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伝統占星術における天体の性質と星座(サイン)の性質とは?

伝統占星術における天体の性質と星座(サイン)の性質とは?

伝統占星術における天体の性質と星座(サイン)の定義とは?

「初心者が最初に巡り会いたい『深楽しい』西洋占星術講座」にようこそ!

前回の講座では、伝統占星術における7天体の定義について解説しました。


また、あまり知られていない細分化された属性(エレメント)についても触れ、より一層伝統占星術の奥深さを知っていただけたのではないかと思います。

伝統占星術では、星座(サイン)よりもハウスの方が重要視されますが、星座(サイン)が重要ではない、ということではありません。

シンプルに表現するならば、古代の占星術は、より現実的、且つ、明確な答え(指南)を導くために、ハウスという物質性を重視していた、ということです。

これが、伝統占星術には、明確で、細かなルールが設けられている理由です。

更に付け加えるならば、伝統占星術は「神託」や「預言」のような、神聖で、繊細なリーディングであるべきだった、という背景があります。

そのため占星術を取り扱うためには、より長い期間や豊富な知識、そして揺るぎない(霊的な素質を伴った)直観が必要だったはずです。

ですが時代の流れの中で、占星術は「悪しきもの」といったレッテルを貼られ、迫害されることがあり、大きな影響力を持ち得る「当てもの」であってはならなくなりました。

現代占星術は、伝統占星術に比べ、より「心理」にフォーカスが当てられているとされ、それが星座(サイン)の重要性を高めることに繋がったといえるでしょう。

現代占星術に慣れ親しんだ感覚から少し離れ、古代の占星術のエッセンスに触れ、より深く占星術に親しんでいただければ幸いです。

それでは今回は、天体の働きと天体が支配する星座(サイン)の定義について解説させていただきます。

目に見えること、再現性があること、客観的であることの重要性

伝統占星術に触れ、導き出されるものは「客観的な出来事(事実)」です。

それに対し、現代占星術は、「出来事に対する(共通認識を含めた)解釈」や「心理状態」がクローズアップされます。

この対比は決して対立的な立場を示すわけではなく、人類の意識の扱い方に違いがあるといえるでしょう。

伝統占星術は、トランスサタニアンや小惑星、リリス、更にはドラゴンヘッドやドラゴンテイルを重要視せず(軽視しているわけではありません)、いかに7天体が現実に影響力をもたらすか、を強調します。

私たちの1人ひとりが「小宇宙」であり、私たちの宇宙の中に天体が運行している中で、それぞれの「生命の営みの流れ」があり、その流れに「運命」や「宿命」が関係します。

私たちの人生における運命や宿命などの、宇宙の流れを指し示す存在が天体です。

現代では考えられませんが、大昔は身分で人生や生き方が決まってしまうことが少なくなったため、いかに与えられた運命や宿命、カルマといった「自分の力ではどうしようもない働き」に対して、最善の道を見出すために、占星術は智恵を与えてくれたのでしょう。

伝統占星術が土星までの7天体のみ採用している理由は、第一に、天体を肉眼で確認できることが重要でした。

科学の発展により、「この眼で見る範囲」が広がっただけで、現在も土星よりも遠くに軌道を持つ天体は目視することができません。

そういう意味では、現代占星術がトランスサタニアンや小惑星、目に見えない計算上の感受点を採用することは、限りなく「心理的」、または「精神的」な捉え方に傾いているといえます。

これはどちらの占術が優れているか、ということではなく、「何を採用するか」という前提と、それによって必要となる概念体系やルールが伴う、ということです。

伝統占星術は、より客観的に現実を捉えるために、目に見える対象や範囲を深堀し、現代占星術は、より内省的・多角的に自分自身を捉えるために、多くの選択肢や可能性を採用している、という違いがあるといえるでしょう。

伝統占星術における7天体が、明確な役割を割り当てられていることで、客観的事実を導き出すことができます。

それは言い換えるなら、再現性がある、ということです。

なぜなら明確なルールに則ることによって、迷わずに答えを導き出すことができるだけでなく、占断者によって答えが異なる、ということがないからです。

ただ問題は、伝統占星術を活用する場合、多くのルールを知り、総合的に判断する必要があるために、敷居が高くなる傾向があることかもしれません。

「古き良き」が常に優れているわけではありませんが、再現性や客観性、明確な指南を得られるならば、古代人の智恵を借りるために、少し辛抱強くなることは決して無駄骨とはならないはずです。

吉凶と7天体

傾向として、伝統占星術は「断定的な表現」が多用されます。

それが明確に分かるのは、7天体を吉星(ベネフィック)凶星(マレフィック)に二分している点です。

また天体の性質が、昼の天体と夜の天体や、男性天体と女性天体に分けられていることも念頭に置く必要があります。

以下に、7天体を吉凶に振り分けました。

  • 吉星(ベネフィック):月・金星・太陽・木星
  • 凶星(マレフィック):火星・土星
  • どちらでもない、もしくは、どちらにでもなれる星:水星

前回までの講座で、水星は、昼・夜のどちらの天体でもなく、基本は男性天体であるけれども、機能的に女性的な性格に成り代わる天体である、とお伝えしました。

今後の講座で、「ディグニティ(品格)」について解説していきますので、「天体の状態」がいかに重要となるかがお分かりいただけると思いますが、水星は、ハウスと星座(サイン)によって、機能や振る舞いが変わる天体である、ということだけ覚えていただければと思います。

「吉」と「凶」とは、私たちの都合に合うか合わないか、に強く作用しますが、それ以上に、「現状維持ができるかどうか」という本能的、且つ、現実的な側面に強く作用します。

私たちは過去の経験則に基づいて、無意識に同じ現実を再現(創造)しようとしてきましたし、今現在も、これからもそうでしょう。

その固定化されたパターンには傾向があり、その傾向を明らかにする時、天体が吉凶のどちらの作用を強めているのか、という機能的な働きを見出すことができます。

機能の定義が明確であれば分かりやすいのですが、多様な価値観や柔軟な発想が多いことで、人によって解釈が別れてしまうと大変です。

そのため伝統占星術は、「調和」と「困難」という風に、天体の作用を二分し、状況を冷静に判断するように促します。

吉星・凶星の作用を簡単に表現すると、以下のように表現することができます。

吉星:有益・楽しさ・調和・スムーズさ

凶星:困難・極端さ・妨害・強引さ・不調和・負担・恐怖

よく喜びの感情は軽く、忘れやすく、恐怖や不安などの感情は重く、いつまでも引きずり、反芻してしまう、といわれます。

ですが、あらゆる感情には優劣は無く、それどころか、蓋をしてしまいたくなる感情ほど認識し、昇華する必要さえあります。

こういった「ポジティヴvsネガティヴ」の方程式は、私たちが「快」か「不快」かで物事を判断し、それに加えて、(経験に基づいた)独自の解釈や価値基準、信念によって強化されてしまうとさえいえます。

そのため、私たちが真に「ありのままの現実」を捉えるためには、自己都合や自己解釈を一度排して、客観的な視野を獲得する必要があります。

これが伝統占星術のメリットである、客観的な事実を明示し、私たちが見誤っていた現実を再認識することといえるのです。

人生を長期的、また、高次的な視野で捉える時、私たちは他者や現実を思い通りにし、支配することができないことに気づきます。

吉凶の本質は、「上手くいく・いかない」ではなく、訪れる現実という事象・現象に対して、今できる最善を知らせるための作用であるといえるでしょう。

その「最善の知らせ」とは、常に客観的で、誰に媚びへつらうことなく、普遍的、且つ、真理的な働きが通っているはずで、その働きを受け入れるために占星術を活用することが重要なのですね。

太陽の働き

占星術に限らず、太陽は「王」の品格を持ち、絶対的な力を持つと考えられてきました。

太陽の寿命は約100億年といわれていて、太陽系が生まれてから約48億年が経過しているため、太陽の王国(太陽系)の覇権は約50億年ということになります。

太陽系の長である太陽の特徴は、以下の通りです。

  • 太陽はスピードを変えることなく、星座(サイン)を毎日約1度ずつ進む
    (毎年同じ日に同じ星座(サイン)に位置する)
  • 太陽は逆行も満ち欠けもしない
  • 太陽は恒星である
    =太陽は地球上の生命にエネルギーを絶えず与え続ける(太陽系を照らす)

また地球上から見た7天体の動きが遅い順は、【土星→木星→火星→太陽→金星→水星→月】となり、この並び方は「カルディアン・オーダー」と呼ばれます。

真ん中に太陽を定め、左右に3つずつ天体を従えているような並びですね。

この順番をそのまま見ると、一般的にはカレンダーが連想されそうですが、実際はホロスコープ上の12星座とその支配星の配置です。

伝統占星術ではトランスサタニアンを扱わないため、星座(サイン)のルーラーは、7天体に限定されます。

以下に、星座(サイン)とルーラーの関係性をまとめました。

  • 水瓶座:土星
  • 魚 座:木星
  • 牡羊座:火星
  • 牡牛座:金星
  • 双子座:水星
  • 蟹 座:月
  • 獅子座:太陽
  • 乙女座:水星
  • 天秤座:金星
  • 蠍 座:火星
  • 射手座:木星
  • 山羊座:土星

わざわざ星座の並びを変えたのは、太陽と月を中心に、水星→金星→火星→木星→土星の順番(カルディアン・オーダー)を示すためです。

*この星座(サイン)の並びに、その他の意図はありません。

ちなみにカレンダーは、日曜始まりのものと、月曜始まりのものがあります。

日本では、1872年(明治5年)に、太陽太陰暦から太陽暦に改暦されました。

キリスト教の影響がある国や地域では、旧約聖書によって土曜日が休息日とされているため、日曜日から一週間が始まり、土曜日で終わるという流れがあります。

日本では、壁掛けのカレンダーや卓上のカレンダーは、日曜始まりのもの、手帳は月曜始まりのものが普及しているそうですが、ここでは「表と裏の顔」や「社会性とプライベート」を明確に区別しているように見受けられます。

太陽の影響力

伝統占星術特有の概念として、「コンバスト」があります。

コンバストは、「焼き尽くす」という意味です。

コンバストの影響を受ける天体は、水星・金星・火星の3天体です。

王である太陽に近づく天体に対して、太陽は容赦なく熱を浴びせかけるような作用を意味します。

太陽の王権を奪いに来る敵と見なされるこれら3つの天体は、本来の力を発揮できなくなり、「太陽に食べられる」と表現されることもあります。

天体の並びとして、太陽に最も近い水星は、太陽からは最大で28度、次に太陽に近い金星は、最大で54度しか離れることがなく、常に太陽の近くを運行します。

エッセンシャル・ディグニティについては、後の講座で触れますが、天体が位置する星座(サイン)やハウスによっては、コンバストの影響が表われない場合もありますので、現時点では、太陽は接近する天体に対して強い作用を与える、とだけ覚えておいてください。

また例外として、火星に関しては、逆に火星が太陽に影響を与え、積極性や攻撃性を増すように働くと考えられます。

以下に、コンバストについての条件をまとめました。

  • コンバストは、太陽光によって地上から天体が見えなくなることで、天体が太陽によって食べられ、弱体化する状態を指す
  • コンバストは、太陽とのコンジャンクション8.5度以内にある状態である
  • 伝統占星術には、天体にオーヴが設けられており、太陽のオーヴは15度であるため、その半分の度数によってコンバストが起こる
  • コンバストを受ける天体は、水星・金星・火星の3天体である
  • 太陽の両側8.5度以内にある時、天体はコンバストの影響を受ける
  • コンバストの影響を受ける天体は、太陽と同じ星座(サイン)に位置することが原則である

    ただ、同じ星座(サイン)で17度以内に位置している時、アンダー・ザ・レイという状態になり、星座(サイン)を超えてもコンバストの影響を受ける
  • 天体が太陽に向かっていく(コンバストに向かっている)時の方が、太陽から離れていく状態よりも、コンバストの影響を強く受ける
  • 太陽とのコンジャンクションは、常にコンバストとはならず、太陽の17分以内(誤差が限りなく少ないコンジャンクション)の場合、カジミの状態となる
    その場合、太陽に接近している天体は、台風の目のように、太陽から圧倒的な力を与えられる、という見方がある(採用するかは占断者次第)
  • コンバストが起こらない星座(サイン)があり、それは牡羊座と獅子座である
  • その他の星座(サイン)でもコンバストが起こらない時があり、その条件は、コンバストを受けるはずの天体が、ドミサイル・イグザルテーションなどのエッセンシャル・ディグニティ(品位)を持った状態で、太陽と接近(歓迎:レセプション)する時である

*伝統占星術では、コンジャンクションはアスペクトに含みません。

伝統占星術におけるアスペクトは、180度、120度、90度、60度の4つで、トレミック・アスペクトと呼びます。

なぜならコンジャンクションとは原則的に、同じ星座(サイン)に位置していることを意味しているからです。

*エッセンシャル・ディグニティとは、天体が機能や作用が強まる・弱まる星座(サイン)に位置することで変動する天体の品位を意味します。

*太陽は獅子座を支配し、太陽は牡羊座でエグザルテーションとなるため、太陽は圧倒的な力を得ることとなり、近づいてくる天体を薙ぎ払うようなことはしない、といわれています。

アンダー・ザ・レイは、アンダ・ザ・ビームとも呼ばれます。

カジミは、「太陽の心臓」という意味を持ち、同じ度数~17分以内にあることで、太陽と天体が一体化する状態を指し、太陽によって身分が保障されることで、天体が特別な力を得る、という意味です。

コンバストは、太陽の両側8.5度以内~0度18分の間に天体が位置することで、コンバストされる側の天体が、太陽によって不利益を被ることを意味します。

歓迎(=レセプション)は、1つの天体が別の天体を手助けをしている状態で、手助けする側の天体が、その天体らしい振る舞いができる状態(条件)にあって、何らかの繋がり・結び(アスペクト)がある時の働きを意味します。

これらの用語については、後の講座で、詳しく解説させていただきます。

次に、水星・金星・火星がコンバストの状態にある時をそれぞれ解説していきます。

太陽は太陽系の長ではありますが、どのような相手に対しても傍若無人に振る舞うわけではありません。

簡単に表現するならば、ある星座にある時の水星・金星・火星に対して、太陽は振る舞いを変える、ということです。

これが天体の品位(エッセンシャル・ディグニティ)によって、太陽の振る舞いが変わる、ということです。

おもてなしをしてくれる相手に対して、気を良くしたり、贔屓めに見る、という感じでしょうか。

伝統占星術では、天体が吉星と凶星、またはどちらにもなり得る機能を明確に分けています。

太陽によるコンバストは、多少の条件により除外されることはありますが、絶対的に太陽は王である、という前提がシステムの根幹にあるということです。

太陽は「意志」や「生命力」を象徴し、物理世界においては、あらゆる存在にあまねく光・熱・生命エネルギーを与える存在ではありますが、だからといって、太陽が常に恩恵を与える存在か、といいますと、そうではないですよね。

現代占星術では、様々な解釈や発想によって発展していますが、基礎的なルールから逸れ、占断者の願望が左右されてしまうと、占星術(または天体)が持っている機能・智恵というものが損なわれるのではないか、ということが、伝統占星術を通じて感じられることといえます。

私たちの誰もが、自分の中にある知識や経験値によってしか、物事を判断することができません。

伝統占星術や古典占星術は、どちらかというと、ルールや仕組みを厳しく設定し、理解を得るまでに時間を要するといわれていますが、それは一重に、自然界(や宇宙)をありのままに捉えようとする姿勢から来るのではないかと考えられます。

自然災害や事件などは、他人事であれば平静に眺めていられますが、当事者である場合は、綺麗事や表面的な慰めを受け入れられるような状態ではありません。

外的環境や人生の流れに対して、私たちが客観的な視点を得ようとする時、伝統占星術が持つ自然界に即し、システマティックなルールと理解度は、抽象度の高い視野を与えてくれるでしょう。

星座(サイン)の性質と区分

これまでの講座で、星座(サイン)が持つ区分については既にお伝えしてきましたが、現代占星術には無い概念があるため、改めて星座(サイン)の区分とともに、伝統占星術における星座(サイン)の性質を解説していきます。

二区分

二区分とは、男性星座女性星座の区分を意味します。

伝統占星術では、男性格女性格と呼びます。

男性宮と女性宮という呼び方もありますが、「宮」はハウスを想起させますので、この講座では男性格・女性格という呼び方で統一させていただきます。

男性格・女性格は、性別的な性質ではなく、原理的な在り方・動き方を示します。

男性格:能動性 – 活動的・論理的・衝動的・積極的・外交的・抽象的

女性格:受動性 – 直感的・感情的・消極的・内向的・具体的

男性格の星座(サイン):牡羊座・双子座・獅子座・天秤座・射手座・水瓶座

女性格の星座(サイン):牡牛座・蟹座・乙女座・蠍座・山羊座・魚座

星座(サイン)の流れから分かるように、男性格は奇数女性格は偶数の性質を持つことに加え、男性格は陽性女性格は陰性の性質を持ちます。

この講座では、物理世界は二元性の原理によって成り立っていることをお伝えしています。

男性性・男性格と女性性・女性格は、表と裏、外側と内側のように、それぞれの役割が影響し合うことで、お互いを生かし、また活かすことの象徴(原理)です。

三区分

三区分は、四季を3つに区分した概念であり、また自然の摂理を意味します。

厳密には、太陽が運行・滞在する星座(サイン)の季節には、太陽が星座(サイン)の性質を引き出す、ということです。

太陽によって引き出された星座(サイン)の性質は、それぞれの星座(サイン)の性質そのものと、全体への役割・機能としても働きます。

その大枠としての役割・機能は、活動宮・固定宮・柔軟宮の3つに分けられます。

  • 活動宮:牡羊座・蟹座・天秤座・山羊座
  • 不動宮:牡牛座・獅子座・蠍座・水瓶座
  • 柔軟宮:双子座・乙女座・射手座・魚座

星座(サイン)の名前と、二区分や三区分のイメージが合わない気がする、ということもあるかもしれませんが、こういったものはシステムですので、受け入れるしかありません。

12星座が3つに区分されているのは、季節的・時節的なものだけでなく、ホロスコープの全体的な構成要素として働きます。

二区分が、二元的な対立・反発を示すものであるならば、三区分は、開始・維持・発展という流れを形作るものです。

活動宮は、カーディナル/カージナル・サインとも呼ばれ、季節のスタートの位置づけであり、物事を形作る活動的なエネルギーを備えた星座(サイン)。

活動宮の星座(サイン)は、それぞれの性質の根底に、変化や活性化をする気概があり、方向転換することを厭(いと)わない、という特質を持ちます。

固定宮は、フィクスド/フィックスト・サインと呼ばれ、季節のピーク・真っ盛りの時期にあたり、物事を維持する耐久力や持久力を備えた星座(サイン)。

人によっては、不動宮とも呼びますが、どちらにせよ、「堅固さ」や「固さ」といった性質が宿っていることが意味します。

柔軟宮は、ミュータブル・サイン、もしくはダブルボディ・サインと呼ばれ、季節の終わりの時期を受け持ち、物事の移行、または完了、そして同時並行する臨機応援さを備えた星座(サイン)。

柔軟宮の星座(サイン)は、2つの性質を併せ持っている、もしくは、2つの性質を共有していることを示します。

それは、活動宮の星座(サイン)が劇的な変化を示し、不動宮の星座(サイン)が固定化することを示しますが、柔軟宮は、そこから新たな季節・変化へと移行するためです。

季節の例で言えば、太陽が蟹座・獅子座・乙女座にある時は夏です。

夏を三区分で細分化するならば、蟹座の夏は初夏、獅子座の夏は暑中、乙女座の夏は残暑となります。

また東洋思想の二十四節気は、自然の摂理を区分・当分しているため、三区分の働きとマッチします。

古今東西に関わらず、いかに古来の人々が自然界に沿って社会システムを構築しようとしたかが分かり、天体の運行が非常にシステマティックでありながら、法則的な美しさを兼ね備えているということも分かります。

二十四節気については、また別の講座で触れたいと思います。

四区分

四区分は、前回の講座で解説しました、火・土・風・水です。

またこれらのエレメントは、寒・熱・乾・湿という最小単位の働きによって、それぞれのエレメントが繋がり、また異なった動き(機能)が生まれるか、ということを理解することが重要です。

火:熱+乾 / Hot&Dry:牡羊座・獅子座・射手座

土:寒+乾 / Cold&Dry:牡牛座・乙女座・山羊座

風:熱+湿 / Hot&Moist:双子座・天秤座・水瓶座

水:寒+湿 / Cold&Moist:蟹 座・蠍 座・魚 座

そして四大エレメントは、私たちの特有・独自の人間性や人格、振る舞いに関与しています。

以下が、それぞれのエレメントが持つ特徴です。

①火・【黄胆汁質】:HotとDryが合わさることで、熱が拡散する、火照った状態を想起させる

②土・【黒胆汁質】:ColdとDryが合わさることで、冷えてバラバラになる、寒気を伴う状態を想起させる

*黒胆汁質は、憂鬱質とも呼ばれます。

③風・【多血質】:HotとMoistが合わさることで、熱によって結合される、酸素と炭素の関係性を想起させる

④水・【粘液質】:ColdとMoistが合わされることで、冷たさによって結合され、水っぽさによって状態を変える資質を示す

医療占星術では、エレメントを気質と呼びます。

こういったエレメントの性質は、四体液質という体液病理説から派生しているといわれています。

四体液質は、人間には、血液・粘液・黄胆汁・黒胆汁の4つの液体を持ち、それら4つの液体の調和によって、人の身体と精神のバランスが保たれる、ということが説かれたものです。

私たちが占星術で扱っている四大エレメントとは、自然界(と天体)が持つ寒熱乾湿の要素と、人が持っている気質が合わさったものであることがお分かりいただけるでしょう。

そして神秘学的・霊性的な領域になりますが、心身の調和が取れ、目の前の現実をありのままに見えようとする姿勢や在り方が整った時、5つ目のエレメントとなるエーテルが発現し、ある人は瞬間的に、精神的・本質的な真理を垣間見ることができるのかもしれません。

星座(サイン)が持つ様々な性質

伝統占星術では、星座(サイン)はハウスとはイコールではありません。

現代占星術では、牡羊座は第1ハウスと紐づけられ、第1ハウスで起こる事象や、第1ハウスの象意を牡羊座とイコールとして扱っている節があります。

本来的に意味がイコールになることはない、という意味において、確固たる理由があるため、伝統占星術では、星座(サイン)とハウスを混同しないように注意喚起をしています。

星座(サイン)は、左回り・反時計回りにホロスコープ上に並べられています。

牡羊座が春、蟹座が夏、天秤座が秋、山羊座が冬をそれぞれ司っているように、星座(サイン)と季節の関係性は、地球の公転が発端となっています。

ハウスも星座(サイン)と同様に、反時計回りに並べられてはいますが、原理的には、ハウスは地球の自転と関連しています。

ハウスは現実に即した領域であるのに対し、占星術上の星座(サイン)は、実際の星座とは異なった、概念的な要素です。

太陽系は宇宙の中を進んでいますので、時代の流れとともに、地球上から見える星座の位置も変わり続けます。

金星のみが、時計回りで自転していますが、それ以外の太陽を含む惑星は、反時計回りに自転と公転をしています。

ホロスコープ上では、太陽は東のアセンダントから昇り、ミッドヘヴン(MC)を南中し、ディセンダントで日没を迎え、ICを経て、再びアセンダントへ向かって昇っていきます。

ハウスは星座が天体の場所を示すため、ハウスの流れは時計回りになりますね。

星座(サイン)はあくまでも星座の場所を示しているもので、ハウスはそれぞれの星座や天体がどの場所にあるかということを表している、ということが前提条件であるため、星座(サイン)とハウスを混同してはいけない、ということです。

様々な星座(サイン)の性質

伝統占星術では、天体が特定の星座(サイン)に在住する時、特有の意味が付与される、としています。

占断する人や依頼者のホロスコープにおける、重要な天体が特定の星座にある時に、星座(サイン)に宿る性質が天体に意味を与える、というニュアンスですが、星座(サイン)が天体を従わせる、という意味ではありません。

以下に、複数の星座(サイン)の性質をまとめました。

  • 双体(double-bodied)サイン:双子座・射手座・魚座
    *ミュータブル・サインと違い、乙女座は含まない
  • 多産(fertile)サイン:蟹座・蠍座・魚座
  • 不妊(barren)のサイン:双子座・獅子座・乙女座
  • 多弁(voiced)なサイン:双子座・乙女座・天秤座
  • 少し雄弁なサイン:牡羊座・牡牛座・獅子座・射手座の前半
  • 無口(mute)なサイン:蟹座・蠍座・魚座
  • 力のない声のサイン:山羊座・水瓶座
  • 人情味豊か(humane)なサイン:双子座・乙女座・天秤座・水瓶座
  • 野獣(bestial)のサイン:牡羊座・牡牛座・獅子座・射手座・山羊座
    *特に、獅子座と射手座の後半のサインは凶暴とされる
  • 不具(maimed)のサイン:牡羊座・牡牛座・獅子座・魚座

星座(サイン)と身体部位の対応

ホロスコープをリーディングする際、天体が特定の半球に偏っていたり、特定の星座(サイン)に集まっていたとしても、全体で1つの生命(占断する物・事象)の性質や気質を表します。

これは、7つの天体すべて、また12星座すべてが、私たちや社会、世界の要素であることを意味し、特に星座(サイン)は、私たちの身体と対応しています。

以下に、星座(サイン)が対応する身体部位をまとめました。

牡羊座:頭部・頸部

牡牛座:口・喉

双子座:両手・両腕・肩

蟹 座:胸

獅子座:心臓・胸

乙女座:腸管・内臓

天秤座:泌尿器・下背部

蠍 座:生殖器・肛門

射手座:臀(でん)部・・・肛門周辺のお尻の部分

山羊座・大腿部

水瓶座:下太腿・かかと

魚 座:足首・足先

12星座は、身体部位と対応はしていますが、1つの星座(サイン)が明確に特定の部位に対応しているというわけではありません。

山羊座~魚座にかけて、脚から足先に対応しているように、星座(サイン)の度数によって、それぞれの身体部位の部分もグラデーションのように変わります。

重要なことは、星座(サイン)の度数であり、それは天体が位置することで、星座(サイン)の特徴や性質がどこに強まるか、ということを示します。

ホロスコープのシステムには、明確な理由と根拠がある

今回は、天体の性質と、太陽の重要性とともに、星座(サイン)が持つ性質について詳しく解説させていただきました。

内容が複雑だったので、以下に今回の内容をまとめました。

  • 吉星(ベネフィック)は、月・金星・太陽・木星である
  • 凶星(マレフィック)は、火星・土星である
  • 吉星・凶星のどちらでもなく、またどちらにでもなれる星は、水星である
  • 太陽とコンジャンクションする天体(水星・金星・火星)はコンバストの状態になる
  • コンバストは、太陽の両側8.5度以内にある時の天体の状態である
  • アンダー・ザ・ビーム/アンダー・ザ・ビームは、特定の天体が太陽の両側17度以内に位置する時の状態である
  • カジミは、特定の天体が、太陽と0度17分以内のコンジャンクションの時の状態である
  • 星座(サイン)は、天から降り注ぐエネルギーの質や量を左右する
  • 星座(サイン)は、地球の公転に関係している
  • 星座(サイン)が持つエレメントは、火・土・風・水であり、寒熱乾湿の要素によって気質が成り立っている
  • 四大エレメントは、解剖医学の四体液説によって、今日のエレメントが出来上がった
  • エレメントが付与する特徴は、黄胆汁質(火)・黒胆汁質/憂鬱質(土)・多血質(風)、粘液質(水)の4つである

伝統占星術に触れる毎に、自然界の摂理や、実際の星座の動き、天体の働きなどをより深く知ることになります。

その学びにより、私たちがいかに、自己経験値や価値基準によって物事を判断しているか、ということに気づかされるものです。

この講座で伝統占星術を取り扱うことにした大きな理由は、過剰な思い込みや願望、期待によって、ホロスコープは基より、現実世界と精神世界のどちらに対しても、都合の良い解釈によって歪めてしまわないため、でした。

客観性や健全性といったものは、一概に、自分の思考や概念、想念の外にあるものです。

ホロスコープを活用することは、客観性と健全性によって、より深く自己分析・自己理解・自己信頼を得られることにあります。

伝統占星術が与えてくれる知識や智恵は、私たちが陥りがちな曲解した論理や思想に取り込まれないように手助けをしてくれるでしょう。

伝統占星術は、理解し、活用するまでに時間がかかり、骨が折れるとされていますが、1つひとつの技術や技法、概念、ルールなどを受け止め続けていけば、徐々に慣れていくことができます。

それは先代の知識人が残してくれた遺産であり財産であり、私たちが古代人が見ることの無かった世界に受け入れていく際の大きな手助けとなってくれるはずです。

今後も伝統占星術について、重要な項目を解説しつつ、アスペクト解釈へと繋げていきたいと思います。

今回も最後まで読んでくださり、誠にありがとうございます。

それでは、次の講座「伝統占星術におけるハウスの役割」でお会いしましょう!

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