近年、「HSP」という言葉を聞く機会が増えたのではないでしょうか?
HSPとは、「Highly Sensitive Person(ハイリー・センシティブ・パーソン)」の略で、「生まれつき非常に感受性が強く敏感な気質をもった人」という意味です。HSPは病気や、生きてきた環境によって形成された性格などではなく、先天的な気質、つまり「生まれ持った性質」であると考えられています(※1)。
HSP研究の第一人者である心理学者のエレイン・アーロン博士によると、人口の約20%(5人に1人)の割合がHSPだとのことです(※2)。
(※1)出典:マドレクリニック「HSP(Highly Sensitive Person)ハイリー・センシティブ・パーソン」
(※2)出典:新宿ストレスクリニック「HSP(ハイリー・センシティブ・パーソン)とは?」
- HSPの人に言ってはいけない言葉がある?
- HSPの人に言ってはいけない言葉14つ
- (1)「やる気がないの?」と責める
- (2)「なぜ結論を出すのに、そんなに時間がかかるの?」「もっと早くして」と急かす
- (3)「この環境にもすぐに慣れるから頑張って」「気にしなくていい」と我慢することを提案する
- (4)「感情的すぎる」と否定する
- (5)「その匂いはそれほど強くない」「それほど眩しくない」と考えを押し付ける
- (6)「そんなに休憩が必要ですか?」と急かす
- (7)「物事を必要以上に難しくしている」「考えすぎだ」と批判する
- (8)「話したいことがあります」「伝えたいことがあります」と不安を与えるような前置きをする
- (9)病気だと決めつけて「不安症やうつ病の薬が必要です」と勧める
- (10)「あなたは敏感だから……」と過度に特別扱いをする
- (11)「あなたは強くなる必要がある」と励ます
- (12)「あなたの気持ちは分かっている」と決めつける
- (13)「成長しよう」「もっと大人になろう」と見下す
- (14)何気なく、冗談で傷つくようなことを言う
- HSPの人を傷つけてしまったかも?
- まとめ
HSPの人に言ってはいけない言葉がある?
こうした気質をもつ人は、他人の言動や感情に左右されやすかったり、周囲の音や光、匂いなどが過度に気になってしまったり……。日常生活で気疲れしやすく、生きづらいと感じる場面が多いといわれています(※2)。
また、約80%のHSPではない人は、HSPの特性に共感することが難しいため、より生きづらさを感じてしまうのです。
そんなHSPの人に言ってはいけない言葉はあるのでしょうか?
HSPの人に言ってはいけない言葉14つ
(1)「やる気がないの?」と責める
例えば、職場などで難しい仕事に圧倒されてしまったり、思慮深さが邪魔をしてつらくなってしまったりすることがあります。これは、HSPの特性として刺激に敏感であるからだといえます。
指示した業務に対して、前向きな態度をとらない場合、「やる気がない」「態度が悪い」と感じてしまう可能性もあります。
そのような場合でも、「やる気がないの?」などと責めず、仕事の量を分けて伝えるなど、1つずつやってもらうように指示することが大切です(※3)。
(※3)出典:SankeiBiz「HSPに「普通」を強要する残酷さ 自分も損をしない衡平な接し方」
(2)「なぜ結論を出すのに、そんなに時間がかかるの?」「もっと早くして」と急かす
HSPの人は思慮深く、HSPではない人が考えないところまで深く考えるため、意見や結論を出すまでに時間がかかってしまうことがあります。
深く考えている間は、何も考えていないように見えたり、優柔不断だと捉えられたりするかもしれませんが、そうではありません。
そのため、結論を出すことを急かしたり、責めたりせず、他の人が気づかないところまで考えてくれていることを見据えて見守るのが良いでしょう(※3)。
(3)「この環境にもすぐに慣れるから頑張って」「気にしなくていい」と我慢することを提案する
HSPは、共感能力が高いため、他人の感情に影響されやすいという特性があります。
ネガティブな感情を表に出す人の近くにいると、つらくなってしまう人も多いのです。
例えば、職場や学校の場合、可能であれば席を変えたり、ネガティブな感情表出が多い人とは距離を置くなど、物理的な対応が必要です(※3)。
HSPではない人が想像する以上に、他人の感情に強く反応してしまうため、「すぐに慣れる」「気にしなくていい」などの言葉で流さない方が良いでしょう。
(4)「感情的すぎる」と否定する
HSPの人は、他人の感情に左右されやすかったり、さまざまな物事に敏感であったりしますが、HSPの特性として、これは自然なことです。
感情を抑える唯一の方法は、完全にシャットダウンするということになります。しかし、そういうわけにもいかないでしょう。
そのため、HSPの特性として自然な部分を「感情的すぎる」などと否定しないことが大切です(※4)。
(※4)出典:PsychCentral「10 Worst Things You Can Say to a Highly Sensitive Person」
(5)「その匂いはそれほど強くない」「それほど眩しくない」と考えを押し付ける
HSPの人は、周囲の音や光、匂いなどに敏感な特性ももっています。
そのため、HSPではない人が気にならないような周囲の環境にも、敏感に反応してしまうのです。
香水や食べ物の匂い、照明の眩しさ、爆音などで気分が悪くなってしまうこともあります。
HSPではない人には理解しづらいかもしれませんが、自分の基準で「その匂いはそれほど強くない」「それほど眩しくない」などと否定しないようにしましょう(※4)。
(6)「そんなに休憩が必要ですか?」と急かす
HSPの人は、そうでない人よりも五感を通してより多くの情報を取り入れています。
また、敏感で他人の感情や周囲の環境に影響されやすい面もあるため、疲れてしてしまうこともしばしばあります。
そのような際には、休憩をとる必要があります(※4)。
休憩をしていることを責めたり、早く動くよう急かしたりせず、見守りましょう。
(7)「物事を必要以上に難しくしている」「考えすぎだ」と批判する
HSPの人は、そうでない人には考えが及ばないところまで深く考えるという特性があります。
「考えすぎだ」と捉えられる一方で、人が気付かないところにまで気付くことができるというのは1つの長所でもあります(※4)。
「物事を必要以上に難しくしている」と批判せず、人が気付かないところにまで気付いて考えてくれるHSPの特性を尊重することも大切です。
(8)「話したいことがあります」「伝えたいことがあります」と不安を与えるような前置きをする
「話したいことがあります」「伝えたいことがあります」という前置きで話が始まる場合、悪いニュースや、ネガティブなないようなのではないか? と不安になる人も多いです。
そのため、不安を与えるような前置きや言い方をするのではなく、自然な流れで話し始めるのが良いと考えられます(※5)。
(※5)出典:Bustle「13 Things To Never Say To Someone Who’s Sensitive」
(9)病気だと決めつけて「不安症やうつ病の薬が必要です」と勧める
敏感であることは、HSPの特性であり、精神疾患やうつ病ではない場合もあります。
もちろん、精神疾患やうつ病である場合は、医療機関で診てもらうのが良いでしょう。
一部の敏感な人は、性質として敏感であるというだけです。病気だと決めつけないようにしましょう(※5)。
(10)「あなたは敏感だから……」と過度に特別扱いをする
「敏感だからこの話をしなかった」「難しい仕事に圧倒されてしまうから、仕事を減らす」など、過度に特別扱いをすることも良くないでしょう。
HSPの人に対しても、そうでない人に対しても、「衡平」な態度で接しましょう(※3)(※5)。
(11)「あなたは強くなる必要がある」と励ます
敏感な特性をもつHSPの人に対して「もっと強くなろう」「あなたは強くなる必要がある」というのは、励ましや応援にはならないでしょう。
敏感であるというだけで、「弱い」わけではありません(※5)。
強くなることを勧めるよりも、理解しようとすることの方が大切かもしれません。
(12)「あなたの気持ちは分かっている」と決めつける
似たような感情を持っているかもしれませんが、HSPであろうとなかろうと、他人がどのように感じているかを本当の意味で理解できる人はいません。
「あなたが何を経験しているのか、私は少し知っています」と事実にフォーカスして、声をかける方が良いでしょう(※5)。
(13)「成長しよう」「もっと大人になろう」と見下す
HSPの人は、周囲の環境に敏感で、それに耐えられなかったり、感情があふれて泣いてしまったりすることもありますが、それは未熟だからではありません。
未熟で幼稚だと決めつけて、「成長しよう」「もっと大人になろう」と声をかけるのは、敏感さや感受性を軽視しているとも捉えられるでしょう(※5)。
(14)何気なく、冗談で傷つくようなことを言う
「バカだなぁ」「変だね」など、仲が良ければ良いほど、ストレートな言葉を何気なく発してしまうことがあるでしょう。
何気なく、冗談で放ったつもりの言葉にも、HSPの人は傷ついてしまう可能性があります。また、欠点をストレートな表現で指摘されることもHSPの人にとっては、つらいことです(※6)。
HSPの人に限ったことではありませんが、「この言動で相手を傷つけていないか?」と考えた上で発言したり、振る舞ったりしましょう。
特に馬鹿という言葉はHSPの人にとってすごく傷つく言葉です。侮辱罪の要件を満たす言葉でもあるので気をつけましょう。(※7)
(※6)出典:STUDY HACKER「HSP「あるある」12選&12の対処法」
(※7)侮辱罪で訴えるには?慰謝料の相場や事例をわかりやすく紹介 | 弁護士保険のエール少額短期保険 (yell-lpi.co.jp)
HSPの人を傷つけてしまったかも?
HSPではないとされる約80%の人は、HSPの特性に共感することが難しく、それゆえに悪気なく傷つけてしまうこともあるでしょう。
自分にとっては悪気のない、何気ない言動だったのに、「HSPの人を傷つけてしまったかも?」と思うような出来事もあるのではないでしょうか?
身近にHSPの人がいる場合、どのように接するのが良いのかをご提案します。
まずはHSPの特性を理解しようとする
上述した通り、HSPの人とそうでない人とでは、物事の感じ方や考え方がかなり異なります。
そのため、まずはHSPの特性を知ることが大切だといえます(※7)。
自分が傷つかないことや気にしないことも、HSPの人にとっては傷ついたり気にしたりする原因になる可能性があるということ。
自分が平気な音や光、匂いも、HSPの人にとっては苦手で、時には気分が悪くなる原因になるかもしれないということ。
このような特性を知り、理解しようとすることは、HSPの人を傷つけてしまう言動を抑えることにつながるでしょう。
(※7)出典:Discover「鈍感な世界に生きる 敏感な人たち』イルセ・サン 身近な人がHSPの場合の適切な対策・対処方法とは」
適切な立場やポジションを与える
職場や学校であれば、その人にあった立場や役割、ポジションを与えることが重要です。
仕事についても、早く終わらせるように急かしたり、逆に特別扱いをして業務量を減らしたりするのではなく、その人にあったペースで振り分ける必要があります。
HSPの敏感さや思慮深さは、あらゆる組織にとって必要なものでもあります。HSPの人も、良好な環境下では、高い能力を発揮できるのです(※7)。
静かに見守る・サポートをする
時には、静かに見守ることや、サポートをすることも大切です(※7)。
HSPの人にとって、HSPでない人のアドバイスは的を得ていないこともあります。そのため、無理に助言をするのではなく、状況を見て静かに見守ったり、サポート役に徹したりすることも重要です。
まとめ
「HSPの人に言ってはいけない言葉」について解説しました。
HSPの人も、そうでない人も、互いの特性を尊重し合い、生きづらさを感じない環境で過ごすことができるのが理想です。
もし、身近なHSPの人に対して「どのように接したらいいのか分からない」と悩んだときには、この記事を参考にしていただけると幸いです。
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