「初心者が最初に巡り会いたい『深楽しい』西洋占星術講座」にようこそ!
前回まで、12つハウスの解説をさせていただきました。
本講座では、ハウスは物質性を、星座(サイン)は精神性を象徴すると定義しています。
物質性とは、再現性があり、五感によって確認できるもので、
更に言えば、他者と共通の認識を持つことができることです。
対して精神性とは、抽象的で、個人の感性・感覚によって異なり、
個人の体験・経験則が「個人の真理」となり得ることを意味しています。
今回から、伝統占星術、または正統占星術の智慧を借りていきたいと思います。
*今後は、伝統占星術という言葉で統一させていただきます。*
伝統占星術では、天体からのメッセージを受け取るために、
ハウスと星座(サイン)の象意を混同しないことが重要とされているようです。
本講座では、天体の働きの現実に対する作用を理解する上で、
伝統占星術が提供してくれる智慧を借りて、
ハウスシステムを更に深堀していきたいと思います。
それでは、今回も是非最後までお付き合いください!
伝統占星術とは
伝統占星術、並びに、正統占星術とは、簡単に言えば、7天体のみを使った占星術です。
これは言い方を変えると、トランスサタニアンを用いない、完成された世界観・解釈といえます。
1週間が7日しかなく、それ以上日にちが増えないように、伝統占星術では、7天体以降の象意は採用しません。
伝統占星術の特徴と特長を以下にまとめました。
- 天体は土星までの7天体のみ採用する
- ハウスがメインであり、星座(サイン)よりも優位である
- アスペクトの数が少なく、メジャーアスペクトのみを扱う
- 天体そのものにオーヴを持つ
- 客観視を重視し、スピリチュアルな感性や内面性(心の動き)を重要視しない
- ルールを明確に定義し、迷わない
- 吉凶そのものよりも、具体的な可能性や選択肢を示す
①の7天体については、文字通りですが、天体にオーブ(許容範囲)があるというのは新鮮ですね。
アスペクトの種類が少ないことで、天体のハウスによる強さや影響力が重視されていることが分かります。
伝統占星術はルールがハッキリしていることで、客観的な意見や尺度を得られやすいことも特徴的です。
現代占星術に限らず、「占い」は、人の意思に介入し、指図し、価値観を押し付けるような押しつけがましさがありますが、伝統占星術では、理路整然と客観視を促す側面があるように思います。
ホロスコープリーディングを学び、また楽しむ上で、「自分勝手な判断」や「過度に影響を受けること」は、かえって偏った価値観を育てることになるでしょう。
そのため今回の講座からは、伝統占星術の解釈や価値観に触れることで、今後のホロスコープリーディングにお役立ていただこうと思い立ちました。
それでは、今回は伝統占星術におけるハウスシステムについて解説させていただきます。
伝統占星術が教えるハウスの重要性
本講座はこれまで、「ナチュラルサイン」と「ナチュラルハウス」などの用語を用いて
星座とハウスの関係性について触れてきました。
また天体・星座・ハウスに優劣はありませんが、ホロスコープにおける影響力の強さについては、
天体が最も強い影響力を持つ、ともお伝えしてきました。
10天体は、それぞれの精神性・エネルギーを星座に反映し、
同時に代表的・象徴的な学びや体験をハウスに投影しています。
シンプルに言えば、伝統占星術では、星座よりもハウスを重要視します。
それはハウスが、現実的・実際的な状況や環境を暗示・説明するからです。
本講座では、伝統占星術と現代占星術のどちらかを贔屓するわけではありませんが、占星術がこれまで築いてきた概念体系を活用するために、伝統占星術が持つ特徴と特長をご紹介させていただいています。
ハウスから分かること
ハウスは現実的に起こる出来事や傾向を指し示します。
ホロスコープには12つのハウス(領域・部屋)がありますが、すべてのハウスに天体が位置することはありません。
そのため伝統占星術が明言していることは、「ハウスに位置する天体の強さ」であり、
「ホロスコープの持ち主の行動力の強さ」を表すということです。
占星術を「占い」や「吉凶」のために活用されたり、はたまた「(未来)予測」や「相性(シナトリー)」のために活用されますが、その上で重要なことは、
コールドリーディングやバーナム効果などに見受けられる「錯覚」や「誘導」ではなく、実際的な指針を明示できるか、否か、ということです。
筆者は占星術を「自己分析」や「自己肯定」、「自己信頼」のために星々の意図を読み取ることで、人生の選択肢や意思決定に関して、「自分で自分を守り、活かし、表現する力」を引き出すためのツールとして扱っています。
今後講座が進むにつれて、シナトリーや未来予測についても触れていきますが、まずはホロスコープが持つシステムを十分に理解し、また占星術が提示できるものと、読み手が拾い上げることができるものを明確に知っていくことが重要です。
伝統占星術は、決して星座やスピリチュアリティを軽視しているわけではありません。
ですが私たちは物質世界(物質次元)に生き、また肉体という物質性を操って生きていることは紛れもない事実です。
ホロスコープを通して、より善い概念と観念によって、広い視野と俯瞰した視点で自分自身と世の中を見られること。
それこそが私たちがホロスコープから得られる恩恵といえます。
少し話が回りくどくなりましたが、今回の講座では、伝統占星術におけるハウスシステムを深堀しながら、天体が物質性にどのような影響を与え、
また物質世界で受ける制約・制限によって、どのような傾向や性質を持つのかを吟味していきたいと思います。
ハウスシステムの概要
伝統占星術におけるハウスシステムをご紹介します。
これまでの講座では、点星点を含めたハウスの解説をし、ホロスコープの全体像をお伝えしてきました。
伝統占星術に触れたことが無い方にとっては新鮮、且つ、とっつきにくい内容になるかもしれませんが、1つひとつ吸収していってくださいね!
ハウスの強さ
ハウスには強弱があります。
これは優劣ではなく、影響力が強いという認識です。
- アングル(アンギュラーハウス)が最も強い影響力を持つ(強)
= 第1・4・7・10ハウス - サクシデントとのハウスが次に強い影響力を持つ(中)
=第2・5・8・11ハウス - カデント(ケーダント)のハウスが最も弱い影響力を持つ(弱)
=第3・6・9・12ハウス
ハウスと星座は、天体によって関連性を持ちますが、天体を介さずに、ハウスと星座が直接的な繋がりや作用を与え合うことはありません。
アングルとは「角」という意味を持ち、ホロスコープの中心を象徴する「柱」です。
本講座では「点星点」という言葉を用いて、アングル/アンギュラーハウスの重要性をお伝えしていますが、その代表例が、上昇星やチャートルーラー、カルミネートの天体です。
天体が特定の強さや影響力を持つ際の条件は、ハウスの位置となり、アングルに近い、もしくは、重なっていることで、その存在感と影響力を持つことになります。
サクシデントとは「次に続く」という意味を持ち、アングルに続く影響力を持つ、ということです。
カデント/ケーダントとは、「落っこちる」という意味を持ち、アングルから零れ落ちる、というような弱体的な意味を持ちます。
ホロスコープ上の天体の分布は、星座(サイン)によって、精神的な特徴が気質が表すと同時に、ハウスによって、天体が持つ、または引き起こす、招き入れる事象などを象徴します。
ホロスコープを平面的に捉えると、円環の世界のように見えますが、実際のところは、螺旋階段が昇るように、人生が展開されていく4次元的なイマジネーションを要求もします。
私たちが日常的に知覚・認識する感覚から離れつつ、現実性や物質性を失わないためには、アングルは非常に重要で、目立つ柱のような存在なのです。
ASC(アセンダント)は、第1ハウスと第12ハウスを分ける感受点ですが、第1ハウスと第12ハウスは地続きではありません。
それと同時に、ホロスコープは自然界の流れを汲んでいるため、第12ハウス側のASCに近い天体を上昇星とし、第1ハウス側のASCの近くに天体が位置していても、上昇星という役割や立場、存在感と認めることはしないのです。
*第1ハウス・アングルに関わるという意味では、ASCに近い天体は自我意識の発達や、自我意識の強弱に関わります。*
ハウスの区分
星座に三区分があるように、ハウスにも区分があります。
天体が持つ影響力は、以下の三区分に表されます。
- 【自分自身に関するハウス】
= 第1・2・12ハウス
⇒ 自己実現、自己啓発、自己投資などの、自分という存在そのもの - 【プライベート環境のハウス】
= 第3・4・5ハウス
⇒ 友人関係、家族関係、趣味などの、自分を取り巻く環境 - 【他人のハウス】
= 第6・7・8ハウス
⇒ 決まった相手との関係性や交流 - 【パブリック環境のハウス】
= 第9・10・11ハウス
⇒ 不特定多数の人との関係性や交流、発展的な付き合い
ハウスは、実際的な事象や出来事として起こる「現実性」を表し、星座(サイン)は、非物質的・精神的な傾向や気質を表します。
天体のハウスの偏り(分布)と、星座の偏りには、間接的な関係はありますが、そういった関係性は天体を通じて見出すべきもので、現実性と精神性を区別しながらホロスコープリーディングをしていくことが重要です。
ハウスと天体
ホロスコープを作成する際、正確な出生時間(分単位)が分からない場合、正午12時に時間設定をすることがあります。
生年月日が定かではない、ということは現代社会では非常に稀ですが、
出生時間に関しては、母子手帳を持っていない、両親や家族が正確な時間までは把握していない、ということがあります。
正確な出生時間が重要である理由は、月が2時間で星座を変えてしまいますし、4分ほどでハウスが変わってしまうことにあります。
月は、2時間で1度進み、1日で12度進みますため、間をとって中間の時間帯を選択するのです。
太陽と月は、ライツやルミナリー(ズ)と呼ばれるほど、大変重要な天体(星)ですので、
「精神の器である心」を象徴する月の位置が分からない場合、正確なリーディングができなくなります。
正確な出生時間を割り出す方法(レクティフィケーション)はありますが、当人の記憶や解釈だけでは大変難易度が高いとされています。
*レクティフィケーションについては、また別の機会に解説させていただきます。
昼と夜の天体(惑星)
伝統占星術は、トランスサタニアンを除外した7天体によるリーディングをします。
現代占星術では、トランスサタニアンの3天体の影響力を研究・精査していることですが、天王星の発見以降における、事象との関連性や時代の流れを鑑みても、トランスサタニアンを除外することはできない、と考えられます。
ただ今回は、伝統占星術におけるルールやシステムをご紹介していますので、このまま伝統占星術が定義する天体の要素をお伝えしていきます。
伝統占星術では、太陽の光を重要視します。
それは昼生まれか、夜生まれかによって、天体が持つ力の強弱(影響力)が異なるということです。
- 【昼の惑星】
= 太陽・木星・土星 - 【夜の惑星】
= 月・金星・火星 - どちらにもなり得る惑星】
= 水星 - 【男性格の惑星(天体)】
= 太陽・火星・木星・土星 - 【女性格の惑星(天体)】
= 月・金星 - 【どちらでもない惑星】天体)】
= 水星
ホロスコープは、ASCとDSCにより、南半球と北半球に2つに分割し、どちらの半球に天体が位置しているかで、内面性と外面性の強さが示されます。
昼の惑星が、地平線よりも上部に位置していれば、それだけ惑星の力が発揮されやすい条件(資質)を持っている、ということになります。
このような惑星の配置による作用は「セクト」と呼ばれます。
*男女の別もまたセクトに含まれ、男性が持つ男性性を表す天体の作用と、女性が持つ女性性を表す天体の作用、またそれらの逆の作用に関して、天体が持つ状態や条件、環境を考慮することが重要です。*
ちなみに、性別は昼夜ほどの決定力はない、とされています。
先ほど「太陽の光」が重要視される、とお伝えしました。
ホロスコープを2つに分割し、天体の分布によって、どちらの半球に天体があるかによって、主観的であるか、客観的であるかが表されます。
南半球は、第7~第12ハウスの領域ですから、他者や社会との関わり合いがクローズアップされますので、能動的に動く必要がありますし
北半球は、第1~6ハウスの領域で、自己成長を遂げる中で、身近な人や環境との交流がありつつも、受容的な生き方や振る舞いが目立ちます。
伝統占星術では、単に天体がどちらの半球に位置しているかで、主観的・能動的な性格や気質が強調・助長されるかは決められない、としています。
なぜなら昼の惑星が北半球に位置する、または夜の惑星が南半球に位置することによって、それぞれの惑星の力が弱体するからです。
「適材適所」という表現が的確とは言い難いですが、それぞれの天体が活躍でき、影響力が引き出される場所がある、ということですね。
そのため伝統占星術では、昼生まれの人が、南半球に天体を多く持っていれば、客観的な性格や気質が強いとし、逆に夜生まれの人が、北半球に多くの天体を持っていれば主観的な人とするのです。
天体はハウスによって、それぞれの影響力が引き出されるか、もしくは抑え込まれるか、という明確な作用を持つとするのが伝統占星術ということになります。
ちなみに、昼生まれの人のホロスコープで、昼の惑星が南半球にある場合と、夜生まれの人のホロスコープで、夜の惑星が北半球にある場合、
それらの天体は良い状態にあるとし、ハルブと呼びます。
これは天体が自身が支配する星座(サイン)にあることで、その天体が勢いづいたり、本領を発揮しやすいことと似ていますね。
先ほど性別の違いについて触れましたが、ハルブである時に、男性格の惑星(天体)が男性星座に位置する時、また女性格の惑星(天体)が女性星座に位置する時は、
ヘイズ、もしくは、ドメインと呼ばれます。
ただ覚えておいておきたいことは、ハウスによる天体の作用は、根本的な作用として働く初期設定(デフォルト)のようなもので、努力や根性、精神論で簡単に軌道修正をすることができない、ということです。
星座(サイン)はハウスと違い、性質やエネルギーがグラデーションであるがために、場数や経験値によってまたは他の星座を鏡や参考にすることで、幾らかの自由が利きます。
ハウスは物質性を象徴しますので、「変えられない要素」や「与えられた資質」という意味で、天体の状態や強弱を決定づけるといえるでしょう。
吉星(ベネフィック)と凶星(マレフィック)
更に付け加えるとすれば、伝統占星術では、ベネフィック(吉星)とマレフィック(凶星)の概念を肯定的に採用しています。
- 【吉星】
= 太陽・月、金星・木星 - 【凶星】
= 火星・土星
「吉凶」というと、損得勘定や機会損失などの個人的な都合を想起させます。
従来火星と土星は、衝動的な災いや、運命的な困難などをもたらすとされ、毛嫌い、もしくは、敬遠されています。
これは大変自然な反応ではあるのですが、人間の都合にとっての自然であって、宇宙の理や魂の計画(望み)にとっては、歪みとなります。
物的証拠や普遍的な解釈ではありませんが、物事の興りには必ず原因や動機があります。
天や魂の意志が投影される出生ホロスコープが、私たちの都合に沿うとは限りません。
これは「善悪の基準」や「快楽や安心だけを求める欲求」がいかに私たちの自己都合によるものか、ということになります。
こういった考え方は、私たちを不自由にするように思えますが、物質世界において「枠組み」や「制約・制限」の中にこそ自由を見出すことができるため、優劣や損得勘定ではない「大いなる働き」が作用していることを改めて認識する必要があるはずです。
ホロスコープに分布において、吉星と凶星の配置(ハウスの位置)は、当人の人生観や道筋の重要な要素になります。
すべては必然性によって噛み合い、組み合わさっているため、それが吉星であろうと、凶星であろうと、本人には必要な要素なのです。
伝統占星術では、7天体のみを採用しますが、水星だけが吉星・凶星のどちらでもありません。
これは、水星が昼・夜の天体(惑星)のどちらにもなり得ることと同じです。
伝統占星術における天体の解説は後述しますが、水星は「他の星に成り代わる」という特質を持つとされています。
それは「どっちつかず」にも思える器用さでもありますが、それとともに水星は太陽に非常に近く、太陽に近いことで「コンバスト」の状態になることで、水星本来の力が発揮されない、という特殊な条件を天体でもあるのです。
占星術を「占い」や「カウンセリング」に活用する際、吉凶の判断を明示するだけでは、ネガティヴな解釈だけが強調され、依頼者・相談者や、読み手は落胆してしまうでしょう。
ですが先ほどお伝えした通り、ベネフィックやマレフィックが指し示す「吉凶」とは、本人に必要な現象を描写するものであって、当人の意志や解釈次第で、杞憂に終わることも、期待し過ぎて空振りするようなことにもなります。
私たちは目に見えない事柄や、自分の力ではどうしようもない事柄に関して非力さや無力さを感じ、自分自身を無下に扱ってしまうことがありますが、そのような価値観を鎮めるためにも、冷静さと謙虚さが重要です。
過度の期待や謙虚さは、自虐や自傷となり得ること、また過少評価や自尊心の欠如は、自分自身はもちろんのこと、支えてくれる・支援してくれる人への冒涜にもなり得るのですから。
ハウスと星座(サイン)の区別をつける必要性
他者からの干渉・影響・刺激によって、私たちは考えを変えることや改めることはありますが、実際的な場所や環境を変えることはありません。
先ほど星座(サイン)の性質やエネルギーはグラデーションとなっていて、幾らかの自由が利く、と述べました。
これはサビアンシンボルに見られる度数にも関わっています。
星座が持つ象意や象徴は、環境や条件、立場によって変容・変質しやすいのです。
非物質的・精神定な作用は、あくまで内的な変化をもたらします。
そのため星座とハウスは、内面性と外面性という対極的な働きを持ち、またそれらは天体との絡み・組み合わせによって特定の意味を持ちますが、星座とハウスが直接的な変化・作用を及ぼし合うことはありません。
プラネタリウムがイメージがしやすいと思いますが、地上が動くことはなく、天空に映る星座は動き続けています。
これをホロスコープに当てはめてみますと、ハウスという環境や土壌は物質的な原理によって固定化され、ハウスの象意がコロコロと変わることはあり得ません。
ですから伝統占星術が明言するように、星座(サイン)とハウスの象意や意味を混同せず、物質性・精神性(非物質性)の作用の区別をしながら、ホロスコープを読み解くことで、誤解や混乱が起こることがなくなるでしょう。
右回転と左回転
12星座と12ハウスの流れは、ASCを起点とし、反時計回りに一巡し、天体も反時計回りに回ります。
*ドラゴンヘッドとドラゴンテイル(ノード軸)は時計回りです。
金星を除く実際の天体は、左回りに公転します。
ホロスコープの中心は「地球」であり、ジオ・セントリック占星術はあくまで地球を中心点としているため、左回り・反時計回りの流れによってホロスコープが成り立っています。
地球は左回りに公転し、東に向かって自転しています。
太陽系は、太陽を中心に10天体が回るシステムを持っていますし、地球を中心としたジオ・セントリック占星術は、東の地平線から昇る太陽の動きを重視していることは自然の理に適っています。
ですが、不思議ですよね。
ホロスコープには、惑星の公転の回転とともに、自然の摂理としての天体の流れ(太陽がASC(東の地平線)からDSC(西の地平線)に向かう流れ)も同時に描かれているのですから。
またASCとDSCが対を成しているとともに、ICとMCも対極性を象徴しています。
ASCは魂が肉体に受肉することを象徴し、ICという家庭環境で育ち、
その後自立心を発達させながら、DSCが象徴する他者との関係性を築く体験を積み重ね、
遂には、MCという未来性・社会性に向かう人生の流れがホロスコープに描かれます。
その流れに沿って、星座(サイン)と12ハウスは並んでいるわけですが、ネイタルチャートにおける天体のハウスの分布は、私たちの日常的な時間の感覚・認識とは異なります。
特定のハウスに天体が位置しているからといって、そのハウスの学びを体験するまでその天体の働きが機能しない、ということにはならないのですから。
占星術では、牡羊座に春分点を置き、毎年の春分の日から1年が始まるとしています。
そのため季節と星座は、非常に密接に関係しています。
一方で、ネイタルチャートにおけるハウスは、時間の流れや季節に左右されることはありません。
若くして表舞台に出る人もいれば、高齢になって表舞台に出る人もいますし、これらの逆も然りです。
これはハウスという領域や機能が、天体によってその人が持つ特質や特性を引き出されているということになります。
*トランジットによる天体のハウスの分布(配置)は、その時々に引き起る現実を象徴しますので、上記のネイタルチャートにおけるハウスの概念とは異なります。*
ハウスカスプと星座(サイン)カスプについて
ホロスコープには「境界線」や「玄関」、「表札」という意味を持つ「カスプ」が存在しています。
ホロスコープを作成する際に、4つの点星点の星座のカスプに目が行くと思います。
本講座では、プラシーダス方式によるホロスコープの作成方法について解説しましたが、その他の方式も試す価値があります。
星座(サイン)は30度きっちりと持つのに対して、ハウスの度数(幅)がバラバラで、インターセプトやダブルハウスが生じることに疑問を感じたことはありませんか?
ハウスの幅が30度にならない理由は、ホロスコープは星座(サイン)を中心に描かれているためです。
12星座は、黄道を基準に、平面的に30度ずつ均等に分けられます。
黄道は、地上から見ると斜めになっていますので、星座(サイン)を中心に描かれるホロスコープは、空間的には歪んでいて、それと連動して、ハウスの幅も異なる(歪になる)ということです。
何が言いたいかといいますと、ホロスコープは精神性を土台に、世界を斜めに見ているような側面があることで、物質性を象徴するハウスを見る際に、微妙な差異を考慮する必要がある、ということです。
また星座(サイン)とハウスには、カスプがあります。
星座(サイン)は、まるで1人の主人公があらゆる役を演じるかのように、様々な星座のエネルギーをまとい、変身・変容しますが、ハウスとなると、そうではありません。
主人公はある場所(ハウス)において強いられるものがあり、一方である場所では、逆に求められるものがある、という風に、ハウスは不変的・固定的な象徴を持つことが分かります。
ですからハウスの境界線は、自分の家の玄関と、隣人の玄関くらいの区別があり、ハウスのカスプは、明確な線引きがされる全く異なる領域なのです。
まとめ:伝統占星術は客観的な視座を与えてくれる
本講座では、伝統占星術におけるハウスシステムを解説させていただきました。
ハウスから読み取ることができることは、惑星でどの場面で出てきて、どんな状況にあるかなどの、物事の状況判断や本人が持つ対処する力などです。
そのため伝統占星術は、一般的な占星術が星座(サイン)を優位に扱っているのとは真逆で、ハウスを優位に扱い重要視し、客観的事実を重要視する占術といえるでしょう。
今回の内容は、現代占星術に親しみがある方にとって、少し「肩透かし」や「違和感」を抱かれる内容だったかもしれません。
ですが「伝統」や「正統」という形容詞が付く占星術ですから、それだけの重みと智慧が詰まっていることも確かです。
伝統占星術は、7天体のみを採用し、トランスサタニアンは除外しますし、星座(サイン)よりもハウスを重要視するため、主観に頼り過ぎない排他的な態度・スタンスを貫きます。
そのため拒絶反応や寂しさを感じてしまうこともあるかもしれませんが、そういった「普段とは違う感覚」を受け止めることで、コンフォートゾーンやホメオスタシスといった「親しみの外にある世界」を招き入れることができるはずです。
今回はハウスについての解釈を深めるための、伝統占星術の解釈や世界観に触れていただきました。
次回も引き続き伝統占星術から智慧を借り、本講座のタイトルである「深楽しい」要素を強めていきたいと思います。
深いことは、軽々しさと正反対の要素です。
苦々しさはきっと、あなたの実力を強めてくれるはずですから、1つの解釈や技法として活用していただけることを祈っています。
次回の講座は、伝統占星術における天体(惑星)と天体(惑星)の強弱について深堀していきますので、是非お付き合いください。
今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
それでは、次回の「伝統占星術に学ぶホロスコープシステム」でお会いしましょう!
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