有名なハワイアンソング「’Ulupalakua」。
1947年に書かれたこの楽曲は、マウイ島のハレアカラ火山の南西側山麓に位置するウルパラクア牧場で見た光景から生まれました。
美しい自然の風景と共に、勤勉なカウボーイたちの生活が歌詞に込められています。
歌詞に散りばめられた各エピソードは、ウルパラクア牧場の魅力とハワイの文化を伝えています。
首藤雅恵先生が、語り継がれるハワイアンソング「’Ulupalakua」の魅力を独自の視点で解き明かしてくれました。美しい言葉に乗せて描かれるウルパラクア牧場の風景、強く生きるパニオロ(カウボーイ)たちの姿、ジンジャーの花の甘い香り。それぞれのエピソードを通じて、この地のリアルな魅力を再発見します。
‘Ulupalakuaの意味を解説
Aʻo ʻUlupalakua
ここは名高きウルパラクア 和訳: Na Pua O Kuali’i Masae
という軽快な歌い出しで始まる有名なハワイアンソング「’Ulupalakua」について書いてみたいと思います。
この楽曲は1947年にその作者、John Piilani Watkins氏(1928-1983)がマウイ島のハレアカラ火山の南西側山麓に位置するウルパラクア牧場を訪れた際に感じた深い感動から生まれました。
逞しく働くパニオロ(カウボーイ)たち、ジンジャーの花の甘い香り、そして高地の冷たく清々しい空気といった全ての要素に魅了され、その情景が歌詞に織り込まれています。
‘Ulupalakuaは、Kulaという町の最南端に位置する牧場地帯の名前です。
古代マウイのチーフが’Uluと呼ばれるブレッドフルーツ(パンの木の実)をウルパラクアから海辺の地域のKipahuluまで運ばせた際、目的地に到着するころには背負っていた’Ulu(ウル)が熟して甘くなり(Palaパラ)、それがウルパラクアという名前の由来となったと言われています。
Ka home aʻo paniolo 冷たい夕暮れ時の風が肌を刺す
カウボーイの故郷 和訳: Na Pua O Kuali’i Masae
ウルパラクア牧場は3,000m以上の高さを持つハレアカラ火山の南西側斜面に位置しており、それはかなり傾斜のある貿易風の下にあります。
日が暮れると、とても冷たい空気が流れます。
私自身もウルパラクア牧場を訪れたときは、寒さのあまりジャケットとムートンブーツを必要としたことを覚えています。
A`o `Ulupalakua 私の装飾品であるレイ
ウルパラクアの 和訳: Na Pua O Kuali’i Masae
He nani ma’oli nō 甘くて良い香りのジンジャー
ただただ美しい 和訳: Na Pua O Kuali’i Masae
‘awapuhiとは、ジンジャーの花を指します。
ハワイの島々ではこの花を見ることができますが、特にマウイ島では至る所でその花が咲いており、その独特の甘い香りが漂います。
ジンジャーの花は、レイや香水として非常に人気があります。
繊細な花びらから作られる’awapuhiのレイは、新婦が身につけるレイとしてもポピュラーです。
夕暮れ時には、花の放つ香りが濃厚になっていくので、ロマンチックなイメージの花であり「豊かな愛が広がる」という花言葉もあるようです。
O kaho`olawe カホオラヴェ島の美しさを眺めました 和訳: Na Pua O Kuali’i Masae
ウルパラクア牧場の真下に位置するマケナ湾は、かつては島へ向かう牛を乗せた船が停泊していた場所だと言われています。
現在では、カホオラヴェ島を眺めることができる長閑なビーチとして、休日にはシュノーケリングを楽しむ人々の憩いの場となっています。
Nā pipi a`o kiu 運搬する人たくさんの牛、投げ縄
牛を見張る人 和訳: Na Pua O Kuali’i Masae
ここで言う牛を見張る人とは、カウボーイのことを指します。
このバースを歌わない、踊らないことも多いのですが、牛のモーションなどはダンサーによってその表現の違いを楽しむことができるバースです。
カウボーイソングなので圧倒的に男性が踊ることが多いですね。
A`o `Ulupalakua
He `īnikiniki ahiahi
Ka home a`o paniolo ウルパラクアの物語を伝えましょう
冷たい夕暮れ時の風が肌を刺す
カウボーイの故郷 和訳: Na Pua O Kuali’i Masae
おわりに
ウルパラクア牧場を最後に訪れたのは数年前ですが、とてものどかで悠々とした時間が流れる場所でした。
車を走らせていて、馬たちに出会ったら絶対に追い越してはいけないと聞いていたので、のんびりそろそろと馬たちの後を静かにドライブしたのを覚えています。
何となく馬たちもそれぞれに個性があって、とても誇らしげに歩いていたように思えました。
現在、ウルパラクア牧場にはワイナリー(マウイワイン)が併設されており、朝から昼過ぎまで1時間ごとに試飲可能なガイドツアーが行われています。
空気が乾燥しており、涼しいマウイの高地はワインの品質管理に適しているんだそうです。
パッションフルーツや美味しいパイナップルワインなど、ハワイらしいワイナリーでした。
また昔のパニオロたちの生活やカラカウア王が度々この地を訪れた際の貴重な写真などを展示しているギャラリーもあり、いにしえのハワイ文化の発展に欠かせなかったパニオロたちに思いを馳せることも一興です。
首藤先生の鮮やかな描写により、ウルパラクア牧場の風景が目の前に広がります。美しいジンジャーの花の香りや、カウボーイたちの生活の中に息づくハワイの伝統文化、そして地元のワインに至るまで、’Ulupalakuaの魅力を一つ一つ紐解いてくれます。実際にウルパラクア牧場を訪れた際のエピソードも交えつつ、首藤先生が詠んだ’Ulupalakuaの世界に、自分自身を見つけることでしょう。この記事が、ハワイの魅力を新たな視点から探求できるきっかけになれば幸いです。
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