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風の時代を旅するタロット小説 第I話・魔術師~創造者

風の時代を自由に旅する愚者。

愚者の旅になぞらえ、主人公である<愚者>と共に、日本縦断の旅に出ましょう。

風の時代を生き抜くすべをタロットカード22枚の物語で読み解く旅へ。

>>前回のプロローグ(0-愚者)はこちら

第I話・魔術師~創造者

晴天が続く北の大地を、幼い頃の思い出を辿りながら函館へと向かった。

「引っ越しするときにアルバムなんて見はじめてしまったら、先に進まないでしょ? それと同じよ」と相棒のカメラに独り言を言ってみる。昔と変わらない場所を見つけるたび、懐かしい思い出が鮮やかによみがえり、カメラに収めたい衝動を抑えきれなかったのだ。

「時間制限なども何もない旅に出たんだから、自由気ままでいいの」と自分自身に言い聞かせながら“寄り道”を楽しんでいる。久しぶりに心の余裕を取り戻している気がした。

青春時代を過ごした札幌では、初デートの場所や母校などにも立ち寄った。

「あの頃夢見ていた大人になれているか?」と聞かれれば自信はなかったが、まだ見ぬ世界へ旅立とうとしている私には後悔なんてもちろんない。

函館からはフェリーに愛車のLeoを乗せ、本州最北端の地・大間町までおよそ4時間。

目指すは、青森県鶴田町。夕方までには到着できそうな距離だ。早めに宿を確保し、明日の朝に備えることとする。

いつだったか旅行のパンフレットで見た、あの幻想的な風景を一度この目で拝みたかったのだ。

青森県 鶴の舞橋 夜明けの風景

「鶴の舞橋」は、全長300メートルもある日本一長い木橋三連太鼓橋。遠くに見える山は津軽富士と呼ばれる岩木山いわきさん

長い木の橋・長生きの橋ということで、この橋を渡れば長生きできるという言われもある橋だ。橋には、数字にまつわる不思議な謎も秘められているというから実に興味深い。

全長300メートル、幅3メートルの三連の橋。橋脚の直径が30センチ、丸太使用量3,000本、板材3,000枚と3づくし。私の好きな数字も「3」なので何となく、ご縁を感じる。

夜明け前に絶景の撮影のポイントをチェックしてスタンバイ完了。自販機で買った缶コーヒーをすすりながら夜明けを待つ。

すると私の横に大きなスケッチブックと画材を持った青年が現れた。

「おはようございます」

青年は丁寧に挨拶をしてくれた。

「おはようございます。朝から、えーっと、スケッチですか?」

「あ、はい」

青年はいそいそとスケッチブックを広げて、手際よく絵筆やパレット、水入れを並べ始めた。

「夜明けを書くんですよね? その……夜明けの時間って一瞬ですよね?」

「はい。そうですよ。きっとびっくりするはずですよ」

青年は自信満々に答えた。

「夜明けのタイミングなんてほんの一瞬なのに……。写真に撮ったものを後からじっくり描けばいいのに……」

そう思ったが、放っておこう。私はシャッターチャンスを狙うんだから。

徐々に山の陰から陽の光が差し、空が紺色から紫、そしてオレンジ、ピンクへと光りのベールが風に揺れるようにグラデーションを織りなしてきた。

あまりの美しさに声も出なかった。

「すごい……。マジックアワーってこういうのね……」ため息が漏れた。

ファインダー越しではもったいないと思って、数枚の写真を撮影した後はじっくりと瞳に焼き付けようとカメラをおろした。

私の横で青年はパレットに混ぜた絵の具を絵筆につけ、まるで魔法でも使ってるかのように白いスケッチブックへとすらすらと走らせている。

今目の前にある空から絵筆を使って、そのままの色を真っさらな用紙に再現するかのようだった。

「すごいわね。絵筆がひとりでに動いているみたい」

「ほらね。驚いたでしょう? 描く前からしっかりと構想を整えていますからね」と青年は微笑み返した。

即興で彼が描いた夜明けのこの絵はきっと私の写真より何倍も輝いているだろう。

「将来きっと素晴らしい画家になるわね」

私はそう声をかけて、徐々に明るくなっていく空に目を移した。

瞳の奥には学生時代に就職活動で、出版社を目指した私そのものが見えた気がした。

<魔術師のカードの意味>

大アルカナ1番目のカードとしての役割を与えられた魔術師は、活動的な男性原理のアーキタイプを示していると言われています。若き魔術師はワンドを持つ右手を空に、天空の光やエネルギーを地上に降り注がせ「創造」という目的を果たそうとしているのです。

正位置: 創造する、独創性、準備してスタートする、自信

逆位置: 未熟者、迷い、奇をてらった行動、ペテン師

タロット解釈のための数秘術

数秘術「1」は、はじまりを示す数字です。革新、リーダーシップ、主体性や独立を示し、力強く物事をスタートするナンバーです。この数字を誕生数に持つ人は新たな可能性を切り開く先駆者としての特質を備えていると言われています。

文:真龍人(マリユドゥ)
校正、協力:miki_yaima (from石垣島)

マリュたんからのメッセージ

第1話の登場人物は、未来の画家を目指す若き青年。

魔術師のイメージになぞらえた青年から、あふれんばかりのエネルギーと創造性を主人公の愚者は感じ取ったようです。

物語には毎回素敵な観光地も登場します。コロナ禍で遠出ができないこのご時世。少しでも旅行気分を感じていただけるよう、観光名所や穴場スポットなど魅力的な場所をセレクトしていきます。

あなたの住んでいる町、故郷の町は登場するでしょうか?

近隣のパワースポット情報などもお楽しみくださいね☆彡

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