紫苑という花をご存じですか?名前は知らなかったけど、見たことある人も多いかと思います。紫、青色をした花で実は秋に咲くキク科の仲間なのです。
花言葉には、追憶や君を忘れないなど、少し物悲しさを感じるような言葉がつけられています。今回はそんな紫苑につけられている花言葉から誕生花、育て方についてまとめました。
紫苑とは?どんな花?
和名で紫苑と呼ばれるこの花は、どんな特徴を持っているのでしょうか?まずは原産地や花名の由来など、紫苑の特徴からみていきましょう。
主に日本やアジアが原産地の植物
青や紫色の花でキク科の植物です。学名はアスター(Aster)由来はギリシャ語のアスターで、この言葉は星という意味合いを持ちます。星のような形に花開く姿が由来です。花色は黄色ではありませんが、見た目は一般的な菊とよく似ていますよね。
自生地は日本、中国、朝鮮などです。秋の9~10月頃になると、よく花屋さんに出回ります。花屋さんで目にしたことがある人も多いでしょう。背がすらっとしており、先端にたくさん小さな花をつけます。花の大きさは小さなものですが、たくさん集まって咲く姿は可愛らしいですよね。
花の色が紫や青なので、知らない人は菊の仲間だとは思わないかもしれません。ほかのキク科の花と一緒に、お彼岸用の花として売られていたりもします。
紫苑の別名
紫苑は別名で鬼の醜草(おにのしこぐさ)、十五夜草(じゅうごやそう)、そして思い草(おもいぐさ)といったものがつけられています。鬼の醜草という別名は少し怖そうな言葉がつけらていますね。この別名は今昔物語集が由来となっています。
今昔物語集は平安時代の後期にまとめられたお話です。このうちの一つに、ある兄弟のお話があります。
ある兄弟の墓参りの話
この兄弟の父親は亡くなっており、毎年必ず墓参りをしていました。しかし、成長するにつれ兄のほうは仕事などが忙しくなり墓参りに行けなくなってしまいます。忙しくなる前に忘れ草を墓に供えただけでした。
ちなみにこのとき兄が供えた忘れ草には、愛の忘却という花言葉がつけられています。この花を見て嫌だった出来事、悲しい過去を忘れたいという意味合いです。父親を失った悲しみを兄は忘れたかったのでしょう。
弟のほうは、この紫苑を持って墓参りを続けます。弟は悲しみから逃げずに、ずっと墓参りをしていたんですね。そしてこの二人の様子を見ていた鬼が、弟に予知能力を与えました。それにより弟は、トラブルを避け幸せな人生を送ったそうです。この話が元になり、別名の鬼の醜草がつけられたといわれています。
もう一つの思い草はこの弟の思いが由来で、そのほかの十五夜草は、十五夜の時期に咲く花ということからつけられました。また、英名では、Aster tataricus、Tatarian aster表します。
紫苑の花言葉
花言葉には、君を忘れない、ごきげんよう、喜びをください、遠方にある人を思う、どこまでも清く、追憶というものがつけられています。また色別でもつけられており、紫は時の経つのを忘れて、白はどこまでも清くなどです。
紫苑の花言葉の由来
花言葉の由来は、別名の項目でもお伝えした今昔物語集からきているといわれています。墓参りで供える花でもあるので、もう会いに行けない、亡くなった大切な人へ向けてつけられた花言葉なのでしょう。
そう思うと、なんともいえない切ない気持ちになる花言葉ですよね。今までなんとなくこの花を買って墓に供えていた人は、たまにはゆっくりと大切な人へ思いを巡らしながらお供えしてもいいかもしれませんね。
紫苑の英語の花言葉
英語の花言葉は、忍耐(patience)、繊細(daintiness)、愛の象徴(symbol of love)です。しかしこれは、紫苑が分類されているキク科シオン属(アスター属)全体の英語の花言葉でもあります。
紫苑の誕生花
誕生花は9月9日、28日、10月16日に指定されています。誕生花が花の開花時期とぴったりなので、生花でも贈りやすいですね。花屋さんでよく売られているので、入手しやすいかと思います。ぜひ紫苑を贈ってみてくださいね。
紫苑の種類
続いては紫苑の代表的な種類をご紹介します。みなさんはいくつご存じですか?
野紺菊(のこんぎく)
夏の終りから秋にかけて咲く紺や白、濃い紫色をした花です。野菊や南洋春菊(なんようしゅんぎく)とも呼ばれており、園芸品種には紺菊があります。紺菊は、紺色が綺麗で質のよい選抜品種のことです。野紺菊のほうは道端にも普通に咲いているので、知らず知らずのうちに目にしている人もいるでしょう。
この花は、10月28日と11月9日の誕生花に指定されており、花言葉は忘れられない想い、長寿と幸福、守護、指導などです。日本の固有品種で、斑入りの野紺菊もあり、花が咲くまでは斑入りの葉、花が咲く頃には緑へと変化します。斑入りの野紺菊の花色は白です。
英名はWild chrysanthemumで、学名はAster microcephalusとつけられています。花の大きさは3cm程度、耐寒性があり、比較的丈夫な植物です。植物を育てるのが初めての人でも育てやすいかと思います。機会があれば育ててみてはどうでしょうか?
達磨紫苑(だるましおん)
達磨紫苑は通常の紫苑よりも草丈が低く、薄い紫やピンク色をした花です。紫苑の中では人気がある種類で、よく切り花に用いられています。原産地は日本で、あまり大きくならず、全体的にまとまって育つのが特徴です。花瓶に挿したら可愛くまとまってくれそうですね。
あまりスペースが確保できないという人でも、大きくならないタイプの植物は育てやすいのではないでしょうか。学名はAster spathulifoliusです。
友禅菊(ゆうぜんぎく)
こちらも原産地は北アメリカで、達磨紫苑のようにまとまって花をつけます。花色は紫のほか、赤やピンクなどもあり、花壇に植えたり切り花にしたりして楽しまれているようです。
花色や種類が多く、日本各地に咲いています。花言葉は老いても元気で、後知恵で、誕生花は8月26日と10月14日です。老いても元気では、年配の人へ贈る際にいい花言葉ですね。
孔雀草(くじゃくそう)
クジャクアスターとも呼ばれる花で、北アメリカが原産地です。花の色はピンクや青などさまざまで、花が咲いている様子がまるで孔雀のように見えるところからこの名前がつけられました。
紫苑の仲間
紫苑が分類されているキク科シオン属の花をご紹介します。
蝦夷胡麻菜(えぞごまな)
蝦夷胡麻菜は北海道や東北地方が原産地の植物です。山の中で咲いている姿を見られるでしょう。花言葉には、実り、命燃え尽きるまでなどがあります。育ち始めたばかりの様子が胡麻の苗によく似ているため、このような名前がつけられました。白い花で学名はAster glehniiです。
嫁菜(よめな)
嫁菜は野紺菊の近隣種で、日本にも四国や九州などの地方で自生しています。別名、萩菜(はぎな)、嫁草(よめぐさ)などとも呼ばれています。花言葉は隠れた美しさ、女性の愛情、従順などです。
誕生花は9月15日、10月2日、11日、27日が指定されています。昔はねずみのことを嫁と呼んでいたようで、それに与える草がこの嫁菜でした。名前の由来はここから来ているようです。
紫苑に似た花
ここでは紫苑に似ている花をいくつかご紹介します。
春紫苑(はるじおん)
春紫苑は4~6月に咲く紫苑に似た花で、原産地は北アメリカ、花色は白やピンクです。繁殖力が強く、除草剤に耐性がある品種もあり、雑草として見られることもあります。しかし、見た目は紫苑によく似ていて可愛らしい花です。
学名はErigeron philadelphicus、英名はPhiladelphia daisy、Philadelphia fleabaneで、別名は貧乏草(びんぼうぐさ)とつけられています。少し嫌な別名がつけられていますね。これは繁殖力の高い春紫苑は貧乏な家でも生えてくるというところからいわれています。
ほかにも、春紫苑を摘むと貧乏になるという言い伝えもあるようです。花言葉は追憶の愛で、この花言葉は蕾のときに下のほうを向いている様子からつけられています。誕生花は4月14日と12月12日です。
コスモス
秋の花といえば、コスモスもありますよね。和名では秋桜です。こちらも紫苑に花姿が似ています。ピンクや白のコスモスが一般的ですが、実は赤や黄色、黒色をした品種もあるんです。それぞれに花言葉が指定されています。
全体としては乙女の真心、謙虚、調和などです。色別には、赤は乙女の愛情、ピンクは乙女の純潔、白は優美、美麗、黄色は野生の美しさなどがあります。いろいろなコスモスを育ててみてもいいかもしれませんね。
紫苑の季節・開花時期
花が咲く時期は秋の9~10月頃で、花持ちは1週間ほどです。野生種は絶滅危惧種に指定されており、それを見かけることは難しいでしょう。草丈は50~200cmです。春に芽をつけて秋に開花します。
紫苑の育て方・ポイント
ここまで紫苑の花言葉や誕生花などについてみてきました。最後は育て方をご紹介します。
土選び・置き場所
適度に水はけのよい土が適しています。置き場所は日当たりのよいところを選んでください。日光不足だと徒長してしまいます。また冬も耐寒性があるので、そのまま屋外で冬越し可能です。注意が必要なのは西日です。西日がギラギラと当たるような場所は、思っている以上に陽射しが強いため避けたほうがいいでしょう。
肥料は、植え付けするときに緩効性肥料を土へ加えます。追肥は地植え栽培なら春、鉢植え栽培なら春と秋に置き肥してください。市販の園芸用土で問題ありません。自分で配合するなら、赤玉土7割、腐葉土3割に肥料を加えてください。
植え替え・植え付け
植え替えは春の3~4月、植え付けは同じく春、もしくは秋の10~11月に行いましょう。地植えなら数年に一度、鉢植えなら毎年をペースに植え替えします。その際に株分けもしておくといいでしょう。プランターに植えるような際は、株と株の間を30cmほど空けて植えてください。
株分け・挿し木
増やす場合は株分け、もしくは挿し木(挿し芽)で行います。株分けは3~4月、挿し木の場合は5~6月が適期です。まず株分けのやり方をご紹介します。株分けは株を土から引き抜き、2~3芽程度に分けてください。分けて再び植えれば完了です。
もう一つの挿し木は10cm程度で茎をまずカットします。葉がたくさんついている場合は、植えたときに土に触れそうな下部分の葉を取り除きます。
その後は水揚げして、挿し木専用の用土に植えましょう。挿し木用の土に肥料はいりません。置き場所は明るい日陰で、水は切らさないように管理します。根が出たら植えたい場所へ植えてください。
水やり
地植えで育てている場合は、自然の雨だけでも大丈夫です。夏場などずっと雨が降らないようなときが続いた場合のみ、水やりしてください。過湿にならないよう、土の状態に注意しながら水やりしましょう。
鉢植えなら土の表面が乾いたらあげます。そのとき与える量はたっぷりが目安です。冬になると地上に出ているところが枯れて成長しません。そのため水やりは控えて乾燥気味にしてください。
育てるポイント
とても丈夫でスクスク育つため、手入れをしないと2m近くまで育ってしまいます。そこまで大きくなると花の可愛らしさが半減してしまいますよね。そこで紫苑は摘心を行うのが上手に育てるポイントです。
適切に摘心することで、伸び放題の草花の見た目を整えることができたり花数が増えたりします。摘心は芽先2節ほどでカットしてください。草丈はとくにこだわりがなければ50cm程度が目安、栽培環境の都合やこだわりがあればその限りではありません。
気をつける病気・害虫
とくに気になる病気、害虫はありません。病害虫の心配がないのは、植物を育てるのに慣れていない初心者には優しい植物ですね。
まとめ
紫苑は秋に青や紫の小さな花を咲かせます。花言葉には君を忘れない、遠方にある人を思うなどがあり、野生の品種は絶滅危惧種の一つです。
時期が来ると花屋さんでよく販売されているので、大事な人の墓参りや誕生花として手に入れてみてもいいでしょう。自分で育てる場合も栽培難易度は高くないので、一度挑戦してみてくださいね。
コメント