子どもを産んで、親になって。
日々ノンストップで子育てをしている中で、
ふと我に返った時、こんな風に思ったことはありませんか?
「私ってこんなに怒りっぽい人間だったっけ…」
「え?私、こんなにドスをきかせた怒鳴り声が出せるんだ…」
(私はどっちも思ったことがあります!夫のドン引きな目線が痛い!!)
あぁ、子育てって、どうしてこんなにイライラして感情的になってしまうのでしょうか?
今回は、子育てでイライラしてしまう原因と、イライラを抑える方法について、公認心理師のMarikoがまとめてみました!
私ってやばい?子育てでイライラを抑えられない…
思えば、子育てとは、誰にも教わらず、実習期間もなく、研修もなく、親になった瞬間から唐突に求められます。
だから、誰もがうまくできなくて当然なのです!
私は、産後直後、身も心もボロボロの時に、
「さ、母乳を飲ませてあげてくださーい」と助産師に言われた時、
「はい?どうやって?」
と、頭の中が???で埋め尽くされましたが、そんな状態でも育児は容赦なくスタートするのです。
何も分からず、当然色々と上手くいきません。
上手くいかないので、イライラします。
おそらく、親になるまでの人生が比較的思い通りになっていた人ほど、子育てはあまりにも自分の思い通りにならなすぎて、耐えきれず、よりイライラするのではないでしょうか。
イライラした親たちの多くは、どうしたら子育てがうまくいくのかと、
情報を求めてSNSを見にいきます。
ここにも、現代ならではのイライラ増幅ポイントがあります!
SNSには育児情報が膨大にあふれており、「こうしたらうまくいく!」といった子育て情報もたくさんあります。
SNSの情報を参考に色々と真似をしてみますが、大半がその通りうまくはいかず、結局またイライラするのです。
なぜうまくいかないのか?
それもそのはず、SNSの子育て情報の多くは、子育てがうまくいっている生活の一部を切り取ったシーンであり、編集、演出されているからです。
ありのままの現実の子育ては、そんなにキラキラしたシーンばかりではありません。
それに、子育ては、他人の真似をしたからといって、上手くいくものでもありません。
SNSの子育ての話は、あなたとあなたの子の話ではなく、全く別の親子の話です。
子育ては、他人の真似で上手くいく時もあれば、上手くいかない時もあるということを理解しておかなくてはなりません。
このSNSの本質を理解せず、膨大な育児情報にさらされてしまうと、
段々、(私はみんなのようにうまく子育てができない…)と自己嫌悪に陥ります。
そして、イライラは更に増幅し続けます。
イライラは子どもに向けられ、結局子どもにきつく当たってしまいます。
完全にイライラの負のループです。
今の世の中、子育てでイライラしたことが全くありません、という親に、私は仕事でもプライベートでも出会ったことがありません。
それくらい、子育てでイライラするのは当たり前であり、イライラすること自体はヤバいことでもなんでもない、ということを、まずお伝えしておきます。
子供にイライラをぶつけてしまうのはなぜか?
子どもにイライラをぶつける人といっても、大きく2つのパターンに分かれると思っています。
まず1つ目のパターンは、単純に、自分のストレスのはけ口として子どもを利用している人です。
自分の仕事のストレスなどを、子どもに当たることで発散しようとしています。
前提として、子どもには自分のイライラをぶつけてもいいと思っています。
こういう人は、論外です。
今回の話は、参考にならないでしょう。
2つ目のパターンは、子どもにイライラしたくないのに、どうしてもイライラしてしまう、と悩んでいる人です。
今回の話は、このパターンの方に向けた話です。
いい親でありたいと頑張っているけれど、でもなぜか子どもと接するとイライラしてしまう。
感情的に子どもに当たってしまう。
子育てで悩んで、苦しんでいる。
そういった人が、イライラの負のループから抜け出すためのヒントとなればと思っています。
イライラの負のループから抜け出すためのヒント、
それは‥‥
自分の勘違いに気づくことです!
え?私は育児で勘違いなんかしてない!
そう思った方がいるかもしれません。
確かに、イライラしていない普段は勘違いはしていないと思います。
でも、感情的になってイライラしている時は、おそらくある種の勘違いに陥っているはずです。
カウンセラーとして、多くの人たちの育児の悩みを聞き続け、
私自身も、子育てでイライラを重ね、失敗して、反省してをくりかえし、
そうこうしているうちに、子どもにイライラする時は、きまってある勘違いが発生していることに段々気づけるようになったのです。
いったいどんな勘違いなのか、今から、親が陥りがちな子育て三大勘違いを解説します。
勘違い① 子供は親の思い通り、言う通りにするべきと思っている
大大大前提として、そもそも子どもは親の言う事を聞きません。
たまに聞く時もありますが。
それは、聞いておいた方が自分にメリットがあると明確に分かった時か、
もしくは聞いておいた方がうるさくぎゃんぎゃん言われないと思った時です。
基本は子どもも一人の人間。
自分の意思があり、気持ちがあります。
いつも親の言う通り、親の思い通りになんて動きませんし、動かなくて当然なんです。
いわば当たり前の話なのに、私たち親は、時々勘違いをします。
「親の言う事は当然聞くべき!」
「私の言っていることが正しいのに、どうしてこの子は言った通りにやらないのか!」
このような勘違いを起こして、イライラしながら命令を繰り返すのです。
でも、よく考えてみてください。
急に親のタイミングで「今すぐこの課題をやれ」と言われても、
子どもからしたらタイミングが悪いかもしれない。
ちょうど漫画の面白いシーンを読んでいる。
ブロック遊びに夢中になっている。
そんなタイミングで言われたら、すぐに切り替えられるわけありません。
自分が命令される側になってみましょう。
お腹がすいていないのに「ご飯を食べろ」と言われる。
本を読んでいたいのに「読むな」と言われる。
まだ友人と話している途中なのに「家に帰るぞ」と言われる。
結構嫌じゃないですか?
大人である私たちは、私のタイミングで好きに動けます。
ですが、子どもは自分だけではタイミングを決められない環境にいます。
だから、親の都合に合わせてくれているだけです。
子どもは当然親の都合に合わせて動くものだ、などと思ってはいけません。
今は親に合わせてくれているけど、この子にも自分の考えがあり、タイミングがあるのだということを忘れないでおきましょう。
脱!勘違い「 子供は親の思い通り、言う通りにはなりません!」
勘違い② 子供を完璧に躾けることが親の評価になると思っている
この勘違いをしている親は、子どものでき=自分の評価だと思っています。
子どもが優秀なのは自分のおかげ、子どもが不出来なのは自分のせい、そんな風に考えます。
もしくは、そんな風に言われてしまう環境にいるのかもしれません。
だから、自分の評価を下げたくなくて、必死で子どもの躾をします。
でも、子は子、親は親、別の人間なのです。
親がいくら頑張ったって、子どもの特性を無視していたら、親が望む結果は得られないでしょう。
それなのに、(私はこんなに頑張っているのに、この子ったら全然ダメ。これでは私の親としての評価が下がってしまう!)
こんな風な勘違いをして、焦りでイライラし、子どもに当たってしまうのです。
例えば、子どもの小学校お受験ママたちは、この勘違いに陥りやすい環境にいます。
今の小学校お受験は、残念ながら子どもというよりほぼ親の努力で成り立っています。
お受験塾に通わせると、そこでは先生から、子どもとの接し方について、親は事細かく指導を受けます。
まさに、親の頑張りが子どものお受験合格という結果に結びつくという、なんとも歪んだ構図です。
また、お受験をする家庭の中には、小学校に合格することが必須課題のように親族から与えられている場合もあり、そうなると親のプレッシャーは尋常ではありません。
合格したらしたで、親は自分の頑張りが報われたと感じ、やはり子どものでき=親の評価という考えが、強化されてやすいです。
あくまで一つの例として、小学校受験の親の話をしましたが、
当然、勘違いをせずに小学校受験をされているご家庭もたくさんいます。
また、小学校受験に限らず、様々な場面で、我が子の出来を自分の評価のように勘違いして一喜一憂している親はいるものです。
この勘違いがある限り、子どもが望み通りの結果を出さないと、親に焦りや怒りがわき、子どもにイライラをぶつけてしまうので、注意です。
脱!勘違い「子供の頑張りを自分の評価と結び付けて考えない!」
勘違い③ 子供の年齢や発達に見合わない要求をしている
この勘違いは、私もたくさんやってしまいましたし、
スクールカウンセラーをしている中でも、この勘違いに陥っている親や先生にたくさん出会ってきました。
あと半年後にチャレンジすれば、もっと短時間で習得できるであろうことを、延々と時間をかけて子どもにやらせて、お互いに疲弊する。
子どもはなかなかできないから、面白くないしイライラする。
親も、いくら教えてもできないからイライラする。
お互いにイライラが止まらない、相乗効果でイライラ倍増です。
子どもには発達段階というものがあります。
最適なタイミングで、ちゃんと習得できるようになっています。
年齢と言うよりは、その子の成長度合いによって一人一人タイミングが異なるため、
その見極めが難しいのは事実です。
ただ、よその家の子と比較して、うちの子もできるはずだと思ったり、
もう〇歳だから、平均でいえばこれくらいできるはずだと押し付ける。
これだと、勘違いが起こりやすいです。
子どもは、自分ができるようになりたいと思ったら、ものすごい集中力でがんばるものです。
それなのに、気長に待てない親が不適切なタイミングで声をかけたり、無理やりやらせようとするから、親はイライラ、子どもはうんざりして、親子関係が悪化するのです。
脱!勘違い「我が子の年齢や発達に見合った目標なのか、ちゃんと考えましょう!」
イライラすると親はどうなる?
イライラした親は、だいたいお決まりのセリフを子どもにぶつけます。
「何度言えばわかるの?」
「いつになったらやるの?」
「どうしてできないの?」
おそらく世界中の親子間で飛び交っているけど、子どもにはほとんど響かないセリフです。
私自身も、耳の痛いセリフです。
意味をなさないと分かっているのに、突発的に言ってしまうのは、勘違いが起きて感情的になっているからです。
「何度言えばわかるの?」
脱勘違い→「何度言ったって、子どもは親の思い通りには動かない」
「いつになったらやるの?」
脱勘違い→「いつになったって、子ども側のタイミングが悪ければ子どもはやらない」
「どうしてできないの?」
脱勘違い→「どうして?と言われたって、子どもの方こそ、どうしてできないのか分からず困っている」
また、親はイライラを言葉だけじゃなく、行動にも表します。
怒鳴る
にらむ
無視をする
叩く
でも、こんな行動をとったところで、親子関係がギクシャクするだけで、何の解決にもなりません。
やるべきことは、イライラの根本にある自分の勘違いに気づき、それを正して落ち着くことです。
子育てでイライラしない人ってどんな親?
子育てでイライラしない親は
「勘違いをしていない親」です。
でも、子育てをしていると、どうしても勘違いは起こります。
我が子のこととなると、あれこれ心配して、ついつい感情的に口をはさみたくなるものです。
常に、子どもは自分と別人格だと尊重し、
自分の評価とは無関係だと世間体を気にせず、
発達段階に見合った目標を出せる親…
こんなパーフェクトな親に、私は未だかつて出会ったことがありません。
だから、現実的に言えば、イライラしない親と言うのは
「勘違いに気づける親」
だと思います。
勘違いはどうしても起こります。
だから、その勘違いに気づける人、
気づいて、子どもを一人の人間として尊重するためにどう関わるか、
関わり方を見直せる親は、イライラを手放すことができます。
「勘違い① 子供は親の思い通り、言う通りにするべきと思っている」に気づいた時は、
次の言葉を唱えてみてください。
「子どもは自分の所有物じゃない」
「勘違い② 子供を完璧に躾けることが親の評価になると思っている」に気づいた時は、
次の言葉を唱えてみてください。
「子どもの失敗は成長の素!」
「勘違い③ 子供の年齢や発達に見合わない要求をしている」に気づいた時は、
次の言葉を唱えてみてください。
「理想ではなく、目の前の等身大の子どもを見よう」
勘違いに気づき、修正できる言葉を持っている人は、イライラをすんなり手放せます。
子育てのイライラを抑える方法は?基本ステップを紹介
子育てのイライラを抑える方法は、主に4つの基本ステップに分かれると考えてください。
▶基本ステップ① 情報のインプット
子育てのイライラを抑えるためにはこうやったらいいよ!という情報を収集します。
今、この文章を読んでいる行為はまさにインプットです。
でも、インプットするだけでは、イライラはおさまりません。
▶基本ステップ② アウトプット(実践)
取り入れた情報は、実際に使ってみないことには始まりません。
子どもに対して実践してみるのがアウトプットです。
自分が勘違いを起こしている瞬間を日常場面で探して、修正していきましょう。
▶基本ステップ③ 振り返り
アウトプットで実践してみて、上手くできたかどうかを振り返ります。
我が子に通用する方法だったか、自分が無理なく使える方法なのか、しっかり振り返ります。
多くの親は、このステップ③に時間をかけることができず、
①⇒②⇒①⇒②を繰り返しているだけで、なかなかイライラが改善しない、という結果になっていると感じます。
確かに、自分一人で振り返るのは非常に難しいので、省いてしまいがちなステップですが、
振り返りをちゃんとすることで、自分と子どもにとって、本当に必要な方法が早く見つかります。
パートナーに話したり、誰かと話すことで、振り返りやすくなります。
子育てカウンセリングでは、まさにこの振り返りのステップを行っています。
▶基本ステップ④ エネルギーチャージ
4つのステップのうち、実は最も重要なのに、みんなが見落とし、軽視していると感じているのが「エネルギーチャージ」です。
情報のインプットも、アウトプットも、振り返りも、
やる気、気力など、ココロのエネルギーが必要です!
ココロのエネルギーが枯渇しているのに無理やり頑張ったって、何事も上手くいきません。
もちろん、イライラも止まらないでしょう。
休養をとる、しっかり寝る、栄養のあるもの食べるなど、
自分の心と体を大事にする時間を持ちましょう。
そんな時間がない!と言う方、
何でもいいから誰かの手を借りて時間を作ってください。
仕事して帰ってくると子どもに優しくできる、と話す方がたまにいますが、
これは、仕事の時間が子育てから離れることで、ある意味エネルギーチャージの時間になっているからだと思います。
エネルギーチャージは全てのステップを支えるものなので、正しいステップは、
④⇒①⇒②⇒③
だと考えておいても良いくらいです。
最終奥義!子育てのイライラ解消法!
ここからは、より具体的なイライラ解消法をお伝えします。
「イライラしたら6秒数えましょう」など、アンガーマネジメント的な話ではなく、
ある意味究極のイライラ解消法だと思います。
▶子育てイライラ解消法「サル親になる」
みなさん、「三猿」はご存知ですか?
3匹の猿が両手でそれぞれ、目、耳、口を隠している「見ざる、聞かざる、言わざる」の猿の像です。
三猿は、物事の真理をとらえた最高の知恵と古くから言い伝えられていますね。
究極のイライラ解消法は、自分がこの「三猿」になったと想像してみることです。
【見ざる親】
イライラするくらいであれば、
必要以上に子どもをじろじろ監視したり、
無駄なキラキラ子育てSNS情報を見るのはやめましょう。
【聞かざる親】
イライラするくらいであれば、
周囲からの噂話、不必要な情報は聞かないようにしましょう。
【言わざる親】
イライラをぶつけてしまうのであれば、
お口にチャックで子どもにあれこれ言うのはやめましょう。
これが「サル親」です。
見ざる、聞かざる、言わざるで、サル親になろう言うと、放任しろと言われているように感じた方もいるかもしれませんが、放任ではありません。
イライラしないのであれば、見たいことは見て、聞きたいことは聞いて、言いたいことは言えばよいです。
そして、サル親に特に大事なのは、「あなたを信じている」「任せている」「委ねている」というメッセージを送り続けることです。
子どもは、親に監視されない、干渉されない、ガミガミ言われなくなり、ココロが安定します。
そして、「信じている」というメッセージを送られ続けるので、何事にも自分でチャレンジする、前向きなメンタリティが育ちます。
私たちが思っている以上に、子どもはちゃんと考えているし、たくましいものです。
見ざる!
聞かざる!
言わざる!
そして、
信じて、任せる、委ねる。
子どもを目の前にイライラがどうしても止まらない時は、
その場から少し距離をとって物理的に「去る」のも良いでしょう。
イライラを子どもにぶつける前に、その場から去り、
溜まっていた家事に専念してみたらどうでしょうか。
散らかっていたものが片付く。
洗濯物がきれいになる。
イライラしていた気持ちスッキリして、
エネルギーチャージに繋がります。
その場から去ることで、エネルギーチャージの時間にすることも、
「サル親」の大事なテクニックです。
「サル親」は最終奥義レベルのイライラ解消法だと思います。
「②アウトプット(実践)」するかどうかは、みなさんにお任せします。
まとめ
今回は、子育てでイライラしてしまう原因と、イライラを抑える方法について、
カウンセラーの視点よりお伝えしました。
独特な視点なので、参考になるならないは、あるかもしれません。
ですが、読んでくれた方の中に、1人でも「子育てが楽になった!」と感じてくれる方がいることを願っています。
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