YOKU STUDIO による連載企画、SPIRITUAL REBIRTH PROJECT。
「スターシード 再⽣」シリーズ、第5弾です!
前回は、現代スピリチュアルにおける「スターシード」の⾔説の問題点について分析しました。
「あなたが地球で⽣きづらいのは、スターシードだから」という説明が、様々な悩みや苦しみを抱えながら⽣きてきた⼈々にとっての、ある種の救いになるからこそ、スピリチュアルの世界で「スターシード」という概念がポピュラーになったのだと考えられます。
でも、「スターシード」を、地球での⽣きづらさの理由づけとなる魔法の⾔葉として捉えてしまうと…
この地球での⽣を軽視して、⾃分の魂のルーツとしての理想的な⾼次元世界を夢⾒るような、浮世離れした態度につながってしまうことも。
実は、私たちが⽣きる世界とは異なる理想の世界を想定するこのような想像⼒というのは、かなり古くから、神秘主義、スピリチュアリズムのなかに多く⾒られるものでした。
今回からは、「スターシード」をめぐる想像⼒にせまるために、その歴史を分析していきます!
初めに取り上げるのは、「グノーシス主義」。
⼀⾒、「スターシード」とは何も関係なさそうに感じられますが、実はそこには深いつながりがあるんです…!
・グノーシス主義とは?
「輪廻転⽣ 再⽣ ⑥」で紹介した通り、グノーシス主義とは、紀元後1世紀頃から地中海世界を中⼼に起こったとされる思想運動です。
⼤貫隆⽒は『グノーシスの神話』のなかで、その概要について、以下のように語っています。
グノーシス主義とは何か。(中略)それは、すでに「はじめに」で触れたとおり、歴史的には、初期ユダヤ教の周縁に、原始キリスト教とほぼ同じ頃に現れ、やがてキリスト教と接触するに及んで、最⼤の『異端』とされた。なぜなら、本来の⼈間は⾄⾼の神の⼀部である、という思想だったからである。ただし、現実の⼈間は居場所を間違っている。それゆえ、⾃分の本質を認識(ギリシア語で「グノーシス」Gnosis)して、本来の場所へ⽴ち帰らねばならないというのである。
(⼤貫隆『グノーシスの世界』、講談社学術⽂庫、2014 年、16 ⾴)
グノーシスはキリスト教の異端思想として有名ですが、他にもさまざまな宗教との関係性を持っています。
たとえば、かつてユーラシア⼤陸⼀帯で広く信じられたマニ教、そして現在でもメソポタミアに信者が存在するマンダ教も、グノーシス主義の宗教なんです。
グノーシス主義の特徴は、魂と⾁体の徹底した⼆元論。
…⼈間の魂は、本来は⾄⾼神の⼀部である。しかしそれは、悪の神としての造物神によって⽣み出された、⾁体を含む物質世界のなかに閉じ込められてしまっている。…
このような前提に⽴つからこそ、⾃分の本質としての魂に向き合い、それを「認識」(=グノーシス)するという、智の働きが重要視されるのです。
キリスト教(あるいはそのルーツであるユダヤ教)においては、⾄⾼神であるヤハウェは、この世界を作り出した造物神とイコールです。
それゆえ、造物神を否定し、それを超えた⾄⾼神と個⼈の魂を同⼀視するグノーシス主義は、キリスト教の正統の考え⽅から⾒れば、かなりラディカルな「異端」思想なのです。
・⽬に⾒える世界=悪?
⼈間は⾃分が⾁体と魂、すなわち本来の⾃⼰に分裂していること、その本来の⾃⼰がこの世界の何処にも居場所を持たないことを発⾒する。この世界に対する絶対的な違和感の中で、本来の⾃⼰がそれらを無限に超越する価値であると信じる。これこそグノーシス主義者の世界観に他ならない。
(同上 29 ⾴)
⾁体の死こそは、魂が解放される瞬間に他ならない。しかし、解放された魂は何処へ⾏くのか。その⾏く先は、この詩篇にも⾔うとおり、魂の「いにしえの故郷」である。当然その在り処は惑星を超え、⻩道⼗⼆宮を超え、⽬に⾒える宇宙万物を超えた彼⽅、ストアの哲⼈には思いも寄らなかった「世界ならざるもの」、すなわち世界の外でなければならない。それはまた詩編⼀〇四篇の創造神も超えなければならない。悪の勢⼒としての宇宙万物、太陽を含む惑星を創造した神が真の神であり得るはずはないからである。
グノーシス主義の根本にあるのは、⽬に⾒える世界は、すべて悪(闇)の性質を持つものだ、という思想です。
つまりグノーシス主義者は、この世で⽇常⽣活を送る上では不可⽋なものとしての物質をさげすみ、⽬に⾒えない精神世界こそ善(光)なのだと定義するわけです。
彼らから⾒れば、私たちの地上の⽣というのは、ある意味で牢獄のようなもの。
その牢獄から逃れるすべが、「認識」=グノーシスであり、また究極的には、⾁体の死による魂の解放、そして不可視の「いにしえの故郷」への帰還なのです。
このような考え⽅は、古代ギリシャのプラトンが唱えたイデア論に、かなり類似しています。
(プラトンの思想を重要なルーツとして発展した新プラトン主義にも似ているように思えますが、新プラトン主義は、⾄⾼の存在である「⼀者」から流出したものとして物質世界を捉えるので、必ずしも物質=悪ではない、と考えるところに、グノーシス主義との差異を⾒出すことができます。)
⾁体と魂を明確に切り離し、物質世界を下位に、精神世界を上位に置くという構造が、グノーシス主義の核だと⾔えるでしょう。
・グノーシス主義と「スターシード」⾔説をつなぐ「この世界への違和感」
さて、このようなグノーシス主義の構造と、前回詳しく検討した、現代スピリチュアルにおいてポピュラーな、地球での⽣きづらさを強調する「スターシード」⾔説との間につながりがあること、お分かりいただけたでしょうか?
…「スターシード」は、⾼次元の宇宙に魂のルーツを持っていながら、崇⾼な使命を遂⾏するために、わざわざ低次元の地球にやってきた助っ⼈。だから、地球で⽣きづらいことは当たり前なんだ…
このように主張する「スターシード」⾔説のベースにあるのは、地球における物質世界を下位に、それを超えた不可視の「宇宙⽂明」を上位におく、まさにグノーシス主義的な⼆元論。
両者ともに、「この世界への違和感」を前提とした⾔説なんです。
「スターシード」⾔説が⽣まれたのは 20 世紀後半のニューエイジの時代なので、グノーシス主義の隆盛期とはずいぶんと時代的に差があります。
しかし、グノーシス主義とニューエイジ思想には少なからず類似が⾒られますし、特に「この世界への違和感」を強調する現代の「スターシード」⾔説とは、重なり合う点が多いのです。
そこで次回は、かつてグノーシス主義が誕⽣した社会学的背景と、現代社会の状況とを重ね合わせて分析しながら、グノーシス主義とニューエイジ思想、そして「スターシード」⾔説との結節点を考えていきます!
どうぞお楽しみに!
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