黄色の花を咲かせる弟切草をご存じでしょうか。観賞用園芸種としても知られている弟切草には「恨み」や「敵意」などの怖い花言葉が存在します。しかし昔は、日本やヨーロッパで薬草として使われてきた一面もあります。なぜ怖い花言葉がついているのか、今回は花言葉にスポットを当てて解説します。
弟切草全般の花言葉 | 「迷信」「秘密」「敵意」「恨み」「盲信」 |
弟切草全般の英語の花言葉 | 「Animosity(敵意)」「Superstition(迷信)」 |
弟切草全般のフランス語の花言葉 | 「Patience(忍耐)」「Mefiance(不信)」 |
弟切草全般のドイツ語の花言葉 | 「Zuversicht(信頼)」「Hoffnung(希望)」「Mitgefuh(思いやり)」 |
弟切草とは?どんな花?
花の名前が少し物騒で怖い雰囲気がある弟切草には、どういった特徴があるのでしょうか。ここでは、弟切草について特徴から別名などの基本情報をご紹介します。
弟切草の特徴
夏に咲く花で花の色は黄色です。ほかの花色はありません。小さい花で自然に溶け込むように草地に咲いています。花が咲くと、レモンのような柑橘系の香りを漂わせます。草丈は1mほどまでと、そこまで大きくなりません。
分類は山野草の多年草になり、改良品種もたくさんあります。古くから、止血や痛み止めの効果を持った薬草として利用されてきました。品種改良されたものも合わせると、品種の数は300種類以上にもなります。花が咲き終わったら丸い実をつけます。
日本やアジアに自生しているものが「弟切草」と呼ばれ、ヨーロッパで咲いているものは「西洋弟切草」と区別されています。それぞれに違いがあり、弟切草は花びらの幅が広く、西洋弟切草は花びらの幅が狭いです。
弟切草の歴史
花の名前は弟切草の薬草にまつわる伝説からきています。花山天皇がいた平安時代に鷹匠・晴頼という人がいました。鷹匠というのは、鷹を飼育したり訓練させる人たちの職業名のようなものです。鷹匠をしていたこの人物は、止血や痛みを抑える効果を持つ薬草を使って、鷹の怪我を治していたのです。その草の名前はほかの人には内緒にしており、何度聞かれても教えませんでした。
ところが、この草の名前を知っている人はもう1人いました。それは晴頼の弟です。弟は人がよく、あるとき、つい口を滑らせて草の名前をほかの人に教えてしまったのです。そのことを知った兄は、カッと頭にきて弟を惨殺してしまいます。
兄が弟を殺してしまったので、草の名前は本当の名前ではなく、結局「弟切草」と呼ばれるようになったのです。そしてそのときの弟の血が、草の葉に黒い点として残ったとされています。実際の弟切草に当てはめると、花びらに入っている黒っぽい斑点が伝説のそれのようです。
また、黄色の花を咲かせる弟切草には魔力が込められているといわれています。その魔力は病気を治すものといわれていたようです。さらに、聖ヨハネの日とされている6月24日の前夜に薬草として知られていた弟切草を集める風習がありました。そのため、ヨーロッパでは「聖ヨハネの草」とも呼ばれています。
そして聖ヨハネは斬首され、その殺された日が聖ヨハネの日である6月24日です。日本に伝わる伝説では、殺された弟の血が花に入っている斑点とされていますが、海外では殺されたヨハネの血がこの斑点といわれています。
弟切草の別名
別名には、聖ヨハネの草・中夏節の薬草・鷹の傷薬・血止め草・盆花・青薬・小連翹などがあります。聖ヨハネの草、鷹の傷薬はさきほどの伝説からついているのでしょう。血止め草や中夏節の薬草は薬草として使用されていたところからきているのかもしれません。
弟切草の毒
弟切草は植物全体に毒を持っています。葉から赤い色素がでますが、これが紫外線に当たると毒性を持つようになるのです。含まれている成分はヒペリシンやタンニンです。
そのため、弟切草は薬草として昔から活用されてきました。しかし、知識がない人が薬草として使うのは思いがけない事故の元です。とても危険なので真似しないようにしましょう。
弟切草の基本情報
科・属 | オトギリソウ科、オトギリソウ属 |
和名 | オトギリソウ |
英名 | Goat weed・St.John’s wort・Klamath weed |
学名 | Hypericum erectum |
原産地 | アジア、ヨーロッパ |
開花期 | 7~8月 |
弟切草の全般の花言葉
花言葉は日本で広まっているもののほかに、英語、フランス語、ドイツ語でもつけられています。この項目では、弟切草についている花言葉をまとめてみました。
「迷信」「盲信」
昔ヨーロッパで弟切草は魔除けに使用されていたことが由来となっています。スピリチュアルを信じていない人からすれば、迷信や盲信といわれてしまいますよね。また西洋の花言葉「Superstition(迷信)」「Patience(忍耐)」「Mefiance(不信)」も同様です。
「恨み」「秘密」
花名の由来にもなった兄が弟を殺す伝説と同じです。恨みは殺された弟の気持ちを表しているのでしょうか。この花言葉を贈り物に添えるのは避けたほうがいいでしょう。
「Zuversicht(信頼)」「Hoffnung(希望)」「Mitgefuh(思いやり)」
ドイツ語の花言葉には、ほかの花言葉と比べるとポジティブな意味の花言葉がついています。これらは弟切草が薬草として人々の役に立っているとこらからきているのかもしれません。また薬を処方する人が患者への思いやりの気持ちなども込められているのでしょう。
「敵意」
「恨み」同様、殺された弟の兄への感情を表しているのかもしれません。復讐したい敵意は亡くなっても簡単には消えないのでしょう。
弟切草に怖い花言葉はある?
弟切草には「敵意」や「恨み」といった怖い花言葉があります。ネガティブな怖い意味の花言葉が多いので、フラワーギフトには選びにくいかもしれません。また花も1日しか持たないので、生花を贈ることも難しいでしょう。贈り物に選ぶ花というよりは、自分で育てて楽しむほうが向いている花です。
弟切草の誕生花
誕生花は6/24、11/19です。
弟切草の仲間
弟切草の仲間、キンシバイ・トモエソウ・ビヨウヤナギをご紹介します。どれもオトギリソウ科に分類されている植物です。それぞれの特徴を詳しく見ていきましょう。
キンシバイ
花びらは薄く弟切草の特徴を持っていますが、お椀型の愛らしい花を咲かせます。花の色は黄色です。椿に少し似ています。開花時期は5~7月で、半落葉小低木に分類されています。日本には江戸時代のときにやってきたようです。原産は中国で少し湿ったところに自生しています。
キンシバイにもいくつか種類があります。代表的なのは西洋キンシバイや大輪キンシバイなどです。西洋キンシバイはヒメキンシバイとも呼ばれており、弟切草に近い花姿をしています。
アメリカやヨーロッパなどに咲いており、葉は長いのが特徴です。もう一つの大輪キンシバイは、通常のキンシバイのお椀型が少し広がった形をしています。花の大きさは約8cmと大きいので、このような名前がついています。
トモエソウ
茎が細く、花びらは下向きに広がります。花の色は黄色です。ほかの植物と比べると控えめな雰囲気といえるでしょう。花を真上から見たとき、花の形が巴形に見えることからこの花名がついています。中国名は黄海棠で、英名はGreat St. Johnswortです。
葉は先に向かって細くなっていき、葉色はライムグリーンです。日本のほか、アジア、ロシアなどに咲いています。つぼみはほかと違いしずく型です。「集中力」「人気のある」といった花言葉がつけられています。
ビヨウヤナギ
トモエソウの花の形と少し近いものがあるビヨウヤナギは、観賞用として栽培されてきた植物です。中国が原産地で、草丈は1mほどです。昔はたくさん栽培されていましたが、最近はほかの植物がメジャーになったため、ビヨウヤナギを見る機会が減りました。
暑さ、寒さに強いのでグランドカバーにも向いている植物です。6月26日、7月7日の誕生花で「多感」「有用」「薬用」「気高さ」「幸い」などたくさんの花言葉がつけられています。英名はHypericum monogynumで別名はマルバビヨウヤナギやキンセンカイドウなどです。
弟切草に似た花
ヒペリカムという同じオトギリソウ科の植物がよく似ています。また日本に咲いている弟切草にも種類があり、どれも見た目がそっくりです。ここではヒペリカムと日本に咲く弟切草をいくつかご紹介します。
ヒペリカム
半落葉性で花びらに丸みがあるのが特徴です。弟切草と比べると、こちらのほうがかわいらしい雰囲気が強くなっています。和名「小坊主弟切草」といい、英名は「Tutsan」や「Shrubby St.John’s wort」です。花言葉は「きらめき」「悲しみは長く続かない」です。花が咲く姿がきらめきで花が終わって実がつくところをもう一つの花言葉が表しています。
そんなヒペリカムの花が咲く時期は4~10月です。ヒペリカムだけでもさまざまに品種改良されており、通常のものは実が赤いですが、改良されたものは黒やピンクの実をつけるもの、また葉の色や咲き方が違うものもあります。鉢植えで育てるとこんもりしてとてもかわいいので、ガーデニングが趣味の人はぜひ育ててみてください。フラワーアレンジメントにもおすすめです。
ヒメオトギリソウ
ヒメオトギリソウは1cm程度の花を咲かせ、花びらがくるんと丸まっているのが特徴です。葉も華奢で、ヒメオトギリソウは道端にひっそりと咲いています。オーストラリアやベトナムなど世界各地に咲いており、地耳草という別名もついています。よく似た植物にコケオトギリソウがあります。花が咲く時期は7~9月です。
イワオトギリソウ
イワオトギリソウは中部から北のエリアの高山植物に該当し、弟切草よりも全体的にコンパクトな植物です。岩場の近くに咲くため、イワオトギリソウという名前がつけられています。秋になると紅葉し、葉が赤く染まります。
シナノオトギリソウ
シナノオトギリソウは中部エリアの高山地帯に咲いています。イワオトギリソウは咲いている場所が花名になっていましたが、シナノオトギリソウは咲いている地域(信濃)から名前がついています。イワオトギリソウ同様、山登りをしている人は、探してみてはいかがでしょうか。
弟切草の季節・開花時期
夏の7~8月に咲きますが、花持ちはわずか1日ととても短いです。そのため、生花として飾るのは少し難しいかもしれません。
弟切草の育て方・ポイント
育て方をまとめてみました。初心者でも育てやすい花なので、ぜひチャレンジしてみてください。
弟切草の用土
市販の山野草向けの用土が適しています。自分で土作りするなら赤玉土に鹿沼土を混ぜるといいでしょう。比率は赤玉土が7割と鹿沼土は3割がおすすめです。
日当たりや置き場所について
風通しと日当たりがいい場所で管理しましょう。夏は直射日光を避けて、少し日陰になる場所へ移動させましょう。
水やりについて
水やりは土の表面が乾いて白っぽくなってから行いましょう。水やりの回数が多すぎると根腐れする原因になるので注意してください。しかし、夏場は水分の蒸発が早いので、土が乾きすぎる前に水やりしてください。
肥料について
肥料は花が咲く前の春に与えるようにしましょう。花の株周辺に緩効性肥料を置いてください。花が咲いてからは液体肥料を与えるといいでしょう。
増やし方
花が咲いたあとに種が採れるようになります。この種を蒔いて育てることも可能です。こぼれ落ちた種から発芽もするので手がかかりません。採った種を蒔くときは数ヶ月乾燥させてから蒔くようにしましょう。
植えっぱなしで育てられる
育てやすい多年草の植物なので、そのまま植えっぱなしでも問題なく育ちます。手間がかからないのは、園芸初心者にも挑戦しやすく魅力的ですね。
病気や害虫について
気をつける病害虫はとくにありません。
まとめ
弟切草の花言葉は怖いものが多く、家族や友人へのプレゼントにはあまり適していません。花言葉や花名の由来は悲しい伝説からきています。栽培に関しては難しくなく、育てやすい植物です。こぼれ種でも育つ多年草の植物なので、ぜひ育ててみてはどうでしょうか。
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