健康に良いといわれている、ヨーグルト。妊娠中にもおすすめの食品です。
中には、妊娠中にヨーグルトを食べると発達障害の予防になるという情報もありますが、本当なのでしょうか?
こちらの記事では、妊娠中にヨーグルトを食べると発達障害の予防になるといわれる理由や、ヨーグルトを食べるメリットなどについて解説します。
妊娠中にヨーグルトを食べると発達障害の予防になるといわれる理由
妊娠中にヨーグルトを食べると発達障害の予防になるというのは本当なのでしょうか?
現時点で、妊娠中にヨーグルトを食べることと、生まれてくる赤ちゃんの発達障害との関連性について、科学的には立証されていないようです。
そのため、ヨーグルトを食べることで発達障害が予防できるとは言い切れないでしょう。
では、なぜ妊娠中にヨーグルトを食べると発達障害の予防になるといわれているのでしょうか?
それは、2016年の福井大学のチームによる研究発表が理由だと考えられます。その研究内容は、「腸内細菌が少ない母親から生まれた赤ちゃんに発達障害が現れやすいことをマウスの実験から突きとめた」というものでした。
実験の内容は、妊娠中のマウスの腸内細菌を減少させ、バランスを乱し、生まれた子を観察するというものでした。その結果、正常なマウスから生まれた子より、体重が軽い、夜行性にもかかわらず夜間の行動が低下する、広い空間を怖がる、などの異常な行動が見られたそうです。
さらに、正常なマウスから生まれた子を、腸内細菌を減少させたマウスに育てさせたところ異常な行動が見られたとのことです。逆に、腸内細菌を減少させたマウスの子を、正常なマウスに育てさせた場合は正常な行動が見られたそうです。
このことから、人間の場合も母親の腸内細菌の状態が、赤ちゃんの脳に影響を与えるのではないか? と考えられています。
とはいえ、発達障害の原因はさまざまです。腸内環境の乱れはリスクの1つにすぎないことや、科学的に立証されたわけではないため、やはり「妊娠中にヨーグルトを食べると発達障害の予防になる」とは言い切れません1。
妊娠中にヨーグルトを食べるメリット
妊娠中にヨーグルトを食べると発達障害の予防になるとは言い切れないことが分かりました。
しかし、妊娠中にヨーグルトを食べるメリットは存在します。
腸内環境を整える
ヨーグルトには乳酸菌やビフィズス菌が豊富に含まれているため、腸内環境を整える働きがあります。そのため、便秘を予防する効果も期待できます。
妊娠中は女性ホルモンの影響や、つわりで食事が十分に取れないことから便秘になりがちです。ヨーグルトは、便秘が気になる方や便秘を予防したい方におすすめといえます。
タンパク質を摂取できる
ヨーグルトにはタンパク質も含まれています。タンパク質は健康な体づくりに欠かせないため、妊娠中に限らず積極的に摂取したい栄養素です。
タンパク質は他の食品からも摂取できますが、ヨーグルトはさっぱりとした口当たりのため、つわりで食欲がないときにも食べやすいでしょう。
妊娠中はつわりだけでなく、逆流性食道炎や胸焼けなどに悩む方も多いです。そんなときにも消化しやすく口当たりの良いヨーグルトはおすすめの食品といえます。
妊娠前に食べることで早期早産のリスク低下
2010年度に環境省が開始した国家プロジェクトである「エコチル調査」によると、妊娠前にヨーグルトやみそ汁、納豆を食べることを心がけていた女性は早期早産のリスクが低かったそうです。
早期早産の主な原因の1つである細菌感染。ヨーグルトや納豆などはプロバイオティクスと呼ばれており、乳酸菌や納豆菌が腸内細菌を変化させ、健康にとって良い働きをすることが分かっています。中には、免疫力を向上させ、細菌に対する予防効果を示している食品もあります。
調査によると、ヨーグルトを週5回以上食べる人は週1回以下の人と比べて、早期早産になりにくいことが分かりました。この調査結果はあくまで妊娠前に食べていた場合であるため、妊娠後については、たくさん食べても効果はなく、切迫早産の治療にはならないといわれています2。
妊娠中におすすめのヨーグルト
妊娠中におすすめのヨーグルトは、糖質が少ないプレーンタイプのものです。
糖質は妊娠中も必要な栄養素です。しかし、主食以外の食品から糖質を摂取しすぎてしまうことは避けた方が良いでしょう。
甘みのある加糖タイプのヨーグルトには糖分がたくさん含まれています。そのため、妊娠中は無糖のプレーンタイプを食べることをおすすめします。無糖のヨーグルトが苦手な方は、はちみつをかけたり、バナナを混ぜたりして食べるのが良いでしょう。
ヨーグルトを食べる習慣がない方は、飲むタイプのヨーグルトもおすすめです。飲むヨーグルトの場合も、無糖のプレーンタイプを選ぶのが良いといえます。
妊娠中にヨーグルトを食べるときの注意点
妊娠中にヨーグルトを食べるときの注意点はこちらです。
毎日コツコツ続ける
ヨーグルトから摂取した善玉菌は、摂取したらずっと定着するわけではありません。そのため継続的な整腸効果を期待する場合は、毎日コツコツ食べ続けるのがおすすめです。
また、ヨーグルトの種類によって含まれている菌の種類は異なります。ご自身に合ったヨーグルトを見つけ、食べ続けるようにしましょう。
食べ過ぎない
ヨーグルトにはさまざまな健康効果が期待できますが、食べ過ぎには注意が必要です。
特に、加糖タイプのヨーグルトは糖質の過剰摂取につながるため、食べ過ぎないように気をつけましょう。上述したように、妊娠中は特に無糖タイプのヨーグルトがおすすめです。
また、無糖タイプを食べる場合も食べ過ぎには注意しましょう。他の乳製品とのバランスを取りながら摂取しましょう。
冷たいヨーグルトを食べない
冷蔵庫から出したばかりの冷たいヨーグルトは、体を冷やしたり、下痢をしたりする原因になることがあります。ヨーグルトに限らず、冷たい食べ物・飲み物には注意が必要です。
ヨーグルトは冷蔵保存ですが、冷蔵庫から出してすぐに食べるのではなく、少しだけ置いて常温に近づけて食べるのが良いでしょう。乳酸菌は高温に弱いため、温めすぎには注意が必要です。
妊娠中に必要な栄養素
妊娠中、特に必要な栄養素をご紹介します。妊娠中の食事の参考にしてみてください34。
タンパク質
上述した通り、タンパク質は健康的な体をつくるために必要不可欠な栄養素です。1日に必要なたんぱく質の量は、摂取するエネルギーの13〜20%が理想的だといわれています。成人女性は1日50gを摂取することが推奨されていますが、妊娠中期は10g、後期は25gを追加するのが良いといわれています。
食物繊維
妊娠中は、女性ホルモンやつわりの影響で便秘になりやすいため、食物繊維も意識して摂取しましょう。食物繊維には、便の体積を増やしたり、食後の血糖値の上昇を抑制したりする働きがあります。
亜鉛
妊娠中に亜鉛が不足していると、生まれてくる赤ちゃんに低身長・低体重などのリスクが生じるといわれています。また、亜鉛は初乳にも多く含まれるため、免疫力の維持にも必要な栄養素のため出産後も重要です。
鉄分
妊娠中は胎児にも酸素を送る必要があるため、貧血になりやすいといわれています。そのため、赤血球中のヘモグロビンをつくるために必要な鉄分も重要な栄養素の1つです。
鉄欠乏性貧血に悩まされている女性は多く、貧血状態になると、酸素を運搬する機能が低下するだけでなく、頭痛や立ちくらみ、うつなどの症状が現れる可能性があります。
軽度の鉄欠乏性貧血では赤ちゃんへの影響はほとんどありません。しかし、高度になると低体重になる可能性があるため、鉄分不足には注意しましょう。
カルシウム・マグネシウム
カルシウムは胎児の骨や歯を形成するために必要な栄養素です。そのため、妊娠中の女性のカルシウム量が減少すると、骨粗鬆症になりやすくなるといわれています。
また、体がカルシウムを吸収するにはマグネシウムが必要です。カルシウムを摂取する場合は2:1(Ca:Mg)の比率を意識してマグネシウムも一緒に摂取しましょう。
葉酸
葉酸は、胎児の脳の発育や神経の形成に必要な栄養素です。厚生労働省によると、「胎児の神経管閉鎖障害発症リスク低減のために十分な葉酸摂取(400μg/日)が必要」とのことです5。
胎児の脳は妊娠6週目ごろまでに完成するといわれているため、妊娠を希望する女性は妊娠前の段階から意識的に葉酸を摂取しておいた方が良いといえます。
妊娠中の食事で注意すべきこと
最後に、妊娠中の食事で注意すべきことをご紹介します。 妊娠中の食事は赤ちゃんの成長に大きな影響を与えるため、注意しましょう6。
生もの・半生の食品を避ける
妊娠中は免疫機能が低下します。そのため、生ものや半生の食品は避けてください。
お刺身やお寿司、海鮮丼などの生魚は控え、火を通したものを食べるようにしましょう。また、生野菜は十分に洗ってから食べましょう。
カフェインを含むものを摂取しない
カフェインの過剰摂取は、赤ちゃんの発達に影響を与えたり、死産・流産を引き起こす原因になったりする可能性があります。
妊娠中は、コーヒーなどのカフェインを含むものは避けましょう。最近は、デカフェやノンカフェインの飲料も多く販売されています。コーヒーなどを飲む場合は、カフェインが含まれていない商品を選ぶようにしましょう。
ビタミンAの過剰摂取に注意する
ビタミンAは、赤ちゃんの成長に欠かせない栄養素です。しかし、妊娠中に過剰摂取すると先天奇形が増加する可能性があるといわれています。ビタミンAはレバーやうなぎなどに含まれています。また、サプリメントで摂取する場合も、過剰摂取には注意しましょう。
飲酒・喫煙は避ける
アルコールは早産や妊娠高血圧症候群のリスクを高めます。また、赤ちゃんの発育不全や胎児性アルコール・スペクトラム障害などを引き起こす恐れもあります。
また、喫煙も早産や先天性疾患、死産などのリスクにつながる危険性があります。産後も受動喫煙によって発達障害や乳幼児突然死症候群を引き起こす恐れがあるため、ご自身が喫煙しない場合も注意が必要です。
おわりに
妊娠中にヨーグルトを食べると発達障害の予防になるといわれる理由や、ヨーグルトを食べるメリットなどについて解説しました。
妊娠中にヨーグルトを食べることと発達障害の予防の関連性は、現時点では科学的に立証されていないことが分かりました。しかし、ヨーグルトにはさまざまな健康効果が期待できるため、食べ過ぎや糖質の過剰摂取に注意しながら、毎日コツコツ食べ続けるのが良いでしょう。
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