「初心者が最初に巡り会いたい『深楽しい』西洋占星術講座」にようこそ!
前回の講座では、伝統占星術における天体と星座(サイン)のシステマティックな側面に焦点を当てました。
この講座で伝統占星術を取り上げる理由に関しても、過剰な思い込みや願望、期待によって、本来の自然の摂理に対する解釈を歪めないため、ということもお伝えしましたね。
伝統占星術では、星座(サイン)よりもハウスが重要視されることは、何度もお伝えしてきましたが、決して星座(サイン)を軽視しているという意味ではありません。
星座(サイン)は、宇宙からどのようなエネルギーが注がれるかを示し、ハウスは、実際どのような影響が地上で起こるかを示します。
誤解を恐れずに言えば、現代占星術は心理や観念を重視し、希望的観測や願望を優先させることで、個体意識に閉じこもり、かえって宇宙や現実に対して心を閉ざしてしまうことになる、ということが、伝統占星術側の主張といえるでしょう。
では、自分の世界観や思想、理想を大切にすることは不毛なのか、といいますと決してそうではありません。
ただ私たちは、自分の見たいものを見て、自分の信じたいことを信じるように生きています。
ですが私たちの脳や本能のプログラムに対して、私たちが無自覚で、無頓着である時に、そのプログラムは時として、私たちを追い込んでしまうことすらあるのです。
それを「無知」や「自意識過剰」、「井の中の蛙」といった言葉で表されるのかもしれませんが、私たちが本当に自分自身に対峙する時、決まって自然の摂理に沿うことが最善の道である、ということを突きつけられるでしょう。
どのような解釈・信念で生きようと、誰もそれらを否定することはできません。
そして私たちは、いつでも解釈や信念を変えてもいいはずなのです。
そういう意味では、伝統占星術と現代占星術の立場や役割の両方に触れながら、私たちは自分自身に学びと成長の機会を与える方が得策といえるでしょう。
くどくなりましたが、伝統占星術を善・優劣とする、という意味ではなく、根本的な占星術の向き合い方として、前置きを述べさせていただきました。
今回はそんな地に足を付ける感覚が感じられる、伝統占星術におけるハウスの役割について解説させていただきます。
今回もどうぞ最後までお付き合いください!
伝統占星術におけるハウスの定義
まずハウスとは、「人生の分野」を意味します。
これは伝統占星術も現代占星術も同じです。
またハウスに与えられた象意にも違いはありません。
ハウスは、宇宙からやって来るエネルギーが、どのような場面で顕在化するか、ということを示すもので、星座(サイン)が持つエネルギーの質とは全く別の物なのです。
次に、ハウスの順番は、星座(サイン)と同じように並べられていますが、反時計回りの時間軸通りの事象が起こるわけではないため、発達・成長の段階と一致しません。
言い方を変えれば、私たちの時間の概念と、ハウスという現実的・実際的な現象はイコールとはならない、ということです。
ホロスコープは閉ざされた円環であるとともに、完全な循環の球体を平面(二次元)にしたものですが、立体的・三次元的にハウスを捉える時、私たちの時間的な辻褄とハウスを合わせることには無理が生じてしまいます。
もし12つのハウスを3つの区分に分けたとしたら、ハウスは3段階のステージを持つ、という見方をすることはできます。
ですが天体や感受点の運行を考えますと、逆に時間の概念が非現実的になってしまうでしょう。
ここから導き出されることは、ハウスが持つ象意・意味と、時間的な流れは関係が無い、ということになります。
私たちは常日頃、時間と空間に支配されて生きています。
そのため時間と空間を切り離して考えることに慣れていません。
矛盾しているように思われるかもしれませんが、それぞれのハウスの配置・並びは、星座(サイン)と異なり、時系列的・時間的な要因で配置されない、という事実(仕組み)を採用する他ありません。
以下、ここまでのハウスの定義のまとめです。
- ハウスは、顕在化する事象・事柄を表す
- 12つのハウスは、12つの人生の分野を表す
- ハウスは反時計回りに配置されてはいるが、発達・成長の段階の流れとは一致しない
伝統占星術におけるハウスシステム(方式)
占星術では、複数のハウスシステム(方式)が存在します。
それは現代占星術でも、伝統占星術でも同じであるため、一見して、どのような場合にどのハウスの方式を使うべきか、常に同じハウスの方式を使ってもいいのか、が分からなくなります。
結論から言いますと、占断する場面において、ハウスの方式を変えることが最適解となります。
現代占星術では、特に日本においては、プラシーダス方式を使ったホロスコープが多用されています。
そもそも、ホロスコープはどのような仕組みで成り立っているかの前に、物理的な天文知識が必要になりますので、以下にまとめさせていただきます。
天文学的な基礎知識
太陽系の惑星は、太陽を中心として、自転と公転をしています。
惑星は、それぞれの大きさ、自転速度、公転速度、地軸の傾きを持っています。
私たちは地上から外宇宙を認識・観測していますが、これは言い換えれば、地平線が座標となっている、ということです(地平座標)。
ジオセントリック・占星術は、地球を中心に添え、その他の惑星を地平線から見上げていることになるため、天動説の概念が基礎となっています。
地球上に住む私たちにとって、観測者の立場として、認識できる対象が外側にあり、私たちは天動説の概念から解放されることはありません。
ただ、自我という個体の範囲外に出て、客観的・全体的なスケールで物事を捉えた時、地動説の概念を採用することができます。
「世界の中心はどこか?」という命題に対しては、科学的な立証はされていません。
全宇宙の中心点は、ブラックホールという超巨大な重力・特異点と考えられていますが、私たちが物事を認識する際、誰にとっても、自分自身が中心点となることは変わりません。
なぜなら私たちは、自分自身から離れることができませんし、地球が太陽のように、太陽系の中心点になることもなければ、太陽が大宇宙の中心点に成り代わることもないからです。
概念的ではありますが、全宇宙において、「中心点はすべての座標」と捉えることもできます。
とはいえ、物理的な法則によって成り立っている物質世界を健全に捉えるためには、位置関係や座標が必ず必要となります。
占星術では、実際の星座は「天球に貼り付いているように見える」と説明されます。
これは先ほど説明した通り、私たちが地球上に生き、地球から外宇宙を観測しているからで、プラネタリウムのように星座が見えることを、星座が天球に貼り付いている、と表現するのです。
そして天球とは、宇宙全体を意味しています。
地球もまた、全体から見れば、天球の中に位置していますので、ジオセントリック占星術が前提とする天動説と、ヘリオ・セントリック占星術が前提とする地動説は、私たちの概念上では両方ともが成立せざるを得なくなります。
以下に、複数の座標をまとめました。
- 地平座標は、方位(方角)と高度(高さ)からなる座標で、星々の位置を表す
- 赤道座標は、地球の地軸を起点とし、赤経(せきけい)と赤緯で表される
- 黄道座標は、太陽が1年かけて巡る軌道を基準にした座標である
- 銀河座標は、天体が天の川に沿って全天する基準面を基準とする座標である
ホロスコープやハウスから話が離れてしまっていますが、物理的な宇宙空間と、天体の運行を把握することは、実は占星術を活用し、実際の自然の摂理を捉える上で重要です。
出生時間や出生場所によって、ホロスコープ上の天体の位置、つまり星座(サイン)やハウスとの関わりが異なるのは、地球や太陽をはじめ、天体の構造と、宇宙全体の流れが組み合わさることによって算出されるからに他なりません。
私たちは宇宙の構造・仕組みを背景にしつつ、概念や観念を言語化しながら、実体験や実感が普遍的なものであることを考えると、自己理解や自己肯定、自己信頼もまた、「私」という存在が生きる上で無意識・無自覚に働いている構造や機能を知ることが重要です。
なぜなら、大宇宙と私たちはフラクタルな関係だからです。
以下に、私たちの日々と人生の舞台となる地球と、宇宙(天球)について、基礎的な知識を以下にまとめました。
- 地球の地軸が約23.4度傾くことで、四季が発生し、それが星座(サイン)に反映される
- 地球の地軸を北に伸ばし、天球で交わる位置を「天の北極」と呼び、逆に地軸を南に伸ばし、天球と交わる位置を「天の南極」と呼ぶ
- 太陽系内の惑星の軌道面はほぼ一致しているため、黄道(太陽の通り道)に沿って動いているように見える(黄道座標)
- 地球の赤道面を天球にまで伸ばしたものが「天の赤道」であり、天の赤道の赤緯を0度とし、黄道が天の赤道に対して、南から北に切り替わる点(黄経0度)が春分点に定められている
- 黄道に対して、白道(月の軌道)は約5度傾いている
- 天球上で、白道が黄道面(地球の公転面)に交わる点を月の交点といい、黄道を南から北へ昇る地点を昇交点(ドラゴンヘッド)、反対側の、黄道を北から南へ下る地点を降交点(ドラゴンテイル)と呼ぶ
かなり専門的な話になりますが、伝統占星術では、黄道座標(黄経・黄緯)と赤道座標(赤経・赤緯)を使い、より深い占断を下す手法があります。
現代占星術では、「アウト・オブ・バウンズ(OOB)」という用語があります。
アウト・オブ・バウンズは、赤緯23.26度以上に位置する天体の状態を意味し、その状態にある天体は、本来の天体の機能や働きを加速するような、「枠の外へ出る力」を持つと考えられる概念です。
アウト・オブ・バウンズとは、「境界から離れた外」という意味を持っています。
現代占星術では、美味しいところ取りをすることによって、昔に比べて認知が格段に高まってはいますが、大元は黄道座標や赤道座標を用いることが分かると、より一層、占星術が持っている深みに導いてくれるようです。
ここまで、惑星の動きを解説してきたわけですが、ホロスコープという平面の羅針盤には、宇宙の流れと星々の働きが落とし込まれている、ということをご理解いただけたかと思います。
前回の講座で、ハウスの流れは、実は時計回りで、天体や星座(サイン)の流れとは違うことをお伝えしました。
ジオセントリック・占星術におけるホロスコープは、地球から見た宇宙の投影図ですので、当然、ホロスコープの世界観は、地球からの観測に基づいています。
以下が、地球の自転と公転と、太陽の公転、そして時間の関係です。
- 1度は時間に換算すると、約4分である
- 日周運動:天球の星々は、地球の地軸を中心に西周りに回転する
- 地球の自転:地球は、1日に1回東周りに回転する
- 地球は、1年で366回回転し、これを恒星日と呼ぶ
- 地球が1日で360回転する時間は、23時間56分である
- 地球の年周運動:地球が太陽の周りを公転することによって起きる1年の周期を意味する(=見かけの動き)
- 地球上での時間の測定は、太陽の位置で決められ、これを太陽日と呼ぶ
- 太陽は、1日1度のスピードで天球上を西から東へ移動する
- 太陽の年周運動:太陽が黄道を通り、1日に1度ずつ東に向かって移動し、365日をかけて、天球を一周する
- 星々は、太陽に対して、1日1度ずつ西に向かって動いているように見える
- 太陽日は24時間、恒星日は23時間56分となり、差の約4分の違いが、星々が早く昇り、沈み、四季の星座が見える理由となる
天文学的な解説の最後としまして、歳差運動について触れて、ハウスシステムの説明に移りたいと思います。
地球の地軸は、大きな円を描きながら回転するため、少しずつ日周運動の中心が変わることを歳差運動と呼びます。
- 地球の地軸は、黄道面に対して23.46度の傾きを持っている
- 地球の地軸は一定ではなく、大きな円を描いて回転している
- 地球の地軸が1回転するために要する時間は、25,920年である
- 地球の地軸の角度の移動は、1年間で約50秒である
占星術が興った頃(古代バビロニア)の春分点は、現在の春分点とは異なっていることはご存じでしょうか?
- 現在の春分点は、魚座と水瓶座の間あたりにまで後退している
- 春分点は、牡羊座から星座の並び順とは反対方向に移動する
占星術では、アセンダント(東の地平線)と春分点は、起点・始まりとして大変重要な概念・位置付けを持っています。
占星学上の牡羊座は、天文学上のおひつじ座とは別のものである(実際の位置が異なる)ため、「牡羊座=春分点」という公式を残したまま、私たちは今もその概念を活用し続けていることは事実です。
だからこそ、占星術が興った時代からの変遷と現代との差によって、私たちは物事の在り様の変化を比較することができます。
物事の興りと結果は、常に相似的です。
私たちが日々行っていることは、原因と結果の間の過程(プロセス)を体験する、ということですが、起点を定めることで、確かな方向性を導き出そうとするためには、必ず法則性が必要不可欠です。
概念は共通認識の基に成り立ちますが、観念は個々の体験が基になり、意見・主張が似通っている者同士は引き合うもの。
私たちはどこまでいっても、自己主観で物事を見聞きするもので、「自我(エゴ)」の成長・発達過程をどのように捉えるかを、自己客観の視野を手に入れることを試みようとするのが、占星術なのです。
それも客観的に自分を捉えることは自分自身では不可能である、ともいえるものを、ホロスコープという自然・宇宙との共同作業によって、少しでも人生を解き明かす、という姿勢が重要といえます。
誤解を恐れずに表現するとすれば、伝統占星術は外面の法則性に気づかせる手法であり、現代占星術は内面の法則性に気づかせる手法といえるかもしれません。
私たちが両側面を擦り合わせ、内面に投げかける問いかけを外面に投影し、また外面に表された導きを内面に引き戻す時、自我(エゴ)の視界に入らなかった世界を垣間見る手がかりが得られることでしょう。
この世にあるものに意味や解釈を付けるのは私たち自身ですが、この世にもたらされているものに不必要なものは存在しません。
ですから伝統占星術も、現代占星術も、私たちの人生にとってどちらも必要ということですね。
それでは前置きが長くなりましたが、ホロスコープとハウスについて解説をさせていただきます。
ホロスコープの中のハウス
ハウスシステムは、よく「ケーキを切り分ける」という表現で例えられます。
星座(サイン)の場合、それぞれ30度の幅(領域)で区切られるのは、黄道を基準に平面的に30度ずつに分けるからです。
言い方を変えれば、星座(サイン)の基準が360度・全方位の天球側(黄道)にある、といえます。
対して、ハウスの場合、方式によってバラバラの幅・度数を持ちます。
この理由は、傾いた地軸によってできる空間を、天球と合わせて12つに切り分ける以上、歪みが生じてしまうからです。
- 星座(サイン)は、地球の公転に関連し、春分点がスタート地点とする
- ハウスは、地球の自転に関連し、東の地平線をスタート地点とする
これら2つの違いによって、星座(サイン)は空間的な制約を受けずに済みます。
ホロスコープを作成する際、ネイタルチャートでは出生場所を、トランジットやホラリー占術の際は占断を行う場所を指定します。
その場所の位置は、緯度と経度で表され、その位置を地球と天球の関係で表す場合、ハウスの幅がバラバラになってしまうのです。
宇宙には上下や左右(の概念)がありません。
地球儀を見れば直感的に分かりますが、北極や南極に行けば行くほど、緯度/緯線(横の線)は縮まっているのが分かりますよね。
- 日本の緯度:北緯 20度~45度の間
- 日本の経度:東経 120度~135度の間
- 東経 135度・北緯 35度がほぼ日本の中心を通っている
ハウスシステムを「ケーキの切り分け方」と表現を再度思い浮かべてみますと、場所によって、物理的な理由から、ケーキの切り分け方が決められるという、法則の側面を垣間見ることができるわけですね。
様々なハウスシステム
ハウスは、宇宙のエネルギーが地上に降りた時、どのような影響が起こるかを示すものです。
そのハウスの切り分け方に違いが出るのは、基準によって異なります。
その基準となるものは、時間か空間か、です。
またその時間と空間が、地球側を主体にするか、宇宙(天球)側を主体にするかによって、時空間の認識とホロスコープへの落とし込みに不一致が生まれてしまうことが、事実としてあります。
そのため、より「自然に近い」という意味で、場所によって、ハウスシステムを使い分けたり、季節によってハウスシステムを使い分ける、ということも出て来るのです。
ここでは、メジャー・マイナーに関わらず、知識として知っておくべきハウスシステムと、基準によってホロスコープがどのように作られるのか、という部分をご紹介していきます。
イコール・ハウス・システム
このハウスシステムは、星座(サイン)と同じように、アセンダント/ASCを起点として、黄道を30度ずつ12等分するシステムです。
初心者がホロスコープを作成する際に、導入として使われることが特徴として挙げられます。
「星座(サイン)=ハウス」の感覚が身についてしまうと危険ですし、何より、MCが第10ハウスに入らないという欠点があります。
ソーラー・システム
このハウスシステムは、太陽の位置をアセンダント/ASCと定めるハウスシステムです。
第1ハウスのスタートが、太陽の度数とイコールになります。
見方を変えれば、第12ハウスの終わりも太陽の度数となりますので、太陽という生命意志の観点から、地上で生きる者の個別的・内的な視野という意味で世界を見ることになる、という表現もできるかもしれません。
私たちは誰もが「人生の主人公になりたい」という感覚を持っているものです。
ソーラー・システムを用いる場合、主体的に人生を歩む際に、太陽側の観点を採用する際に使用する、という意味では、ごく自然で、且つ、支援的という意味での客観的な視野を与えてくれるのかもしれません。
ソーラーサイン・ハウス・システム
このハウスシステムは、太陽が入っている星座(サイン)のカスプ(0度)をアセンダント/ASCに定め、全ての星座がハウスカスプを持つシステムです。
言い方を変えれば、太陽が在住する星座(サイン)の境界線を重視している、といえます。
星座(サイン)のエネルギーが人生全般に影響を与えている、ともいえますね。
このハウスシステムは、出生情報が分からない場合に使われることが多いようですが、短期的な運勢を知る(占う)際に用いることに利用価値があるといえるでしょう。
また太陽星座を中心とした占い(12星座占い)では、このハウスシステムが使われることから、現代占星術が星座(サイン)に重きを置いていることが分かります。
ホールサイン・ハウスシステム
このハウスシステムは、アセンダント/ASCの星座を、第1ハウスのハウスカスプ(起点)と定めます。
言い換えると、アセンダント/ASCの星座の度数を0度に切り替える、ということです。
またこのハウスシステムは、ハウスと星座(サイン)が一致することが第1の特徴です。
このハウスシステムは、インド占星術で用いられる方式として有名で、自然現象に沿ってホロスコープを作る姿勢が反映されています。
インド占星術では、アセンダント/ASCを非常に重視するのですが、その眼差しが、太陽に向いている、という解釈になるでしょう。
ホールサイン・ハウスシステムの第2の特徴として、ハウスの大きさが異なります。
そしてこのハウスシステムは、全てのハウスシステムの基盤となっていることも重要な点です。
伝統占星術において、ネイタルチャートでは、このホールサイン・ハウスシステムが採用されている、という点が最も重要な点でもあります。
ちなみに、伝統占星術におけるホラリー占星術では、レギオモンタヌス・ハウスシステムが採用されているようです。
続いて、メジャーなハウスシステムと重要なハウスシステムを紹介していきます。
プラシーダス・ハウスシステム
プラシーダス・ハウスシステムは、時間を基準に割り出すハウスシステムです。
4つのアングルを基準にハウスを切り分けるハウスシステムで、日本では最もメジャーなハウスシステムですね。
出生場所の入力の際、北欧のように緯度が高い場所ではハウスに極端な偏りが出てしまう、という弱点があります。
コッホ・ハウスシステム
コッホ・ハウスシステムは、プラシーダスと同様に、時間を基準に割り出すハウスシステムです。
時間による基準とは、アセンダント/ASCとディセンダント/DSCを基準にする、という意味です。
4つのアングルを基準にハウスを分割する方法で、プラシーダスの改良版のハウスシステムといわれています。
改良された部分は、緯度の高い地域(北緯40度を超える地域)のホロスコープでも、ハウスの大きさに偏りが出ないように工夫された点です。
ヨーロッパでよく使用されているハウスシステムです。
ポルフュリオス(ポーフィリー)・ハウスシステム
ポルフュリオス/ポーフィリー・ハウスシステムは、プラシーダスやコッホと同じく、アングルを基準にハウスを分割する形式です。
このハウスシステムは、4つのアングルの間を30°ずつ3等分することで、12のハウスを切り分けます。
日本ではあまり知られていない方式ですが、アングルによるハウスの分割を中心に作成されるハウスシステムであるため、より日常的・実際的な体感を引き出しやすい方式である側面があり、判断材料として活用する価値があるハウスシステムといえるでしょう。
実は、2,000年前の占星術のハウスシステムは、ホール・サインとともに、ポルフュリオス/ポーフィリー・ハウスシステムが主流だったといわれています。
そのためより深く占星術の極意に触れたい場合は、伝統占星術と同様に、他のハウスシステムと併用してポルフュリオス/ポーフィリー・ハウスシステムを活用することは大変有意義といえるでしょう。
キャンパナス・ハウスシステム
キャンパナス・ハウスシステムは、物理的な空間を基準にしたハウスシステムです。
キャンパナスシステムでは、地球の赤道を宇宙に投影した天の赤道を基準にして、30度ずつ等分に分割することが第1の特徴です。
第2の特徴は、星座(サイン)同士の境界(カスプ)が必ずハウスの中央に位置する、という点で、4つのアングルも同様に、ハウスの中央に来ることになります。
レギオモンタナス・ハウスシステム
レギオモンタナス・ハウスシステムは、キャンパナス・ハウスシステムと同様に、空間を基準にハウスを割り出す方法です。
空間的な捉え方でいいますと、レギオモンタナス・ハウスシステムは、黄道面を基準にし、占断する場所の真上(天頂)と東の地平線からハウスを切り分けるということは、地表から90度にある地点を天頂として、そこからハウスを12つに切り分ける、ということです。
キャンパナス・ハウスシステムとの違いは、星座(サイン)の境界とハウスの境界が一致する、という点にあります。
時間を基準にする方法よりも、比較的計算しやすい手法と見なされているハウスシステムです。
そしてこのハウスシステムは、ホラリー占星術で多用されることも特徴の1つといえるでしょう。
ハウスと四分円
ホロスコープにおける天頂は、真南で、地図の東西とは逆になっていますので、最初にホロスコープを見た時、方角や配置といった自然法則に慣れるまで時間がかかる、という場合があるかもしれません。
太陽は東から昇るため、南が最も明るくなるという意味では、南が強い方角といえます。
ハウスを土地と家で考えた時、ハウスは家、星座(サイン)は土地となります。
家の大きさそのものはホール・サインで決まる、という前提があることが、伝統占星術におけるハウスの捉え方です。
そこで、家の中には、強い場所や弱い場所が自然とできてきます。
それが東西南北によってでき、ハウスの分割に反映される、というわけです。
これは、後に解説します「アヴァージョン」という概念に結び付きます。
全ては、アセンダント/ASCという太陽の歩み方・見え方が重要となるわけですが、伝統占星術におけるハウスの重要性は、特別難しいことでも、珍しいことでもなく、自然に則した法則を適応する態度、ということです。
自然という現象は近くて遠いもの
今回は、概念的・内的な発想や世界観から一旦離れて、実際的・物理的な概念について多く触れることで、ホロスコープのシステムについて解説しました。
伝統占星術に触れるまでの講座では、より内在する可能性や才能、能力などに焦点を当ててきましたが、それだけでは自己満足や偏った世界観で留まってしまう恐れもあります。
ですが私たちは誰もが主観でこの世を生き、世界や他者という客観と出会うことで、喜怒哀楽・四苦八苦・生老病死といった人生の流れを経験する中で、やはり主観が絶対ではないことを知り、自我(エゴ)がいかに狭い世界を見ているか、に気づかされるものです。
そのような気持ちに触れた時、本当は見たくないけれど、やはり現実を見なければ、と自分自身の弱さやズルさとともに、もっと幸せにいきたい、ありのままの自分に還りたい、他者や世界と調和したい、という願望があることに私たちは気づくはず。
その気づきを実現させるものは、心を開くことですが、言い換えれば、世界を受け入れることになるでしょう。
ホロスコープは、地球上に住む私たちの認識を平面に起こしたもので、ハウスの歪みすら不自然に思えてしまうのは、私たちが常に時間と空間に沿って生きているから、といえるでしょう。
ただホロスコープにおいて、ハウスは宇宙の哲理に基づく空間分割で切り分けられなければいけない、という考え方があります。
星座(サイン)ですら、実際の星座とは異なるのですから、実空間という意味でのハウスを平面に起こすことは簡単なことではありませんし、実際に「正しいハウスシステム」というものは存在していません。
そこで、古来から誤差が最も少なくなるハウスシステムは何か?が追究されてきたわけですね。
ですから大前提として、「正しい」という立場を脇に置いて、ホロスコープのシステムを受容・許容するところから始めていきましょう。
今回の講座で、特に重要な点を以下にまとめました。
- ハウスは「人生の分野」を意味する
- ハウスが持つ象意・意味と、時間的な流れは関係が無い
- 伝統占星術は外面の法則性に気づかせる手法であり、現代占星術は内面の法則性に気づかせる手法である
- ハウスは家、星座(サイン)は土地であり、ハウス(家)の大きさは、ホール・サインで決まることが前提である
- ハウス(家)には、強い場所と弱い場所が生まれる(できる)
- ハウスシステムには、絶対的な正しく空間を分割する方法が存在しない
- 伝統占星術において、ネイタルチャートでは、このホールサイン・ハウスシステムが採用されているホラリー占星術では、レギオモンタヌス・ハウスシステムが採用されることが多いが、占断者の判断に委ねられる
この西洋占星術講座では、より健全で、より体感が持てる内容を追及し、そのエッセンスをお伝えできればと考え、伝統占星術と現代占星術の両方の智恵にアプローチしています。
日常的に触れている感覚や観念とは違うからこそ、もっと素晴らしい自分に出会える、その一点において、これからも講座を続けていきますので、是非今後とも楽しんでいただけると幸いです。
今回も最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます!
それでは次の「伝統占星術におけるハウスの解釈と複雑さと面白味とは?」でお会いしましょう!
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