【公認心理士執筆・監修記事】世の中にすっかり浸透した「マウンティング」と言う言葉。よく分かるような分からないようなこの言葉を、ヒトのココロのスペシャリスト、公認心理師Marikoが、誰でも分かるように解説いたします!
マウンティングとは
心理学の論文に書くような小難しい言葉を使うと、マウンティングとは以下のような説明になります。
「マウンティングの行為者A が自尊心を満たすため、自身の優位性を明示・暗示的に被行為者Bに伝える言動や行為。また、被行為者Bが下に格付けされたと受け取った場合もこれに含める。」
うーん、難しいです。
もっと簡単に言ってしまえば、「自分の方があなたより立場が上だ!」とアピールする言動、これがマウンティングです。
では、なぜ「自分の方が立場が上!」とアピールするような行為をわざわざするのでしょうか?
マウンティングしがちな人の心理的な特徴を見ていきましょう。
マウンティングする人の心理的な特徴3つ
まず、大前提としてマウンティングする人は皆、ココロの奥底に「自信のなさ」を抱えています。
え?自信があるから自慢やマウンティングをするんじゃないの?と思った方もいるかもしれませんが、そうではありません。真に自分に自信のある人は、わざわざ周囲に自慢をしません。深層心理で「自信のなさ」を抱えているからこそ、その不安を消すために、ついマウンティングをしてしまうのです。
ただ、自信が無ければみんなマウンティングするのかと言うと、そうではありません。自信のなさにプラスして、下記の様な心理的な特徴があるとマウンティングしやすくなります。
1)競争心が強い
負けたくない!という競争心・闘争心が非常に強い特徴を持つタイプです。単なる負けず嫌いというよりは、物事の全てを、勝ったか負けたかで判断するような人です。具体的にどんなマウンティング行為をするかというと、分かりやすく自分の優秀さをアピールしたり、自分の長所を声高らかに自慢したりします。このタイプのマウンティングは分かりやすく、少々子どもっぽいとも言えます。マウンティングの悪質度は低めです。
2)不信感が強い
誰かを信じたり、誰かから信じてもらったり、という体験が少なく、心の底から相手を信用することに難しさを抱えているタイプです。根本的に人を信じるのが難しいため、相手を下に見ておかないと一緒にいるのが不安になります。なぜなら、「この人はいつか自分を攻撃するかもしれない」という危機感が、常にどこかにあるからです。このタイプは、分かりやすい言葉でけなしてくる傾向があります。非常に迷惑極まりないですが、悪質度はまだ中程度です。
3)満たされない感が強い
どこにいても、誰といても、何をしていても満たされない感覚を抱えているタイプです。このタイプの人は、幸せな人を見ると心がざわつきます。羨ましさから、妬みやひがみといった気持ちが湧いてきます。自分より幸せそうな人は、全て気に食わなくなります。このタイプが難しいのは、明らかに不幸な人というわけではなく、むしろ幸せそうな生活を送っているのにどこか満たされていない、というパターンがあるからです。本当は嫉妬心を持っていても、それをストレートに表には見せません。よって、分かりにくいマウンティングを行うことがあります。例えば、他人のバッグを褒めた後に、自分がもっと高額なバッグを持っていることをちらつかせて見せたり、テストで自分が誰よりも高得点を取ったこを知りつつ「全然ダメだった~」といって結果をみんなに見せる、などです。 巧妙かつ悪質度の高いマウンティングかもしれません。
マウンティングする男性の心理的な特徴2つ
マウンティングしがちな男性の心理的特徴について、代表的なものを2つ解説します。
1)闘争心が強い
男性は元々女性より闘争本能が強い傾向があります。誰かを蹴落としてでも上に上がりたい、出世したい、モテたいなど、競争好きな男性は、つい人と比較してマウンティングを発動しがちです。
2)プライドが高い
妙にプライドが高く、自分を必要以上に大きく見せようとする男性は、マウンティングが多くなります。プライドを折られないため、防衛するために必死ゆえの行為です。
無駄に威圧したり、場にそぐわない自慢をしたりしがちです。「俺、昔はやんちゃしててさ~」という、昔の悪自慢をすることでマウンティングをしようとする男性特有の行為。あれも変なプライドの高さがそうさせるのかもしれません。多くの女性はその話をされた瞬間から引いていることに、あまり気づかないようです。
マウンティングする女性の心理的な特徴2つ
マウンティングしがちな女性の心理的特徴について、代表的なものを2つ解説します。
1)隠れネガティブ思考
このタイプは、誰の目から見ても分かりやすい単純なネガティブ思考ではありません。表面的には明るく振舞い、本当はネガティブな自分を懸命に隠しているタイプです。ネガティブな自分が許せないため、他人のネガティブ思考にも厳しくなりがちです。ネガティブな人を見ると、自分が懸命に隠しているネガティブ思考が刺激されて、イライラしてマウンティングしたくなります。「オタクってきもいよね~」「私、根暗な奴って嫌いなのよ」などと、勝手に人をカテゴライズして自分が上だと言い張るギャルがいたら、もしかしたらこの部類かも。
2)他人依存の上昇志向が強い
「高学歴、高収入な男性と巡り合うことが、勝ち組の女になるために必要不可欠!」このような信念を持っている女性は、自分の条件に見合う男性にモテることに必死です。必然的に、周りの女性は皆ライバルに見えてきます。するとマウンティングを使ってでも、自分が素晴らしい女性で、周りの女性は大したことがないということを、男性にアピールしなくてはなりません。他の子より可愛いかどうか、おしゃれに見えるかどうか、スタイルがいいかどうか、スペックの高い男性にモテているかどうか、そこが基準の女の世界は、マウンティングの宝庫とも言えるでしょう。キャバクラ嬢やホステスさんの集まりなど、のぞいてみるとたくさんマウンティングが見れるかもしれません。
マウントされやすい人の特徴
続いて、マウントされる側の人にはどのような特徴があるのか、見てきましょう。
ターゲットをどうやって決めているのか?
実はマウンティングは誰でもされる可能性があります。なぜなら、マウンティングする側にとって、たまたまちょうど良い比較対象として存在したのがあなただった、という場合もあるからです。何を比較されるかは、マウンティングする側のタイプによるので、ありとあらゆる可能性があります。ただ、際立った特徴や、目立った個性を持っている人は、比較対象としてちょうど良く、ターゲットにされやすい面もあります。
美人な人
美人は、羨望や嫉妬の対象になりやすい特徴です。美人なだけで、相手が勝手に「調子に乗りやがって」とか「お高くとまりやがって」などといちゃもんをつけてくる可能性も高くなります。でも、美人であること自体、何も悪くありません。妬みや嫉妬に過剰反応せず、華麗にスルーしてこそ、心も美人といえるでしょう。美人であることを鼻にかけて高圧的に過ごしていたら、自分もマウンティング合戦に応戦していることになります。
幸せそうな人
常に楽しそう、幸せそうに見える人は、満たされていない人にとって、目障りな存在と思われやすいです。どこかダメなところを探して落としてやりたい、そんなドロドロした気持ちを刺激し、マウンティングの対象にされやすいかもしれません。
マウンティングされた時の正しい対処法
誰もがされる可能性のあるマウンティングですが、実際に「マウンティングされた!」と感じた時、どう返したら良いのでしょうか。
職場でマウンティングされた時の正しい対処法
職場でのマウンティングは、相手から「ライバル」や「敵」だと思われている時に起こる可能性が高いです。あなたと相手が似たポジションにいたり、相手にとってあなたが蹴落としたい存在に見えていたりするのかもしれません。
そんな相手からマウンティングされたと感じた時、最適な対処法は「うす~~~いリアクションをする」ことです。「はぁ」とか「へぇ~…」など、極力薄めに反応しましょう。あなたが感情的になるのを待っているのかもしれませんので、その相手の思惑に乗らない、ということが最も大切です。
似たような方法で、「ゆ~~~っくりリアクションをする」というのも有効です。「なるほどぉ…。そーなんですねぇ‥‥」と、普段以上にたっぷり時間をとってリアクションを返してあげましょう。馬鹿にしているような大げさな感じにはならないよう、ただ普段よりゆっくり反応を返します。相手は話のテンポが崩されるため、それ以上マウンティングを続けにくくなります。
家族にマウンティングされた時の対処法
家族からのマウンティングも場合によっては起こります。
【兄弟間】同性である、歳が近い、親に常に比較される、そのような兄弟・姉妹はライバル関係になりやすく、マウンティングが起こりやすくなります。
【親子間】親と子の間でのマウンティングはあまり聞きませんが、関係性に歪みがあると起こる可能性も考えられます。例えば、子どもが自分を見下していると感じてしまう親や、同性の子どもに自分のパートナーを取られるような錯覚を起こしてしまう親は、子どもにマウンティングをするかもしれません。
【親戚間】親族の間には、マウンティングが起きやすい要素があります。例えば、どこのうちの子が一番出世したとか、どの家の孫が最も優秀かなど、自分の血筋を自慢することで親族間で優位に立とうとするマウンティングが起こります。
家族のマウンティングも、基本対応は同じです。リアクションを薄めにして、相手が期待するような反応をこちらがしないことです。マウンティングし甲斐がないと思わせることが目的です。ただ、家族間は距離が近いこともあり、日常的にマウンティングをされる環境だと、気が滅入ってしまいます。あまりにもストレスを感じるのであれば、なるべく第三者に間に入ってもらう、誰かに相談するなど、うまく距離をとる方法を考えましょう。
夫や妻にマウンティングされた時の対処法
最も厄介なのは、夫婦間のマウンティングかもしれません。密室度が高いからです。親子間と同じか、それ以上の距離の近さです。よって、日常的にマウンティングされていても、それがもはやマウンティングだと気づかないレベルに達しているかもしれません。例えば夫から専業主婦の妻に対する「お前は家事しかできないんだから」とか「養ってもらっている人間がそんな口をきくな」などといった発言は非常に危険です。この発言に対し、「相手の言うことはもっともで、自分はダメな人間だから言われても仕方がない」というマインドコントロールの様な状態に陥っているとしたら、これは、心理的DV(ドメスティック・バイオレンス)のレベルです。相手から繰り返し受ける発言に「マウンティングなのでは?」と疑問に感じるものがあれば、発言を記録して、客観的に判断できる人に相談してみましょう。
マウンティングされた時のNG行動
マウンティングされた時、最もやってはいけないNG行動は「相手を変えようとすること」だと思います。基本、相手は変わりません。なぜなら、人は「変わりたい」と自ら願って行動している人でないと、変わることは難しいからです。例えば「このマウンティング発言を論破してやろう」とか「相手の考え方は間違っているから指摘してやろう」などという態度は、逆効果です。相手はあなたが自分より上回ることを恐れ、更なるマウンティングを繰り出してくるでしょう。この堂々巡りはストレスを溜めるだけ不毛です。
相手を変える必要はありません。感情的にならず、 薄いリアクションで、相手が期待するリアクションを与えないようにしましょう。そして、心の中で「自信がなくて焦っているんだな」と思って、慈悲の眼差しで見つめてあげましょう。
まとめ
以上、マウンティングについて解説してきましたが、マウンティングをしてしまう心の動き、少しでも理解できたでしょうか。マウンティングを繰り返す人は「自信のない人」であり、誰かと比べることでしか自分を保てないのです。なかなか苦しい生き方です。
みなさんはどうぞ、比較するのであれば「昨日の自分」「一年前の自分」を使いましょう。自分に軸を置く生き方はとても健全です。そこから「今、自分は何ができるのか」に意識を向ければ、マウンティングなど全く必要のない行為ですから。
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