからです。
もしそれを⼈間の実存のモデルとして捉えるならば、そこからは、⼈間の⽣死をめぐる新たな思考が⽴ち上がってくるのです。
私たちは、個の⾁体が死を迎えた時、その個⼈の⽣は終わるのだと、当たり前に思っていますよね。
そこには⼈間の「⽣」と「死」というものを、明確に切り分ける思考が働いています。
⾁体を持った現世での⽣活、そしてその終わりとしての死を区別すること、つまり⽣/死の⼆項対⽴を想定することは、私たちの想像⼒に染み付いており、古今東⻄の「輪廻転⽣」観のベースともなっていました。
だからこそ、現世での⽣活をある種あきらめて、⾁体なき魂となった先に、「より良い」死後の世界へと向かうことを夢⾒る⾔説が、数多く⽣まれたわけです。
けれど、もし、この⽣/死の区別を脱構築してみるとするならば、どうなるでしょうか?
つまり「個の⾁体の死=個⼈の⽣の終わり」という構図⾃体を疑い、⼈間には⽣/死の区別がないと考えてみるのです。
そんなことあるわけない!って思いますか?
しかし、「散種」のモデルを援⽤してみると、⽣/死の区分を乗り越えた⼈間の実存の可能性が⾒えてきます。
・「⽣き残り(⽣き延び)」とは?
ここで注⽬したいのは、デリダが語る「⽣き残り」という概念です。(「⽣き延び」と訳され
ることもあります)
デリダは、まさに彼⾃⾝が病魔と戦っていた晩年のインタビューにおいて、⼈間の⽣/死を脱構築した形として、この「⽣き残り」について語っています。
私は⽣き残りというこの主題系につねに関⼼を寄せてきました。⽣き残りの意味は、⽣きることおよび死ぬことに、付け加わるのではありません。⽣き残りは根源的です。すなわち⽣とは⽣き残りです。普通の意味で⽣き残ると⾔えば、⽣き続けるという意味ですが、それはまた、死の後に⽣きることでもあります。(中略)私の仕事を助けてくれたあらゆる概念、特に痕跡とか幽霊的なものの概念は、構造的で厳密に根源的な次元としての「⽣き残ること」とつながっていました。この次元は、⽣きることからも死ぬことからも、派⽣するのではありません。私が「根源的な喪」と呼ぶものも同様です。これは、いわゆる「現実の」死を待ちません。
(ジャック・デリダ『⽣きることを学ぶ、終に』、鵜飼哲訳、みすず書房、2005 年、24-25⾴)
ここで重要なのは、デリダが「⽣き残り」を、⽣きることあるいは死ぬことに付随することではなく、根源的なものだと考えていることです。
どういうことでしょうか。
デリダが考える「⽣き残り」とは、⼈間の⽣が、個⼈の⾁体や意識のコントロールを超えて伝播していくこと、つまり⽣が「散種」されていくことと、ほぼイコールだと捉えて問題ないでしょう。
それは、個⼈の⽣が、ある意味「記号」=「種」のように機能して、異なる時間・空間へと受け継がれていくことです。
たとえば、個⼈が⽇常⽣活のなかで発した⾔葉や⾏動は、その個⼈からはある種切り離された「記号」=「種」となって、⽬の前の他者に伝わり、その⼈の内⾯において解釈され、その都度新しい意味を持っていく、つまり、個⼈の有限性を逃れて⽣き続けていくわけです。
個⼈から発せられる「記号」=「種」⾃体に注⽬してみれば、それは、その個⼈の⾁体が⽣きているか死んでいるかに関わらず、別の宿主に辿り着きそこで新たに芽吹く運動を、常に繰り返すことができます。
デリダが「⽣き残り」を、⽣/死の区別を超えた根源的なものだと語る理由は、ここにあるのです。
具体的な例に引きつけて考えてみましょう。
たとえばあなたに、⼼からリスペクトする作家がいるとします。
彼は外国⼈だし、会ったこともない。そもそも、もうとっくの昔に亡くなっている。
だけど、彼の紡ぐ物語や、作り上げるキャラクターや、表現の⽅法がとても好き。
あなたがクリエイターであっても、そうでなくても、その作家の作品や⾔葉を⾃分なりに解釈し、毎⽇を⽣きる糧にしている…
この場合、その作家の蒔いた「記号」=「種」は、彼の有限の⾁体から切り離され、時間・空間を超えてあなたに伝わり、あなたの内⾯で芽を出したのだと⾔えます。
つまりその作家は、あなたを媒介にして「⽣き残っている」わけです。
このような「⽣き残り」が起きるのは、何も「作家と読者」というような限定的な関係だけ
ではありません。
⾝近な⼈物とのコミュニケーションのなかでも、常にこの運動は⽣じています。
それがすでに亡くなっている⼈物であっても、存命の⼈物であっても、ある他者から「種」を受け取り、それを⾃らの内⾯に保持し、⼤切にあたためているとすれば。
また逆に、あなたが作り上げた何かの成果物や、⽇常⽣活における⾔葉や振る舞いが「種」となり、⾝近な他者へ、あるいは⾒知らぬ他者へと届き、クリエイティブな発想の源や、⼼を勇気づけるエネルギーになるとすれば。
その他者とあなたは、お互いを媒介として、個⼈の有限性を超えて「⽣き残り」続けると⾔えるんです!
・「⽣まれ変わり」=個⼈を超えた「散種」のネットワーク
デリダは、この「⽣き残り」にこそ、⼈間が⽣きることの意義を⾒出しました。
デリダ研究者の宮﨑裕助⽒は、このような彼の思想は、個⼈の有限性を超えた⽣の可能性を⾒出すものだからこそ、「⽣の無条件な肯定」に他ならないのだと述べています。
デリダにとって⽣の肯定とは⽣き延びの肯定のことである。⽣き延びの構造として⽣をその死とともにまるごと肯定するのであるから、これはもはや死の哲学や「死に⾄らしめる⾔説」のようなものをかたちづくるわけではない。だからこそ「⽣の無条件な肯定」と⾔われているのである。この⽣は、たんに死の延期でも、⽣の延⻑でもなく、死そのものを潜り抜けることがあらかじめ組み込まれた⽣き延びの肯定の運動であることにおいて「あたうかぎり強烈な⽣」を享受すべきものにほかならない。
(宮崎裕助『ジャック・デリダ――死後の⽣を与える』、 岩波書店、2020 年、243 ⾴)
※筆者による註)ここでの「⽣き延び」は、「⽣き残り」と同義。
デリダが論じたのは、個⼈の有限性に紐づいた⽣/死の区別を脱構築した形で、時間・空間を超えて⼈と⼈とがつながり合い、お互いを媒介として「種」としての⽣が受け継がれていく構造でした。
たとえ⾁体が死を迎えたとしても、⼈は、他者とのつながり合いのなかで、⽂字通り、⽣き続ける。
そう考えると、この⼈⽣を精⼀杯⽣きることというのが、たくさんの「種」によって他者とつながり、「⽣死の区別を超えた⽣」を獲得することに、シームレスに結びついてくるんです。
これこそ、アセンション期にふさわしい「輪廻転⽣」の想像⼒だと⾔えるでしょう。
デリダが⽰した「散種」的な「⽣き残り」の運動性は、まさにYOKU STUDIOが考える「⽣まれ変わり」のネットワークそのものだと思うのです。
アセンション期における私たちは、現世を楽しみながら⽣き抜くことを通して、時間・空間を超えた「散種」のネットワークにつながり、個⼈の有限性を超えた他者とのつながりのなかで⽣き続けることができる。
だからこそ、「いまここ」に⽣きながらにして、常に⽣まれ変わることができる、のではないでしょうか?
スピリチュアル+哲学で、新たな「輪廻転⽣」の定義を考えた今回の試み、いかがだったでしょうか。
⻑らくお届けしてきた「輪廻転⽣ 再⽣」シリーズも、今回で終了。
次回からは、「スターシード 再⽣」シリーズが始まります!どうぞお楽しみに!
<スピリチュアル&カウンセリング YOKU STUDIO 東京 高円寺店>
【住所】〒166-0003 東京都杉並区高円寺南2丁目53−4 アークビル高円寺401
【アクセス】
・JR中央・総武線「高円寺」駅南口から徒歩6分
・東京メトロ丸ノ内線「東高円寺」駅北口から徒歩8分
【電話番号】070-3284-2348
【営業時間】10:00〜21:00
SRP目次(毎週金曜20:00更新)
コメント