トラディショナルハワイアンソングの一つである”Makee ‘Ailana”(マキーアイラナ)は、歌としてだけでなく、ハワイの文化や歴史に深い意義を持つ楽曲です。
この楽曲は、現在では見ることができない人工島、マキーアイラナを称え、その魅力を描いています。
曲のタイトルにもなっている’Makee’は、19世紀にハワイに移住したスコットランドの捕鯨船のキャプテン、James Makee氏の名前で、彼はその後ハワイで成功を収め、地元の人々から親しまれた人物でした。
この記事は、Hālau Nā Pua O Kūali’iの首藤雅恵先生が執筆・編集・監修しています。
Makee ‘Ailana(マキーアイラナ)の歌の意味を解説
ʻĀina i ka ehuehu o ke kai
大好きなマキー島
海の波しぶきに潤う土地 和訳: Na Pua O Kuali’i Masae
“Makee ‘Ailana”(マキーアイラナ)という歌い出しで始まるこの有名なトラディショナルハワイアンソングは、ハワイではパーティーや気のおけないライブなどで必ず演奏される一曲です。ローカルのダンサーたちが茶目っ気たっぷりに踊っている様子を観るのはとても楽しいものです。
Makee氏という人物がいた!
Makee ‘Ailanaとは、ワイキキの現在の「ホノルル動物園」の入口近くにかつて存在した人工島の名前です。
“Makee”という名前は、貿易や船舶業を営む一方で1843年にハワイに移住したマサチューセッツ州出身でスコットランドの船舶会社・捕鯨船のキャプテンだった、James Makee氏から取られています。
移り住んだ土地の一部に自分の名前が付くほどの人物である彼は一体どんな人だったのでしょう?
彼はカピオラニ公園協会の初代会長を務め、カラカウア王のポーカー仲間の一員でもあったと言われています。その後、彼はホノルルからマウイ島へ移住し、ウルパラクア牧場を購入してその時点で事実上のオーナーとなりました。
彼が購入した牧場はローズランチと名付けられ、砂糖(原料糖の栽培)製造などの土地利用により、さらに財を築きました。地元の人々を多く雇用し、非常に華やかで人望が厚かった彼は、1873年に生涯を閉じるまで、大変な人気者としてマウイ島で過ごしました。
前回解説したʻUlupalakuaとも関連がありますね。
マキーアイラナとはどんな場所だったのでしょうか?
‘Ailana(アイラナ)はハワイ語でアイランド(島)を意味します。
小さな橋や手漕ぎボートで渡る浮島のような場所で、アイアンウッド、なつめヤシ、キアヴェの木が生い茂っていたと伝えられています。
この人工島はロマンチックな雰囲気を求めるカップルやピクニックを楽しむ人たちが頻繁に訪れられていたと言われています。島の寿命は50年に満たなかったようです。
当時のワイキキは沼地や湿地が多く、泥や汚水の排水路の整備が急務でした。
そして、1920年にアラワイ運河の掘削工事が行われた際に周辺一帯の土地が整備され、人工島もすっかり埋め立てられてしまいました。
そのため、現在はその姿を見ることはできませんが、その名前がつけられた建物や通りのサインなどからその昔の名残りを感じることができます。
I ka ʻailana māhiehie
2, 3組のカップルと共に私たちがいます。
この魅力的な島に 和訳: Na Pua O Kuali’i Masae
当時、マキーアイランドは人々が憩いの場として利用すると同時に、カップルたちが密会するデートスポットとしても有名だったそうです。歌詞の内容からも、そんな熱々の恋人たちがデートを楽しむ様子が描かれています。
I ka ʻī mai e anu kāua
愛する水の音
話しをしている私たち二人は涼しくなります 和訳: Na Pua O Kuali’i Masae
Noho ʻoe i ka noho paipai
あなたが私と一緒にここにいたなら
ロッキングチェアーに座って揺られていることでしょう。 和訳: Na Pua O Kuali’i Masae
ロッキングチェアーに座って揺られるというのは、男女の愛情を表現する比喩です。これは非常にハワイアンソングらしい例えだと感じます。
Makee ʻAilana huʻe ka manaʻo
物語を伝えましょう
懐かしい思い出のマキーアイランド 和訳: Na Pua O Kuali’i Masae
この曲は通常5番までありますが、年配の地元のミュージシャンによれば、さらに2番あるそうです(さらに「実は3番あるんだよ」という話も聞いたこともありますが、それが本当かどうかは不明です。笑)。
今は存在しない場所についても、その歌が作られ、フラが踊り続けられていることで、その素晴らしい思い出が間違いなく存在した昔日が今もなお鮮やかに語り継がれている。
これは素晴らしいことだと思います。
“Makee ‘Ailana”はハワイの心を伝える楽曲であり、歴史的な背景を持つ曲として、ハワイでも愛されています。
そのメロディーは、過去のハワイの風景を鮮やかに描き出し、聴く者をその場所と時代へと誘います。
そして最も重要なことは、この曲を通じて、存在しなくなった場所も、その歴史も、その魅力も忘れ去られることはないということです。
それはまさにハワイアンソングの力、そしてハワイの人々の心です。
おわりに
首藤雅恵先生が詳しく解説してくれた「Makee ‘Ailana」の歴史とその美しさは、まさにハワイの魅力を凝縮したものです。
記事を読んでいるだけで、まるで自分もマキーアイラナにいるかのような気分になりました。
そこに存在した美しい自然、楽しむ人々、そして、そのすべてを見守っていたJames Makee氏の生きざま。その全てがこの曲に詰まっています。
ハワイの歌はただの曲ではなく、その地の歴史や人々の思い出、感情を音と言葉で表現したもの。
それが改めて感じられる記事でした。
特に、マキーアイラナが今はない場所であるにも関わらず、この曲を通じて今でも人々の記憶に生き続けているという事実は、ハワイの文化の奥深さを再認識させてくれます。
最後に、記事を通じて感じたのは、歌と踊りによって過去の素晴らしい記憶が今も生き続け、新しい世代に受け継がれていくハワイの文化の豊かさです。
これからもそのような歴史や文化を大切にしていきたいと思います。
素晴らしい記事をありがとうございました。
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