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気分一致効果とは?具体例や研究・論文などまとめ

気分一致効果とは?具体例や研究・論文などまとめ

気分一致効果とは、過去・現在・未来の出来事をその時の気分状態と一致した評価をすることを指します。このような気分の状態とは、日々の日常で変化するものです。しかし、大事なことを決断するときに自分の感情状態に左右されたくはないですよね。ここでは気分一致効果の具体例や日常での活かし方をご紹介していきます。

気分一致効果とは?

気分一致効果とは、状況への評価がその時の気分と一致しているという心理現象です。良い気分の時は、ある状況を高く評価し、悪い気分の時は同じ状況を低く評価します。

例えば、朝から気分が良い時は多少の失敗も許し、そのような失敗は誰にでも起こり得ると楽観視しますが、気分が悪い時には、どうしてそんな失敗をするのだと腹を立たせて、多少の失敗さえも許せないことになります。

他にも恋人と喧嘩した後に街中で喧嘩しているカップルを見かけると、気分が悪くなるのに対して、恋人と上手くいっている時は険悪ムードのカップルを見ても、上手く仲直りできるといいなと感じることもあるでしょう。

そのため、気分一致効果とはその時の気分がポジティブであれば、物事をポジティブに評価しますが、気分がネガティブであれば物事をネガティブに評価するという現象です。

気分一致効果の具体例

別に欲しいものでもないけれど、気づいたら買ってしまっていた。家に帰ってきてからどうして買ったのだろうと後悔する。このような経験をした人は少なからずいることでしょう。

衝動買いがいかに気分一致効果と関係のあるものなのか。メカニズムを通して理解し、後悔のない買い物ができるようにしましょう。

衝動買い

いい物に出会った時や、ずっと欲しかったものが安価で販売されているのを見つけた時に、人は冷静な判断をせずに買うことがしばしばあります。後々になって、果たして本当に欲しかったのか、今のお財布の現状で買えるほど余裕はあったのかと後悔する買い物こそが、衝動買いです。

買い物によって幸せに感じる場面は様々ですが、人は衝動買いによって快楽ホルモンという幸せを感じるホルモンが脳内から分泌されます。このことにより気分状態が良くなり、ある物への評価が高くなって普段は不必要と判断される物が、必要な物と評価されるようになるのです。そのため、最初はずっと欲しかったものが安価で売ってあったからとその商品を購入し、気分が良くなったことで不必要なものも、必要として次々と購入するに至ります。つまり、ある物事をネガティブに評価していたとしても、あるきっかけやその時の状況で感情状態がポジティブになれば、物事への評価もポジティブになるのです。

気分一致効果の実験・論文

谷口(1991)は、気分一致効果とは覚える時と思い出すときの気分は重要じゃないとし、覚える内容のポジティブ・ネガティブと気分状態の一致によって、気分一致効果が生じるとしました。

Bower et al(1981)では、実験参加者を催眠状態によって、ネガティブ状態とポジティブ状態にした後、幸せな人物と不幸な人物の二人が登場する物語を参加者に読ませました。それらを1日後に思い出させると、全体での思い出す度合はネガティブ状態であっても、ポジティブ状態であっても変化はありませんでした。しかし、ネガティブ状態の参加者では不幸な人物に関するエピソードがよく思い出されており、ポジティブ状態の参加者では幸せな人物に関するエピソードがよく思いだされるという気分一致効果がみられたそうです。

また、Teasdale&Russell(1983)では、参加者の気分状態を操作せずにネガティブ・ポジティブの形容詞を覚えてもらい、ネガティブ状態で思い出してもらう群と、ポジティブ状態で思い出してもらう群とに分けました。その結果、ネガティブ状態で思い出した人たちは、ネガティブな形容詞を多く思い出し、ポジティブ状態で思い出した人たちは、ポジティブな形容詞を多く思い出すという気分一致効果を示しました。

これらのように、覚える時や思い出す時に関わらず、気分を誘導することは気分一致効果につながることが明らかにされました。

さらに、Clark&Teasdale(1985)による実験では、実験参加者を男女に分けて単語を暗記させた後、音楽によってネガティブ・ポジティブ状態にし、再生を求めた結果、女性にのみ気分一致効果がみられた。また、単語への使用頻度を尋ねると、女性において使用頻度が高かったことから、気分一致効果とは暗記する物事の感情価にのみ関与されるのではなく、刺激の使用頻度が高いほど効果が大きくなることも明らかにされました。

気分一致効果と記憶

記憶とは、嫌な思いをして覚えるよりも楽しく覚えたほうが暗記しやすいと言われています。しかし、嫌な感情は脳によって哀しい出来事に対しての接触回数を増やす傾向を生じさせます。ここで気分一致効果と記憶が関連している理由としては、ある物事を記憶するときの物事がポジティブかネガティブであるかと、思い出す際の気分状態の一致によって記憶力に差が生じることにあります。例えば、最近うつ気味で、何をするのも億劫であり嫌なことばかり思い出して、悪夢を見ることが多いとします。この時、ネガティブな気分状態に一致した嫌な思い出を脳が無意識のうちに脳内で再生しているため、さらに気分が悪くなるのです。また、ある物事への自分の評価でさえも、気分状態がネガティブであるゆえに、成功していたとしても低く評価し、そのまま記憶することにつながるのです。

そのため、鬱状態になるとネガティブな記憶をよく思い出して、ポジティブな記憶が抑制されます。このメカニズムとしては、ネガティブなことをより多く記憶しているのではなく、自分と関連のある情報をより思い出すように脳が作用しているからだと言われています。

気分一致効果と気分状態依存効果の違い

その人の気分がある物事の認知過程に影響を与えた結果の現象として、気分一致効果と気分状態依存効果が生じます。このように似た状況で生じる心理現象ではありますが、僅かに違う点があります。まず、気分一致効果とは覚える時と思い出す時の気分と思い出す内容の感情価との一致とし、覚える時や思い出す時の気分誘導は気分一致効果に影響を与えるという心理効果です。また、覚える内容の使用頻度が高いほど、気分一致効果も高くなります。

一方で、気分状態依存効果とは、ネガティブな気分状態ではネガティブ気分で覚えたものが思い出されやすく、覚えた内容の感情価とは関係ない。つまりは、哀しい気分では、哀しい気分で聞いた曲が思い出されやすいということです。また、気分状態依存効果の先行研究にBower et al (1978 第3実験)というものがあります。これは実験参加者をネガティブ・ポジティブにさせてあるリストを暗記させてみた結果、ポジティブ状態であればポジティブ状態で思い出した方が再生率が高く、ネガティブ状態であれば、ネガティブ状態で思い出した方が再生率が高くなるというものでした。ですが、暗記するリストが少ないほど、気分状態依存効果がみられず、暗記するものが簡単であれば気分状態以外の情報により、暗記したリストは思い出されてしまうということを第1・2実験(Bower et al,1978)から見出しました。そのため、気分状態依存効果とは気分状態以外に思い出すための手がかりが多く存在したり、暗記する物事が簡単すぎると心理効果はみられず、気分一致効果よりも心理効果が生じにくいものです。

恋愛においての気分一致効果を生かす方法

恋愛において、なんの行動もなしに相手に告白して両想いに至るというケースは、あまりないように感じます。最初から成功するような恋愛は少ないです。かといって、勝ち目がないからと諦められるほど、人の心は簡単ではありません。

例えば、脈が少ない相手とデートに行くことになったとします。この場合、相手の気分の状態がポジティブよりかはネガティブよりの可能性があります。しかし、デートを了承した時点で完全なるネガティブではないため、気分一致効果を用いることで自分への評価を変えることが可能になります。

まずは、相手の好きなものや嫌いなものを把握しておきましょう。こちらは、相手の友人やそれまで相手としてきた会話などから情報を得ることが可能になります。

次に、相手とのデート先ですが、なるべく相手が期待している場所に連れて行ったり、好きなものがある場所などを選択するといいでしょう。

ここで一例ですが、相手が高い場所が嫌いだったとします。しかし、高い場所を経てでも綺麗な景色が見られるスポットがあるとしたら、そこに行く道中でなるべく相手が高いところが怖くないような行動を取ってください。そうすることで、その後の綺麗な景色への評価がより高く設定されます。相手と別れた後、相手は景色を思い出しては紳士的な行動を取り、素敵な場所へ連れて行ってくれた自分のことを徐々に高い評価へと変えていくのです。

このような行動により、相手が自分のことを低く評価していたとしても、楽しかったという思い出が感情状態を高くし、自分への評価がポジティブなものへと変化する可能性があります。

気分一致効果を日常で活かす方法

好きな物事と気分を一致させることで、日常でより多くの出来事がポジティブなものとされるようになります。

例えば、心理学のことを勉強したい人は、論文や記事を読んでも最初は難しくて嫌な気分になるかもしれません。そのため、心理学の基礎が学べる本などを手に取って勉強した後に、論文や記事を読んでみて下さい。少しの知識があることで楽しく論文や記事を読むことができて、ポジティブな感情状態でポジティブに新たな知識に触れることができるようになることでしょう。つまり、簡単で楽な方法から段階を追って取り組むことで、ネガティブなものをポジティブな感情価へと変わるため気分一致効果を生じさせることができるのです。

また、人は常に物事に挑戦しようとする生き物です。鬱状態の人ならば、少しでも早くポジティブな状態になりたいと願うことでしょう。

気分が良い時などないかもしれませんが、少しでも気分が良くなる行動を取って見て下さい。小さなポジティブな気分状態を繰り返していくことで、ある程度のポジティブ状態になることが可能になります。そうした時、簡単で乗り越えやすい新たな挑戦をしてみましょう。

例え挑戦したことに失敗したとしても、気分が良い時ならばポジティブな印象を持つため、ネガティブに捉えることはないです。ですが、気分が良いと思っているのにネガティブに捉えてしまった場合は、気分状態がネガティブなため無理に挑戦することはせず、立ち止まって気分状態がポジティブになるように試みて下さい。

勉強に気分一致効果を活かす方法

嫌々やる勉強は長く続きませんね。そんな時は、勉強を少しやめて気分が良くなるようにしましょう。気分が悪い時にしたことは、ネガティブなものとして記憶に刻まれてしまいます。

例えば、30分しか勉強ができていないときでも気分が悪いならば、自分の好きな趣味をして、気分がポジティブになるのを待ってみてください。趣味に没頭して勉強のことを忘れるのはいけませんが、気分がポジティブに変化した時に、勉強をすることで勉強自体をポジティブに受け取ることが可能になります。

また、歴史や資格試験の単語暗記などは膨大な量があります。少し勉強から距離を置いて気を紛らわせようとしても、上手くいかないこともあるでしょう。そんな時は、面白そうなイラストをつけてみたり、面白い語呂合わせ、ストーリーを作ってみて下さい。

例えば、日本史に関するYouTube動画などによって、ある人物の偉業を遂げた年をホップな音楽と共に覚えるという方法は、本番で緊張した時に音楽による緊張の緩和と暗記物を思い出す道具となります。

このように本来は苦とされるものをポジティブな感情価の物へと変化させて、音楽などによって使用頻度をあげることで気分一致効果が上手く発揮されて、良い記憶として脳に保存されることが促進されます。

まとめ

悪循環とは、まさに気分一致効果が大きく関係していると言えます。そのためポジティブ気分になりたい時は、好きなことや好きな映画・音楽などに触れて見てください。ただし、注意点としてはネガティブな時は、ネガティブなことをよく思い出したり、ネガティブな物事へと触れて行こうとしてしまうものです。そんな時こそ、自分の思いに反してポジティブな動画を見たりすることで、ネガティブ状態から抜け出すことが可能になるのかもしれません。

引用文献

Bower,G,H,&Gilligan,S,G&Monterio,K,P. 1981 Selectivity of learning caused by affective states. Journal of experimental psychology:geneal,110,451-473

Bower,G,H, &Monterio,K,P ,&Gilligan,S,G.1978 Emotional mood as a context for learning and recall. Journal of Verbal Learning & Verbal Behavior,17,573-585

Clark,D,M,&Teasdale,J,D 1985 Constraints on the effects of mood on memory. Journal of Personality & Social Psychology,48,1595-1608

Teasdale,J,D,&Russell,M,L.1983 Differential effects of induced mood on the recall of positive,negative and neutral words. British Journal of Clinical Psychology,22,163-171

谷口高士 1991 認知における気分一致効果と気分状態依存効果 心理学評論 34,319-344

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