サクラソウは、春に花を咲かせる多年草です。花言葉には初恋や少年時代の希望等があります。
しかし、どうしてそのような花言葉がつけられているのでしょうか?今回は、サクラソウの花言葉やその由来、また、誕生花や育て方についてまとめました。
サクラソウとは?どんな花?
サクラソウという名前はなんとなく知っていても、実物は見たことがないという人も多いかと思います。サクラソウとはどのような植物なのでしょうか。まずは特徴や歴史、そして別名をご紹介します。
サクラソウの特徴
サクラソウは、その名の通り春に桜のような可憐な花を咲かせる植物で、春を告げる花とも言われます。花の色はピンクや白、紫など多彩で、花の形も様々です。
春に芽吹き、切れ込みが浅く入った楕円形の葉を根元から数枚付けます。花が咲く時期になると株の中央から1本の花茎を伸ばし、先端に数輪の小さな花を咲かせます。
野生のサクラソウは日本・朝鮮半島・シベリア東部~中国東北部に分布し、日本では北海道南部・本州・九州の山地や川岸、湿り気のある草原等で見られます。群生することもあります。
しかし近年では土地の開発等により、群生を見かける事は少なくなりました。もし山歩きをしていてサクラソウの群生を見かけたら、かなりラッキーかもしれませんね。
埼玉県さいたま市の田島ケ原サクラソウ自生地は国の特別天然記念物に指定されていて、100万株ものサクラソウの自生が見られます。
サクラソウの歴史
サクラソウは、江戸時代の俳人・小林一茶が「我が国は 草も桜を 咲きにけり」と詠んだように、日本人に古くから愛され、親しまれてきた花です。
サクラソウの人工栽培が盛んになったのは江戸時代からです。当時は品種改良により作出されたサクラソウの美しさを競う品評会が頻繫に行われていました。この事からも、当時の人々の熱狂ぶりがうかがえますね。
サクラソウ属の品種開発は日本と同じように海外でも行われ、それらは日本にも沢山輸入されてきました。そして昔は日本産の品種も外来種も一緒くたにサクラソウと呼んでいました。
しかし日本古来からのサクラソウの伝統園芸種の愛好家達が1953年に「さくらそう会」を創設し、日本の野生種や古典園芸種は「サクラソウ」、外来種は「プリムラ」または「西洋サクラソウ」と区別して呼ばれるようになりました。
サクラソウの別名
サクラソウは別名日本桜草といいます。これは特に日本産の品種を指し、前述したように他国のサクラソウ属と区別するために呼ばれるものです。英名では Japanese Primroseと呼ばれます。
また、学名はPrimula sieboldiiです。この名前は江戸時代にドイツの博物学者シーボルトが、サクラソウ属(Primula)をヨーロッパに紹介する際に自分の名(sieboldii)をつけた事に由来します。
サクラソウの花言葉
代表的な花言葉には、少年時代の希望、純潔、無邪気、、初恋、自然の美しさを失わないといったものがあります。
なんとなく初々しいイメージの花言葉ばかりですが、何故そのような花言葉をもつのでしょうか。
サクラソウの花言葉の由来
まず純潔、無邪気、自然の美しさを失わないという花言葉から見ていきましょう。
これらの花言葉は、決して派手さを持たず目立たないものの、可憐に咲くサクラソウの健気な姿が由来となっています。控えめで清楚な美しさが表された花言葉だといえますね。
また、サクラソウの色別の花言葉には、白色に神秘、赤色に美の秘密といったものがあります。これらも見た目の印象から来ているようです。
次に、初恋、少年時代の希望についてですが、これらは4月から5月にかけて咲くサクラソウの開花期間が由来となっています。
サクラソウの花が咲く期間は短いため、美しい時は瞬く間に過ぎ去る、という意味合いがあります。少し寂しくも感じる花言葉ですね。
このような花言葉を持つ事から、サクラソウをプレゼントとして贈りたい場合には、明るいイメージの花言葉を書いたメッセージカードを添えると良いでしょう。
サクラソウの英語の花言葉
同じサクラソウ属でも外来種のプリムラ(西洋サクラソウ)についてですが、全般に青春のはじまりと悲しみ(early youth and sadness)、青春の恋(young love)といったどこか儚さを感じる花言葉があります。
これらの花言葉はギリシア神話に登場するサクラソウに由来するとも言われています。それはこのようなお話です。
花と美を司る女神フローラの息子、パラリソスはとても美しい青年でした。パラリソスには妖精の恋人メリセルタがいました。
しかしある時彼は失恋してしまいます。パラリソスはあまりの悲しみに日に日に衰弱し、ついには死んでしまいました。
愛する息子の死を悼んだ女神フローラは、彼の姿を春の最初に咲くサクラソウの姿に変えました。
失恋により死を選んだ青年の悲しいお話ですね。
もうひとつ、西洋のサクラソウにまつわるお話で有名なものに、シェイクスピアの「冬物語」があります。
「冬物語」では若くして散ってしまった娘の命を、花が咲くことなく枯れてしまったサクラソウに重ねています。
このように、西洋においてサクラソウは青春の悲劇の象徴とされています。
サクラソウ属全般を表すプリムラ(Primula)はラテン語の「primus」を語源とします。これは最初の、という意味を持つ言葉です。
西洋では他の花より一足早く早春に咲き始める花といわれるサクラソウにちなみ、駆け足で過ぎ去る青春を表す花言葉が付けられたようです。
サクラソウの種類
サクラソウ属は野生種、園芸種ともに世界中に様々な種類があり、その数は500種以上あります。
サクラソウ属の総称としてサクラソウと呼ばれる場合もあるので、ここでは日本で見られる野生種のサクラソウと、日本の伝統園芸により作出された日本桜草と、西洋サクラソウの3つに分けてそれぞれをご紹介します。
また、西洋サクラソウの中にはかぶれをおこす品種があり、注意が必要です。そのことについてもご説明します。
日本でみられる野生種のサクラソウ
サクラソウの野生種は、生育する地域の名称を付けて呼ばれることがあります。様々な地域の名前を冠するサクラソウがありますが、田島ケ原で見られる白色のサクラソウ、田島白等が有名です。
その他の野生種としては北海道に生育するエゾオオサクラソウ、北海道南部や本州北部に生育するオオサクラソウ等が挙げられます。
北海道、本州、四国に生育するクリンソウもサクラソウの仲間です。クリンソウは花弁が重なった様子から「幸福を重ねる」という縁起の良い花言葉を持っています。大切な人への贈り物にも良いですね。
伝統園芸により作出された日本桜草
現存する日本最古の園芸種といわれる南京小桜は、濃いピンクの花弁に白い縁取りのある小さな花です。約300年前の江戸時代中期に作出されました。
その他、白い花弁に緑色の筋が見られる青葉の笛、濃いピンクの花弁の表面に白いぼかしが入った三保の古事等、色や形だけでなく名前にも趣向を凝らした品種が数多くあります。
西洋サクラソウ
園芸店等でよく見かける西洋サクラソウは、種類が豊富で育てやすく、開花期間も長いので人気があります。
日本サクラソウと見た目がよく似ているプリムラ・マラコイデスは和名を化粧桜といいます。花言葉は気取らない愛です。
色鮮やかで大ぶりな花を咲かせるプリムラ・ポリアンサの花言葉は無言の愛です。
プリムラ・ポリアンサ等を日本で品種改良したプリムラ・ジュリアンは、全体的にコンパクトで色や形のバリエーションが豊富なのが特徴です。花言葉はプリムラ全般と同じく青春の始まりと悲しみです。
西洋サクラソウの中にはかぶれを起こすものも
プリムラ・オブコニカは、沢山の花を付け開花期間が長い品種ですが、人によってはひどいかぶれをおこす危険性があります。これはプリミンというアルカロイド物質を多く含むためです。
もしかぶれやすい人が触ってしまった場合には、触れた箇所をアルコール消毒した後ににせっけんでよく洗うと良いとされています。うっかり素手で触らないように注意が必要ですね。
近年では品種改良によりプリミンをほとんど含まないプリムラ・オブコニカも作出されています。
プリムラ・オブコニカは和名で常盤桜とも呼ばれ、花言葉は青春の美しさです。
サクラソウに似た花
似た花でよく知られているものにシクラメンが挙げられます。花言葉には遠慮、気後れ、はにかみといったものがあります。
シクラメンはサクラソウ科のシクラメン属の花で、秋から春にかけて開花します。原産地は北アフリカやヨーロッパの地中海沿岸等で、原種はシクラメン・ペルシカムという花です。
西洋サクラソウのプリムラと同じく、咲く花の少ない冬を彩る花としても人気なので、実際に育てている人も多いかと思います。寒さには比較的強いと言われますが、育てる際には特に温度管理に注意が必要です。
サクラソウの誕生花
誕生花は、2月は1日、5日、16日、24日、3月は26日、4月は2日、3日、28日、5月は1日、13日、18日に指定されています。芽吹く頃から開花までの期間が多く指定されているのが特徴といえますね。
サクラソウは切り花より鉢植えとして流通しているのが一般的です。バースデープレゼントとして誕生花を贈りたい場合には、育て方を添えた鉢植えのサクラソウを贈ると良いでしょう。切り花より長く楽しめますし、きっと喜んでもらえるはずです。
サクラソウの季節・開花時期
サクラソウはちょうど桜の季節が終わった4月から5月頃にかけて開花時期を迎えます。
品種や固体による差はありますが、だいたい2週間から1ヶ月前後花を楽しめます。長いものではおよそ2ヶ月近く咲き続ける品種もあります。
桜のようにあっという間に散る花ではないので、咲き始めから全ての花が咲き終わるまでじっくりと楽しめますね。
サクラソウの育て方・ポイント
サクラソウは、比較的栽培しやすい植物だとされています。寒さには強いのですが、暑さや乾燥は苦手です。サクラソウを上手に育てる一番のポイントは、温度と湿度の調節にあるといえます。
サクラソウの用土
鉢植えの場合は市販の園芸用培養土で構いません。庭植えの場合には植え付け前に腐葉土を混ぜ込むと良いでしょう。
鉢の選び方
鉢植えの鉢は、根が張って窮屈にならないように余裕のあるサイズを選びます。サクラソウのみを植える場合は目安としては4号鉢には3株、5号鉢には4株程度が適しています。
日当たりや置き場所について
鉢植えの場合は、芽吹き始める2月から花が咲き終わる5月までは日光がよく当たる日なたで育てます。
夏になり葉が黄色く変色しだしたら、直射日光を避けた明るい半日陰に移します。秋までは風通しの良い涼しい場所に置きます。雨が当たると花や茎が弱ることがあるので、雨がしのげるような場所に置きましょう。
庭植えの場合は、乾燥や直射日光を避けるため、落葉樹の下に植えると良いでしょう。
水やりについて
鉢植えの場合は、発芽から花が終わるまでは土の表面が乾いたら水をたっぷりと与えます。
夏の休眠期には水やりのタイミングが分かりづらいため、植え付けの際に1年草を一緒に植えて水やりの目安にすると良いでしょう。冬は土が乾きにくくなるため水やりの回数は控えます。
庭植えの場合は、基本的には水やりは必要ありませんが、サクラソウや周りの植物がしおれていたら水を与えます。
肥料について
植え付ける前にまず元肥として緩効性の肥料を土に混ぜておきます。発芽から開花までは2週間に1回程度の割合で液肥を与えます。庭植えの場合も同じ頻度で与えると良いでしょう。夏以降の休眠期は肥料を必要としません。
花が終わったら
咲き終わって枯れた花はそのまま置いておくと種が出来ますが、栄養を奪われて株が弱ってしまいます。種の採取をしない場合は、花がらは取り除きましょう。
植えっぱなしで育てられる
花が全て咲き終わったら、株の根元に土をかぶせます。そうすることでまた新しい根が生まれ、植え替えしなくても翌春にはまた新しい花を咲かせてくれます。
病気や害虫について
サクラソウがかかるおそれのある病気には、灰色カビ病があります。湿度が高く温度が低い状態が続くことで発生します。
病気の部分は切り落とし、殺菌剤を使用して拡大防止をはかります。風通しと水はけを良くすることで予防できる病気です。
害虫はハダニやヨトウムシ、アブラムシ、ネコブセンチュウ等に注意が必要です。ハダニは乾燥した用土や葉に発生するため、霧吹きで葉に水をかけて予防します。
害虫は見つけ次第取り除き、殺虫剤を撒きます。ネコブセンチュウの寄生がみられた場合は、寄生された部分を除いて新たな土で植え直します。鉢は同じものを使う場合は煮沸消毒が必要です。
まとめ
今回はサクラソウについてご紹介しましたが、いかがでしたか。
サクラソウには可憐で素朴な趣があり、控えめな美しさを持つところも古くから日本人に愛され続けてきた理由といえます。多種多様な品種の中から、ぜひお気に入りを見つけてみてくださいね。
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