「初心者が最初に巡り会いたい『深楽しい』西洋占星術講座」にようこそ!
いつも記事を読んでいただきまして、本当にありがとうございます。
今回の記事では、「逆行」について解説をさせていただきます。
よく見聞きするのは「水星逆行」だと思いますが、
月と太陽を除いて、あらゆる天体と感受点は順行と逆行を繰り返します。
通常の天体の運行は順行で、時折、天体は逆行の状態になるのですが、逆行の詳しい意味はご存じでしょうか?
また、ネイタルやトランジットの天体が逆行の状態にある時、
どのような意味や影響力を持つかを知りたいと思われるのではないでしょうか?
今回は、逆行の意味を始め、月と太陽を除いた8つの天体の逆行の状態の影響力や、
逆行が起こる仕組みなど、ホロスコープ・リーディングにおいて、
望ましい逆行の解釈についてご紹介させていただきます。
事実と認識の差が「見せかけの逆行」を引き起こす
結論から言いますと、天体は逆行はしません。
なぜなら、天体の逆行は「見かけ上そう見える状態」であって、
天体自体が後退することを意味するわけではないからです。
言い方を変えますと、
地球から見ると、天体が軌道を反転させて後退しているように見える、となります。
英語では逆行「retrograde」と言い、
ホロスコープで逆行する天体には「R」が横に表示されます。
逆行の意味は、「時間や空間を逆に進む」や「順序が逆になる」という意味で
、占星術における逆行は、対象自体が逆に進むのではなく、
観察者の認識が作用し、集団意識と集団的無意識と連動することで、
天体に通常とは異なる挙動と影響力を持たせることを意味します。
更に言いますと、
逆行の認識が生まれる時、確かに物理現象として、逆行の認識を起こす条件が生じます。
そして、その条件を認識するからこそ、私たちは天体の順行と逆行の違いを観測します。
物理的・科学的な理由が判明してもしなくても、この原理は変わりません。
ただ、古代の時代では、逆行を含め、
日食・月食というような自然現象が「神の御業」や「不吉な出来事の予兆」という風な印象となり、
確信となっていたのではないかと思います。
今日であっても、具体的な理論や解明があったとしても、
日常とは異なる状態や働きに対して、私たちは神秘性や非現実性を感じてしまうことがあります。
それはもしかしたら、古代人の記憶がDNAの中に刻み込まれているからかもしれませんね。
占星術に沿って、もう少し詳しい説明をさせていただきますね。
2つの星の流れと逆行の原因
伝統占星術の解説の記事で、
「プライマリー・モーション」と「セカンダリー・モーション」について触れました。
ここで、一度おさらいしたいと思います。
プライマリー・モーションは、時計回り(右回り)の流れです。
例えば、太陽や月、あらゆる星々(天球)が東から昇り、西へ沈むように見えますが、
この流れをプライマリー・モーションと呼びます。
この流れは、地球が西から東へ1日1回、自転しているため起きます(日周運動)。
つまり、プライマリー・モーションは、地球の自転によって生じる回転の向きです。
ちなみに、北極星や帆極性の近くの星々は、地軸の周りに位置するため、
地平線まで下がることはないため、周極星と呼ばれます。
また、地軸は、常に東方向へ進んでいます。
そして、自転と公転の回転の向きは、北を上とした場合の回転方向です。
次に、セカンダリー・モーションは、反時計回り(左回り)の流れです。
セカンダリー・モーションは、プライマリー・モーションとは違い、
地球が太陽の周りを公転することによって起こる回転の向きです。
太陽系の惑星のほとんどは、太陽と同じ向きに公転・自転しています。
*金星の自転は時計回りで除外されます*
地球上から見ると、
太陽は1日に約1度ずつ、サイン上を西から東に進んでいるように見え、
これはホロスコープ上の天体の反時計回り(左回り)の流れと一致します。
ここで、逆行に話を戻しますが、
基本的には、地球上から見える天体や星々は、
サイン上を西から東に移動しているように見えるのですが、
時に、東から西に進んでいるように見える時があります。
これが逆行のタイミングであるとともに、
逆行は、セカンダリー・モーションのおける天体の挙動であることが分かります。
地球の自転と公転は、ホロスコープ上では、天体の動きと関連します。
- 地球の自転によって、天体はハウスを移動する
- 地球の公転によって、天体はサインを移動する
現代占星術では、この2つの流れ(回転の向き)について説明が詳しくされない傾向があります。
ハウスとサインのどちらを重視すべきか、という問題ではなく、
どのような要因が天体のハウスとサインと関連があるか、という原理の問題です。
そして、逆行のタイミングは、天体の公転速度の差によって生まれます。
逆行の例え
逆行は、車や電車などに例えられることが多いです。
- 高速道路で動きの遅い車を通り過ぎる際、
通り過ぎる方からは、遅い車が後退しているように見える(逆行) - 並走している電車が、カーブに差し掛かった際にスピードを落とすことで、
横の電車からは止まって見える(留:ステーション) - 止まっているように見える車や電車が、
厳密に言えば、速度の遅い車や電車が、通常の速度に戻ることで、
前進(順行)するように見える(逆行 ⇒ 順行)
天体の公転速度(運行速度)
逆行が地球の公転によって起こることが分かりましたが、
天体にはそれぞれの公転速度があります。
単に「運行速度」と表現しますと、
天体の動くスピードと捉えてしまいますが、
「天体が太陽の周りを回る公転の速度」という表現が適切です。
逆行は、あくまでも「見かけ上の動き」であり、「認識する側から見える挙動」です。
言い方を変えると、それぞれの状況を、一方からもう一方を見た際の認識される状態ともいえます。
占星術では、個人天体、社会天体、トランスサタニアンの3つの分類がありますが、
別の見方では、内惑星と外惑星という分類もされます。
内惑星と外惑星は、地球を起点とした天体の分類です。
内惑星の公転周期は、地球よりも短く、
外惑星の公転周期は地球よりも長いことは常識ですが、
逆行が起こる原理は、地球が外惑星を追い越そうとする時に起こり、
内惑星の方が地球よりも公転周期が短く、地球を追い越す時に逆行が起こります。
太陽系にいたっては、天体の自転と公転の向きは、
太陽の創成のプロセスで決められたものですが、
内惑星と外惑星の公転速度は、「必然的なスピード」といえます。
なぜなら、内惑星である水星と金星は、
地球よりも早いスピードで公転しなければ、
太陽からの影響(重力)に引き込まれてしまうからです。
また、地球も外惑星もまた、それぞれの位置において
、必然的な公転速度を持って、太陽の周りを回っています。
水星と金星が太陽に近い場所に軌道を持ち、
また、逆行の頻度が高いことも、自然の摂理に適っているということですね。
外惑星である天体の逆行が起こるサインの位置
地球よりも公転速度が遅い6つの天体の逆行には、1つの特徴があります。
(火星・木星・土星・天王星・海王星・冥王星)
それは、太陽が運行しているサインの対極のサインの周辺に、
これら6つの天体が運行する時に必ず逆行が起こる、ということです。
逆行の状態にある天体の影響は、水星と金星が逆行にある際には体感が伴いますが、
火星以降の天体、特に木星以降の天体の逆行の影響は、
「個人的な体験」としての体感があまり強くないと言われています。
これは、太陽によってコンバストされる天体の影響力と体感に近しいものがあります。
逆に、内惑星である天体の逆行は、
太陽と同じサインを運行している時に起こる、と考えられますので、
ネイタルチャートで逆行の天体がある場合は、
太陽のサインと、内惑星と外惑星のサインの違いを見比べてみると、
今回の話に納得がいくのではないかと思います。
逆行が意味すること
逆行の原理やホロスコープ上の解釈をお伝えしたところで、
占星術上での逆行の意味を解説していきます。
逆行が意味するものとは、2つの側面があります。
1つは、「混乱」や「混沌」、「停滞」です。
もう1つは、「変容」と「調整」です。
一般的に知られている逆行のイメージは、前者で、不吉さや不運さのイメージがあります。
これには、納得のいく仮説があります。
伝統占星術では、逆行は「不運」や「不吉」という解釈がされます。
それは、逆行によって天体のエネルギーが低下・弱体することで、
中央集権に揺らぎが出て、権威性が脅かされる、というその時代の見方によって、
逆行自体の解釈が決めていた、という見方です。
伝統占星術では、土星までの7つの天体のみを扱い、
言ってみれば、土星が物質文明の覇者としていたわけですから、
ピラミッド社会の構造が維持されるために、
占星術も活用されていた側面があった、という見方ができます。
よく、最先端技術は、国家や軍で秘密裏に開発され、
十分に再現性が立証された段階で、
更なるデータを収拾するために、一般社会に普及させる、という話がされます。
これは占星術も同じ側面を持っていまして、
かつての占星術は、国家の動向を決定付ける重要な要素(学問・知恵)として見なされていましたので、
現代には似つかわしくない表現や解釈が少なくないのも頷けます。
混乱・混沌・停滞
天体が逆行する際、起点は「地球からそのように見える」という観点で見た際に、
「地球上の私たちが逆行天体から受け取ることになる影響」が関心事となります。
地球から逆行しているように見えるわけですから、
逆行天体は、その認識・概念に沿って、私たちの日常(地球)と人生に、
その逆行の象意・影響をもたらす、と考えます。
混乱や混沌は、平常とは異なる作用や働きを意味し、
停滞は、平常通りには事が進まないことを意味しています。
逆行天体がもたらす混乱・混沌・停滞とは?
では、8つの天体が逆行状態にある時の混乱・混沌・停滞について解説させていただきます。
天体はそれぞれの役割があり、それぞれの影響力を持ちます。
まずは、8つの天体の象意を以下に、簡単にまとめました。
水 星 | 知性、思考力、知覚力、識別力、学習能力、言語能力、対話力 |
金 星 | 美的感覚、愛情表現、親しみ、愛欲 |
火 星 | 勇気、闘志、情熱、行動力、活動力、性衝動、肉体的エネルギー |
木 星 | 成功、発展、拡大、保存、向学心、倫理観、道徳観、宗教観 |
土 星 | 制限、制約、束縛、困難、受難、時間、忍耐、努力、成熟さ |
天王星 | 飛躍、改革、分裂、独創性、革命、発明、予想外、転機、革新的発想 |
海王星 | 理想、夢想、直感、慈善、奉仕、自己犠牲、不確定さ、不明瞭さ |
冥王星 | 強制的・根源的な変化、破壊と再生、権力、権威性、不可抗力性 |
次に、これらの8つの天体の逆行の意味・解釈をお伝えしていきます。
水星
内惑星・個人天体である水星は、逆行の状態になると、本来の機能性が鈍くなります。
その機能性の鈍化は、情報や繋がりに関する分野・事象に影響を与えます。
- 伝達ミスや情報のご送信、意味の取り違え、誤解といったコミュニケーションにおける誤解です。
- 移動に関して、乗り過ごし、手配ミス、渋滞などのトラブル
- 配達や運送などのトラブル
水星は1年で平均3回、多い時で4回の逆行期間を持ちます。
また、水星は、1年を通して、
同じエレメント(四区分)のサインで逆行をする場合が多いともいわれています。
太陽に近い天体ほど、逆行の頻度は高くなり、水星は最も太陽に近く、
思考や知性が日常生活にどれほどの決定権を持ち、選択を積み重ねていることで、
私たちの人生が成立していることを示す天体です。
水星は知性を司ります。
そのため、水星が逆行する期間は、内省的になり、過去を振り返ったり、
過去の出来事と同じ現象やパターンを現状に見出したりする働きがあります。
とはいえ、水星が逆行し、振り返ることを促すからといって、自罰的になったり、
必ず誤解やミスコミュニケーションが生まれる、と思い悩む必要はありません。
水星の逆行は、注意散漫になったり、細部を無視して、
見切り発車をしてしまうというような、私たちの判断・認識のズレを象徴します。
ミスやトラブルは起こるべき時には起こります。
ただ、重要なことは、平常以上に、落ち着いて、段階や段取り、準備をして、
目の前に起こる現象に対応する、ということです。
天体の公転速度が逆行現象を生み出す、と私たちは認識し、
そのような事象が起こることを想定します。
最も頼もしい意識は、「成るように成る、成るように成す」です。
現状で出来ることをし、準備を整える努力をしたのなら、
不要な心配をせず、自分の行動・選択の幅を狭めないことが重要です。
金星
内惑星・個人天体である金星は、喜びや愛情表現を象徴するとともに、
物質的な豊かさや金銭、恋愛を象徴します。
そのため、金星の逆行の期間は、これらの事柄について、過剰な働き・反応を示します。
- 衝動買いや高額な買い物、借金などの金銭に対する衝動性やトラブル
- 恋愛における仲違いや行き違い、見込み違い、いつもとは違う恋愛志向に走るなどの衝動性やトラブル
- 自分本位に振る舞う、好き嫌いが激しくなり、衝動的に判断を下す、平常の感覚とは異なる刺激を求める
金星は愛情や愛着、豊かさに関しての働きを司ります。
金星が内向性や受容性を象徴するなら、その対極性は火星です。
内向きの意識が反転する際に、衝動や感性重視の言動や振る舞いをすることで、
悩みやトラブルを招くだけでなく、深刻化させる側面があるため、
金星の逆行期間は、外界に対する認識を戒めることが重要となるでしょう。
ただ、金星の逆行期間は、「豊かさを享受している事実」をいつもとは違う感性で見つめよう促されます。
そのため、一時的にいつもとは違う習慣や価値観に触れてリフレッシュしたり、
普遍的な豊かさに対する感謝を認識し、自分の内面に宿っている感性や表現力と向き合い、
「最善の自分像」を掴むために、趣味や娯楽、リラクゼーションなどで、
自分磨きや心身の調整を計るといった工夫によって、
「自分という唯一無二の存在を楽しませる(楽しむ)」という体験ができる、という利点もあります。
金星は、牡牛座と天秤座を支配・守護します。
牡牛座は、地のエレメントのサインで、
物質性を象徴し、形有るものからの安心感や満足感を得る欲求を表します。
天秤座は、風のエレメントのサインで、感性を象徴するとともに、
思考や価値観などの、他者や社会の常識や概念と結び付き、
自己認識や自己評価を下す働きを持ちます。
一言で金星の働きといっても、有形無形どちらの方面にも象意がありますので、
金星の逆行は、その時々の状況によって、
物質的な豊かさと感性的な豊かさのどちらに重要度を置くかは変わります。
金星は、木星と同じくベネフィック(吉星)の天体ですから、
快楽や快感、好き好みに関連した愛着行動や衝動は、
自分自身の喜びに直結し、その喜びを体験・体感しようと働きます。
金星の逆行は、必ずしも自分本位やわがまま、
奔放になることを意味するわけではありませんが、
無自覚に衝動的になったり、過剰に外向的になる可能性がある、ということを教えてくれます。
火星
外惑星・個人天体である火星は、行動力や実現力を象徴する天体です。
行動力や実現力は、自らの意志や欲求を叶えるためのエネルギーであり、
目的意識や現実創造において、自家発電的に現実に変化を生み出す力ともいえます。
そのため、自分の意志を叶えるためには、利己主義になる必要があります。
「利己主義は悪い、利他主義は尊い」というのは誤解です。
私たちが食事をすることも、運動をすることも、睡眠を取ることも、自分自身を保つために必要不可欠だからこそ行います。
人生において自らの能力や才能を活かすためには、
必ず、心身の状態を整え、逞しくする必要がありますので、
特定の目的や目標のための行動や衝動、動機、そして意志は、
利己主義という見方だけでは片づけることはできません。
なぜなら、自分の意志を立て、自分の足で立ち、
自立を果たして社会活動をする際に生まれる競争や対立は、
単なる勝ち負けではなく、適材適所や役割分担、影響力の大小は、
相互作用として、望ましい方向性に互いを向かわせ、全体性の秩序と活性に貢献しているからです。
火星は地球よりも、太陽から遠くに軌道を持ち、水星や金星よりも公転速度が遅く、逆行の頻度は少なくなります。
また、火星は、土星とトランスサタニアンの3つの天体と同様に、マレフィック(凶星)です。
ネイタルチャートでは、火星の凶意は、昼に強く働き、夜に鎮静化します。
金星と火星は夜の天体で、どちらも衝動性に関する働きを持ちます。
火星が逆行する期間は、衝動性や攻撃性が優位になるという側面がある一方で、
自分自身への激しい感情や葛藤が生まれやすい傾向があります。
- 結果や周囲の目を気にせずに、衝動に任せて行動する、短絡的な行動に走る
- 過去に犯したミスや体験したトラブルと同じような状況に遭遇し、適切な決断と行動を迫られる
- 反省や内省を通して、自分の行動原理を知ることで、自分にとって苦手ではあるものの、採用すべき行動によって、新しい視野を手に入れ、押すばかりでなく引くことを覚えるなど、柔軟な発想と立ち振る舞いにより、成長と成果の質とスピードを高められる機会・チャンスを得る
火星は、太陽とともに、男性原理を司ります。
金星は、月とともに、女性原理を司ります。
太陽が本質という意味で「不変性」を象徴するなら、
火星は変化という観点で「実現性」を象徴します。
火星が持つ力は、現実に変化を生み出し、
前と後の差を体験する喜びを求める内なる欲求を叶える力です。
火星は、牡羊座と蠍座を支配・守護し、意志と情感に関わる天体であり、
常に「自分の力を掌握するプレッシャー」を自分自身に与える天体でもあります。
本質的には、思考や感情は、
外的刺激や環境との関係性の中で生まれる反応・フィードバックなので、
私たちの本質の望みや欲求を代弁しているわけではありません。
ですが、私たちはこの世に何も持たずに生まれ、何も持たずにこの世を去っていきます。
また、私たちの身体さえも、私たちの所有物ではなく、
両親と先祖から継承した器であり、遺伝子の結晶ですので、
私たちのオリジナルの要素は、意識だけです。
この意識という不明瞭だけれど、
確実に私たちを人間たらしめる働きやエネルギーの源泉は、
「自作自演」のシナリオに沿って、
何も知らない状態から人生を始め、世界と出会い、
関わる人々から影響を受けて、自我意識を形成します。
自我意識は、月、水星、金星の3つの年齢領域で、
ある程度のまとまりを作り、太陽期において、その不完全性を目の当たりにし、
火星期において、その不完全性を覆すかのように、
自主自立と自己実現に目覚める成長段階を経て、
私たちはようやく、自らの内面に備わっている創造性に気づき、
その無限の可能性を引き出そうと、躍起になって人生を展開させていきます。
火星が司る「力」とは、創造性を引き出すために、現実の出来事を活用し、
変化を生み出すことで、その力を自らに示す働きです。
この働きが逆行の状態になると、
本末転倒となるような行動や、内に秘めていた攻撃性を解放したくなったり、
抑圧していた残虐性や闘争心を発散したくなります。
こういった本能的な衝動は、言ってみれば、寄り道のようなものですが、
その寄り道を引き返すことができなくなるような出来事に遭遇することもあります。
そのため、火星の凶意を甘く見てはいけない、という発想・解釈に至るのです。
これを違う角度から見ると、
自分自身の(創造性の)力の扱い方を見誤ってはいけない、
自分という存在に備わっている生命力を侮ってはいけない、
という真理に触れることができます。
火星の逆行は、自らを破滅に導くような状況を暗示しますが、
望むか否かに関わらず、破滅的な体験をした後には、
人生の糧とし、誰かの人生に貢献するための人生訓とすることで、
あらゆる体験は決して無駄にはならない、ということを教えてくれます。
木星
外惑星・社会天体である木星は、拡大と発展、豊かさ、道徳心を象徴します。
太陽が1年の公転周期を持つのに対し、
木星は12年の公転周期を持ちますので、
木星が1つのサインを1年かけて運行します。
火星以降の外惑星が、
太陽が運行するサインと対向のサイン付近に位置する時に逆行現象が起きるため、
木星は、太陽の意識が真向から刺激する大惑星といえます。
木星の逆行は、「疾走感」という風に形容することができます。
カーヴを曲がる時や進路変更を行う際、
スムーズに進むためには原則が必要となるように、
木星の逆行の状態は、太陽の意識を調整する側面を持っているといえるでしょう。
- 社会の流れが停滞するのに呼応して、個人の流れは停滞感を感じやすくなる
- 大義や目的、信念を振り返り、現状を改める意識が芽生える
- 楽観的な時と悲観的な時の落差を感じ、地に足を付けて現実を受け止めることに意識が向く
木星は、男性天体であると同時に、昼の天体です。
「日の目を見る体験」を得るためには、成長・発展が必要不可欠であるため、
木星の遠心力や楽観的な視野は、長期的な成長・発展を促す重要な要素といえます。
木星は、射手座と魚座を支配・守護します。
射手座は、肉体性と精神性の両側面に意識を向け、
魚座は精神性に特化し、現実性を包み込むような意識を持つ特徴があります。
海王星も魚座のルーラーであるため、
無意識の働きや集合的無意識の領域からの導きや気づきは、
木星ではなく、海王星の働きの範疇です。
木星が逆行する時、太陽と間反対の位置で、
大質量の惑星の遠心力が、平常とは異なる挙動を見せるわけですから、
木星が位置するサインのエネルギーは大きく揺らぐことになります。
この木星の遠心力が私たちの意識や心、社会に影響を与える際は、
規模・程度の大小はありますが、思い通りにならなかったり、
スムーズに物事が進まないことに動揺・狼狽し、足がすくんでしまうでしょう。
また、木星は金星と同様に、ベネフィック(吉星)で、
木星の場合は大吉星と見なされますので、
手元に巡ってくるはずの「恩恵」や「豊かさ」が、
まるでお預けされるように、手応えが感じられない、というような、
予定調和の歯がゆさを感じる出来事を体験するかもしれません。
木星は、精神性や信仰心、哲学などの、個人と集団性を繋げる道徳観や倫理観を司ります。
木星がもたらす豊かさや恩恵を独り占めすることなく、
他者に分け与え、献身性や貢献性の喜びを知り、
どのような形であれ、価値貢献をすることで、豊かさと喜びは拡大していきます。
この理を受け入れ、また、沿うような言動や振る舞いをする時、
然るべきタイミングで報酬を受け取ることができます。
ただ、「期待して行う」という損得勘定は、悪感情・悪癖とするのが木星です。
遠心力は、太陽がもたらす生命力(光)のように、贔屓や忖度とは無縁のものです。
人によって受け取る豊かさのタイミングは異なりますし、
受け取ることになるメリットとデメリットの大きさ・小ささも異なります。
そのため、最も重要な道徳観や倫理観を自分に向ける際は、
他者比較をせず、摂理として巡ってくる豊かさを享受しながら、
その摂理の和の中に自分がいることを感謝し、また、誇りに思うことが重要です。
木星が逆行する時は、こういった原理的な働きから意識が遊離し、
利己的な態度が優位となり、気分の高低さが激しくなって、
自らを振り回してしまうといった状態になる傾向があります。
そんな時は、太陽(本質)を思い出し、
再び、足元の地面を踏み直し、深呼吸をしながら、
今できることを積み重ねることが最善の選択であることを自分自身に言い聞かせることが重要です。
土星
外惑星・社会天体である土星は、
責任や義務、自己実現のための地道な忍耐力を象徴するとともに、
堅実さと厳しさを教える天体です。
土星は約29.5年の公転周期を持ち、1つのサインを約2年半かけて運行します。
29.5年という年月は、
進行(プログレス)の月のサイクルに匹敵する(もしくは、それ以上)の年月に相当します。
これは、物事の成り立ちから発展、結実のプロセスには、
時間と労力はもちろんのこと、
現実性と精神性の両側面の成長を自らに課すことで、
社会貢献と自己実現の成就を果たす、という重要な視座の獲得が必要となり、
誰もが平等に課せられる人生の道程に対する目的意識を自覚することが重要です。
土星が逆行の状態にある期間は、
自省と内省を進めるような出来事や転機が巡ってくる、と考えられています。
- 現状の課題と責任に否応なく向き合うように促され、急かされ、
自分(の魂)と外面の世界に対して誠実に対応・適応することになる - 過去の経験や重要な出来事を振り返り、結果から因果関係を学び、
制約・制限によって、自分は何を成し遂げようとしているのか、
という目的意識や自己実現に対する疑いと信念の振り返りが促されることになる - 横着することなく、また、不義理を犯すことなく、
長期的な計画の成就のために、自己不信や恐怖心、
苦手意識やコンプレックス、重圧と対峙し、自分自身と現実との和解をするよう迫られることになる
土星は、時間と境界線を司ります。
どちらも「過去の今」と「現在の今」、
そして「未来の今」に通う意識の座標と枠組みを象徴します。
また、土星は「心の闇」を司り、
外面の世界で起こる出来事や出会う人々の存在から、
自分の心に植え付けられた闇を知り、徐々にその正体と和解するための課題を与えます。
そのため、土星は「厳しい教師」という呼び名があります。
土星の逆行は、象意が反転するのではなく、
より深くその象意を感じられる、という特徴があり、
自分軸や主体性を育てることで、土星の要請に応えていくことになります。
月も心の闇と時間を司りますが、
月は「守るべき心の世界観」や「不変的な心の世界」を象徴し、土星とは対称的です。
土星の場合は、
「闇を光に変える心の逞しさ」や「現実創造を実現するための心の鍛錬」という風に、
有限性と物質性を受け入れることで、自己実現を果たすように働きかけます。
ネイタルチャートとトランジットチャートを重ねた時、
特定の天体や感受点は「回帰(出生時の位置に戻る)」するタイミングがあります。
土星回帰は、人生で最大3回起こり、
1回目はアイデンティティ・クライシス(自我の喪失)のような、
激しく、厳しい現実を体験することになり、
2度目は1度目の回帰から成長・成熟し、現実創造の成果を受け取ることになります。
この年月は約60年という長期的なスパンですので、
土星がいかに長期的に心の育成に関わっているか、ということが分かります。
そのため、人生で起こる土星の逆行の頻度は、水星や金星のように多くありません。
じっくりと、また、地道に歩みを進め、着実に前進し続けるプロセスにおいて、
私たちは人生を、好き嫌いや得手不得手で見誤ることがなくなっていきます。
そして、土星の働きは、個人の人生だけでなく、
大衆性や社会構造にまで大きな影響を持ちますので、
個人が自分の人生に責任を持ち、自由を謳歌することで、
私たちは自然と、また、半強制的に、社会貢献を実現・体現することを導くのです。
天王星
外惑星・トランスサタニアンである天王星は、
木星や土星以上に、規模・スケールが大きく、
個人の体感よりも、集団的な変化という形で現象化に関わります。
トランスサタニアンの影響は、まだまだ研究が進んでいる途中ですので、
完全に把握され、理解されているわけではありません。
天王星は、地軸が90度に傾いている変わった天体です。
アスペクトで言えば、スクエア(90度)の角度で公転しているとなると、
喧嘩腰しな態度が天王星の印象と言えなくもありません。
主要10天体は、個人天体・社会天体・トランスサタニアンの3つの異なった階層があり、
天王星は、土星によって築かれた社会や時代、世代の価値観を揺さぶる働きをします。
それは、つまり、「改革」や「革新」という働きであり、
「次世代」や「新世界」といった世界を誕生させる働きです。
そのため、天王星の影響によって、
中央集権・ピラミッド型の社会構造は内側から再構築されることになります。
なぜなら、どれだけ「国家」や「社会」という集団的な役割があっても、
その中身・実態は、「人の集まり」であり、「共同体」であり、
時代の流れによって、個人が被支配的な立場を遵守する必要が無いと気づき、
時間と労力という寿命と生命力を明け渡すことを止め、
自主自立と新しい共同体意識を築き始めるからです。
天王星の逆行は、土星と同様に、
自らに自己改革を推し進めるように促すように働きますし、
周囲や社会がそのような出来事を、局所的・同時多発的に観測・認識することで、
「変わることを選ぶ勇気」が強まります。
- 従来の社会通念や常識が重荷・足かせであることに気づく出来事に遭遇し、
内面にある怒りや衝動性、創造性や天才性(個性)を解放する意識が高まる - 「古いは悪し」ではなく、「不要な古さ」を剥ぎ取ることを一旦は善しとし、
価値観や概念の刷新が促される - 現状維持が秩序を守ることではなく、
また、循環のための貢献ではないことを自覚するような衝撃的な転機を迎え、
それを機に、「現実創造や自己実現とは何か」を真に考え、
行動に移すための、意識の転換が促される
天王星は、水星のハイ・オクターヴの天体で、水星と同様に、男性・女性の区別の無い天体と見なされています。
土星までの天体が、二元性の原理を絶対的な法則とし、
その法則に則って、一度は世界を構築してきましたが、
トランスサタニアンの3つの天体は、そこに更なる広さと深み、
そして、奥行きをもたらします。
天王星は、水瓶座を支配・守護し、土星とともに水瓶座のルーラーです。
本講座内では、水瓶座のシンボルである、二重の波は、
物質性と精神性の重なり、
もしくは、物質性と非物質性の重なりと定義しています(捉えています)。
伝統占星術(古典占星術)は、原理を重んじ、
現代占星術は、観念や精神性を重んじる、という比較は少し乱暴ですが、
天王星の発見と占星術での取り扱いは、
これまでの歴史を大きく覆すほどの影響力を持ち、
それは物質文明を破壊しながら、更なる発展をもたらす存在であることは間違いありません。
筋力トレーニングは、筋肉に負荷をかけ、回復する際に筋肉量が増えると言います。
この筋肉の「超回復」のプロセスは、
まるでタロットカードの「塔(Tower)」のように、
更地にして、復興する時に、不要なものは取り除かれ、
真に必要なものが解放されることを表しているかのようです。
水瓶座は、独自性と天才性(個性)を重んじ、
集団や共同体に関わることは望むけれど、
骨をうずめるような依存的な立場を敬遠します。
もちろん、そのような立場を受け入れざるを得ない場合や状況も、
タイミングやその時々の意識の違いもありますが、
本質的には、内部に深入りするのではなく、
自己主張が受け入れられ、交流がしやすい風通しの良さがあることによって、
無駄なエネルギー消費や不毛な勘違いによる対人関係のトラブルを避けることを望むのが、
水瓶座の自然体の姿です。
水瓶座は、牡牛座・獅子座・蠍座と同じ不動(固定)宮のサインで、
通気性や機動性を求める立場とは裏腹に、頑固さや融通の無さを性質として持ちます。
この性質は、土星と天王星の双方の影響といえますが、
土星の「実現に対する実直さ」と天王星の「理想に対する生真面目さ」が、
水瓶座のフットワークの軽さと義理堅さという二面性を生じさせていると思われます。
水瓶座は、情動よりも理性が優位になる、と言われていますが、
実際のところは、情動を重んじるからこそ、理性的になり、
冷静に状況把握をし、現状打破のために思考を巡らせる働きを持ちます。
そのため、山羊座が情動を一切排して、
もしくは、内側に感傷や脆さを密閉・幽閉し、要塞を築くような冷静さや冷徹さとは異なり、
水瓶座の働きは、時に情熱的に振舞い、時に冷徹に振舞う、という意外性を見せます。
天王星の地軸が90度に傾いている形態に対して
、最初から首をかしげて話を聞いている相手をイメージしていただくと、
「変わり者」という印象を持つかと思います。
ある立場からすれば、「普通」は害悪でしかないかもしれませんし、
ある立場からすれば、「特別」が害悪でしかないかもしれません。
それほどに、生まれ育った環境や場所、
強制的であれ、主体的であれ、受け入れてきた価値観によって、
私たちが馴染んでいる概念や観念は、いくらでも変わり得ます。
天王星の逆行はそういった「あるべき姿」や「真実実相」という世界のありのままの姿と、
来たるべき流れに対して、「今の状態では衝撃に耐えられない」という意識を与え、
それが心に動揺や焦り、怒り、苛立ちとして滲み出て来るのでしょう。
そうした感情は、私たちの自我意識が形成されていく中で、
連帯責任で、その時代を生きた人々が共同で築き上げてきた意識であり、
次世代に植え付けていくことになった影響であり、然るべき時に、
現実に起こる事象と共鳴して、芽を出します。
天王星の逆行は、誰かを悪者にすることや、誰かに責任を取らせるためではなく、
一人ひとりが自らを改革することで、従来の価値基準から外れ、
その影響下から出ることで、
個性という天才性と生命力から生まれる
創造性を発揮するための「震え」を強く感じる期間と転機を与えるといえます。
私たち個人の意識が、自らの人生が私たちに求める方向性に気づかせる時、
また、集合意識を同じ方向性に向かせる時に、
天王星は現状と方向性の間にある溝や矛盾を解消し、
視野を広げるために、予想外の現象を引き起こします。
現代は、風の時代や水瓶座の時代と呼ばれていますが、
付け加えるなら、天王星の時代ともいえます。
天王星の逆行は、新しい時代の幕開けに意識を向けさせるために、
まずは内面の意識を揺さぶり、集合意識を新しい方向性へと向き直させるために、
衝撃と停滞、混乱をもたらし、
次第にその混沌さが解消されていくプロセスを観測・体験させるように働くのです。
海王星
外惑星・トランスサタニアンである海王星は、
曖昧さや不確実性、非物質性を象意に持ち、形の無いものを象徴します。
私たちはそれらを、幻想や幻惑、夢や無意識、
そして集合的無意識という掴みどころが無いけれど、
確実に感じられる感性や境地として捉えます。
海王星の逆行は、天王星とは正反対に、
個人個人が「自分だけの真実・理想」を追い求めるように、
内省的・排他的な態度を促し、枠やルールといった秩序を取り払いたくなる衝動を強めます。
- 当事者意識が薄れたり、気分のムラ、地に足のつかない感覚をもたらす
- 一時的に、現実に即した言動をすることに躊躇いを覚え、
逃避行動や非現実な事柄に意識が向きやすくなる - 境界線や制約・制限に対する意識が弱まり、騙されたり、誘導されたりと、
物質性を象徴する金銭や不動産、権利などの奪取・詐欺に遭遇する確率が上がる
夢にはいくつかの種類があります。
睡眠中に見る夢
:未来からのメッセージを受け取っている
脳内の情報を整理する際に感覚として見ている情報
欲求や理想、衝動を脳内で実現している etc
人生のシナリオに設定されている、実現可能な目的として夢
:心が惹かれる物事やイメージ、インスピレーションが
日常生活にサインとして表れ、無意識にそのサインを手繰り続けることで、
実現が約束されたように現実が展開していく
幻想としての夢
:感情や衝動を抑制することができず、限界に達した際、
非現実的な行動・逃避行動を取ることによって、
変性意識状態となり、夢心地になる状態
このように3つほど例を出しましたが、
どの場合も、「確証の無さ」や「自分だけが分かる感覚・意識」という点で共通しています。
これは、現実的・非現実的という二元的な尺度で捉えられるものではなく、
また、当事者としては、そうしなければいけない、
というような早急で、切迫した状況や境地であるが故に、
単なる病理的な幻想や幻惑とも言えません。
私たちの脳も心も、現実に適用すること以上に、
自分自身の(心・無意識の)世界を守ることに優先順位を置きます。
海王星の働きに則した表現をするとすれば、
「私が生きていられないような世界には背を向ける」となるでしょうか。
これは永遠に現実的な喜びや豊かさを感じることを拒否する、ということではなく、
「私」という当事者意識が苦しみを受け止めきれない場合は、
痛みを感じる痛覚を麻痺させる選択を取り、
時間が経って、痛みに耐えられるような状態になったら、
また、現実という物語と向き合えばいい、というある種の慈愛の働きといえます。
海王星は、魚座を支配・守護し、水や海、心や無意識といった、
誰にも通っていて、常に移ろい、漂っている不確かなものとその働きを象徴します。
木星も魚座のルーラーですが、海王星の働きは、
現実からかけ離れた領域であるため、
土星と天王星が水瓶座に相反する影響を与えるように、
海王星と水瓶座の関係性は、実に不可解で、不明瞭で、
そして、どこまでも限界や果ての無い浮遊感をもたらします。
本講座内では、月が個人の無意識の領域を司り、
海王星が個人の無意識を内包する、集合的無意識の領域を司る、と定義しています。
海王星の逆行は、月が司る個人の無意識の領域から、
無意識に紐づく感覚や感性を、集合的無意識にまで引っ張る働きが強まり、
現実に背を向けるように、更に、自分という存在感覚を薄めるように、
変性意識へと自我を誘う働きが強くなります。
海王星や魚座が司る非物質性や神秘性は、
私たちを現実に滅ぼされないために働きますが、
その働きを際限なく受け入れ続けていると、
物質的な器としての肉体や変化を体験できる現実という舞台を軽視するようになります。
薬物やアルコール、狂信的な信仰などは代表例ではありますが、
誰にでも、没入することで自分の心を救えると感じている手段や方法、時間や場所を持つことができます。
そういった「自分と乖離する体験」は、
死を感じる側面があるため、余程の心境や状況でない限り、私たちは勇気が出ません。
職業的にそのような死やグロテスクな現場や状況に居合わせることで、
一時的に、死が当たり前であることを受け入れることがありますが、
時間と場所を変えれば、その意識は現実的な日常に触れることで、
本能的欲求や平常の心の在り方に戻ります。
一方で、あまり人には言えないような趣味やオカルティズム、神秘主義や信仰に没入し、
追求し続けることで、警戒心や危機感が薄れ、死に近づくことに慣れ、
または、死を美化し、現実を嫌悪する、という厭世的な人生観が安らぎに転換されることもあります。
人はどこまで醜くなれるのか、という意味では、
海王星は天王星以上に、現実や物質的な存在である人間を軽視し、
自滅や破滅へと導くキッカケを闇の中から仄めかすような怖さを持っています。
海王星の逆行は、こうした「果てしない未知」や「手応えの無い感覚」を追い求めることで、
矛盾や痛みを忘れるように誘導しますが
、天体の配置や人生のタイミングにおいて、
自力ではその状況から抜け出せなくなることさえも暗示しています。
海王星は、最も説明がつきにくい働きと影響力を持ち、
逆行の状態にある場合は、内向的な意識のベクトルが、
自分を守り、夢を味わう程度で済むように、
物質的・現世的な楽しみを持ち合わせておく方が健全かもしれません。
海王星が月や金星に接触する時は、
「無我夢中」や「是か非でも」という意識になりやすいため、
自分を破滅に追い込む前に、自分の心を癒す方法を知っておくことと、
周囲に弱さや脆さを受け入れてもらう体験が重要です。
実際に、海王星の影響が非常に強く、12ハウスの太陽の生き様以上に、
現世的に生きにくい星回りを出生図に持つ人は少なくありません。
どのような人生であっても、最善の流れを意図することが最も重要ですが、
時に、その意図を希望と捉えることができなくなる時や状況があります。
海王星の逆行は、決して私たちに現実を犠牲にすることを望むわけではありません。
とはいえ、海王星が見せる幻想から引き返すことを選択せずに、
堕落することを選択した場合は、
堕落していく様子を無言で見届けるような残酷さもまた、
神秘性や不確実性、非物質的な働きの成せる業です。
ですから、肉体を持っている間、寿命がある限りは、
私たちは肉体的・物質的な豊かさと痛みから完全に逃れることを選択すべきではありません。
海王星の逆行は、この当たり前である意識を取り払い、梯子を外すように、
どこからともなく意識の中に入り込み、
酩酊状態・変性意識状態が救済であると思い込ませる傾向があります。
妙な表現になりますが、現実から逃げるために夢を持つのではなく、
逆に、現実に還るための夢を持つことが大切です。
実現可能な夢と実現が不可能な夢の両方を持つことで、
私たちは自分自身を生きることを許すことができます。
夢が叶うことを自分に許すことと、夢が叶わないことを自分に許すことは、
心の葛藤と世界への憎悪を解消する意識の持ち方だからです。
冥王星
外惑星・トランスサタニアンである冥王星は、
最も外円の位置に存在する天体ですが、
海王星が司る集合的無意識の果てと太陽の中心点を結ぶ不可思議な天体です。
月が湖とすれば、海王星は海となり、
冥王星は、その両方を貫く根源的な働き、且つ、混沌そのものを象徴します。
そのため、冥王星は集団意識と集団的無意識、そして個人の無意識のすべてに関与します。
ですが、その影響は自覚することすらできません。
- 個人の魂の目的や人生のテーマについて、深層心理や個人の無意識に波紋を立てる
- 圧倒的、且つ、コントロール不可能な衝動や衝動に駆られ、破壊の末の再生を望む意識を生む
- 社会の流れだけでなく、人類の意識の進化における必然的な創造と混沌の現象化を生み出す力を体感させ、
個人の無意識に変容を望むよう働きかける
太陽系における冥王星の公転周期は、最も長いため、1つのテーマや創造のプロセスはゆっくりと進みます。
私たちにとっての冥王星の働きは、
あらゆる現象を目の当たりにし、時代の変遷を観測し、
結局は「どのような在り方が最善であるか」を自問し、自らで答えを出す、
という掴みどころのないものです。
私たちは何気なく道を歩きますが、
もしかしたら、目に見えない小さなスケールで、
多くの生命体を踏みつぶしているかもしれません。
また、私たちは自然からあらゆる資源を得て生活し、文明を発展させていますが、
それは、自分の知らない場所のエネルギーを取り上げ、地球の環境を損ねている側面があります。
この事実は、食物連鎖や弱肉強食、争いや対立には犠牲がつきものである、
という厳しい現実を示すだけでなく、
私たちはこの宇宙(世界)において、知覚・認識しているものが限られている、
ということをも示しています。
言葉を変えるなら、私たちが目の前の現実を悲観し、絶望しようとも、
長い目で見れば、必然的な喪失体験を得なければ、
その先の創造活動に結び付かない、ということです。
冥王星は生と死を司り、時間を超えた理(非物質性)が、
物質世界を成り立たせている高次的な働きが存在していることを示します。
冥王星の逆行は、こういった日常と宇宙の創造意志のどちらにも影響を与え
、「生命が宿るものの業」を全うする上で、破壊と再生の連鎖を受け入れることを促します。
私たちの人生においては、恐怖心や不安、未知や神秘を体験し、
それでも生き抜こうとする力を自覚する場面は、
馴染みのある環境から離れたり、親しい人との離別や死別、
新しい生命との出会い、自分という存在がいかに恵まれ、生かされ、
そして守られていて、人生のどん底や行き詰まりで途方に暮れたとしても、
再起・再生を望む力は決して失われないことを、
自分自身と真に向き合う時に、「終わり」はまだ先にあると、「今」に未来を望む時です。
この再生のプロセスの原理は、
私たちが日々眠り、新たな日を迎えることと似ていますが、
境地や心に抱える重圧や葛藤は桁違いです。
冥王星は蠍座を支配・守護し、「変容」と「心の純化」の意識と働きをもたらします。
蠍座は、敵に対してだけでなく、自らにも毒を用いて、瀕死の体験をもたらします。
蟹座は、自らの変容のために内に籠りますが、
蠍座の場合は、親密な他者とともに変容を迎えるために、
自我意識を喪失することを受け入れ、
また、相手にもその底知れぬ恐怖を受け入れることを求め、
まるで冥界下りをするかのように、
創造性の発露のために、精神的な死へと足を進めます。
冥王星が蠍座に託す力は、分かりやすい形で、
早急に答えとなるものでも、誰からも喜ばれるような変容体験ではありませんが、
確実に、変容の前と後では、生命エネルギーの影響力は変わります。
それほどまでに苛烈で、深刻で、
そして、逃れることが無い苦しみは、私たちの人生の至るところに潜んでいます。
冥王星の逆行は、死から目を逸らすことも、生から目を逸らすことも許さず、
与えられた生命を全うするために、意識の力を使うことを促します。
「一寸先は闇」であり、「一寸先の先は光」であり、「闇は光」です。
私たちの知覚・認識は、まるで、
「仕組まれた映像(演出)」を強制的に見せられ、
現実(世界)というものを脳内で最適な容量・形式に変換して捉えています。
その映像(演出)は、
私たち個人と、世界(宇宙)の共同創造によって作られているわけですが、
その全容は途方もない大宇宙の計画であるため
、私たちには、納得いかないことや、受け入れがたいことが内包されていると同時に、
0から1を生み出す神秘的な働きに感動し、
言葉では言い表せない至福を感じさせる瞬間も多々見込まれています。
つまるところ、自我意識として世界を捉える私たちには、
生まれる場所も時代も、体験する出来事も、自分自身の性質や体質、気質、
人生のテーマや課題など、あらゆる要素を決める決定権も選択権が与えられていないように感じ、
それだからこそ、私たちの人生は上手くいっている、ということです。
冥王星の逆行は、
「現実とは何か?」や「私という存在と人生とは何か?」という答えの出ない苦難や苦悩を味わい切った先に、
「それでも生きていく」という意志の再生により、
生命エネルギーが純化され、不死鳥のように蘇りを果たす機会を与えます。
誰もが宇宙の大掛かりな神秘体験に遭遇するわけではありませんし、その必要もありません。
ただ、人類の意識は繋がっていて、一人ひとりの意識から芽吹き、
その創造性を現実に形を与えることで、非物質的な働きは成就します。
冥王星の影響は逃れられるものではありませんし、
決めつけられるものではありませんが、私たちが今生きている事実を持って、
私たちは望まれて生きていますし、私たちの人生は宇宙に祝福されています。
ですから、私たちが自分自身をどれほど憎もうと、どれだけ追い込もうと、人
生のあらゆる時点・地点で、私たちは内面に宿っている生命力を信頼し、
大宇宙の摂理という愛が生み出す世界を受け入れることを選択し続けることが重要です。
振り返りは「意識をある地点に戻す」ためにある
逆行天体の働きは、意識を進んだ場所から後ずさりさせることで、
まるで「忘れ物を拾いに戻ること」を促すような影響をもたらします。
昨日であっても、今からすれば過去ですし、
「今」と言った瞬間に、既にその今は過去となっています。
必然的に拾うべき要素を拾いに戻ることを促され、
天体の逆行が終わっても、その意味が分からないことの方が多いものです。
ただ、「何のために今の現実(逆行)があるのだろう?」という意識は、
前進する時も、後退する時も重要です。
10天体は、それぞれに振り返るべき要素を別々に持ち、
頻繁に逆行する天体は、思考や選択について調整を促し、
稀に逆行する天体は、1つのテーマについてじっくりと向き合いながら、
3歩進んで2.999999…歩下がるような道程を歩ませます。
私たちは、脳内や心の中に情報やエネルギーを溜め込みやすい傾向がありますが、
天体の状態が順行・逆行のいずれであっても、
内面から外面にそれらを移し、言語化し、表現することで、内的混乱は少しでも鎮まります。
そして、ジャーナリングや日記、シャドウワークといった内面と向き合う時間は、
1日が二度と戻ってこないとともに、
今起きている現象と知覚・認識している内面的な真実は、
観察し続けることで、局所的な点が線となり、面となって、
時間をかけて、その真価が体験される時のための準備を積み重ねる素晴らしい習慣となります。
占星術は天体を主役とし、宇宙と地上、そして、私たちの三位一体の神秘的な関係性を解釈し、
現実(人生)というシナリオを解釈する上で、
暦や時間、プロセス、変化、意識、心などの変化がいかに重要であるかを教えてくれます。
「振り返ること」は、つまり、「思い出すこと」を促します。
天体の逆行が私たちの意識を導くために、
前を塞ぎ、周りを見えなくさせる時、それは自省や内省によって、
世界をより善く捉えるための働きかけが起きているのです。
「失せ物」が戻る時
逆行天体の働きは、「失くしたもの」に気づかせ、
実際にその物が手元に戻ってくる、という「結び」の働きをもたらします。
厳密には、失っていなかった物との繋がりが見えなかったけれど、
再び、その繋がりが見えるようになる、ということです。
逆行天体が「認識の差」を意味するように、
私たちは目に見える状態や事象に引っ張られます。
このこと自体に善悪やジャッジは必要ありませんが
、勘違いや思い込み、無自覚から繋がりが失われたと感じる時、私たちはショックを受けます。
そして、繋がり・結びが再び戻った時に、私たちは安心します。
意識や心の働きの前提として、
「形が無くても存在している、繋がっている」という事実を知ることで、
「喪失体験」や「成長体験」は、全体のプロセスの中で起こるべくして起こる、
という必然性を受け入れることができます。
占星術では、「失せ物」を見つけるための知恵を授けるというよりは、
その物がどうして手元から失われたのか、という象徴や意味を解釈することを促します。
そして、結果的に失くした物が見つかるかどうか、という占断を下すわけですが、
私たちがどんなに物や生き物、人、場所に愛着を持っていても、
それらや私たちは物質の塊である以上、
形は失われ、喪失を受け入れた私たちもまた、寿命を迎えます。
(素粒子の集まりであっても、物質次元に存在している以上、物質である、という意味です。)
既に完了した出来事を解釈することで、より善い今を選択することはできますが、
過ぎ去った時間自体を巻き戻すことはできません。
天体の逆行のタイミングと失せ物のタイミングが重なった場合は、
単なる必要か不要か、という判断だけでなく、
「巡り合わせ」や「人生の流れ」という意識で占断を下したり、占断に関わる姿勢が重要です。
逆行の3つのフェーズ:順行・逆行・留(ステーション)
逆行には5つのフェーズがあります。
- 順行:プライマリー・モーションの向き(反時計回り)に天体が運行する
- 留(ステーション)①:天体の速度が落ち、次第に見かけ上止まった状態になる
- 逆行:天体の進行方向が見かけ上反転する
- 留(ステーション)②:天体の速度が増す前に、見かけ上止まった状態になる
- 順行に戻る
天体の平常な運行の向きを「順行」とした時、
見かけ上の進行方向が反転し、「逆行」の状態となり、天体の働きが停滞や混乱を招きます。
また、順行から逆行に転じる際と、逆行から順行に戻る際に、
方向転換をするかのように天体の運行速度が増減し、
停止の状態になる「留(ステーション)」を経て、
天体の運行は順行 – 逆行 – 順行のプロセスを辿ります。
私たちは、物事が始まる時に大きな衝撃や変化を感じます。
そのため、天体の逆行が始まる約2~3日前から留(ステーション)となり、
流れが変わり始め、天体の逆行の影響が現象に反映され、様々な出来事に直面します。
次第に、逆行の状態に順応し、
天体の逆行がもたらす影響に短期的・中期的・長期的に向き合うようになります。
そして、再び天体が留(ステーション)の状態になり、
現象の流れが変わり始め、天体が順行に戻る際に、
再び揺り動かしのような心境や感覚になります。
逆行と留(ステーション)のどちらが影響が強いかは、単純には答えが出せませんが、
一般的には、天体が逆行に転じる前の留(ステーション)と、
順行から逆行に戻る際の留(ステーション)の時に生じる
「流れの変化(天体の運行スピードの落差)」に体感や気づきを伴った現象が起きる傾向が強いです。
伝統占星術(古典占星術)の観点では、
順行は「アクシデンタル・ディグニティ」の要素であり、
逆行と留は「アクシデンタル・ディビリティ」の要素と見なされます。
伝統占星術(古典占星術)では、
天体の力を強化する要素と弱体化する要素があるとし、
前者をブースター、後者をブロッカーとし、天体の影響力に影響を与える要素としています。
順行はブースターで、アクシデンタル・ディグニティ、
逆行と留はブロッカーとなり、アクシデンタル・ディビリティに分けられます。
伝統占星術(古典占星術)では、逆行と留よりも、
天体の働きに強く影響を与える要素があるため、それほど逆行と留の影響力に注意を払いません。
逆行や留の影響を判断材料の1つとして採用する時は、
ホラリー占星術の時で、事象そのものではなく、
その事象を占いタイミング(時間・場所)をホロスコープの情報とする時といわれています。
アクシデンタル・ディビリティ、または、ブロッカーの要素として、
逆行と留よりも影響力が強い要素は、以下のような要素です。
- アヴァージョンのハウスである6・8・12ハウスに天体が位置する時
- マレフィック(凶星)とコンジャンクションやハード・アスペクトを形成する時
- 太陽によって、天体がコンバストされるか、アンダー・ザ・レイの影響を受ける時
- 昼のチャートで木星が地平線よりも下のハウスに位置する etc
現代占星術では、天体の逆行も注目されますが、
逆行から順行に転じるまでの停止の状態、
つまり、留(ステーション)の方が影響力が強いとする稽古うがあります。
なぜなら、見かけ上とはいえ、
天体の動きが完全に止まっている状態は、天体の働きが失われていることと同義だからです。
そして、天体が逆行し、再び順行に戻る際に、
他の天体とのコンジャンクションやアスペクトを形成する時にも、
逆行と留(ステーション)の影響が他の天体にも波及します。
- 逆行することで(後退することで)、他の天体と度数が近くなることで、コンジャンクションが強まる
- 逆行することで、ハード・アスペクトが強まったり、弱まったりする
- 順行に戻る際に、コンジャンクションする度数が近くなったり、離れたりすること、
ハード・アスペクトを形成する天体に対して、逆行と留(ステーション)の影響を与える etc
順行・逆行・留(ステーション)は、明らかに順行の状態が好ましいですし、
逆行から順行に戻ろうとする状態も好ましいとされます。
平常の運行(順行)の方が、天体の運行の振る舞いですから、その占断は揺らぐことはありません。
ただ、先ほど逆行と留よりも注目すべき要素がある、とお伝えしたように、
天体の位置関係によっては、その特定の関係性において、
順行の状態よりも、逆行の状態の方が好ましい場合がある、ということに留慮する必要があります。
ホロスコープは、地平線で南半球と北半球に分かれます。
天体は、昼の天体と夜の天体に分けられます。
また、太陽の位置によって、昼のホロスコープか夜のホロスコープかに分かれ、
昼の場合は太陽が主導となり、夜の場合は月が主導となります。
ホロスコープ上で、太陽と月の位置は非常に重要なのですが、
順行と逆行のどちらの運行の向きに対しても、
すべての天体と太陽の位置関係が重要となり、
逆行をする天体の影響力は、太陽との位置関係により、凶意ではなくなる場合があります。
本講座では、「太陽を追いかける形(位置)」や「太陽に追いかけられる形(位置)」という表現を使います。
ホロスコープ上で、太陽が位置する場所(ハウス)にASCを置きます。
すると、太陽が位置する場所には横軸(地平線)が敷かれ、
その地平線上から上のすべての要素はオリエンタル、
逆に、地平線から下の全ての要素はオキシデンタルと見なされます。
太陽よりも先行し、左側に天体が位置する時、オキシデンタルとなり、
右側に天体が位置するオリエンタルとなる、ということです。
昼の天体は、オリエンタルの半球に位置する方が好ましく、
夜の天体は、オキシデンタルの半球に位置する方が好ましい、というのが(古典的な)原理的な解釈です。
*トランスサタニアンの3つの天体は除外されます*
- 昼の天体:太陽・木星・土星
- 夜の天体:月・金星・火星
- どちらでもない:水星
*水星は、太陽との位置に関係なく、オキシデンタルが好ましいとされます*
地平線より上では、昼の天体が活性化し、地平線より下では、夜の天体が活性化します。
そのため、逆行する天体が昼の天体で、
太陽よりも先行し、オキシデンタルの位置にあれば、逆行の影響は少なく、
逆に、太陽を追いかける位置・オリエンタルの位置にある時には、
逆行する天体の影響力が陰り、逆行の影響力が分かりやすくなります。
また、逆行する天体が夜の天体で、
太陽よりも先行し、オキシデンタルの位置にあれば、逆行の影響は強くなり、
逆に、太陽を追いかける位置・オリエンタルの位置にある時には、
逆行する天体のの影響力がさらに弱まり、逆行の影響力を重要視する必要がなくなります。
エッセンシャル・ディグニティの観点から、
逆行する天体の品格 / 品位がドミサイルやイグザルテーションであり、
昼の天体であればオリエンタル、夜の天体であればオキシデンタルの位置にあり、
マレフィック(凶星)とコンジャンクションやハード・アスペクトを形成する場合は、
逆行する天体の影響は、望ましくない形で表面化する、という見方ができます。
そして、逆行する天体がデトリメントやフォールの品格 / 品位の状態にあり、
それほど影響力が強くない場合は、オリエンタル・オキシデンタルに関係なく、
また、マレフィック(凶星)とのアスペクトを形成していても、それほどの影響力を持たないかもしれません。
逆行のみが強い影響をもたらすのではなく、
品格 / 品位やチャートルーラーの状況、月と太陽のアスペクトなど、
複数の要素によって、その影響を的確に判断することが望ましいといえます。
複数の天体が逆行している場合は?
時期によっては、月と太陽を除く8天体すべてが逆行することがあります。
また、時期によっては、それぞれの天体がそれぞれのタイミングで逆行するため、
10天体すべてが順行する時期の方が限られます。
先ほどお伝えしたように、天体は、品格 / 品位をはじめ、
場所(ハウス・サイン)によって影響力が変わります。
そのため、逆行する天体が多い場合は、
個人にダイレクトに影響を与えるような事柄に注意し、
ミスやトラブルを避けるという意識ではなく、
「何が起こっても大丈夫」という意識で、出来ることを淡々とし、
自らの行動や他者に対して過度に期待を持たないことが重要です。
また、社会全体に波及する事象に対しては、積極的ではないにしろ、
自分一人が抱え込むものではありませんので、
冷静に見守るようなスタンスを貫けばいいと腹を据えていれば問題ありません。
逆行は一時的な状態ですし、
実際のところ、「見かけ上」であり、時が経てば必ず平常に戻ります。
重要なことは、「振り戻し」の作用が働いている期間に、
自分の思い通りに物事を運ばせようと自我を押し通そうとせず、
流れに身を任せて、起こってくる出来事を受け入れることが最善である、と捉えることです。
天体の逆行の期間
天体が逆行する期間は、公転速度が速い天体ほど短く、逆行する回数も多くなり、
逆に、公転速度が遅い天体ほど長く、逆行する回数は少なくなります。
天体の逆行は、太陽との位置関係と公転速度が要因です。
当たり前ではありますが、月と太陽は逆行しません。
地球から見て、太陽は地球の周りを回ってはいませんし、月から見て、地球は月の周りを回っていないからです。
以下の表に、天体の公転周期と、1つのサインを運行する期間、そして、逆行の頻度と期間をまとめました。
天体 | 12サインを 一巡する期間 | 1つのサインを 運行する期間 | 逆行の頻度と期間 |
太 陽 | 1年 | 約1ヶ月 | ————————————— |
月 | 約27.3日 | 約2.3日 | ————————————— |
水 星 | 約1年 | 約1ヶ月 | 約4ヶ月毎に約3週間 |
金 星 | 約1年 | 約1ヶ月 | 約1年6~7ヶ月毎に約6週間 |
火 星 | 約2年 | 約2ヶ月 | 約2年毎・約2~2.5ヶ月間 |
木 星 | 約12年 | 約1年 | 約1年毎・約4~4.5ヶ月間 |
土 星 | 約29.5年 | 約2.5年 | 約1年毎・約5ヶ月間 |
天王星 | 約84年 | 約7年 | 約1年毎・約5ヶ月間 |
海王星 | 約168年 | 約14年 | 約1年毎・約5ヶ月間 |
冥王星 | 約245年 | 約12~32年 | 約1年毎・約5ヶ月間 |
表を見ていただくと分かるように、8つの天体は毎年1回以上は逆行します。
内惑星である水星と金星は、逆行の頻度が高く、期間は短く、
火星以降の外惑星の6つの天体は、逆行の頻度が低く、期間は長いです。
*逆行期間は平均の日数を表記しています*
そのため、ネイタルチャートで逆行天体が無いケースの方が珍しいといえます。
ネイタルチャートで天体が逆行している場合の解釈は?
ネイタルチャートで、複数の天体が逆行(R)している場合、
不安になる方もいらっしゃるかもしれません。
結論から言えば、ネイタルチャートの天体の状態は、
「最善の状態」であり、「初期設定」ですので、あなたにとっての望ましい状態です。
それが、表面的に吉意が強くても、凶意が強くても、
それらに納得できなくても、喜ばしくなくても、です。
ネイタルチャートの天体が逆行している場合、以下の5つの要素を確認してください。
太陽の位置:昼のホロスコープ or 夜のホロスコープ
逆行天体と太陽の位置:オリエンタル or オキシデンタル
逆行の天体の品格 / 品位の状態
逆行の天体は、どの天体にレシーヴされ、レセプションされているか
(レセプションは、サインルーラーとアスペクトを持つことで成立します。)- 逆行天体が、個人天体・社会天体・トランスサタニアンのどれか
ネイタルチャートで逆行する天体がいくつあろうと、
1つもなかろうと、決定的な影響力はありません。
ネイタルチャートはあくまでも、「資質」や「基盤となる要素」という
、あなたの自我意識の成長・成熟を成立させるための要素です。
ただ、個人天体(水星・金星・火星)が逆行している場合の方が、
社会天体とトランスサタニアンの3天体よりも、自主的に取り組むべきテーマが強調されるといえます。
もちろん、土星や天王星、冥王星の逆行の影響も強いのですが、
公転速度と逆行の頻度から考えますと、より身近に影響を受けるのは、水星・金星・火星です。
水星は頻度が高く、日常生活に直結し、
自分の判断や選択だけでは収まらない側面がありますので、
過度に恐怖心を持つ必要はありませんが
、段取りや準備、確認はいつも以上に念入りにしようという意識が、
想定以上の被害や影響を受けずに済むでしょう。
逆行の影響は、どのホロスコープで最も影響があるの?
天体の逆行の影響は、間違いなく、トランジットの天体が最も影響力を持ちます。
先ほどもお伝えしたように、ネイタルチャートにおける天体の逆行は「資質」を表します。
ホロスコープを大別しますと、以下のように二分されます。
- 内的な資質:ネイタル・プログレス・ソーラーアークのホロスコープ
- 外的な影響:トランジットチャート
トランジットの天体は、現在進行形で影響を与えますので、
ネイタル・プログレス・ソーラーアークの天体よりも、逆行の影響力は強くなります。
とはいえ、プログレスとソーラーアークの天体が逆行の状態にある時は、
トランジットとは異なり、未来予測という観点で、天体の状態と挙動を見て、
逆行の影響がどの分野(ハウス)で、どの意識(サイン)を刺激するのか、を知ることが重要です。
逆行時期は「変容」と「調整」のために天体が働くとは?
天体が逆行をするということは、「見かけ上」であり、「内的認識が歪む」ということでもあります。
そのため、事実と反した解釈や認識をするという「誤解」が生じます。
逆行は一過性のものなので、厳密には「一時的な誤解」となるでしょうか。
この辺は、占星術ではあまり突っ込みませんが、
占星術を抜きに現象を眺めた場合でも、
「認識」による意識の変化は、人間が持つ特徴的な能力であることは変わりませんので、
「そんなこともあるよね」という認識を、
事象と天体の逆行と照らし合わせることで、
信憑性とまではいきませんが、合点のいく解釈として定着しています。
ですが、逆行は単なる「停滞」や「混乱」、
「見直し」や「内省」だけの問題なのか?という疑問が出てきます。
このような疑問は、視野を広げた際に出て来るのですが、
占星術で言えば、ジオ・セントリック占星術の世界観&天動説の概念と、
ヘリオ・セントリック占星術&地動説の概念を統合することで浮かび上がります。
ジオ・セントリック占星術のホロスコープは、
宇宙論(コスモロジー)の1つである天動説(地球中心説)の概念・世界観で構成されています。
ホロスコープの中心にある空白の円は地球であり、
月を含めた、すべての天体が地球の周りを回っているように描かれるからです。
これは、私たちが地球上に住んでいて、
大気圏の向こうの宇宙は、見かけ上地球の周りを回っているように認識してしまいます。
物理学や天文学が追究されたことで、
天動説から地動説へと人間の意識は切り替わりましたが、
実際のところ、私たちは自我意識の外に意識を飛ばし、
客観的に自らを観察する感性を使いこなしているとはいえません。
テクノロジーを使って、肉体では掌握できない視野を補強することで、
私たちは意識を拡大することができていますが、
肉体単体では空を飛べないように、私たちの意識は天動説と完全に手を切ることはできないのです。
ですが、それで問題はありませんし、
むしろ、「自分を体験する」という名目が人生のシナリオの前提にありますので、
天動説は人間に相応しい概念であることは否めません。
ジオ・セントリック占星術に対して、ヘリオ・セントリック占星術は、
太陽を中心点とする、実際の太陽系システムで成り立っています。
ヘリオ・セントリック占星術では、月は扱わず、代わりに地球を天体として見なします。
そこで、ジオ・セントリック占星術、
または、天動説の概念における天体の逆行の状態を、
ヘリオ・セントリック占星術、または、地動説の概念で解釈すると、
どのような働きがあるのかについて、少し解説させていただきたいと思います。
ヘリオ・セントリック占星術の視点で逆行を捉えると、帳尻が合う
天動説と地動説は、どちらも間違ってはいません。
ただ、両者とも、完全に私たちの認識と世界の仕組みの側面であって、
イコールではないために、見方・角度・スケールを変えて、
ジオ・セントリックのホロスコープとヘリオ・セントリックのホロスコープを統合することが重要です。
ですが、私たちは地上に生きている以上、
ジオ・セントリック占星術の世界観で生きることが好ましいといえます。
なぜなら、私たちは地球という座標に立って、宇宙空間を観測し、
また、私たちは、主観や自我意識を通して、外界を観測しているからです。
逆行という現象は、単に私たちの「誤解」や「認識の歪み」ではありません。
また、逆行天体がもたらす影響も、
一時的な星々のいたずらではなく、「宇宙の帳尻合わせ」の一部です。
もし、私たち人間という観測者が存在しなければ、
そのような解釈は必要ありませんが、
私たちが存在している以上、世界の成り立ちも、占星術の仕組みも、
私たちの認識の機能性も、それぞれに役割や機能、真理が備わっていると考えられます。
この捉え方は、演繹的な思考法です。
演繹的な思考法とは、原理や原則、法則が存在していることで、
あらゆる事象や仕組みが発生する、という「向下のものの捉え方」を意味します。
簡単に言えば、「山から下りる」と表現になり、
それは、明らかに働いている摂理を善(真理)と捉える態度・スタンスです。
哲学や道徳、倫理といった分野で活用される演繹的な思考法・論理性は、
言い換えれば、非科学的といえます。
逆に、演繹の対義語は、帰納で、
データや共通認識を集め、法則性や再現性を認めることで、
原因や動機、初動の働きを見極めます。
そのため、物質文明は帰納的思考法で発展してきた、といえます。
よく科学と宗教(神秘性)は対立する、と言われますが、
土の時代の意識を十分に体験した人類は、
次の風の時代で、科学性と神秘性を重ね合わせ、
肉体を持ったまま、精神性を高めていく意識と視野を手に入れるでしょう。
そうして、今から400年後には、水の時代を迎え、
現在の私たちでは想像もつかない時代となっているはずです。
話は逸れましたが、逆行の意味や原理の解説に、
ヘリオ・セントリック占星術の要素をご紹介した理由は、
風の時代、天王星の時代、水瓶座の時代が本格的に始まっていく昨今は、
目に見えない働きや力に対する関心が高まり続けていくからです。
それは、伝統占星術(古典占星術)に紐解かれた宇宙の叡智を、
現代占星術が時代に対応させながら、
ヘリオ・セントリック占星術の世界観や概念によって、
更に、私たちの視野や感覚がどれほど狭く、制約されているかを教えてくれるからです。
そして、ジオ・セントリック・天動説から離れ、
より広大な意識を得ようとする時、太陽の視点が私たちを待っています。
地球から見える天体の逆行は、
太陽と地球、そして逆行して見える天体が一直線に並ぶ現象(位置関係)と同期しています。
ジオ・セントリックの逆行とヘリオ・セントリックの天体会合の関係
逆行現象は、太陽の周りを早く動いている天体が、
より遅く動いている天体に追いつかれ、追い越される時に起こります。
これまでは、少しややこしい表現をしてきましたが、
例えば、公転速度が速い水星と金星は、地球に追い抜かれる時に、逆行をする、ということです。
逆に、火星以降の天体は地球よりも公転速度が遅いために、
ある位置で、地球が追い抜かれることで、見かけ上の現象として逆行を起こります。
その逆行するように見える天体の位置が、
太陽が運行するサインと正反対のサイン付近である、ということです。
話をヘリオ・セントリック・地動説の概念に繋げますと、
公転速度が遅い天体が、公転速度が速い天体に追いつき、追い越す時に、
その逆行天体は、太陽と地球と一直線に並びます。
これを「天体の会合」と呼びます。
月の満ち欠けでいうところの、新月と満月です。
地球が太陽と逆行の天体の真ん中に位置していれば、満月でオポジション(180度)、
地球・太陽・逆行天体という位置関係であれば、新月でコンジャンクション(0度)という風な具合です。
そのため、ジオ・セントリック・天動説の概念・認識による天体の逆行は、
【太陽・地球・逆行天体】という並びになり、月の満ち欠けの満月に当たります。
月のポジションを逆行天体に置き換え、太陽との光を受け取る受容体と捉えますと、
逆行天体は、太陽の光を全反射する位置を獲得する、と考えることができます。
それは、逆行の天体が太陽から意志を受け取り、
満月というエネルギーのピークによって、古いエネルギーを脱ぎ去り、
新月(太陽が位置するサインでコンジャンクションするタイミング・位置関係)を迎えるための
調整と変容を始めるということです。
ここで重要なことは、太陽と逆行の天体の真ん中に地球が位置し、
その変容のプロセスを地球によって観測される、という点です。
地球は、太陽系のみならず、大宇宙の中において、
「青い惑星」であり、生命体の生と死の宝島でもあります。
形を持つことは、有限性と物質性を体験することを意味し、
「変化」を体験することは、大宇宙への多大なる貢献に繋がります。
逆行天体が地球に変容を見届けてもらうことで、
その天体は太陽系の中での新たなエネルギーを生み出す機会を得ます。
「観る者」と「観られる者」は同時的に存在する、という原理は宇宙空間でも変わらず働きます。
この二元性の関係性を、ジオ・セントリックとヘリオ・セントリックの両側面で捉え、
意識を統合することで、高次的な(第3の視座としての)意識と感覚が目覚める、とも表現できます。
それはジオ・セントリック占星術の逆行の象意である、
自省や内省を超えて、太陽意識を受け取ることで、
「自己超越」というアップデートを起こしていく、ということなのです。
そして、この位置関係は、
逆行天体と地球の距離が一時的に最も近づく時に起こる、という特徴(法則)があります。
内惑星である水星と金星は、地球よりも太陽に近いため、
見えないために、天体会合には当てはまらないことが注意点です。
今回ご紹介した「天体会合」は、特殊な天体の位置関係と、
太陽を中心とした概念をジオ・セントリックのホロスコープに落とし込むことで、
「見かけ上の現象」の向こう側に、高次的な天体の意志の変容が起きている、
という世界観・解釈によって、あなたの意識を拡張するためにお伝えしました。
逆行天体は、変容の最中、
ジオ・セントリック・天動説に慣れ親しんだ私たちの認識には、裏目に出るような現象に映るけれど、
実際のところは、「予定調和」として、太陽系のエネルギーの統合が進んでいる、
という捉え方をしますと、どっしりと構えて、天体の動向と現実に起こる現象に深刻に悩まずに済みます。
本講座では、「必然性は、起こるべくして起こる心理の働き」という概念を採用しています。
天体の逆行さえも、必然性に内包されていて、
この概念を受け取るためには、現地(地球)の視野から一旦離れ、
外部(太陽)の視座に立つことが必要になります。
そうすることで、水瓶座や天王星が新たな時代を切り拓くエネルギー・意識であるように、
私たちも新たな概念に意識を向けて、占星術と現実を解釈できるようになるのです。
逆行は一時的な混乱と停滞とともに、光の調整・変容を進める!
今回の記事では、ヘリオ・セントリック占星術の全容をお伝えするまでにはいきませんが、
逆行の解説にヘリオ・セントリックのエッセンスを混ぜ込むことで、
ホロスコープ・リーディングの世界観は、一般的に認識されている以上に広く、
そして、深いものであることをお伝えしたいという思いがありました。
ヘリオ・セントリック・地動説の概念を取り上げた理由は
、地球から太陽系の天体を観測する、というフィルターを外すことで、
「宇宙意識(全体性)」と「太陽意識(本質生)」を垣間見ることができると考えたからです。
単に、逆行を物事が上手くいかない時期と捉え、
退屈さや窮屈さを覚えたり、不便さや緊張感でヤキモキするよりかは、
「天体の意識がアップデートされている」という発想を持つことで、
逆行天体が他の天体に新しい光を渡して回り、
最善の流れが相変わらず紡がれているという真理に触れることができます。
天体が逆行する時、それは、確かなサインに気づくことができる時です。
それは反省や後悔ではなく、「再起」としての振り返りであり、
現実的、且つ、精神性の高い物の見方であり、宇宙と動機する意識の在り方といえます。
今回は、非常に細かいところまで解説したため、いつも以上にボリュームが多くなりました。
筆者が執筆をする際、必要最低限の情報を羅列するのではなく、
自然と言葉が湧き上がってきて、半ば自動書記状態で執筆していることがあります。
そういった働きは、個人鑑定でのホロスコープ・リーディングでも感じるのですが、
この「書かされる感覚」を言語化のプロセスで感じ、
それ相応のボリュームとなって仕上がりますので、
筆が止まらない時は、天体からの意図を受け取っているのだと考えています。
それはそうと、この記事を執筆しているのは、水星の逆行が始まる前の留(ステーション)のタイミングです。
もしかしたら、水星から代弁をお願いされていたのかもしれません。
今回は、痒い所に手が届くように、隅々まで丁寧に解説させていただきました。
逆行について知りたかったことが1つでも見つかり、
また分からなかったことが1つでも解消され、
そして、占星術の世界観や認識についての気づきが1つでもあったなら幸いです。
逆行については、別の機会に、別のテーマで取り上げる予定です。
最後まで読んでいただきまして、誠にありがとうございました!
次の講座「日食(日蝕)と月蝕(月食)の意味と解釈」でお会いしましょう!
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